ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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本文書くうんぬんよりも、タイトル決める方が難かすぃ……


こわがらなくてもいいじゃないか……私と友達にな(ry

「それで、君の名前なんだが……城戸君で良かったかい?」

 

全ての黒服達を叩きのめして幾分かリラックス出来た俺に、恭也さんが遠慮がちにそう問いかけてきた。

思い返せばまだ俺達は自己紹介なんか全然してなかったっけ……。

したのはアリサとすずかだけだが、まだ2人からもちゃんと自己紹介されてねぇな。

 

「あー、はい。遅くなりましたけど、初めまして。城戸定明って言います。海鳴第一小学校の3年です」

 

「そうか……俺は高町恭也、大学1年だ。よろしくな、城戸君」

 

そう言って静かに微笑む恭也さん、いや高町さんの方が良いか。

しかしこうやって和やかに自己紹介してる俺達だが、周りの状況は悲惨なモンだ。

何せ黒服と自動人形達は一人残らず床に倒れてるし、皆して指が無かったり顔が風船並に膨れてたりと散々な光景。

自動人形に至ってはバラバラ状態で床に散乱してやがる。

全て俺がやったのは気にしないでいい事だ。

まぁ兎に角、一切合切の面倒事はクリアしたワケなんだが……。

 

「所で高町さん……このオッサンオバサン連中はどうするんスか?」

 

後残った問題と言えば、コイツ等をどうするかって事だ。

コイツ等も氷村の部下なワケだし、忍さん達が夜の一族って事は知ってる。

このまま警察に引き渡したりしたら、後々トラブルの元になるんじゃないのか?

 

「あぁ、彼等は――」

 

「警察に引き渡すわよ?」

 

と、俺の質問に答えようとした恭也さんの声に、月村忍さんが割り込んでくる。

 

「良いんスか?警察で色々喋られたらマズいんじゃ……」

 

月村さんの答えに疑問が残った俺は質問するが、月村さんは問題無いという顔でにこやかに笑っていた。

 

「大丈夫。私とさくらさんの魔眼で、夜の一族関連の事は忘れさせる事が出来るからね」

 

その言葉に、ピンク色の髪のスーツを着た女性が反応して俺に手を振ってくる。

って事は、あの人も夜の一族関係の人ってワケね。

 

「それに、例え警察で今回の事を話しても、コイツ等の言う事を信じるかしら?」

 

「そりゃあ……まぁ、見るからに堅気じゃ無いって顔ぶれだし、無いと思います」

 

月村さんの質問返しに、俺は有りの侭の予想を返した。

床に転がる黒服達は、見るからに怪しいってオーラを出してる。

そんな人間が「吸血鬼が居る」なんて言っても信じる要素皆無だもんなぁ。

 

「そーいう事。元々、こっちは誘拐された被害者なんだし問題無いわ。氷村は一族の中で判決を決めるから別の者に護送させるけど、他は警察行き。だからその辺りは安心して?君に危害が行かない様にちゃんと後始末するから」

 

「はぁ……まぁ、俺に被害がこなけりゃどーでも良いッス」

 

俺はそう言って頭をポリポリと搔きながら返事を返すが、そんな俺の目の前にさくらさんと呼ばれてた女性が近づいてくる。

 

「初めまして。私は綺堂さくらというの……今回は本当にごめんなさい。こっちの都合に巻き込んだ上に、愚兄が迷惑を掛けて……」

 

「は?……愚兄って誰の事ッスか?」

 

そう言って頭を下げる桜さんだが、彼女の言ってる意味が分からず俺は呆けた顔を晒してしまった。

さくらさんは俺の顔を見て何を言ってるか分からないってのを察してくれたのか、苦笑しながら言葉を続ける。

 

「氷村の事。……遊はね。私の義理の兄に当たるの」

 

「……マジ?」

 

思わず素が出てしまった俺に、さくらさんは困った顔で「マジよ」と返してくる。

え?って事は俺がボコボコにしたあの氷村とさくらさんが義理の兄妹?

そりゃまた……。

 

「……あのマンモーニ(ママッ子野郎)が義理でも兄とか……大変ッスね」

 

「……えぇ……ホントに」

 

心底同情の気持ちを乗せてさくらさんにそう返せば、返ってくる呟きは疲労困憊。

もうホントに疲れましたって思いがたっぷり籠められてた。

あんなのが義理でも兄だったら、俺なら絶縁したいトコだぜ。

 

「っていうか、アイツって綺堂さんにも俺の物になれ宣言してましたよね?義理とはいえ兄妹だってのに……」

 

「……正直、寒気しかしないわ」

 

うわぁ……心底残念な奴だな、アレ。

どんどんと氷村の事を掘り下げる話しになるが、さくらさんも嫌な思いが沢山ある様で、話す度に気分が沈んでいく。

気絶してて喋ってすらいないのに空気を悪くするとか、氷村の害悪度合いが良く判るよホント。

 

「あー……と、とにかく!!さくらさんと私で今からアイツ等の記憶を消すから、恭也はアリサちゃんとすずかに着いててあげて」

 

「あ、あぁ。分かった……しかし、この人数を2人で大丈夫か?」

 

さすがに何時までもこの空気を引っ張るのはマズイと思ったのか、月村さんが空気を変える様に大声を出して指示を下し、恭也さんが合いの手を入れる。

そして合いの手を入れつつも2人の心配をする恭也さん。

……ん?2人で大丈夫かってどういう事だ?

黒服達はもう再起不能に近い負傷だし、戦う処か起き上がるのも困難な筈……。

 

くいっくいっ

 

「ん?」

 

今の恭也さんの言葉の意味を考えていた俺の服が引っ張られたので、そっちに目を向けると、すずかが遠慮気味に俺の服を引っ張っていた。

 

「どうした月村?」

 

「え、えっと……あの、何かね?城戸君が、悩んでる様に見えたから……ち、違ってたらゴメンね?」

 

俺の顔色を伺う様にそう答えるすずかだが……それ当たってるよ。

 

「良く分かったな……いや、恭也さんの言ってた「大丈夫か?」の意味が分からなくてよ……」

 

「それは……た、多分、魔眼の事だと……思う……私達の魔眼は、使ったら体力が減るの」

 

「え?それってつまり、使用限界があるって事か?」

 

「う、うん」

 

なんてこった。つまり恭也さんの「大丈夫か?」って意味は、体力の消耗とかを考えての事だったのか……なら俺も手伝った方が良いだろう。

幸いそういった事にはおあつらえ向きのスタンドがあるしな。

 

「なるほど、助かった。サンキューな、月村」

 

「ううん……あ、あのね城戸君」

 

「うん?」

 

聞きたい事が聞けたので背を向けた俺だったが、すずかはまだ話したい事があるらしく、俺を後ろから呼び止めてくる。

その声に反応して振り返った俺だが、何故かすずかは指をグニグニさせながら言い淀んでる。

 

「あ、あの…………ありがとう……私の事、気味悪がないでくれて……人間だって言ってくれて……本当に、ありがとう」

 

彼女はそう言って、俺に頭を下げてくるが……別に感謝なんて必要ないだろ?

 

「いや、あのな月村?俺はあん時思った事を言っただけで、別に感謝なんていらねぇぞ?」

 

だが、俺の返しにすずかは首を横に振って否定の意を見せた。

そして、とても真っ直ぐな目で俺を見つめてくる。

 

「それでも、嬉しかった……この事を話したら、受け入れてくれる人はいるかもって、ずっと考えてたの……実際、アリサちゃんは私を受け入れてくれたよ……でも」

 

ゆっくりと、しかし確実に自分の言いたい事を伝えながら、すずかは胸の内を俺に吐露していく。

 

「それは、アリサちゃんが言ってくれた様に、私の事を『親友』として、見てくれてたから……ずっと一緒だったから、そう言ってくれたと思うの。勿論、それは凄く嬉しかった……でも、今日初めて会った人に、優しい人間だって……バケモノじゃ無いって言われて……本当に嬉しかった……だから、ありがとう」

 

まるで掛かっていた雲が消えた様な晴れやかな笑顔で、すずかは俺にお礼を述べ、また頭を下げてくる。

何か……ここで頷いておかねぇと、無限ループに入りそうだ。

 

「……まぁ、どう致しまして」

 

「うん」

 

とりあえず、月村に言葉を返して会話を終了させ、俺は月村さん達の話してる輪の方へと足を進める。

まだ時間は大丈夫だけど、速く家に帰りたいのでササッと終わらせよう。

 

「月村のお姉さん。俺も奴等の記憶を改竄すんの手伝いますわ」

 

「え?……そんな事も出来るの?」

 

「出来ますよ?特に何の制限も無いし、疲れる事も無いッス……それと、あの自動人形の残骸なんスけど……コレはどーするんで?」

 

月村さんからの信じられないって声を流しつつ、俺は地面に転がってる自動人形の残骸に目を向ける。

見た目は人間そっくりに作られたロボット。

そこまで機械に詳しいワケじゃねぇけど、さすがに俺でもコレはオーバーテクノロジーってヤツだと判るよ。

チャリオッツの剣先に伝わってくる感触は、最初はとても柔らかかったしな。

俺の質問を聞いた月村さんも同じ様に、自動人形の残骸に目を移す。

 

「さすがにコレは警察に出す訳にもいかないし、かといって放置も出来ない……持って帰るしか無いわね」

 

「ですがお嬢様、私達の乗ってきた車には、そんなスペースは空いてません」

 

「そうなのよねぇ……焦って小型バンで出たのが不味かったわ……一度車を変えに戻るしか……」

 

最初から全く喋らなかった薄紫のメイドさんの忠告に月村さんは困った顔をする。

どうやら持って帰るにしても一筋縄ではいかないらしいが……あっ、そうだ。

 

「ちょっと待って下さい。俺にちょいと名案があるんで……」

 

咄嗟に良い事を思いついたので、俺は自動人形の前に立ってスタンドを呼び出す。

見た目はセックス・ピストルズの様な小人型だが、体はずんぐりしてて腕が4本ある、少し変わった体の小型スタンド。

 

「まずは……ハーヴェスト、部屋に散らばった自動人形を拾い集めろ」

 

500体もの数からなる群生タイプのスタンド『ハーヴェスト』だ。

コイツ等に任せれば、どんな物でも収集が楽勝で出来る。

現に、チャリオッツの剣撃でバラバラになった自動人形達の腕や足、更には細かいボルトから髪の一本まで、全てが俺の目の前に山となって積まれていく。

 

「凄いな……城戸君の力は」

 

「えぇ、ここまでくるともう驚き様が無いわよ……後であの力の事も聞いておかないとね」

 

目の前で山となっていく自動人形達を見ながら何か呟いてる高町さんと月村さんの2人は、俺の力を観察する様にじっくりとした目付きだ。

一方で月村妹は独りでに集まる自動人形達のパーツを見ながら、目を輝かせてる。

メイドさんの1人もそうだ。

 

「ねぇ城戸。ちょっと良い?」

 

と、俺が自動人形集めに没頭していると今度は横から月村とは別の声が聞こえてきた。

誰かと思いそっちに目を向けると、アリサが腕を組んで俺を見ていた。

 

「何だ?えーっと……」

 

彼女に聞き返そうとしたが、俺はアリサの苗字が分からず言葉を止めてしまう。

その様子を見て察してくれたのか、アリサの方が先に口を開く。

 

「アリサよ。アリサ・バニングス……っていうか、私とすずかの名前は判るでしょ?私達名前で呼び合ってたんだし、別に名前で良いわよ?」

 

「確かに知っちゃいるが、初対面の相手を名前で呼ぶ気にゃなれねぇよ……んで、改めて何だ?バニングス」

 

ある程度仲の良いヤツじゃなきゃ俺は苗字で呼ぶタイプだからな。

だが、俺の答えに不服がある様で、バニングスは不満気な顔をしている。

別にどっちでも良いじゃねぇかそんなのは。

 

「名前で良いって言ってるのに……まぁ、良いわ。それより城戸……さっきは助けてくれて、ありがと」

 

バニングスはそう言って、月村と同じ様に頭を下げてくるが……多分、最初に黒服達に襲われそうになった時の事だろう。

 

「別に良いってそんなの……まぁ、あん時はさすがにビビッたぜ?相手は大の大人で銃持ってるのに、俄然食って掛かるんだもんな」

 

暗に無謀な事するなぁ、という意味を篭めて言ってやると、バニングスは少し居心地悪そうに唸って顔を逸らした。

まぁ自分でもかなり無謀だってのは判ってるんだろう。

 

「し、仕方無いじゃない。アイツ、すずかの事バケモノ呼ばわりするし、自分は選ばれた存在だ、みたいな中二病全開で、オマケにキザでナルシスト。あんな奴に自分の親友が馬鹿にされて黙ってられなかったのよ……無謀でも、言い返したかった……」

 

例え自分の身が危険に晒されようとも、親友を貶めた奴を許しちゃおけない。

だからこそ果敢に言い返したバニングス。

 

 

 

……なんつうか……。

 

 

 

「カッコイイじゃねぇか?」

 

「……は?」

 

悔しそうに俯いていたバニングスに、俺は笑いながらそう言ってやる。

すると、バニングスは鳩が豆鉄砲を喰らった様な顔を見せてきた。

実際、俺はあん時、バニングスの事を尊敬したからな。

 

「例え無謀でも、キッチリ言い返してたあの啖呵……誰でも出来るもんじゃねぇよ。それこそ、俺みたいに変わった力があるワケでもねぇのに、怯まずにああやって言い返したバニングスの事。俺はスゲェって思ったぜ?」

 

「で、でも……アタシは結局、何も出来なかったわ」

 

「そりゃ、相手は大人。しかも銃を持ってるとくりゃ、誰もあの状況で言い返す事なんか出来ねえだろうけど……実際、バニングスは言い返した……あん時の氷村の呆然とした顔見てたら、間違いなく勝者はバニングスだよ……」

 

「城戸……アンタ……」

 

バニングスは呆けた顔つきを変え、俺の言葉を噛み締める様な表情を浮かべる。

俺だってスタンドが無きゃ、あんな事は出来たりしねぇ。

 

「正直なトコよ。俺みてーな力が無くても、大事な親友のために怒ったバニングスの真っ直ぐなトコ……俺はソコに痺れたし、憧れた」

 

「はっ!?い、いやちょっ!?」

 

と、俺が正直な思いを吐き出していたら、バニングスは顔色を変化させて頬に赤みを差した。

ん?ちっとドストレートに言い過ぎたか?

まぁでも、これが俺の正直な感想だしな。

 

「兎に角よ、バニングスは親友の、月村の為に自分の危険を顧みず啖呵を切ったんだ……ソコんトコは誇っとけ。じゃねぇと、それを凄いと思った俺が馬鹿みてぇだからよ」

 

「わ、わわ、分かったわよッ!?と、兎に角、助けてくれた事にはちゃんとお礼言ったからね!?(な、何よコイツ……い、いいいきなり、あ、憧れた、とか痺れた、なんて……馬鹿じゃないの)」

 

「おう……っと、もう集め終えたな」

 

最後は捲し立てる様に言葉を叩き付けてバニングスは月村の居る場所へ向かった。

そんな会話をしてる内に、ハーヴェストは自動人形のパーツを全て集め終えた様で、パーツの山の上に群がっている。

良し、そんじゃあ次は……。

 

「エニグマはチンケな能力って言われてるけどよぉ、使い様によっちゃスゲエ便利なんだよな」

 

彫像の様な形の人型スタンド、『エニグマ』を呼び出す。

エニグマはスタンド単体の殺傷能力は0だが、コイツの能力は便利過ぎる。

俺の指示に従って、エニグマが手の平を自動人形の山に触れると――。

 

バサッ!!

 

「「きゃッ!?」」

 

「ッ!?か、紙が現れた……?」

 

エニグマの能力が発動すると、俺の動きを興味津々に覗いていたバニングスと月村、高町さんが驚愕の表情を浮かべた。

バニングスと月村はどっちかと言えば悲鳴だったけどな。

そして、エニグマが生み出した紙が自動人形の山に覆い被さり――。

 

パタッ……パタッパタッ。

 

「紙が……勝手に……」

 

「わぁ……不思議ですぅ」

 

独りでに、紙が折り畳まれていく。

その光景に唖然とした声を挙げる薄紫色のメイドさん二名。

まぁそうなるのも仕方無いか。

そして、紙が段々小さく折り畳まれると、最後は手の平サイズまでなった。

もう地面には自動人形の影も形も無い。

これがエニグマの『物体を紙にファイルして保存できる』能力だ。

どんな物体でもその時の状態を維持して保存できる。

九州のとんこつラーメンだってホカホカのままで保存できるんだ。

一応人間をファイルする事も可能だが、その条件として『相手の恐怖のサイン』を見つけなければならない。

それを見つけた相手に対しては絶対無敵にして防御不能の攻撃を繰り出せるが、それが見つからない限り、生き物をファイルする事は不可能。

戦闘で使うなら相手を観察出来るタイプの人間じゃないと話しにならない。

 

「良し……ほい、この中に自動人形が全部保存されてますんで」

 

俺は出来上がった紙を月村さんに差し出す。

それを見た月村さんは恐る恐る紙を受け取ると、色んな角度から眺め始める。

 

「……重くも無い……見た目は只の紙ね……取り出す時はどうすれば良いの?」

 

「取り出す時は紙を広げて下さい。そしたら自動的に出て来ますんで……あっ、後、紙を破らない様に注意して下さいッス。破れたら中に保存した物が破壊されちゃうんで」

 

「わ、分かったわ。気を付ける」

 

俺の注意を聞いた月村さんは大事に紙をポケットに仕舞いこむ。

これで持って帰る自動人形の問題は片付いたから……次は、黒服達か。

そっちの問題も俺が全部やろうかと月村さん達に提案したが、さすがに全部任せっきりにするのは悪いと言われ、俺は10人程の人間の記憶を改竄する事となった。

尤も、俺が本当に記憶を改竄できるかはまだ半信半疑って事らしく、後で綺堂さんと月村さんが確認すると言っていた。

まぁ、信じてもらえなくても遣るだけだけどな。

俺からしたらコレ以上確実な手は無いって思ってるし。

 

「すまないな、城戸君……さすがにこればっかりは忍達の事もあるから、簡単に頷く訳にはいかなかったんだ」

 

とりあえず、俺のお目付け役として高町さんが動向する事になったので、俺達は一緒に行動している。

バニングスと月村はここに居て、もしもの事があったら危ないという事で2人のメイド……ノエルさんとファリンさんと共に高町さん達が乗ってきた車に向かっている。

多分、ノエルさんとファリンさんも自動人形ってヤツだから問題無いだろ。

一応エアロスミスのレーダーで付近を確認したけど、誰も居なかったし。

 

「いや、そんな謝らないで下さいよ。俺だって初対面の人に信じろって言われて信じられるワケ無いですし……」

 

「そう言ってもらえると、助かる……しかし、君はどうやって奴等の記憶を消すつもりなんだ?確認の為に教えてもらえないだろうか?」

 

俺が高町さんに謝らない様に頼みつつ話してれば、今度は俺が使う方法を教えて欲しいときた。

まぁ別に見られて困るモンじゃねぇか、この人達だって俺に話されたら困る秘密があるんだし。

 

「まぁ、それは見てもらった方が早いんで……」

 

そこで言葉を切った俺は指が無くなって痛みと出血で気絶してる黒服の1人に近づき、指を空中に素早く躍らせる。

本職のあの人程のスピードは出せねぇが、俺がなぞった線に沿って空中にゆっくりと『ハットを被った少年の絵』が浮かび上がり、その絵は力を持つ。

 

天国の扉(ヘブンズ・ドアー)

 

その少年の絵が輝きを増すと、目の前で気絶してる男の顔が半分に割れ、『漫画の様な見開きのページ』が出来上がった。

 

「なッ!?」

 

いきなり人間の顔が雑誌の様なページに変化したのがショックだったのか、高町さんは言葉を詰まらせた。

しかし、俺はそのリアクションに対応せず、屈みこんで男の顔に現れたページを読んでいく。

 

「え~っと……名前は山本浩二、年齢32歳で独身。住所は……このオッサン東京の人間なんだな……好きな食い物は肉じゃがで嫌いな女は香水の匂いがキツイ女」

 

「あ、相手のプロフィールを読めるのかッ!?しかもそこまで詳細にッ!?」

 

「えぇ、まぁ(ホントはプロフィールどころか相手の体験したものが全てだけど……)」

 

後ろから大きな声で聞いてくる高町さんに生返事を返しながら俺はオッサンのプロフィールを読み進める。

これぞ、相手の体験した事を絵や文章で読む事が出来るヘブンズ・ドアーの能力。

コレは相手の体験したり経験した出来事を全て見せてくれるので、この能力の前ではどんな些細な事でも隠し事は出来ない。

更にヘブンズ・ドアーの能力で本にした者に、俺は命令を書き込むことが出来る。

 

「えっと……夜の一族に関する全てを忘れる。アリサ・バニングスと城戸定明の事を全て忘れる。又、両名の家族、本人には攻撃出来ない……っと」

 

この命令は術者、つまり俺が死ぬか能力を解除しない限り有効になる。

しかも一度命令を書き込んで閉じれば、後は射程距離に関係なく有効のままだ。

月村、というか夜の一族の事全てを忘れさせた上で、俺とバニングス、そして俺達の家族にも攻撃出来ないと書いておけば、もうコイツは怖くない。

確か岸辺露伴はこの命令を『安全装置(セイフティーロック)』って呼んでたな。

結構シックリくる言い方だぜ。

書き込む事を全て書き込み終えたので、俺は本を閉じる様にページを元に戻す。

すると、まるで何事も無かったかの様にページが消え、元通りの汚ねえオッサンの寝顔をドアップで見る羽目になった。

 

「うっ……高町さん、次から俺の代わりに……」

 

「遠慮する」

 

ですよねー。

 

そんな風に後味の悪い事を数十回続けて、俺は高町さんと月村さん、綺堂さんに最後の確認を任せて車のある場所まで行く様に言われた。

ホントなら一人でも帰れるんだが、今回のお礼の一環として家まで乗せてくれるそうだ。

まぁその帰り際に、地面にボロ雑巾になって倒れてた氷村を発見したので、ヘブンズ・ドアーで色々と書き込んでやった。

内容は『一生女性にモテない』『今後一切魔眼が使えなくなる』

『今までの魔眼の効力が切れる』『身体能力8割封印』ぐらいだけどな?

そんで全部片付いてから車にの出てもらってる最中、帰りのバス代が浮くんだし、ラッキー程度に考えてお言葉に甘えたんだが…。

 

「……」

 

「「……」」

 

現在黒服達全員の記憶処理が終わって警察に通報した後なんだが、何か空気がヤバイ。

何故か、帰りの道中車の中で俺を挟んで左右に座る月村とバニングスが何かを言いたそうにチラチラと俺の事を伺ってくる。

だからソッチに視線を向けてみるんだが、何故かドチラも何も言わない。

そんな沈黙が車に乗ってからずっと続いてる。

正直、月村さんの提案に後悔したよ俺。

まだこれなら大人しくバス代払ってバスに乗っときゃ良かったぜ。

 

「ねぇ城戸君?ちょっといいかしら?」

 

と、俺がこの気まずい空気に困っている所で、前の座席に座る月村さんから声が掛けられた。

 

「何ですか?」

 

「あのね。本当は私達の家で夜の一族に関する決まり事を話そうと思ってたのよ」

 

ん?決まり事?

 

「そんなモンがあるんスか?」

 

「ええ。私達一族の秘密を知ってしまった人には、私達と契約を交わして共に歩むか、私達の事を全て忘れるか、その選択をしてもらう……そういう決まり事があるの」

 

「お、お姉ちゃんッ!?」

 

月村さんの話を静かに聞いていた俺だったが、途中で隣の月村が驚きの表情でお姉さんに声を投げ掛ける。

 

「ごめんね、すずか……でも、これは絶対に避けては通れない事なの。確かに口約束だけで上手くいくならそれに越した事は無いけど……まだ私達は、城戸君とは初対面だし、互いにそこまでの信用があるワケじゃないわ……だから、城戸君。明日迎えを寄越すから私達の屋敷まで来て、そこで私達の味方になるか全てを忘れるかを決断してちょうだい」

 

「で、でも、城戸君は私とアリサちゃんを助けてくれたんだよッ!?わ、私の事もバケモノじゃ無いって……ッ!!優しい人間だって言ってくれたんだよッ!?それなのにお姉ちゃんは城戸君を信用してないのッ!!」

 

「そ、そうですよ忍さんッ!!私達は城戸のお陰でこうして無事でいますッ!!」

 

「えぇ、そうね。……でもね、それは状況の所為というのもあると思うの。あれだけの力を持ってるのだから、1人で逃げ出す事も出来たかもしれない……でも、もし城戸君がすずか達を助けたのが、『見捨てる罪悪感』が嫌だったからという理由だったら?後で2人の家にお礼を貰いたいが為だったら?私達が城戸君を車で送るのも、城戸君を途中でどうにかしようとしてるとしたら?……その可能性がある内は、私達は互いに信頼なんて出来ないでしょ?」

 

「お姉ちゃんッ!!!」

 

ハッキリ言っちまえば、俺に対してかなり失礼な物言いに、月村は怒りの篭った声を大にして姉を非難する。

確かに、ここまで言われたらキレるのが当たり前だ。

 

 

 

――でも、俺はこの場で反論する気は無え。

 

 

 

確かに、俺だってまだ月村さん達を完全に信用したワケじゃねぇ。

俺が起こしたスタンドによる超常現象の数々。

それを月村さん達が秘密にしてくれるか、俺はまだ分からねぇからだ。

俺なら最悪、ヘブンズ・ドアーで全員の記憶を書き換えちまえばそれで終わりだ。

でも、月村さん達は今、魔眼を使いすぎて疲労している。

記憶を消す事が出来る力が無いってのが、余計に不安になるんだろう。

だからこそ、確実に信用できるか見極める為に。明日屋敷に来いって言ったんだ。

俺を家に送るって申し出も、俺の家を知る為だろう。

手段を選ばなきゃ、俺をそのまま屋敷に連れて行く事も出来た筈なのに、態々家まで送って、明日まで考える時間をくれるとは……充分、俺の事考えてくれてる。

 

「……優しいんスね。月村さんは」

 

「……え?」

 

「な、何言ってるのよ?アンタ?……」

 

俺の零した呟きに、隣に座ってる2人は戸惑う。

まぁその戸惑いも尤もだけどな。

さっき考えた仮説だって、俺がそうだったら良いなぁ程度のモンだし。

アトゥムのスタンド能力を使って質問し、その答えを聞けばある程度判るとは思うけど……ここまで丁寧な対応されて心読むってのは駄目だろ?

それじゃ明らかな裏切りだ。

 

「……つ、着きました」

 

考えている間に車は大分進んでいた様で、何時の間にか車の窓越しに俺の家が見えている。

そこで又、車内は重苦しい雰囲気に包まれるが、とりあえず俺は促されるまま車から降りようとした所で、月村さんが俺に顔を合わせてきた。

 

「……明日、学校が終わる時間にノエルに迎えに行かせるから……良く考えてね、城戸君……それと今日は本当にありがとう……すずかと、アリサちゃんの事を守ってくれて……感謝するわ」

 

「いえ、別に良いッス……後――」

 

俺は車のドアを閉めようとするファリンさんの手を止め――。

 

 

 

 

 

「俺、今日も明日も……返事、変わらないッスよ?」

 

 

 

 

 

「「ッ!?」」

 

「……」

 

俺が言い放った言葉に月村とバニングスは目を見開き、月村のお姉さんはその言葉の真意を図る様にジッと見つめてくる。

 

「正直、最初は心底面倒くせえって思ってましたけど……」

 

そこで一度言葉を切って、チラッとだけバニングス達を視線に納めてから、俺は再びお姉さんに目を向け口を開く。

 

「月村が優しい奴って思ったのはウソじゃねぇし、バニングスもスゲエ奴だって思ったのもウソじゃありません」

 

「「……」」

 

「忘れるって、それってコイツ等に感じた事もそっくりそのまま忘れるって事でしょ?俺、そういうの嫌いだし――」

 

そこで一度言葉を切り、しっかりと月村さんの目を見詰め――。

 

「自分の言葉曲げんのも嫌なんで」

 

「……」

 

只静かに俺を見ている月村さんに言いたい事をちゃんと言ってスッキリしたぜ。

暫くそのまま無言の静寂が続くが――。

 

「……そっか…………分かったわ。君を信じる」

 

その静寂を破ったのは、楽しそうな笑顔を浮かべる月村さんだった。

兎に角、俺達の気まずい雰囲気が解消されたのが嬉しかったのか、バニングスと月村がホッと大きく生きを吐いている。

そんな2人の様子を月村のお姉さんは楽しげに見詰めてから、何やら悪戯気味な笑顔を浮かべて再度俺に視線を向けてきた。

 

「じゃあ、明日は家に来ないって事で良いのかしら?」

 

「「ッ!?」」

 

「あー、そうっすねぇ……特に用事も無「「駄目ッ!!!」」い?」

 

月村さんに明日の予定をキャンセルするか聞かれてそれにイエスと答えようとしたら、バニングスと月村に大声で拒否された。

え?っていうか何が駄目なんだよ?

 

「せ、折角、と、友達になったんだから、遊びに来なさいよッ!!すずかの家って豪邸だし……テ、テレビゲームもいっぱいあるわよッ!?」

 

「そ、そうだねッ!?折角友達になったんだから、あ、明日は是非遊びに来て欲しいかなッ!!うんッ!!猫とかも沢山居て和むし、いっぱいおもてなしするよ、城戸君ッ!!」

 

「え?……はぁ……」

 

あれ?何時の間にかダチ認定されてんの俺?

 

「そ、それにねッ!?城戸君のあの力の事とか教えて欲しいなぁーって……あっ!?も、勿論無理にとは言わないよッ!?で、でも私の秘密も知っちゃったんだし……駄目、かな?」

 

俺が煮え切らない返事を返すと尚も食い下がって俺を誘うバニングスと月村。

お前等ひょっとして友達居ないの?

 

「そ、そうねッ!!あの不思議な力の事も聞かせなさいよッ!!他のどんな事が出来る~とか色々とッ!!」

 

ってこんな往来で大きな声でンな事言うなっての。

そこからマシンガンの如く俺に次々と誘いの言葉を投げ掛ける2人。

そんな2人を見てニヤニヤする月村さんと綺堂さん、慌てるファリンさんに静かな高町さんとノエルさん。

何だこのカオス?

しかしこのまま時間が過ぎるのもマズイ。

段々と声の大きさに比例して、近所のマダム達がヒソヒソ話しを始めやがった。

あぁ~もう面倒くせえ。

 

「はぁ……わぁったよ。明日、月村ん家に「すずか」……あ?」

 

兎に角この場を離れたかったので誘いにOKを返そうとした俺の言葉に、月村が声を被せてくる。

彼女の表情はかなり真剣というか、必死だった。

つうかいきなり何?

 

「と、友達になったのに苗字なんて余所余所しいよ。だ、だから、私の事はすずかって呼んで……」

 

「ア、アタシの事も当然ッ!!アリサって呼びなさいッ!!良いわねッ!?」

 

「……分かった。俺ん事も好きに呼べ。城戸でも定明でも『ジョジョ』でも良い」

 

「?……『ジョジョ』って?」

 

「そういえば、あの時も言ってたけど、何でさ……さ、定明のアダ名がジョジョなのよ?普通アダ名って、名前か苗字を少し変えたりするモノでしょ?」

 

俺の出した名前の例えに、2人は首を傾げながら聞き返してくる。

ってそういや、俺の名前は知ってても、漢字は知らねぇよな。

 

「あー、俺の名前だけどよ……まず城戸って字はお城の城に戸口の戸。定明は定めるに明るいって書く」

 

「えっと……お城の城に戸口の戸。定め……あっ!?読み方ッ!?」

 

「城戸の城と定明の定の音読みが、どっちもジョウなんだよねッ!?」

 

Exactly(その通り)。そのジョウからジョを2つ取って――」

 

 

 

「「ジョジョッ!!」」

 

 

 

2人揃って綺麗にハモりながら呼んでくれた事に、俺は笑顔を浮かべる。

 

「そ。このアダ名は結構好きなんだ……また明日な――『すずか』『アリサ』」

 

「「ッ!?」」

 

俺は帰り際に初めて2人の名前を呼び、返事も聞かずに家の中へと入っていく。

さてさて、明日はアイツ等の家に遊びに行くのか……まぁ、なるようになんだろ。

しかしスタンドの事を話せねぇ……どうしよ?

さすがに全部のスタンド能力を明かす訳にもいかねーし。

ん~……まぁ明日考えるか。

 

兎に角、お楽しみのCD聞きますか。

エニグマで保存してたから壊れたりとかは問題ないし。

 

 

 

 

 

 




ちくしょおぉおおおおッ!!


難しすぎて纏めきれんッ!!


早くも挫折しそうだぜッ!!

どの辺がアウトなんだッ!?

ね、おせーて!!おせーてくれよぉ!!

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