ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

3 / 46
最新話を執筆中に詰まったので軽く書いた……つもりなのに、31キロバイトを超えただとッ!?

ご、五時間でこんなに書けるなんてッ!!?(これマジです)

後悔だらけです。


もう書かないと決め手たら何時の間にか書いていた…な、何を言ってるのか分からんだろーが俺にも(ry

「俺が怖いなら逃げてみたらどうだ?まっ、1人も逃がしゃしねぇけどな」

 

「に、逃げるだとッ!?舐めるなよクソガキッ!!お前等何してるッ!!相手はタダのガキなんだぞッ!?一斉に掛かれッ!!」

 

俺の堂々とした宣言を聞いて逆ギレした氷村は、俺を指差しながら手下に向かって盛大に喚き散らしだす。

ケッ。来るなら来いよ?テメエ等の指、全部斬り落としてやる。

銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)』に戦闘態勢を取らせつつ、俺は心のなかでそう毒吐く。

 

「し、しかし……」

 

「あんなワケ分かんねぇガキとやれってのかよ……」

 

でも、手下達は氷村の指示に逡巡して一向に動こうとはしなかった。

まぁそれが普通だ。

今までの手下の指が斬り落とされたり、弾丸が独りでに曲がったりしたのも全て俺の仕業。

さすがに俺のスタンドが遣ったとは分かんなくても、原因が俺だと理解してて俺に対して戦おうとする馬鹿は居なかった。

やれやれ……まさか『神様』からもらった能力がこんなトコで役立つとはな。

 

 

 

実は、この俺城戸定明は世間様で言うトコの『転生者』って奴だ。

 

 

 

前世では普通の中学生だった俺だが、ある日横断歩道に飛び出した子供を助けて俺が代わりにトラックに轢かれた。

それで俺はポックリお陀仏。

あの世へ行くモンだと思ってたんだが……まさかの神様に出会う事になった。

神様に聞いた話しでは、ある日外界を見下ろしてた時に俺の事を見て、『コイツをファンタジーな世界に送ってみよう』と思いついたらしい。

迷惑どころの話しじゃねぇってマジ。

その際に欲しい転生特典を付けてくれるって話しだったから遠慮無く貰ったけど。

俺が貰った転生特典は2つ。

 

一つは『全スタンド能力(ON,OFF有り)』

 

二つは『鉄球と波紋の技術』

 

この2つの能力を持って、俺はこの海鳴市に生まれ落ちたってワケだ。

そしてスタンドの能力を得た俺の目的はっつうと……ぶっちゃけ無い。

スタンドは前世で憧れてたから欲しかっただけだし、他に考えつかなかった。

やれ銀髪オッドアイのイケメンとか、そんな非常識を表わす容姿なんて要らん。

しかも俺の他に後2人転生者が居るらしいから、目立つ容姿はNGだろ。

バトルなんてやってられっか、面倒くさい。

だから転生先も俺の知らない世界にしてもらったし、なるべく原作の関わらない所に住まわせてくれと頼み込んだ。

でも神様にしてみりゃそれは面白く無いとの事で、原作の事件のある街に生むけど、主要キャラとは離れた街にするという事で妥協してもらったんだが……。

 

 

 

その矢先にコレだよ。

 

 

 

畜生、新発売のCDが売り切れだからって隣町まで買い物なんてこなきゃ良かった。

俺はバトルとか戦うなんて心底面倒くせえと思ってるが、自分の命が危ない時にそうも言ってられねえ。

それで無意味に死んだら何のための転生か分かんねぇし、産んでくれた今の親にも申し訳が立たねえだろーよ。

だから、俺の命を脅かす存在に出会った時は全身全霊でブチのめすと決めてた。

それが今の状況ってワケだが……目の前の連中は今、俺に対して恐怖してる。

このままなら逃げ出す奴等も出てくるだろーな。

ドッチにしても、全員逃がすつもりなんて毛頭無えが。

 

「あ、あの……城戸君、で良いのかな?」

 

「ん?何だ?」

 

と、目の前の愚図が襲い掛かってくるタイミングを見計らっていた俺に、後ろに居るすずかから声を掛けられ、俺はそれに応じた。

 

「ご、ゴメンね?……私の所為で、こんなことに巻き込んで……迷惑だよね?」

 

後ろを見ていないから表情は分からない。

でも、俺に遠慮気味に声を掛けてくるすずかの声は震えているのは分かった。

 

「さっきも言ったろ、別に良いってよ」

 

「で、でも……」

 

巻き込まれた当事者の俺が気にしてないと言ってるのに、すずかは尚も食い下がろうとしてる。

っていうか今はそんな事言ってる状況じゃ無えだろう。

 

「兎に角、話は後にしようぜ。今は目の前の馬鹿共を片付けっからよ」

 

その台詞で俺達の置かれてる状況を思い出してくれたのか、すずかは掴んでいた俺のシャツから手を離し、言葉を噤んだ。

兎にも角にも、今は目の前の奴等を何とか片すのが先決だ。

でもあんまり大胆な方法は使えねぇ。

幾ら自分を殺そうとしてる相手でも、相手の生命を奪うのは駄目だ。

俺自身殺人なんてまだ心が保てねぇし、何より後ろの2人にそんなショッキングな場面見せるなんて出来ねえ。

下手すりゃトラウマになるだろ。

よって即死系のスタンドは使えないって事になる。

どうすっか……逃げるだけなら『スティッキー・フィンガーズ』のジッパーで下の階に逃げられるし、若しくは『世界(ザ・ワールド)』で時を止めてコイツ等全員フルボッコにすりゃ良い。

でもなぁ……『世界(ザ・ワールド)』を使うにゃ何人か射程距離外だし、もし俺が離れた隙にアリサ達を撃たれたら守り切る自信が無い。

時を次に止めるには一呼吸の間が必要だから、その間に撃たれたらOUT

『スティッキー・フィンガーズ』のジッパーで下の階に逃げるのは良いが、もしあの自動人形とやらがまだ沢山居たら余計面倒になる。

それに……。

 

「……エアロスミス(ぼそっ)」

 

俺はまず『銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)』を消して、気付かれない様に小さな声でラジコン飛行機の様なスタンド、『エアロスミス』を呼び出す。

更に俺の右目にプロペラで浮遊する『レーダー』がセットされた。

これが『エアロスミス』の能力、CO2を探知するレーダーだ。

これを使えば建物に居る人間の数なんて直ぐに判る。

 

「(……この部屋に14人、息が荒い、つまり倒した奴らが10人、上と下の階に反応は無し。建物の外に見張りが10人……なんだけど……)」

 

人間の数は正確に判るが、今も部下に喚き散らす氷村の傍で、氷村を守る様に佇んでいる自動人形っていうメイドが曲者だ。

コイツ等は『エアロスミス』のレーダーに引っ掛かっていない。

つまり呼吸をしていない。

だからこそ、この建物に後どれぐらい奴等が居るのか判断が付かねえし、下手に動くワケにもいかねぇんだ。

俺が他に持ってる探知機は『炎の魔術師(マジシャンズ・レッド)』の炎を使った炎の生物探知機だが、これも生き物に限定される。

意外な所で『エアロスミス』のレーダーに穴があったな。

そう考えてる間に、氷村の手下達は覚悟を決めたのか、各々が全弾撃ち切って使い物にならなくなった拳銃を捨てて、ナイフやスタンガンなんかを持って俺達にジリジリと近づいてきた。

氷村はその様を「これだから下等種は」とかほざきながら一瞥し、2人の自動人形を連れて少し下がる。

あの野郎、前に出て戦う気もねぇってか。

 

「(ちっ、しょうがねぇな……兎に角、奴等がチャリオッツの射程距離に来てくれんならそれでも良い。片っ端から指を斬り落として最後に氷村と自動人形をブチのめしてやる)」

 

別にエアロスミスを使っても良いけど、メチャクチャに撃たねぇと当たらねーし、何処に当たるかも分からん。

後ろの2人に、人間の顔面に弾穴が開くトコ見せるワケにゃいかん。

まぁ指を落とすのも残酷だが、それは我慢してもらうしかない。

 

「……二人共、ちっとエグい事になるから目を瞑ってろ」

 

「え?で、でもアンタ……」

 

ここで俺の言葉にアリサが反論しようとしてくる。

まぁこの状況で目を瞑るなんて怖いわな。

もしかしたら捕まるかもなんて考えてんだろーし……でもよ。

 

「さっきみてーな場面、もう見たくねぇだろ?」

 

人の指が飛ぶ瞬間を見るよりは遥かにマシだ。

今ので俺が言いたい事が伝わったのか、アリサはそれ以上何も言わずに黙った。

すずかはさっきから静かだし、多分目を瞑ってくれたんだろう。

目の前には迫る敵、背後に守る対象……何でこんな事になったんだか。

まぁ何を思っても、だ……ヤルしかねぇか。

この窮地を乗り越えて、明日からまた日常を過ごす為に覚悟を決めた俺は、エアロスミスを引っ込めようとした――。

 

「(ピコーン。ピコーン)ん?……コレは?」

 

だがその直後、周囲のCO2を探知していたエアロスミスのレーダーに新たな反応が現れ、俺はその反応を見てエアロスミスを消さなかった。

今、エアロスミスのレーダーには、この廃墟へと向かう3つの呼吸が映し出されている。

反応の大きさは人間なんだけど、その『速度』が異常だった。

こっちに向かってる新たな反応の速度は、凡そ普通の人間に出せる速度を軽く超えている。

しかもその反応が廃墟の周りに居る別の反応に迫ると……。

 

「……反応が弱くなった……オイオイ」

 

恐らく見張りの奴の呼吸だと思うが、それが一気に弱まったのだ。

多分気絶させられたんだろう。

更に不可解な事に、その近くの見張りが2人、いきなり何の前触れもなく反応が弱くなりやがった。

コッチはホントにいきなりだ。

まさかとは思うが……例の自動人形とやらが増えたのか?

でも敵なら同じ味方を倒す必要は無いハズ……何なんだコイツ等?

そう考えてる間にその3つの反応は建物に侵入してくる。

こりゃ放っておくと面倒になりかねねぇな。

サッサとココを片付けるとしよう。

もしも新手だったら面倒な事この上無いので、俺はこの階を脱出する方針にした。

まずは目の前に迫ってくる雑魚を粗方片付けてからザ・ワールドを使用。

そのまま2人を連れて一度逃げるだけ――――。

 

 

 

「――――すずかッ!!!アリサちゃんッ!!!」

 

 

 

と、考えた所で、部屋の向こう側に位置する扉がバンと蹴破られた。

その音に反応して部屋の全員が振り返ると、そこには『5人』の人間が居た。

1人は紫のロングヘアーの女性、そしてピンクっぽい髪のスーツの女性。

更に最初の女性より薄い紫のメイドが2人。

そして、両手に小太刀を構えたイケメンが1人。

って待て?今あの女の人『すずか』って……まさか?

 

「ッ!?お姉ちゃんッ!!」

 

「忍さんッ!?恭也さんッ!?」

 

紫のロングヘアーの女性の声に、俺の後ろに居たすずかが反応して声を返す。

その声に少しだけ安堵する様な表情を見せた乱入者達。

どうやらこの人達は味方みてーだな。

 

「待っててね。2人共……じゃなくて、そこの男の子もすぐ助けるから……」

 

アリサ達に忍さんと呼ばれた女性は俺達に声を掛けると、目付きを険しいモノに変えて氷村を見据えた。

 

「氷村……アンタ……」

 

「月村忍か……それにさくらも一緒とはな……どうだ?漸く僕の物になる気になったのか?」

 

忍さんが怒りを篭めた声で呼び掛けた事に対し、氷村は悠然と見下した感じで巫山戯た言葉をのたまう。

その言葉に小太刀を持った兄さんが米神に青筋を立てるが、彼の後ろから出て来たピンクの女性に目で止められる。

そして、そのピンクの髪の女性が兄さんに変わって冷めた目を向けた。

 

「寝惚けた事言わないでくれるかしら?貴方みたいな魅了の魔眼を使わないと女性1人口説き落とせない姑息な男に靡く女なんて居ないでしょ?少しはそのおめでたい頭で考えてみたら?」

 

うわぁ……さっきのアリサの言葉より痛烈……女って怖いな。

一方その言葉を向けられた張本人の氷村はと言えば、依然として見下した様な目付きのままだ。

 

「フン、人間如き下等種なんぞ、僕に目を掛けられただけでも幸運に思うべきなのさ。奴隷に邪魔な情は要らん……まぁ、お前等が僕の物にならないなら別に良い……自動人形達よッ!!」

 

氷村が大声を上げた瞬間、部屋の窓からメイドの格好をした自動人形が部屋に飛び込んできた。

その数は5体だけだが、それを見た忍さん達は顔を驚愕に染める。

 

「……コレはキツイわね」

 

「あぁ……イレインだけでも厄介だと言うのにな……気を抜くなよ、皆」

 

忍さんの苦々しい表情で語られた言葉に、隣の恭也さんが反応する。

その瞳は氷村の横に立つ金髪の自動人形に向けられている、多分、アイツがイレインとかいう奴なんだろう。

忍さん達の険しい表情を見た氷村は顔を愉悦に染めながら……。

 

「安心しろ。お前等は後だ。まずは……」

 

そこで言葉を切った氷村は、横目に俺達に視線を向けてきやがった。

まぁそうなるよな。『狩り』ってヤツは……。

 

「ソコにいる餓鬼共を捕獲して、辱めを受けさせてやる」

 

『弱い獲物』から仕留めるのがセオリーだ。

氷村の楽しそうな言葉に、驚愕の表情を見せる忍さん達。

その顔を見た氷村は更に表情を笑みで満たす。

 

「ッ!?止めなさい遊ッ!!この卑怯者ッ!!」

 

「氷村……ッ!!貴様ぁッ!!」

 

「フハハハッ!!弱い犬程良く吼えると言うが、お前等にピッタリだなッ!!イレインッ!!」

 

「……ハイ」

 

氷村の呼びかけに、横に居たイレインが答える。

 

「お前は4体の自動人形と共にコイツ等を足止めしろッ!!残りの自動人形とお前等は、餓鬼共を好きに犯せッ!!男の餓鬼は殺して構わんぞッ!!」

 

その言葉を聞いた手下達は、さっきまでのビビッてた顔から余裕の表情に変わり、俄然ヤル気を出した。

多分さっきの自動人形とやらが味方に付くからだろう。

そして、手下達と自動人形達が、俺達に襲い掛かってきた。

 

 

 

 

 

「ッ!?すずかぁあああああッ!!?」

 

 

 

 

 

つんざく様な忍さんの悲鳴、絶望した表情。

それを嘲笑う氷村の高笑い。

それを見ながら俺は……『ほくそ笑んでいた』

 

 

 

 

 

――――馬鹿だな、テメエ等は。

 

 

 

 

 

「――『世界(ザ・ワールド)』」

 

 

 

 

 

揃いも揃って――。

 

 

 

 

 

「――時よ止まれ」

 

 

 

 

 

狩りの『基本』すら、知らねえんだからよ?

 

 

 

ピキィイイインッ!!!

 

 

 

俺の言霊に近い呟きと共に、周りの空間がモノクロに変わっていく。

飛び掛かる体勢で空中に止まってる馬鹿面な男達。

無表情で固まる自動人形。

そして――――。

 

「あらら……かなり恐かったんだろうな」

 

俺の後ろで、お互いに肩を抱き合った体勢になってるすずかとアリサ。

それを、俺は苦笑しながら見つめる。

 

「さて……反撃開始といくか」

 

俺はザ・ワールドを呼び出し、その巨腕にアリサ達を優しく抱えさせて、忍さん達の前に移動する。

手下達や自動人形、果ては高笑いのポーズで静止してる氷村をスルーして、だ。

別にザ・ワールドを使えばコイツ等全員のす事も十分可能だけどやらない。

 

 

 

 

 

何故かって言えば――――それじゃ詰まらねぇだろ?

 

 

 

 

 

コイツ等にゃ、誰を獲物にしたのか良~く教え込まねぇと、な?

忍さん達の前に着いたのでザ・ワールドから2人を受け取り、脇に挟んで樽抱えにする。

さて、そろそろか。

 

「9秒経過……そして時は動き出す」

 

俺の呟きと共に、色が戻る空間、人間達の動き。

だが、そこには俺達が居ないワケで――。

 

『……ぎゃぁあああああッ!!?』

 

壁にぶつかり、後ろから来た人間や自動人形達に押し潰される先頭の黒服達。

そこはもはや人間ピラミッドが崩れた後みてーになってた。

ハッ、ざまーみやがれ。

 

「お、おい!?餓鬼共が居ねーぞ!?」

 

「ど、何処行きやがった!?」

 

「何ッ!?貴様等何を言っているッ!?」

 

その人間が積み重なった中で、俺達が居ないと理解した手下が叫び、氷村がソッチに怒号を送る。

まぁいきなり人間が居なくなったら興奮もするわな。

 

「……え?」

 

そして、それは敵側だけじゃなくて味方もだ。

アリサ達を脇に抱えてる俺の後ろから、今しがた叫んでいた忍さんのポカンとした声が聞こえてくる。

背中に視線を感じるから、多分俺を見てんだろうな。

良し、ここらで喋りますか。

俺は息を吸い込んで、俺達の反対を向いて喚いてる氷村達に向かって口を開く。

 

「――何処見てんだよ、マヌケ」

 

「ッ!!?」

 

俺の声に反応して振り返る氷村。

その表情には驚愕と畏怖、そして得体の知れねえモノを見る怯えがあった。

その表情に満足した俺は、両脇に抱えているアリサ達を地面に降ろしてやった。

しかしコッチもまぁ、随分ポカンとした顔してんなぁ。

 

「バ、バカな……!?き、貴様ッ!!どうやってソコに移動したッ!?」

 

「んー?別に大した事してねーぜ?…………只、9秒程『時間を止めただけ』だ」

 

『『『『『ッ!?』』』』』

 

気軽に放った俺の言葉に、室内に居る人間が息を飲んで驚愕する。

後ろに居る忍さん達も同じくだ。

 

「そ、そんな事出来る筈が……ッ!?」

 

俺の言葉を即座に否定しようとする氷村だが、さっきから俺が起こした不可解な現象を見ていた所為で否定しきれなくなっている。

当然、頭の氷村が恐怖すればそれは末端まで伝わり――。

 

「も、もう嫌だ……!?あんなバケモン相手に出来るか!!俺は抜けるぞ!!」

 

「お、俺も!!」

 

「た、たた助けてえぇぇぇえ!?」

 

組織ってヤツは簡単に崩壊する。

武器を構えていた黒服の手下達は、皆一様に悲鳴を挙げて逃げようと動いた。

しかし、この部屋の唯一の入り口は俺達の背後にある扉だけ。

それでもこの場から逃げたい黒服達は、なんと部屋の窓に向かって殺到する。

ここは2階で高さもそこそこあるってのに、そんなにまで俺から逃げてぇのかよ?

まぁ逃がすつもりは無えけど?

ココで逃げられて、後から復讐なんてされんの面倒だしな。

コイツ等にゃ大人しく捕まってもらう。

俺は逃げようと窓に殺到する連中を見据えながら両手を地面に付け――。

 

「凍り漬きなッ!!『ホワイトアルバム』ッ!!」

 

超低温を操るスーツ型のスタンド、ホワイトアルバムを使用。

それでもギアッチョが最初にしていた様に普通の状態から使用してるから、周りの人間には俺が変わった様には見えないだろう。

俺の両方の手足が凍って見える事以外は。

 

ピキピキピキッ!!

 

『『『『『なッ!?』』』』』

 

だが、目の前にある空気を凍らせながら奔る氷の軌跡は見える。

見ている人間が突如現れた氷の動きに驚愕してる最中、そのまま氷を黒服達まで奔らせ――。

 

「ひッ!?ぎ、ぎゃぁぁあ!?俺の足がぁああ!?」

 

逃げようとした連中の両足を氷漬けにしてやった。

更に氷は部屋の四方に奔り、この部屋の抜け穴である窓を全て分厚い氷で包む。

厚さは大体50センチぐらいだから、簡単にゃ割れねぇだろう。

 

「人様を攫っておいて、勝手にケツ捲るってのは無しだろ?オッサン達よぉ」

 

逃げようとした連中にそう話し掛けながら、俺はホワイトアルバムのみを解除。

そのまま驚いている氷村を視線に捉えて口を開く。

 

「さっきも言った筈だぜ?――『順番にブッタ斬ってやる』ってなぁ?」

 

「ッ!?じ、自動人形達ッ!!あの餓鬼を殺せッ!!イレインッ!!お前は僕を守れッ!!」

 

俺の言葉に寒気を覚えたのか、氷村は震えながら俺を指差して自動人形達に指令を送る。

奴等には感情が無えんだろう。

この部屋に飛び込んできた5体、そして氷村の側に控えていた奴が1体。

計6体が俺に猛然と襲い掛かってくる。

 

「ッ!?君ッ!!下がるん――」

 

それを見た恭也さんが俺と自動人形達の間に割って入る前に――。

 

「しゃらくせぇ……銀の戦車(シルバー・チャリオッツ)ッ!!」

 

銀色の騎士甲冑を模したスタンド、シルバーチャリオッツを呼び出し、目にも止まらぬ速さで剣を縦横無尽に振るった。

チャリオッツは全スタンド中、攻撃の速さに関しては限りなく上位クラスだ。

何せ軌道さえ分かってれば、光だって切れちまうんだからな。

そんなチャリオッツがフルスピードで剣を振る結末。

 

ズバババババッ!!

 

「ッ!?……これは」

 

そんなモン、受けたら只じゃ済まねぇよな?

自動人形達が俺に剣を振るう前に、全体チャリオッツに細切れにされ、自動人形達は空中で分解、ガシャガシャとやかましい音を奏でながら地面に落下していく。

俺はその様を見届けてから、俺の直ぐ後ろに居る恭也さんに笑顔を見せる。

 

「心配してくれてどうもッス……でも、あの程度の奴等なんかどうって事無いんで……」

 

そこで言葉を切った俺は、後ろでポカンとした表情で固まってるすずか達に視線を送る。

 

「今はアッチの人達を守ってあげて下さい。あのままじゃ危ないと思うんで」

 

「……君は、一体……」

 

「俺?俺は只の……まぁ、平たくいやぁ超能力者ってヤツっすね」

 

「ち、超能力?え、HGSの事か?」

 

「あー、いえ。俺は別にHGS患者じゃ無いっすよ?」

 

恭也さんの確認する様な言葉に、俺は否定の意を返す。

今のHGSってのは高機能性遺伝子障害病とかいう長い病名の略称で、通称HGS患者とも言われてる。

このHGSってのは先天的に、そして極稀に発生する奇病の一つで患者は超能力が使える様になるそうだ。

特徴としては能力を使うと背中に翼が現れるらしい。

まぁ俺には関係無い話しなのでこの編で終わらせる。

 

「とりあえず、俺は大丈夫なんであの2人を守ってあげて欲しいんです。ゴミは俺がササッと片付けますんで」

 

「いや、あの氷村の横に控えているヤツは違う。あれはイレインと言って、恐らく最強の……その……」

 

ん?あのイレインってのは自動人形じゃ……あぁそっか、俺が夜の一族ってヤツの秘密を知らないと思ってんのか?

 

「自動人形ってヤツなんでしょ?」

 

「ッ!?き、君ッ!!何でそれを知ってるのッ!?」

 

重い雰囲気の恭也さんの代わりに答えたら、すずかを抱きしめていた忍さんが驚愕の声を俺にぶつけてきた。

ソッチを見れば、すずかは忍さんに抱きしめられている腕の中で顔を真っ青にしている。

 

「あぁ、さっきあの氷村とかいうマザコン野郎が自慢気に語ってたモンで……『自分達の血筋』とやらも」

 

『『『『『ッ!?』』』』』

 

俺がそう返すと、俺の言葉を聞いた5人は驚き、俺に真剣な表情を向けた。

 

「……聞いたのね?私達の事も?」

 

「はぁ……同じ夜の一族ってのは聞きましたけど?」

 

「そう……こんな事、今聞く事じゃ無いのは分かってるんだけど……なら、君は怖く無いの?」

 

「は?……何がっすか?」

 

一体忍さんが俺に何を聞きたいのかトンと掴めず、俺は忍さんに聞き返してしまう。

だが忍さん達は、俺の聞き返しに深いな表情をせずに真剣な表情のままだ。

 

「私とすずかが夜の一族……つまり吸血鬼でも怖くないのかしら?」

 

「……」

 

その余りにも真剣な表情で語られる話しに、俺は口を噤んで忍さんの話を黙って聞く。

 

「私達は貴方達人間とは違う……定期的に血を吸わなきゃ生きていけないし、魔眼なんて危ないモノ、それに不老に近い寿命があるの……そんな人達の側に居て、味方しても、君は怖くないの?」

 

忍さんが話す内容……つまり自分達を受け入れてくれるのかって話しだろう。

あれだけ取り乱すって事は、彼女達は本当に全てを秘密にして生きてる。

そうじゃなきゃこのご時世、吸血鬼だなんて事がばれでもしたらあっという間に研究材料にされるか、魔女狩りが横行する。

だから忍さんは改めて聞いたんだろうな。

そう考えていると、忍さんに抱きしめられてるすずかがチラチラと伺う様な視線を俺に向けてくる。

アリサも黙ってはいたけど、俺がどう答えるか心配な様だ。

まぁこの人達とは完全なる初対面だし、俺を信じきれねぇのも無理はねぇが……。

 

「聞きたいんスけど、良いスか?」

 

「……何かしら?」

 

そんなモン今更だろうよ?

俺の質問返しという対応に少し不満気な顔になるも、忍さんは直ぐに表情を切り替える。

 

「寿命が長い、血を吸う、強い肉体と頭脳……それだけッスか?」

 

「……え?」

 

自分の聞いた言葉が信じられないって表情を浮かべて、忍さんは小さく言葉を漏らした。

彼女の周りに居る他の女性達も同じ顔になってる。

でもまぁ、質問を止める気なんざ無いけどな。

 

「だから、それだけなんでしょ?夜の一族が持ってる力ってのは?……別に良いんじゃないッスか?」

 

「そ、それだけって……!?」

 

俺の軽い返しを聞いた人達の中から、すずかが声を張り上げて驚きを露わにする。

いや、たった3つだけならそこまで驚く事か?

 

「だってよ、俺は今みてーな力を百個近く持ってんだけど?」

 

『『『『『ッ!?』』』』』

 

100、その数字は俺の持つスタンド全能力の大体の数だ。

それだけの異能を持つ俺からしたら3つや4つなんて軽過ぎるぐらいだぞ。

 

「凍らせたり、弾丸を弾いたり、切り裂いたり……さっきの瞬間移動もそうだ。アレはホントに時を止めてんだぜ?」

 

「で、でも……」

 

俺の言葉を聞いたすずかは尚も反論しようとしてくるが、俺はソレに取り合わず再び氷村達の方へと視線を向ける。

 

「悪いけど、俺からすりゃそんだけの力でバケモンなんて呼べねぇよ。それにだ……」

 

すずか達に背を向けた俺は、目の前に居る氷村に対して指を指し、続きを語る。

 

「俺にとっちゃバケモンとかってのはな、テメーの欲の為だけに力を振るうゲス野郎。んで、自分の為に弱者を踏み躙る奴の事は……『悪』って言う……それだけだ」

 

「城戸君……」

 

そこまで言っても、すずかの弱々しい声は変わらない。

なぜなら、俺はまだ決定的な事を言ってないからだ。

本当はその先はすずかの親友のアリサとかに言って欲しかったんだけどなぁ……アリサはもうすずかをバケモノじゃ無いって言っちまったし……しゃあねぇか。

 

「以上、俺の定義からすれば、お前……月村はバケモノじゃねぇ。親友の為に泣ける月村は、間違い無く『優しい人間』だ」

 

「ッ!?」

 

「初対面の俺が言っても説得力の欠片も無えだろーが……俺はそう思ってる……それだけだよ、コッチに味方する理由なんてな……ちっぽけなモンだろ?」

 

俺はソコで言葉を切り、氷村に向かってゆっくりと歩を進める。

もう黒服の手下達は指を切って再起不能か、足が氷漬けになって動けないかの二通りしか居ない。

サッサとこの面倒くせえ事件を終わらせて帰る。

今日新発売のユーロビート、早く聴きてぇからな。

 

「こ、このバケモノめッ!?イレインッ!!この小僧を始末しろッ!!は、早くッ!!」

 

「……了解」

 

俺が近づく事に焦った氷村は、遂に今まで護衛をさせてたイレインへ指示を出し、最後のジョーカーを切った。

氷村の指示に従って俺へと跳躍し、上から向かってくるイレイン。

俺はそれを見上げながら只歩き、チャリオッツを呼び出した。

 

ギィインッ!!

 

「……」

 

イレインが無表情のまま繰り出した斬り込みをチャリオッツの剣で受け止め弾く。

その弾き返しと共にイレインは後方へ跳躍。

着地と同時にもう一本剣を取り出して真正面から俺に迫る。

二刀流か……。

イレインの行動を冷静に見届けつつ、俺はチャリオッツの剣を更に加速させて防御の体勢を取らせた。

どのぐれえの速度が出せるか、一つ見せてもらおうか。

 

「……」

 

そして、真正面から俺に繰り出される連撃の数々。

その速度たるや、ゴウッという風切り音を発生させる程に速い。

しかもそれだけ力を籠めてるにも関わらず、動きはしなやかで鋭かった。

並の人間、いや上の人間でも厳しいかもしれねぇ。

……ただまぁ。

 

「へぇ~?……中々に素早いじゃん?」

 

「……」

 

チャリオッツの剣速にゃ程遠いがな。

俺の視点からすりゃ、チャリオッツの剣でイレインの斬撃を一つ一つ弾き返してるだけなんだが、スタンドが見えない人間からすればイレインの斬撃が金属に当たる音を奏でながら、俺の前で悉く阻まれてる様に見えるだろう。

両手をポケットに突っ込んだ体勢で迫る斬撃を全て余裕の笑顔で見つめる俺。

敵からしたらこの上なく不気味な光景だろーな。

 

「す、すごい……!?」

 

「こんな事が……イレインの剣は俺でも見切るのは難しいというのに……」

 

「……あんな力が百個もあったら、確かに私達なんて『それだけ』扱いにされちゃうわね」

 

何やら後ろから色々と驚愕やら呆れの含まれた話し声が聞こえるが無視無視。

 

「イ、イレイン何をしているッ!?餓鬼1人すら満足に殺せないのかッ!!この鉄屑めッ!!」

 

そんな時、今までイレインに守られてただけの氷村が情けなさ全開の言葉をほざき始める。

オイオイ、自分はさっきから後ろで安全に見てるだけの癖してあんな言い様は無ぇだろ……まぁ、コイツの力はもう充分分かった事だし……。

 

ギャインッ!!!

 

「……ッ!?」

 

俺はチャリオッツにイレインの剣撃を真上へと弾き飛ばさせる。

そこで少しだけ表情を驚きに染めるイレイン。

剣を弾き飛ばす事で、防御どころか完璧な隙が出来たイレインを――。

 

「カッ飛びやがれ」

 

ドバァアアッ!!!

 

「……ッ!!!??」

 

突きからのタックルで、部屋の反対側の壁まで吹き飛ばしてやった。

うし、こんなモンで良いだろ。

とりあえずイレインを吹き飛ばしてやった俺は、それを呆けた面で眺めている氷村に体と視線を向ける。

 

「テメエよぉ。さっきから後ろで偉そーに指示してるだけじゃなくて、少しは自分で体張ったらどうなんだ?それともさっきあの子が言ってた様に、ママが居なきゃ何も出来ねえマンモーニ(ママッ子野郎)なのかよ?なら待っててやるから呼んだらどうだ?『ママァ、助けて~、皆が苛めるんだよぅ~』……ってな?」

 

「ブッ!!……く、くくくっ!?」

 

「ア、アハハッ!!そ、想像しただけでお腹が……アハハハッ!!!」

 

「ゆ、遊がママとか……!?ピ、ピッタリ過ぎて駄目……ッ!?」

 

後ろに居るであろうアリサを親指で指しながらニヤニヤした笑みで氷村を侮辱すれば、後ろから耐え切れず吹き出す声が聞こえてくるではないか。

ともすれば、皆の笑い声を聞いて、奴は顔を真っ赤にして俺を睨みつけてきた。

 

「ふ、巫山戯るなッ!!誰がそんな事を言うかッ!!大体、貴様等の様な下等種の相手を僕がするなど(ズバァッ!!)ヒイィッ!?」

 

まだ状況が理解出来ずそんな事をほざいてる頭のおめでたい氷村に、俺はチャリオッツを一度戻してから、右手に拳銃型スタンド、『皇帝(エンペラー)』を出して氷村の頬を掠める様に撃ってやる。

 

「だったらブルッてねぇでかかって来いよ?コッチはさっきから待ち草臥れてんだ。サッサと帰って新発売のCD聴きてぇんだよ。ホレッホレッ」

 

言葉に合わせて2発、エンペラーから打ち出すスタンドエネルギーで出来た弾丸。

それは氷村の頬を掠める様に当たり、奴は恐怖で腰を抜かしていた。

ここまでくりゃ、もう何時でも確保は可能……。

 

ボゴアッ!!

 

「あ?……ほぉ~?これはこれは……」

 

「……」

 

重たい物がどかされる音が鳴り、そっちに目を遣れば、そこにはイレインが居た。

俯いて表情は分からねぇが、イレインの脇腹にはチャリオッツの剣で開けた風穴が開いていた。

そこから火花を散らしながらも歩く姿は、ハッキリ言って痛々しい。

さすがに俺もその様を見て顔をしかめた。

 

「……言っても無駄だろーけどよ。もう止めといたらどうだ?こんなクソに義理立てする必要も無えだろーに?それに、そんな様じゃ俺のシルバーチャリオッツには勝て「……るせぇ」……は?」

 

喋ってる途中で割り込まれた言葉に、俺は疑問の声を出した。

すると、今まで俯いていたイレインの顔がガバッと起き上がり――。

 

「うるせぇんだよこのクソガキがぁああああああッ!!」

 

憤怒と言っても差し支えない表情を浮かべたイレインの顔が見えた。

おいおい……さっきまでの無表情でクールな雰囲気は何処行ったんだよ?

 

「まさか……感情の暴走!?」

 

そのイレインの様子を見た忍さんは驚愕の声を出している。

チラッと振り返れば殆どの人間がそうだ。

暴走、ねぇ……そんな事もあんのな。

他人事の様に考えつつ視線を前に戻して、俺に怒りを向けるイレインを見据える。

 

「あたしの体をこんなにボロボロにしやがってッ!!バラバラに刻んで豚の餌にされるか、生きたままジワジワと感電死するのとドッチが良いか選べぇえッ!!!」

 

そう言うと、イレインは片手にバチバチとスパークを散らす鞭の様なモノを構えながら瓦礫から這い出し、俺に牙を向いてくる。

しかしまぁ、豚の餌ねぇ……メイド服着てるモンが言う台詞じゃねぇな。

 

「気をつけてッ!!ああなったイレインは更に強くなってるわッ!!恭也ッ!!」

 

「分かってるッ!!君ッ!!俺がイレインの相手を……」

 

イレインがキレた所で忍さんから忠告が飛び、恭也さんが俺の前に出ようとする。

 

「あー、良いッスよ。俺1人でやりますから」

 

だが、俺は前に出ようとしてた恭也さんに待ったを掛ける。

別にさっきの4倍とかその程度なら問題ねぇしな。

 

「な、何を言ってるんだッ!?君はイレインの事を甘く考えているッ!!アレはそんな相手じゃ無いんだッ!!」

 

しかし、ここでも待ったを掛けた俺に対して、遂に恭也さんは怒鳴り声を挙げて俺を叱ってきた。

それは俺が聞き分け無いからってだけじゃ無く、純粋に心配してくれてんだろう。

その心意気は嬉しい……けどなぁ。

 

「スイマセンけど、俺の射程距離内に入られたら、余計やり難いッス」

 

「ッ!?」

 

冷酷な様だけど、俺は敢えて恭也さんに冷たく返す。

さっきの剣の応酬に驚いてた様じゃ、チャリオッツの間合いで速い動きは出来ねえと俺は考えた。

それだと、俺も攻撃がやり難くて、コンビネーション処じゃ無くなる。

ハッキリ言えば、恭也さんが入ると足手まといなんだ。

それが俺の言葉から伝わったんだろう。

恭也さんは悔しそうな、それでいて済まそうな顔で俺を見ていた。

 

「……済まない……確かに、君の持ってる力の前では、俺は力不足だ」

 

「謝らんで下さい。俺だって失礼な事をバンバン言ってるんスから」

 

何せ助けようとしてくれた相手に邪魔宣言だからなぁ……罪悪感パネェ。

とりあえず、サッサとこの人に謝る為にも、イレインと氷村を片しますか。

悔しそうな顔をしてる恭也さんから視線を外して、ギラギラした目付きのイレインを見直す。

 

「選ばせてやるねぇ?随分お優しいじゃねぇか?……ククッ……しかし、感電死させる?切り刻む?俺を?クククッ……そのスロー過ぎる剣の腕前でかぁ~?ククククッ……笑ったモンか、欠伸したモンか、コイツは迷うッ迷うッ」

 

ブチッ!!!

 

「――野郎ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!!!!」

 

俺のバカにした物言いに、イレインの頭から何かが千切れる音が木霊した。

そこから般若の様な表情で俺に襲い掛かるイレイン。

俺はそのイレインに対して、自分から突っ込んでいく。

 

「どのくれぇーお前の剣が……ノロイか……」

 

既にチャリオッツの射程距離には充分入ってる……なら――。

 

「たっぷりとよぉー……味わせてやるッ!!」

 

斬る以外にする事は無えよな?

自分のリーチに入った瞬間、イレインは剣と鞭を最速の速さで振るった。

それは今までの剣速を遥かに上回る程に速い。

感情の爆発だけでそこまでイケるなら大したモンだが――。

 

「うりゃっ」

 

俺のチャリオッツにゃ届かねぇ。

 

ドババババババババババババババババババババッ!!!

 

奴の剣が到達するより速く、シルバーチャリオッツはレイピアを突きの形で連打し、イレインの体に風穴を大量に増やしていく。

だが、それはすれ違い様に起こした剣の動きであり、常人には絶対に見る事は出来ない。

最も、スタンド自体が一般人には見えないから、どっちにしても誰も拝めないけどな。

そして俺とイレインの動きが交差し、双方が地面に着地した瞬間、イレインは体を回転させて俺の無防備な背中を狙うが――。

 

ポロッ……。

 

「なッ!?」

 

俺に向けた片手の鞭。

その先端が小さく切断されて床に落ちると、それを過輪切りに次々と鞭の先端が落ちていき――。

 

ドバァアアッ!!!

 

「……」

 

イレインの体中に、レイピアの大きさの風穴が100を下らねぇ数程、一斉にブチ開けられた。

崩れ落ちるイレイン、そして傷一つすら刻まれていない俺。

その結末に誰もが呆然とする中、俺はゆっくりとイレインに視線を向け――。

 

 

 

「分かった?このぐれぇーーノロイんだよ」

 

 

 

勝者の余裕という物を見せつけてやった。

さて、これで残るは氷村だけなんだが……。

 

「く――くそぉおおおおおおおおおおッ!!?」

 

「ん?……や~れやれ、ここまで情けねぇとは……」

 

あろう事かその氷村、部下も自動人形も全て見捨てて見げようとしてやがった。

俺がイレインと戦ってる間に部屋の外れに移動し、氷で塞がれた窓じゃなくて、忍さん達の後ろにある扉に向かおうと走っている。

その先には恭也さんが居るし、只の自棄を起こした様だが……。

 

 

 

 

 

 

コレは気に入らねぇよな?

 

 

 

 

 

俺はシルバーチャリオッツを戻し、直ぐに別のスタンドを呼び出す。

新たに呼び出したスタンドは、チャリオッツとは大分雰囲気が違う。

一見すればロボットの様に見える頭をした、逞しい人型のスタンド。

方にはゴツイタイヤの様な肩当てと、ソコに付いた刺。

そして体の至る所に刻まれた$と¥の紋章。

明らかに違う左右の手の平の模様。

 

 

 

そう、右手で掴んだモノを『削り取って』しまう恐ろしい能力のスタンド。

虹村億泰の『ザ・ハンド』だ。

 

 

 

俺はザ・ハンドを呼び出してから、走っている氷村に照準を合わせる。

まぁ角度的にこの位置で良いだろ。

 

「そこをどけッ!!貴様等ぁああああッ!!」

 

そんな事をほざきながら走る氷村に向かって、ザ・ハンドは右手を振り被る。

 

ガオォオンッ!!!

 

振り下ろされた右手の軌跡に沿って『削り取られた空間』。

その空間が閉じると――。

 

パッ!!!

 

俺が氷村の頭上に『瞬間移動』する。

そのまま俺はザ・ハンドを操り、足を大きく振り被った体勢を維持。

 

「オイオイ。最初に言ったろ?」

 

「なッ!?」

 

俺の声に反応して氷村が見上げた先には、ポケットに両手を突っ込んだままニヤリと嘲笑う俺。

いきなり現れた俺を見て驚きの余り声を失う氷村に、俺は――。

 

 

 

 

 

逃がしゃしねぇ―――ってよ?

 

 

 

 

 

ザ・ハンドの足を思いっ切り氷村の顔目掛けて振り下ろさせた。

 

バギィッ!!

 

「ぶげぇっ!!?」

 

ザ・ハンドの蹴りを顔面にモロで受けた氷村は情けない豚の様な悲鳴を挙げて地面に叩き付けられる。

俺は倒れ伏す氷村の目の前に、ポケットに手を突っ込んだまま着地して――。

 

バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ

バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ

バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキ

バキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキバキイィッ!!

 

上からザ・ハンドに踏みつけのラッシュを繰り出させた。

 

「とらえたぜぇーーーッ!!!ダボがぁーーーーーーーッ!!!!!」

 

手違いで攫われた怒り、散々っぱらバカにしてくれた怒り、女の子を泣かした怒り、その他諸々の容疑で蹴り潰してやるぜこのダボがぁーーーーーッ!!

上からアスファルトの床に叩き付けられて満足に悲鳴も挙げられない氷村を只ひたすら蹴りで蹂躙し――。

 

「フンッ!!!」

 

ドグアァッ!!!

 

「ゲボッ!?」

 

最後は浮かしてからの膝蹴りで部屋の隅までブッ飛ばしてやった。

ふい~……良いストレス発散になったなぁオイ。

目の前でポカンとした表情を浮かべる恭也さん達を無視して、俺は今もホワイトアルバムの氷で固定されてる男女の集団に目を向ける。

それはもう最高に良い笑顔で、だ。

俺の笑顔を見た黒服達は、涙と鼻水でグチャグチャになった顔を恐怖で染め上げている。

そんな哀れ過ぎるコイツ等に、俺は――。

 

 

 

 

 

「さあ~て諸君?いっちょ人間の耐久性の限界に挑戦してみようじゃねぇか?」

 

 

 

 

 

一切の慈悲を持たねぇ。

 

 

 

 

 

全部が終わった、というか恭也さんからストップが掛かった頃には、顔面の膨れてねぇ黒服達は誰も居なかったとさ。

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。