ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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遅くなりました。

最近クルマをイジる、小説を書く前の生活に戻り気味……。

でも、これからも書き続けます。

そして遂に、お気に入りが2000件突破ッ!!

嬉しすぎて、酒ッ!!飲まずにはいられないッ!!





あなた達生きてる『人間』が目の前の人の『誇り』と『平穏』を取り戻さなければ、一体誰が(ry

「あー、痛てて……派手に人の身体傷付けやがって……こちとら9才児だぞバカヤロー」

 

「だ、大丈夫かい、ジョジョッ!?」

 

「大丈夫な訳あるかっての……こんだけ派手にやられるなんて初めての経験だよ、クソ」

 

駆け寄って俺の身体を労わる様に優しく支えるアルフに悪態を吐きながら、俺は意識を集中させる。

クレイジーダイヤモンドだけで戦わずに他の方法考えりゃ良かったぜ。

でもあの弾幕の所為で防御も攻撃もできる近距離パワー型のスタンドに限定されたからなぁ。

堂々と戦うよりも不意打ちに奇襲をしておけば、こんな痛い思いせずにすんだってのに。

 

「まぁ、済んだ事を言っても仕方ねーか……来い、キュアー」

 

痛みに顔をしかめながらも呼び出した兎の様な姿のスタンド、『ザ・キュアー』が俺の身体の『痛み』という概念を吸い出していく。

その効果で俺の傷はみるみる内に塞ぎ、遂には綺麗に元通りの姿になった。

ザ・キュアーは対象の『痛み』や『悩み』を吸収して癒すウサギのような姿のスタンドだ。

まぁ無制限って訳じゃなくて、吸い取った分の痛みや悩みはキュアーに蓄積されていく。

俺の普段の生活の中で直ぐに発散されていくから、問題は無いけどな。

しかもコイツは痛みという概念、つまり病気すらも吸い出してしまえる、究極に近い治癒能力がある。

まぁ千切れ飛んだ服までは再生出来ないので、そこはクレイジーダイヤモンドの能力を使うしかないか。

そうして完全回復した俺に、アルフは安堵の息を吐くだけで特に驚かなかった。

まぁアルフからすれば今まで何度も自身の身体を治して貰ってるから、その能力を自分に使ったと思ってんだろう。

本当はクレイジーダイヤモンドは自分の傷は治せないんだがな。

 

「さて、遣り過ぎな教育ママはブッ飛ばしたけど……この後はどうすんだ、アルフ?」

 

「……アタシは、このままフェイトを連れて何処か知らない所に逃げたいけど……」

 

「テスタロッサはそれを良しとしない、か?」

 

「……うん……フェイトにとっては、あんな鬼婆でも母親だからさ……多分、無理矢理連れて行っても、フェイトは一人でこっちに戻ろうとすると思う」

 

「まぁ、そうだよなぁ……」

 

身体を回復させて、これからの事をアルフと話すが、ハッキリ言って状況は全く変わってない。

テスタロッサとプレシアの問題に関してはまるっきり何もしてないのが現状だ。

俺としてはプレシアにジュエルシードを使うのを禁止して、俺と俺の家族に攻撃するなとへブンズ・ドアーで書き込めばそれで終了ではある。

しかしそれではこのテスタロッサ一家の確執は放置になってしまう。

どうしたモンか……あえて相馬に全部押し付ける?まぁそれで何とかなりそうな気もするんだが。

プレシアの目的は確か、自分の娘を生き返らせるってのだったし……本当にどうしたもんか。

 

「……とりあえず、どうにかしてテスタロッサを管理局に攻撃しない様に止めなきゃ駄目だろ。これ以上罪を重ねたらどうなるか――」

 

ボゴォオンッ!!

 

「うわっ!?危なッ!?」

 

と、これからの事を口にしようとした俺の直ぐ近くの壁が崩れ落ちた。

ガラガラと音を立てて崩れる壁から、俺とアルフは急いで退避する。

何事かと崩れた壁に目を向ければ、そこには奥へと続く空洞が広がっていた。

 

「何だこりゃ?まるで隠し部屋じゃねーか」

 

「あービックリした。鬼婆の奴、この部屋にこんな場所を作ってたなんて……ん?奥に何か――」

 

「……どうした?何かあるのかアルフ?」

 

驚きながらも俺達はその空間に視線を向けて中へと踏み行る。

しかし俺の前に立っていたアルフが途中で言葉を切り、その場に立ち尽くしてしまう。

おいおい、一体どうしたってんだよ?

突然停止したアルフの様子が気になって、俺は横に避けて部屋の奥へ視線を向け――。

 

「……OH MY GOD」

 

その部屋の中央に鎮座した巨大なカプセルを目にして、そんな事を口にしてしまう。

何せカプセルの中には、テスタロッサにそっくりな女の子が『入っていた』のだから。

 

「……フェイ、ト?」

 

その場に立ち尽くしたまま呆然とした声で、アルフは自分の主の名前を呟く。

カプセルに満たされた緑色の液体の中で浮いている女の子は、本当にテスタロッサの生き写しだ。

しかし微妙に違う所があるとすれば、体格がテスタロッサよりも幼い。

とすれば、この女の子はテスタロッサでは無いって事だ。

つまりこの子こそが、プレシア・テスタロッサの実の子供のアリシア・テスタロッサって事だろう。

プレシアが管理局を敵に回して、それこそジュエルシードが齎す被害に遭う人達すら意に介さず、蘇らせようとした娘。

……そりゃあさ、この庭園の何処かにアリシアって子が安置されてるってのは相馬から聞いてたぜ?

でもまさかこんな形の安置方法とは思いもよらねぇよ。

盛大な溜息を吐きながらカプセルの中に浮かぶアリシアに視線を向け――。

 

 

 

『――む~。女の子の裸見て溜息なんて、失礼な子だよ』

 

「こんな小せえガキの裸見て何が楽し――ん?」

 

 

 

俺達の『頭上』から響く声に、意識を持っていかれた。

……え?ちょっと待て?何で俺達の頭上なんだ?っていうか俺は誰に返事を返した?

誰も上に入る気配なんてしねーし、アルフも今の声が聞こえてないのか、ただ呆然とアリシアのポッドを眺めてる。

って待て、アルフが気付いていない?こんな大きな声だっていうのに?……ま、まさか。

こういった現象に覚えのあった俺は、ゆっくりと視線を天井へと向ける。

 

『……え?』

 

そこには、俺のスタンドと同じ様に希薄な存在が浮遊していた。

薄い水色のワンピースを身に纏い、長い金髪をリボンでツインテールにした少女。

彼女は上を見上げた俺と目が合った事が信じられないのか、ポカンとした表情で俺を見ている。

え?もしかして……アリシア・テスタロッサ?……マジ?

 

『……もしかして、見えてるの?』

 

「……」

 

『やっぱり見えてるし、聞こえてるんだねッ!?うわー、人と目を合わせるのは久しぶりだよッ!!』

 

若干背後が透けて見えそうなビジョンのアリシアは俺と目を合わせたままに俺の目の前へと降り立つ。

俺がキチンと動きを目で追うのを確認したアリシアが、嬉しそうに笑顔で俺の目の前を浮遊している。

一方で俺はそんなアリシアを目で追いながら、口をあんぐりと開けてしまう。

マ、マジか……ッ!?まさか『幽霊』になってるなんて思いもしなかった……ッ!?

相馬の言ってた通り、カプセルの中のアリシアが死んでるって事は、目の前のコイツは幽霊って事にな――。

 

『ッ!?危ないッ!!』

 

ビュンッ!!

 

「ッ!?ザ・ハンドッ!!」

 

ガオンッ!!

 

不意に背後から感じた気配と、切迫したアリシアの悲鳴。

俺は急いで振り返り、背後から迫る魔力弾を、ザ・ハンドで削り取った。

その一連の動きでハッ意識を戻したアルフが振り返る音が、背後から聞こえる。

っぶねぇー……間に合ったから良かったけど、ザ・ハンドの手がもう少し遅かったら喰らってたぞ。

右手だけを瞬間的に呼び出していた状態からスタンドを解除して、俺は襲撃者に目を向ける。

ボロボロのドレスに今も折れそうな杖、そして顔と口元から赤い血を流す般若の様な表情の女性。

 

「……遂に……見てし、まった……わね……ッ!!……見てはなら、ないモ……ノ、を……ッ!!」

 

『母さんッ!!』

 

「あ、あいつまだ……ッ!?」

 

「テメー……ちっ、しぶとい奴だぜ」

 

俺がさっき再起不能にしてやった筈のテスタロッサの母親であるプレシアが、憤怒の表情で俺達を睨み付けている。

床を赤い血で汚しながらも歩くプレシアの目は、一切の力を失っていない。

それどころか対峙した時よりも遥かにギラついてやがる。

おいおい……あの攻撃喰らって立てる筈が無えだろ?どんな精神力してやがる。

 

「ハァ、ハァ……その中に居るのが…………私の――『娘』よ」

 

「む、娘?……アンタの娘は、フェイトだけじゃ――」

 

「――あんな『出来損ない』とッ!!!がふっ!?……ゼェ、ゼェ……あ、あんな……ッ!!あんな『人形』とアリシアを、一緒にするんじゃないッ!!!」

 

「ッ!?に、人形……だとぉッ!?」

 

『お母さんッ!!そんな酷い事言わないでッ!!それに身体が……ッ!!』

 

壁に寄り掛かるプレシアの出した言葉。

それに意を唱えたアルフの言葉に、プレシアは吐血しながらも叫んだ。

口元から流れる赤黒い血を拭う事もせずにこっちを睨みつける様は、かなり猟奇的だ。

その言葉にアルフは激昂して叫び返すが、プレシアはフンと鼻を鳴らして嘲る。

アリシアも俺の傍でプレシアに声を掛けるが、プレシアには全く届いていない。

……さっきこの子が言った様に、この場で声を聞けて姿が見えるのは俺だけらしいな。

やっぱりスタンド使いって事が関係してるんだろう。

実際俺も幽霊を目にするのはこれが初めてって訳じゃねえし。

 

「ふざけんじゃないよッ!!あの子は、フェイトは人形なんかじゃないッ!!アンタの実の娘だろうがッ!!」

 

「フン。何も知らない使い魔風情の癖に……なら、教えてあげるわ……貴女が言うあのお人形が、私の『娘じゃ無いって』理由を……ッ!!」

 

激しい怒りに身体を震わすアルフを、満身創痍ながらも小馬鹿にした表情で見やるプレシア。

彼女の口から放たれた言葉は、アルフを硬直させるには充分な威力を持っていた。

 

「あの子は……フェイトは、私が研究していた使い魔とは異なる使い魔を超える人造生命の精製。そして、死者蘇生の秘術、その研究……通称『プロジェクトF』で生み出された実験体、その第一号なのよ」

 

……空気が、凍った。

事の真相を聞かされたアルフは動きを止めて呆然とした表情でプレシアを見ている。

アリシアもプレシアの言葉を聞いて悲しそうな表情を浮かべていた。

俺は予め相馬から大体の話は聞いていたからそこまで驚いちゃいねーけどな。

 

「そん、な……フェイトが、あんたの娘じゃ……無い?」

 

「えぇ。私がアリシアを蘇らせるまでの代用品。あの子に与えたフェイトという名前も、プロジェクトの名前を与えただけに過ぎない……せっかくアリシアの遺伝子と記憶をあげたのに、そっくりなのは見た目だけの、役立たずな私のお人形」

 

「……」

 

『お母さん……』

 

忌々しいといった表情で昔を語るプレシアの様子を見て、アリシアは俺の隣りで悲しそうに目を伏せる。

アリシアの様子は俺しか見えていないので、プレシアは何も知らずに言葉を続けていく。

 

「アリシアは左利きだったのに、あの人形は右利きだった……ッ!!アリシアには魔力資質は殆ど無かったのに、お人形には膨大な資質があった……ッ!!……そんな、アリシアそっくりの見た目で私に笑いかける、アリシアとは別人のあのお人形の事が、私は――大ッ嫌いだったのよッ!!!」

 

「ッ!?……あの子は一生懸命、アンタの為に頑張って……管理局まで敵に回したってのに……ッ!!あんたって奴はぁああ……ッ!!」

 

アルフが牙を剥いて怒りを露にするも、それを受けるプレシアは忌々しいという表情を浮かべるだけだ。

 

「……でも、ジュエルシードが全て集まれば、全ては終わる……もう娘を亡くしてからの陰鬱な時間を、あの出来損ないの人形を娘扱いして自分を慰める必要も無くなる。ジュエルシードを使って地球を崩壊させるほどの次元震を起こせば、アルハザードに辿り着けるッ!!アルハザードならきっとアリシアを蘇らせる技術だってある筈よッ!!」

 

何とも狂気的な輝く目で、プレシアは虚空に向って吠え立てる。

アルハザード、ねぇ……相馬が言ってた『忘れられし都』だっけ?

現代科学やミッドチルダの科学をも凌ぎ、タイムワープや死者蘇生すら可能にしたっていう場所。

しかしもうずっと昔に次元断層とかいう未知の空間に沈んでから、その存在はおとぎ話って言われてるらしい。

そんな夢物語に縋ってまで、娘を生き返らせたいっていう『夢』は凄えと思うがよぉ……。

 

「何とも身勝手な理屈っすね」

 

血反吐を吐きながら慟哭を口にするプレシアに、俺は冷め切った視線を向ける。

俺の言葉を聞いたプレシアは俺を睨みつけ、アルフとアリシアも俺に顔を向けてきた。

もうなんか、聞く程にアホらしいって思えてきちまったな。

自分に振りかかる視線の全てを無視して、俺はプレシアを見続ける。

 

「娘を生き返らせたかった。そりゃ可哀想に思いますよ?あんな小さい時に死んじまって、生き返らせたいってのも分かるッス……でもなぁ~……」

 

まだ子供の居ない俺では、プレシアの味わった苦悩なんて欠片も分からない。

でもだからって、この魔女の全てを肯定するつもりはねえ。

 

「そういう思いでテスタロッサを産んでおいて、自分が思ったのと中身が違ったから苛め抜くってのは違うだろ?あぁ違うね、そりゃ単なる八つ当たりだ。おまけにあの子を生き返らせる目処がついたからハイさよならってのもふざけてる。お宅、人間を消耗品かなんかと勘違いしてね?アリシアって子が可哀想とは思わねーんですか?」

 

「……何故、アリシアが可哀想になるのかしら?例え見た目が一緒でも、アリシアとあのお人形を同列に扱うなんてするもんですか」

 

「へー?自分の愛娘の遺伝子と記憶を受け継いだ、謂わば『妹』みたいな存在の子を、自分の母親が虐待してる。オマケに虐待する理由が自分と違うからって理由なのに?」

 

俺は冷静に事実だけを述べつつ、冷たい視線を向けてそう言った。

同じ遺伝子情報を少しでも持って生まれたのなら、それはすべからく血縁であり親族に他ならない。

幾ら生まれが特殊であろうが人造だろうが、人を形作る『血』が同じなら当たり前の事だろう。

そんな妹みたいな存在を、最初の娘が生き返らせれるって分かった途端に捨てるだなんてのはなぁ……。

はっきり言って、その元となった子を幾らでも作り直せるから、気に入らないなら捨てられるっていう、命に対する侮辱でしかねぇだろ。

 

「っ――」

 

『そうだよお母さんッ!!私はフェイトが生まれた時に、フェイトの事を妹だって、お母さんは約束を守ってくれたんだって思ってたんだよッ!!なのに、お母さんは……ッ!!』

 

俺の質問という名の尋問……いや、心の傷を抉る言葉に、プレシアは目を見開く。

俺の隣りで聞こえない、届かないのを理解しながらも声を張り上げて母を非難するアリシア。

半透明な彼女の両目からは、零れそうな程の涙が溜まっている。

……まぁ、自分の母親が自分の妹を虐待してれば、普通はこういう反応するよな。

でも、これじゃあまだプレシアの傷を抉るには浅い。

 

「……知った風な口を聞くなッ!!坊やにアリシアの気持ちが分かるとでも言うのッ!?もう死んで声も届かなくなってしまったアリシアの気持ちがッ!!最愛の娘を喪った私の気持ちが、分かると言うのかぁああああッ!!?」

 

吐き出す血も、身体から流れる血も無視して叫ぶ、鬼気迫る表情のプレシア。

その悲しみと怨嗟、後悔に憤怒。

あらゆる負の感情が込められた慟哭に、アルフはたじろいだのか一歩下がる。

俺の傍に浮いているアリシアも辛いらしく、母親から目を背けていた。

……プレシアの境遇を知らない人間に、彼女の送った悲しい人生の事を話してみたとする。

間違い無く10人中9人は可哀想だと嘆くだろう。

最後の1人はもしかしたら他人の不幸は蜜の味だと清々しい笑顔で言い切る愉悦を愉しむ外道かもしれない。

鬼婆と罵っていたアルフでさえ、怒りと同情をゴチャ混ぜにした表情を浮かべている。

 

 

 

そして、問いを投げ掛けられた当の俺は――。

 

 

 

「は?んなもん知ったこっちゃ無えに決まってるじゃないっすか?」

 

 

 

はっきりと言って、『だからどうした?』としか思えない。

 

 

 

俺の答えが予想もつかなかったのか、プレシアはポカンと口を開けて呆然とした表情を浮かべる。

あのアルフでさえ、同じ様な表情を浮かべていた。

 

『お、お兄ちゃん……知る訳無いって……それは、ちょっと……』

 

唯一、俺の隣りで浮遊していたアリシアが引き攣った表情で俺を見てるぐらいだった。

俺はそんな視線の全てを無視して、面倒くさそうに耳を掻く。

 

「まぁさっきも言った様に、可哀想だとは思うし同情もしますよ?でもそれ以上は特に何にも思わないね。はっきり言ってお宅の不幸話は、俺に取っちゃ『夕食時にテレビから流れる不幸なニュース』と大差無いんすよ」

 

そのニュースを見れば可哀想だと思うし、犯人に対する怒りも生まれる。

でもそんなモンは時間が経てば薄れていき、終いにはそんな事もあったなぁって感じで終わる。

人間てのはそういう生き物だ。

誰も彼もが最終的には自分の人生を生きて、自分の生を終える。

なのに身近でも無い他の人間の生死の情報を、死ぬまで一生引き摺る人間なんて居るだろうか?

そんなのは手を掛けた下手人か、自分の所為でソイツが死んでしまったという理由がある場合だけだろ。

 

「俺は別にお宅が何をしようと、最初は放っておくつもりだったんだ……が」

 

ギラリ、とでも擬音が付きそうなぐらい、俺は目を鋭くさせる。

例え他人がどれだけ同情しようとも、俺にはこの女をブチのめす理由がある。

 

「さっきの地球を滅ぼすって言葉は頂けねぇ。あんたが可哀想だからって放っておいて、俺や俺の家族、友達に地球に住む人達がアンタの夢の為に殺されちまうってんなら……俺は喜んで、アンタの願いを踏み躙らせてもらうぜ?」

 

俺はその場でスティッキィ・フィンガーズを呼び出しながらプレシアを睨みつける。

他の方法で何かしらその道を模索してんなら、俺だって協力するのも吝かじゃないんだがな。

その上でテスタロッサとおばはんの不仲を解消する手助けだってしてやっても良い。

でもこのおばはんは遣り方を間違えた。だから俺の敵だ。

どんな大層な目的があろうと、『自分の目的の為に他人を犠牲にする事を厭わない』ってんなら、俺は容赦する気はねえ。

それは何も知らない無垢な者を自分の都合だけで殺す『吐き気を催す邪悪』な奴に他ならねぇからだ。

他人の命を踏み台にして自分の願いを叶えようとするプレシアは、俺的に可哀想でも何でも無い。

俺にとっちゃ只の『ゲス野郎』だ。

そんな奴を見逃す、若しくは手助けするなんて、自分も『悪』でしかない。

別に自分は清廉潔白な正義だなんて毛頭思っちゃいないし、俺はヒーローになんてなりたくねえ。

それでもまぁ……母ちゃんと父ちゃんが誇れる息子ぐらいには、なりたいんだよ。

 

「――き――きぃさぁまあああああああああああああああああああああああああああああああああッ!!!」

 

腹の底から絞り出される、地獄を彷彿させるおどろおどろしい叫び。

プレシアは充血した目を見開きながら杖を掲げ、俺にその牙を放たんと構える。

 

 

 

――まぁ。

 

 

 

『フンッ!!!』

 

バゴォオオオッ!!!

 

「――ぐ」

 

 

 

一度種が割れちまえば、どうとでもなる攻撃だがよぉ。

本来、スティッキィ・フィンガーズの射程距離の外にいるプレシアを叩く事は出来ない。

しかしそれもスティッキィ・フィンガーズの能力を応用すれば、この程度の距離なんて訳はねえ。

ジッパーで自身の腕を外して射程距離を伸ばし、さながらロケットパンチの如く飛翔したスティッキィ・フィンガーズの腕が、プレシアの頬をブン殴る。

 

「頭に血が昇り過ぎだぜ?お宅は最初から最後まで遠距離攻撃しかしてこなかっただろ?離れて攻撃するって事は、それが弱点……おばさんの攻撃を見てからでも充分対処できる程に、アンタは近接戦闘に『慣れて無い』……ノロい野郎だぜ」

 

ボォ~~ンッ!!

 

スティッキィ・フィンガーズの拳を受けてグラつくプレシアの体。

更に殴った部分にスティッキィ・フィンガーズの能力を発現させる。

すると、魔女の首が胴体から外れて宙を舞った。

プレシア……あんたの娘を想う気持ちがどれだけ尊くてもよ――。

 

「何をやったってしくじるモンなのさ……ゲス野郎はな」

 

手段が真っ当じゃなきゃ、結末なんてこんなモンだぜ?

悔しそうな表情で宙を舞うプレシアの首にそう言い放って、俺は腕を元に戻す。

それと同時に、プレシアの体は地面に崩れ落ちた。

 

「なっ!?ジ、ジョジョ!?何も殺さなくても――」

 

『いやぁあああああああッ!?お、お母さぁーーーんッ!?』

 

と、プレシアの首が外れて床に落ちた光景を見て、アルフが声を荒げる。

しかも俺にしか聞こえてないが、隣でアリシア?が叫ぶモンだから耳に痛え。

そういえばアルフにはスティッキィ・フィンガーズのジッパーが見えないんだった。

俺から見れば首にジッパーが付いてるけど、アルフからしたら首が綺麗に飛んだ様にしか見えないんだ。

 

「落ち着け。別に殺しちゃいねーよ。俺の不思議な力で首を外しただけだって……ほら?」

 

「う……ぐぅ……」

 

「ひぃッ!?や、止めとくれッ!?アタシはそういうの苦手なんだよーッ!!い、生きてるのは判ったから、ソレこっちに向けるなぁーッ!?」

 

『お母さんッ!?生きてるッ!?ホントに生きてるのッ!?』

 

俺がヒョイッと持ち上げたプレシアの首が苦しそうに呻くと、アルフは涙を流しながら後退った。

まぁ確かに、血反吐ブチ撒けたおばさんの生きた生首ってかなり怖いか。

 

「とりあえず、また反撃されたら面倒だから気絶させたんだよ。心配しなくても首は直ぐに戻すから待ってな」

 

『約束だよッ!?ちゃ、ちゃんと元に戻してよ、お兄ちゃんッ!!』

 

「??……ジョジョ、何処見て喋ってんだい?アタシはこっちだよ?」

 

「あー……まぁ、アルフには後で説明するわ」

 

アルフよりも取り乱し方が酷いアリシアと目を合わせて落ち着く様に促すと、アルフは訝しむ目を向けていた。

まぁアルフからすれば、俺は誰も居ない空中に話し掛けてるから仕方無いだろう。

面倒くせーから説明は放棄の方向でヨロ。

俺の隣で首を傾げるアルフを無視して、気絶したプレシアの首を体に取り付け直す。

元に戻った事に安堵したのか、隣で幽霊のアリシアが大きく息を吐く。

 

『ハァ~、びっくりしたぁ……まだお母さんには、こっちに来てもらう訳にはいかないもん』

 

その言葉は現実味が有り過ぎて洒落になってねぇよ。

何せ現役幽霊のお嬢ちゃんが言うんだもんなぁ。

そんな事を考えて苦笑しながらも、俺は直ぐ様ザ・キュアーを使ってプレシアの傷を治した。

さすがにこの出血量じゃ、放っといたらくたばっちまいましたってなりそうだし。

そして傷を治しきってキュアーを解除しようとしたんだが、何故かキュアーが俺の腹の上くらいのサイズまで膨れ上がっているじゃないか。

って、おいおいどういう事だ?あの程度の外傷なら、キュアーがこんなサイズまでなるのはおかしい。

ザ・キュアーは文字通り、他人の痛みや悩みを吸い取るのがスタンドの能力であり、吸い取った痛み、悩みはキュアーの中に溜め込まれる。

そして俺の日常生活の中で、体内の痛みと悩みなんかを発散させて消す能力だ。

しかし妙だな……確かにプレシアは重症だったけど、キュアーがこんなに膨れ上がる程じゃ無かった筈。

もしかして、目に見える以外の場所もヤバかったのか?例えば病気とか……。

 

『??』

 

訝しく思いながらキュアーを見てると、キュアーはそのつぶらな瞳で俺を見つめたまま、コテンと首を傾げる。

その横に浮遊するアリシアはそんなキュアーの仕草を見て『可愛い……』とか呟いてる。

……まぁ、気にしてもしゃーねえか。

今更吸い取った分の痛みを戻す事なんて、出来やしないんだし。

俺はそう、無理矢理自分を納得させて、キュアーを消した。

更にヘブンズ・ドアーを使って、俺とアルフ、そしてテスタロッサに対するセイフティーを書き込む。

おっと、ついでに……ジュエルシードを使えない、と……良し。

これでこのおばはんが目を覚ましても大丈夫だ。

 

「ん?……これは……」

 

当面の安全が確保出来た所でヘブンズ・ドアーを解除しようとしたが……その時手に取ったページは気になって、俺は解除をストップした。

そのまま捲っていたページに視線を落とし、その項を熟読して――。

 

「……なぁ~るほどなぁ~」

 

「??さっきから何を一人で納得してんのさ、ジョジョ?」

 

「まぁ待てって……ほぉほぉ……ふ~ん」

 

知らず知らずの内に、俺の頬はニヤリとした口角を描いていた。

しかし無意識に笑みを浮かべてしまう程の情報が、其処に記されていたんだ。

成る程なぁ……これがプレシアさんの『本当の気持ち』ってヤツか……驚いたぜ。

こりゃマジでどうにか出来るかもしれねえな……勿論、俺一人じゃ無理だが――。

 

 

 

「なぁ。ちっと力貸してくんねーか?この人に覚悟決めさせる為によ……アリシアちゃん?」

 

 

 

この子が居れば、何とかなんだろ。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「……う、ううん……ここは?」

 

あれから少しの時間が経ち、気絶していたプレシアが目を覚ました。

まだ寝起きで状況が判ってないのか、少しうろんな目をしてる。

 

「ハロー。目覚めはどうですか?」

 

「ッ!?(ググッ!!)これ、は……ッ!?」

 

俺の声を聞いて一気に頭を覚醒させ、俺を睨むプレシアだが、彼女は座ってる玉座から動けない。

クラフトワークで身体と玉座を固定してるからな。

暫く体を動かそうと奮闘していたが、動かないと理解して動きを止めた。

 

「……坊やの力は一体どれだけあるのかしら?体全体が動かせなくなるなんて……バインド(拘束術式)では無いみたいね……本当に厄介だわ」

 

「ククッ。気に入ってもらえた様で良かったッスよ」

 

「ええ。暫くはここから動きたくなくなる程度には、ね」

 

体が、首に至るまで動かせなくなってると認識して、目だけで俺を睨むプレシア。

その様子を見ながら嫌味を言ってやれば、これまた嫌味で返してくる。

プレシアは真っ直ぐに俺を見つめていたが、直ぐに疲れた様に溜息を吐いた。

 

「ハァ……何をされたのかは理解出来ないけど、坊やに逆らえないのは理解出来たわ」

 

「ん?結構あっさりと諦めるんスね?」

 

ふと感じた違和感をそのまま口にすると、プレシアは何と苦笑いしながら俺に視線を合わせたのだ。

さっきまで殺意全開だった筈なのに、今のプレシアはいっそ穏やかと言っても過言じゃない。

どういった心境の変化だろうか?

 

「坊やとアルフに対して攻撃しようとする意思があっても、それが何故か邪魔されるのよ?ならどんな手段を講じても、貴方達を傷付ける事は出来ない。だったら敵意をもっても仕方無いじゃない?」

 

いや、確かにそりゃそうだけど……あっさりし過ぎじゃね?

 

「それに……とても信じられない事だけど、私の怪我どころか医者から匙を投げられていた病気まで治してくれた坊やに手を上げる程、私も大人気なく無いわ」

 

「ッ!?ふざけるなッ!!何時も何時もフェイトに辛く当たってきた癖に、どの口がそんな事を――」

 

ここでプレシアが放った一言に、アルフが過剰に反応して憤る。

俺が前に出てなきゃ、今にも掴みかかって殴り倒しそうな勢いだ。

でも確かに、アルフの怒りは分かる。

一度しか見てなかったけど、テスタロッサは執拗に鞭で傷をつけられていた。

それを棚に上げてこの発言をするってのは、俺達を騙そうとする裏があるか――。

 

 

 

 

 

「――そうね。私はあの子に、どれだけ謝っても許されない事をしてきたわ……それは自覚してるつもりよ」

 

「――え?」

 

 

 

 

 

ちゃんと冷静に、自分の罪と向き合ってるか、だ。

もはやプレシアが何を言ってるのか理解出来ないといった表情で、アルフは呆然としてしまう。

その視線の先に居るプレシアはというと、さっきまでの苦笑を自嘲混じりの物に変貌させている。

 

「な、何を言ってんのさ、アンタ?……何で、今更……」

 

「……」

 

「ッ!!このッ!!」

 

「おいおいアルフ。ちったぁ落ち着けよ」

 

「うるさいッ!!アンタは黙ってろッ!!」

 

自分の質問にプレシアが答えずに沈黙したのが気に食わなかったのか、アルフはプレシアの胸倉を掴んで睨み始めた。

それをやんわりと静止した俺にも、アルフは叫んで言葉を返しつつ、視線はプレシアから外さない。

まぁアルフの心情も理解出来るつもりだ。

いきなり手の平返して、今までの行いを反省してます的な事を言えば、やられてた側からすれば堪ったモンじゃねぇだろ。

だからって訳じゃねえが、俺は静かに事の成り行きを見ている。

 

「ッ!!答えろよッ!!何で今更ッ!!どうして認めたッ!?分かってて何で止めなかったッ!?」

 

「……」

 

「黙ってないで何とか言えよッ!!あの子の事が憎かったんだろッ!?何で今になってそんな辛そうな顔をするッ!!――どうして、あの子の思いを踏み躙り続けてきたんだよぉおッ!?」

 

燻っていた、いや無理矢理蓋をして押し留めてきた感情。

さっきの戦いじゃ全くもってそれが解消出来て無かったからだろうか。

アルフはプレシアの胸ぐらを掴んだまま服を締め上げ続ける。

とは言え、これ以上やらせてたらプレシアが死んじまうかもしれねえし、ここらで止めるか。

 

「ストップだアルフ。それ以上やるってんなら、バラバラになって地面に転がってて貰うぜ?」

 

「ッ……クソッ!!」

 

俺の脅しを篭めた言葉に振り返ったアルフは、俺の目を見て本気なのを悟った様だ。

忌々しそうに呪詛を吐きながら、乱暴にプレシアの胸ぐらから手を離す。

ズカズカと床を踏み鳴らして離れるアルフと入れ替わって、俺はプレシアに近づく。

 

「まぁ、その辺りの心境の変化も入れて、相互理解の為に俺達と話し合いでもしましょうや?テスタロッサのこれからについてとか」

 

「……私に拒否権はあるのかしら?」

 

「ある訳無いじゃねぇっすか?アンタは俺に負けて、俺は勝った。だからアンタはそこに縛り付けられてんだ。敗者は黙って勝者の言葉に従えってね」

 

「本当に嫌味な坊やだこと。なら初めから聞かないで、傲慢に勝者らしく振舞って欲しいものだわ」

 

「くっくく。それも勝者の自由ってね……まぁそれはそれとして、実はこの話し合いに是非とも参加してえって子が居るんス」

 

俺が小馬鹿にした口調で会話を続けてプレシアにそう言葉を掛けると、プレシアはあからさまに嫌そうな顔をした。

それは、俺達がさっき対峙した魔女の貌を思わせるが、俺にはその顔が『無理矢理作られた偽物』というのが丸分かりだ。

ヘブンズ・ドアーでプレシアの本当の気持ちを読んだ俺には、な。

 

「……まさか、フェイトをここに呼ぶつもり?だったら止めてちょうだい。あの子に話す事なんて無いわ」

 

「いやいや。生憎とテスタロッサが何処に行ったかは知らないんで、テスタロッサじゃ無いッスね」

 

「??分からないわね……私達に関係ある子だなんて、あの子以外に居る筈が――」

 

「よっと」

 

ズルリ。

 

「なッ!?」

 

俺の言葉の意味が分からず質問してくるプレシアだったが、俺が頭から無造作にDISCを引き抜くと言葉を失う。

まぁ、これから話し合いを進めるなら、これはプレシアさんには必要なモンだ。

 

「とりあえず、プレシアさんには『ライセンス』をお貸ししますぜ……捻じ曲がった想いとはいえ、娘の為に病気も、あの重傷も無視して俺達を倒そうとした精神力があるんだから……充分に資格はあるだろ」

 

「い、一体何の話を……ッ!?くっ!!(ズブブ……)ぅぁ……ッ!?」

 

俺が行った行動に混乱するプレシアの言葉を無視して、俺はDISCをプレシアの頭に差し向ける。

最初はそれを拒否しようとしたプレシアだが、身体が動かないのを思い出して目を瞑るだけに留まってしまう。

結局俺の手から逃げる事は叶わず、DISCはスルスルと抵抗無くプレシアの中へ受け入れられた。

良し、やっぱり充分に素質はあったって訳だ。

ニヤリと笑みを浮かべて手を離すと、プレシアは目を開けて笑う俺を睨みつける。

 

「……何をしたの……さすがにあんな異物を挿れられたら、穏やかじゃいられな――」

 

 

 

『――お母さん』

 

 

 

「……え?」

 

 

 

俺を問い詰めようとした最中に、天井から降り注いだ声。

それを聞いた瞬間、プレシアは俺への怒りを消して呆然とした表情を浮かべる。

まぁ、それが普通の反応か。

俺はクラフトワークの固定を解除して、プレシアに自由を与える。

するとプレシアはゆっくりと、しかし唇を震わせながら、声の主に視線を向けた。

 

「……アリ……シ、ア?」

 

『うん……やっと、私の声が届いたんだね……お母さん』

 

「あ……あ、あぁ……ッ!?」

 

視線が絡み合うと、アリシアは涙しながらも嬉しそうに微笑みを浮かべて、プレシアの目の前に降り立つ。

最愛と豪語していた、永遠に失われた筈の娘が自分の目の前で微笑みを浮かべている。

その光景だけで限界を突破していたんだろうか。

プレシアは目を見開いて大粒の涙をボロボロと流したまま、呆然とした足取りでアリシアへ近づき――。

 

「――アリシア……アリシアなの?」

 

戸惑いながらも尋ねたプレシアに、アリシアは満面の笑みで頷く。

答えを得たプレシアは地面に膝を付いて、力の限り、目の前の娘を抱きしめた。

 

「アリシア……ッ!!アリシアァァァ……ッ!!」

 

『お母さん……ッ!!届いた……ッ!!私の声……届いたよぉ……ッ!!』

 

「ごめんなさいアリシア……ッ!!貴女を死なせてしまって……ッ!!守れなくて、ごめんなさい……ッ!!」

 

互いに泣きながら、声を震わせながら、親子は久しぶりの再会を果たす。

ずっと自分の声が届かずに悲しみに暮れていたアリシア。

娘の声が聞きたくて、自らの病を圧して尚、進み続けたプレシア。

アルフはあそこでプレシアに抱かれてるのが自分の主じゃ無いからか、余り良いか尾はしてない。

でもあの二人の邪魔をしない辺り、水を刺す様な野暮なしないでいてくれるんだろう。

なんだかんだで優しい奴だしな、コイツ。

俺もとりあえず二人が泣き止むまでは一歩引いた所で見るだけにして、頭の中で幾つか計画を立てていく。

とりあえずこれで、プレシアとアリシアの再会劇は成功したし……もうちょい頑張るとするか。

 

 

 

テスタロッサ一家の『全員』が報われて、地球も滅びない、誰も損をしない締め括りの為に。

 

 

 

さすがにここまで関わってこの家族を見捨てたんじゃ、俺自身の心に後味の良くねえものを残す事になるしよ。

 




ボツネタ



「ククク。愛娘の記憶と容姿を受け継いだ、謂わば妹の様な存在を嗜虐する事で、娘が居た頃の生活に想いを馳せるとは、中々良い趣味ッスね?」

「ち、違う!!私は決してアリシアとあの人形を重ねてなんか――」

「何が違う?姿形は同じ。些細な違いがあろうとも、あの少女は貴様の娘の遺伝子と記憶、心を受け継いだ写し身に他あるまい?同一の存在に対する嗜虐。それは貴様が追い求める『娘』と過ごしたかった日常なのだろう?違うと言うのならば……」

DISC挿入

「な、何を『母さん……』――アリ、シア?」

「クククッ。貴様の愛娘に否定の言葉を述べてみせてもらおうではないか。娘と同一の遺伝子と記憶を受け継いだ妹を嗜虐する事が、貴様の母親としての本性では無いと。同じ存在なのだから愛してみせる、と」

「あ、あ……あぁぁあああああッ!!?」

「クククククッ……壊れたか……何と矛盾に満ちた女だ……中々俺好みの愉悦を抱えていたというのに、勿体無い事をしたな……だが、そういう存在を壊す事もまた……俺の愉悦、か……」




定明は、他人の心の傷を広げて愉悦に浸る、あの外道神父の同類だったんだ!!


ΩΩΩ(ナ,ナンダッテーッ!!?)




んなわきゃ無い無い。




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