ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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GTA5の世界は楽しすぎる。


だが、いきなり襲いかかってくるプレイヤーはマジキチ。


CODゴーストのオンラインも最高。


特にチェーンソーと5連装ショットガンはパネェ。




フフフ。1つだけ教えよう。俺の名はンドゥ(ry

 

 

「やれやれ、まさかマジに来る事になろうとはなぁ……スキップ」

 

「……」

 

青のスキップカードを出して、次のヤツの番を飛ばす俺。

はい、現在俺はなのはのパパ上である士郎さんの運転する車の後部座席に座って温泉に向かっております。

 

「何よ。お金は一切掛からないのに文句あるワケ?……じゃあ、青の6」

 

「まぁまぁアリサ、そう怒らないの。ジョジョもああは言ってるけど、貴女には感謝してるわ……緑の6。これで上がりね」

 

俺の台詞に不機嫌そうな声で聞き返すアリサと、それを苦笑いしながら諌めるリサリサがそれぞれ手札を減らしていく。

まぁリサリサの言う通り、俺もアリサやデビットさんにはちゃんと感謝してる。

何せ今回の旅費を丸々負担してもらったワケだからな。

 

「あっ、リサリサちゃん一番だね。でも、定明君もリサリサちゃんも一緒に来てくれて本当に嬉しいよ……緑の7,8,9」

 

「そうだな、こういった旅行も、友達皆で来れたら最高に楽しいと思う……赤の9だ」

 

「うぉい、ここにきて色変えかよ……んじゃ、赤のスキップ」

 

「……」

 

「それにしても、いきなりデビットさんが俺の家に現れた時はビビったぜ。何せ帰ったら母ちゃんと談笑してんだもんな」

 

俺はちょっと前の出来事を思い出しながら言葉を零す。

先々週くらいにアリサとプールへ遊びに行ったその帰り、アリサに誘われた温泉旅行。

さすがに俺の一存では決められないし、仕方ねぇかと諦めてたんだが、そこに現れたのがデビットさんだった。

デビットさんは何と、今回の温泉旅行への同行を俺が断ったとアリサから聞いて、俺に提案をしに来たんだ。

その提案というのは勿論、温泉旅行の旅費全般を負担してくれるとの事だった。

さすがにそれは悪いからと、一度は断ったけど……。

 

『君がアリサの命、そして尊厳を守ってくれた事への恩返しは、あの食事1回で済ませられる程軽いものではないのだ。頼む、受け取ってはもらえないだろうか』

 

何も知らない母ちゃんが離れた隙に、そんな台詞と一緒に頭まで下げられちゃあ、俺としては受けざるを得なかった訳。

かくして、俺はアリサ達と温泉旅行に来る事になった訳だが、そうなると問題がもう1つあった。

 

「あら。私は貴方のしてくれた事に驚いたけど?……もしかして、私は貴方に買い付けされちゃったのかしら?」

 

「人聞きの悪い事言うなって、リサリサ」

 

それは、今上がって暇になり俺の隣りから小声で話し掛けつつ微笑を浮かべているリサリサの分の旅費だ。

リサリサも孤児院の人達に無理は言えないという事で、前回のお茶会同様、今回も不参加のつもりだったらしい。

その時の電話から聞こえたリサリサの声が余りにも寂しそうだったモンで……つい、本気を出しちまったんだ。

今回の温泉旅行の旅費は、1泊2日の分を子供1人で計算すると1~2万程。

だからお土産とかも買って帰れる余裕を見積もって、3万5000程の金を作ってリサリサに渡した。

最初は俺と同じで受け取れないと言ってたけど、そこは無理矢理握らせた。

友達と行くのが楽しいんだし、俺がその為に作ったお金だから受け取れってな。

そこまで言ってもまだ嫌がってたから、目の前でその金に火を点けるぞと脅して漸く受け取ってもらったんだが、「何時か必ず返す」って言って聞かねぇんだもんなぁ。

 

「でも、本当に良かったの?……私は凄く嬉しいのよ?けれど、あんな大金なんて小学生に作れる物じゃ無いでしょ?」

 

「あーもー、そんなに心配すんな。別にヤバイ事して集めた金じゃねぇって」

 

只、ハーヴェストを使って重ちーがやったのと同じ様に、町中の落ちてた金を拾い集めて両替しただけだからな。

……重ちーとは違って千円だろうが1万円だろうが、兎に角落ちてる金を集めろって命令したら、10万も集まっちまったけど。

思わず顎が外れそうになったよ。まぁ、リサリサに渡した分の残りは俺の貯金箱に隠してある。

拾ったモンだから別に良いだろ?それぐらいの美味しい思いしたって。

 

「なら良いけど……でも、本当にありがとう、ジョジョ……私、一度で良いから友達と旅行に行ってみたかった……それが叶って、本当に嬉しい」

 

俺に顔を寄せて、小声でそう言ってくるリサリサの目の端には、ちょっとだけ涙が見える。

今までこういう体験した事が無いから嬉しい、か……リサリサの笑顔が見れたのが自分のお陰、なんて自惚れの強い話しだが……偶にはこういうのも、悪くねぇな。

 

「気にすんな。まぁ来ちまったからには、この旅行を楽しもうぜ」

 

「えぇ。貴方のお陰ですもの。しっかりと楽しませてもらうわ」

 

少しだけ笑ってそう言った俺の言葉に、リサリサも笑顔を浮かべて言葉を返してくる。

……コイツ等が俺にしてくれたキスの意味、ちゃんと考えねぇとな。

 

「むっ。ちょっと2人共ッ!!何をコソコソ喋ってるのよッ!!」

 

「さ、定明君。次は定明君の番だよ?」

 

「え?もう俺か?オイオイ相馬、声ぐらい掛けてくれても良いじゃねえかよ」

 

そんな事を考えていた俺の耳に、アリサのちょっと拗ねた様な声と、すずかの焦る様な声が聞こえて、俺は意識を浮上させる。

カードの山に視線を戻せば、確かにゲームは進み、次は俺の番にまで回ってきていた。

気付いて文句を言うも、相馬は呆れた様な視線を俺に向けてくるだけだ。

 

「俺はさっきから呼んでいたぞ?お前がリサリサと話しこんでて気付いてもらえなかったがな」

 

「……何かスマン。って今度はまた緑かよ……じゃあ、緑のリバース」

 

「ねぇ定明君?定明君がさっきからスキップしたり、リバースしたりするから、私一枚も出せてないんだけどッ!?」

 

苛めなのッ!?って憤慨した表情のなのはが叫ぶが、俺は何処吹く風。

しゃーねぇだろ、コレそういうルールなんだから。

確かに俺が飛ばしまくったりするから、なのはは殆どの手札を減らせて無い。

でも知らん。これはそういうルールのゲーム。

 

「頑張って追い付けよー」

 

「私に手札を捨てさせてくれない原因なのに、その言い方はどうかと思うのーッ!?」

 

ンな事知らねぇよ。

現在ダントツでビリななのはだが、今度は俺の隣りの相馬がリバースを使用。

再び順序が元に戻ってきた。

おっ?続けて捨てられるな……じゃあここは普通に数字を。

手札の残りを計算しながら、俺は数字を一枚捨て場に捨てる。

ここでやっとなのはの番が回ってきた。

 

「ふ、ふっふっふ。やっと私の時代が来たの」

 

手番回ってきたぐらいでそれは無い。

 

「とりあえずアリサちゃんも道連れなのッ!!ドロー2!!」

 

と、何やらキャラがブッ壊れてきたなのはが自信満々に繰り出したのは、山札から2枚引かせるカード。

手札が増えると上がれなくなるので、これは苦しいカードだが……。

 

「あら?私も出そうと思ってたのよ、ドロー2」

 

このカードの特徴は、次の相手が同じカードを出せば、それは次の相手に流れるってトコだ。

ルールは明確じゃないが、俺達は流すって意味でコレを認めている。

しかも枚数もドロー2が×2って事で、引かなきゃならない枚数が4枚に増える。

 

「あはは……私も」

 

「俺もあるぞ?」

 

「ゑ?」

 

しかもアリサだけでは無く、すずか、相馬も持っていた様だ。

つまり、ドロー2が4枚という爆弾を抱えて、手番は流れに流れてそのまま俺へと回ってきた。

少し呆然とした表情のなのはに、俺は気まずい表情を見せてしまう。

 

「あ~……悪い……ワイルドドロー4。これで俺の手札はラスト一枚、だ」

 

「うにゃぁあああああッ!?」

 

俺が出したのは色を変えれる上に、相手に4枚引かせるワイルドドロー4のカードだった。

更にそのまま最後の一枚という景気の良さをアピール。何かスマン。

場に全てのドロー2が出ているので、なのははカードを山札から引かなくてはならない。

しかも2×4+4=12枚。

その全てがなのはの手札になってしまう。

 

「うぅ。減る所か増えちゃったよ~」

 

元々持っていた分に加えて増えてしまった手札を見ながら、なのはがタパーっと涙を流す。

これぞ正しく身から出た錆ってヤツだろう。

 

 

 

温泉への道中は、割りとのんびりとした空気だった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

そんなこんなで、俺達は温泉に到着。

全員チェックインを済ませて、子供部屋へと向かった。

 

「ここがアタシ達の泊まる部屋ね」

 

アリサが先陣を切って開いた扉の向こうは、ざっと12畳ほどの和室。

畳の何とも言えない香りが鼻に広がり、不思議と心が安らぐ。……良い部屋だな。

窓から見える景色も、森林と木漏れ日が心地良い。

 

「あっ!?見て見てすずかちゃん、リサリサちゃんッ!!下のお庭に池があるのッ!!」

 

「ホントだ。鯉がいっぱい居るね」

 

「少し覗きに行ってみようかしら?アリサ、一緒にどう?」

 

「えぇ、良いわよリサリサ。まだお風呂に入るのはちょっと早いしね」

 

女子軍団は早くも荷物を置いてやんややんやと騒いでいる。

どうやら下の中庭を目指すようだな……いってらっしゃい。

 

「定明と相馬もボサッとしないで、早く行くわよ」

 

うぉい、俺等まで何時の間にか勘定に入れてあんのかい。

 

「あー、俺は良いけど、定明はどうする?」

 

「悪いがパス。ちょっと荷物の整理とかしておきたいから、お前等だけで行ってくれ」

 

「んもう、しょうがないわねぇ……じゃあ、後で絶対に来なさいよ?絶対だからね?」

 

荷物整理があると断った俺だが、アリサはそんな俺にぶすっとした表情を浮かべながら、後で来いと催促だけして部屋を後にする。

おいおい、俺まだ行くなんて返事してねぇぞ?言うだけ言うって行くんじゃねぇっての。

 

「わ、私も後で良いから、来て欲しいな?」

 

「皆で楽しもうって言ったのは貴方だし、有言実行しなきゃダメよ。ジョジョ♪」

 

続けてリサリサとすずかも畳み掛けて俺に言葉を残し、アリサの後を追っていく。

なのは?アリサが出た時点で相馬と腕組みながら出てったよ。

スッゲエ嬉しそうな顔して腕組んでたけど、相馬の方は……妹を見る様な目だった事は伝えないでおこう。

真実を伝えたら、なのはが可哀想だし。

とりあえず今の出来事は頭の中から放り出して、俺はせっせと荷物を片付ける。

まぁ1泊2日の旅だからそんなに荷物は多くなかったので、整理自体は直ぐ終了。

 

 

 

さて、俺は――。

 

 

 

  皆を追いかける。

 

 →良い子はもう寝る時間だ。グッナイ。

 

 

 

「寝るか」

 

 

 

そのまま畳の上にゴロンと転がって目を瞑る。

折角の休日なんだし、早起きした分早く寝るのがジャスティス。

さぁ、夢の世界へ旅立とう。

 

「(ガラッ!!)いやいやいやいやいやッ!?お前その選択肢は無いだろッ!?」

 

しかし、夢の世界へ旅立とうとした俺の意識を引き摺り起こすかの如く、隣りの部屋から襖を開けて私服姿のイレインが登場。

慌てた様子で俺の傍にしゃがみ込み、寝転んだ俺の身体を強く揺さぶってきた。

 

「るっせぇなぁ~。あんだよイレイン?俺の眠りを妨げる奴は、もれなく普通じゃ体験出来ない様な酷い目に遭うんだけど?」

 

「い、いやッ!!でもお前ッ!?お前なぁ……ッ!!すずか達が呼んでたのにそれは無いだろうお前……ッ!?」

 

「コラコラ、脅しちゃ駄目だよ定明君?」

 

折角良い気分で旅立てそうだった俺を起こしたイレインに不機嫌な目を向けると、後ろからなのはの姉の高町美由希さんが苦笑いしながら現れた。

眼鏡を掛け、整った顔立ちをしてるこの美由希さん。

ポヤッとしてる様に見えるが、実は恭也さんと同じ剣術の流派を納めた凄腕の達人らしい。

見た目からは想像も付かないけど、そこらの男程度なら簡単に倒せるってんだから、恐ろしいモンだぜ。

あの誘拐事件の時は、偶々隣町に行ってて来れなかったそうだけど、この人も夜の一族の事は知ってるそうな。

そういう理由があって、俺のスタンドの事も美由希さんには話してある。

最初は信じてもらえなかったから、『クレイジーダイヤモンド』を使って美由希さんの作ったケーキを材料別まで治して戻して見せた。

まぁその後「一生懸命作ったのにぃッ!!」と泣かれたのは良い思い出だ。

但し……治したケーキの材料の中にイワシとかサンマが混じってたのは冷や汗モンの思い出だけど。

治さなかったら俺が食わされてたんだよな、あのケーキ……間一髪だったぜ。

 

「人聞きの悪い事言わないで下さいよ美由希さん。俺は只、俺の安眠を邪魔するなら、これから毎晩ピエロの仮面被った死神が夢に出ますよーって忠告しただけッス」

 

「それ完全に脅しだよね?っていうか、ピエロの仮面を被った死神って……夢に出るだけならどうって事無いんじゃあ――」

 

「そいつに攻撃されると痛みますよ?序に傷付いたら、夢から醒めても傷跡が残ってる上に、寝ていた時の記憶は全てリセットされているという……」

 

「「陰湿(だな)ッ!?」」

 

俺の起こせる悪夢の話を聞いて身震いしながら、美由希さんとイレインは肩を奮わす。

夢の中限定で無敵なスタンド『死神・13(デス・サーティーン)』ですから。

生き物の睡眠中という、精神がもっとも無防備な所を狙う上に、攻撃されたという事実自体を忘れさせちまうやらしい能力だから、陰湿じゃない訳がねぇやな。

だが結局、隣りの部屋に居た恭也さんとか忍さん達にまで行ってあげなさいと強く言われて、俺は渋々部屋から出て中庭へと足を向けた。

 

「やれやれ、部屋で静かに眠りたかったってのに、まさか追ん出されるとは……」

 

「いや、皆が待ってるんだから、そこは起きて来るのが普通だろう」

 

そして、合流した先で、俺と相馬は廊下の手すりに凭れながら、中庭の美しい池と、それを眺めるなのは達に視線を向ける。

4人共楽しそうにはしゃぎながら、池の中でスイスイと泳ぐ鯉を見ていた。

この旅館の中庭は、正方形の旅館に囲まれた中央に作られていて、斜め×の字に旅館から橋が渡されている。

その左右に池と樹が植えられているというかなり凝った造りだ。

夜は行灯が光るらしく、もう少し季節が進んで桜が見れる様になった時が、一番見頃らしい。

 

「フゥー……最近はジュエルシード探しで忙しくしてて、なのはの体調も少し悪かったからな……今日はゆっくりして欲しい」

 

「ん?そんなに最近は動いてたのかよ?……あっ。ユーノが落ちそうになってる」

 

「あぁ。この間のフェイトの一件があってから、少し急ぎ気味だったんだ……フェイトに対する対抗心からかは判らないが、今はあんなにリラックスした笑顔を浮かべてる……鯉が池から飛びあがって食べようとしてるな」

 

嬉しそうに笑う相馬に続いて視線を向けると、池に落ちそうなユーノの尻尾を必死で握りながらも、なのはは確かに楽しそうに笑っていた。

アレは間違い無く心からの笑顔だな……ホント、頑張るのは結構だが、休む時は休めよ、なのは。

何時、この魔法ランチキ騒ぎが納まるか、俺は詳しく聞いてないから知らない。

でも、もし地球が破滅する様な事態になったら……その時は、俺の全能力を駆使して動くとしよう。

 

――ポチャン。

 

「「あ」」

 

「あ……にゃぁああッ!?ユ、ユーノ君が落ちちゃったーーーッ!?」

 

そんな事を考えていた俺の視界で、握られていた手から滑り落ちたのか、ユーノが池の中にダイブしてた。

いや、落ちちゃったというか、落としちゃったの間違いだろ?明らかに笑いすぎて手の力が抜けたってパターンにしか思えないって。

池に落ちたユーノは直ぐに顔を出して器用に泳ぎながら、池から上がろうとするも……。

 

バシャバシャバシャッ!!

 

「キューッ!?」

 

「ちょっ!?食べちゃ駄目ーーーッ!?」

 

「ア、アリサちゃんッ!!ストーン・フリーの糸でユーノを引き上げてッ!!(ぼそぼそ)」

 

「む、無理よッ!!ここじゃ人目が多いし、あんなに跳ねられたら何処に居るか分からないわよッ!?(ぼそぼそ)」

 

「完全にキッスの射程距離外ね……私も役に立てそうも無いわ」

 

池の鯉が一斉に飛び跳ねて、水から上がろうとするユーノに飛びかかった。

その拍子にバシャバシャと水が波立ち、ユーノの所在が分からなくなってしまう。

あー……ありゃ食われるのも時間の問題だな……しゃーねぇ。

 

「……『ゲブ神』」

 

俺は池に視線を向けながら、3部に登場したエジプト九柱の神々の1人である大地の神「ゲブ」の暗示を持つスタンドを呼ぶ。

コイツは遠距離操作型の自在に形の変化する水のスタンドで、基本は鋭い爪を持つ腕のような姿をしている。

操作距離はkm単位で、かなり離れている場所からでも操作可能な能力だ。

但しゲブは水や血液などの液体と一体化しているため一般人にも見えるスタンド能力でもある。

他にも砂の様な水分を吸収する物の中は自在に潜り移動することができる。

さらに、投げた物を追い越せるほど移動スピードが非常に速い。

と、まぁ一般人に見えてしまう能力でもある訳だが、要は水を操作して、中から水圧で押し出してやれば――。

 

バシャァアアアッ!!

 

「キューーーッ!?」

 

と、水の中に居る生物を池から押し飛ばす事も可能って「キャーッ!?」こ、と?……あ。

 

「「「「……」」」」

 

「……キュー(グルグル)」

 

なのはの手には、さっき吹き飛ばしたユーノが乗せられているが、ユーノはショックで目を回している。

更に、誰も一切喋ろうとしない。

まぁ、その原因は俺にある訳だが……水圧を押し飛ばすって事は、要は水鉄砲の要領で水を打ち上げるって事で……。

 

「……ユーノ君は助かったけど……何で水が跳ね上がったの?しかもあんなにいっぱい……」

 

「うぅ……ビチョビチョだよぅ」

 

「これって……そうよね。うん絶対そう。そうじゃなくてもアイツの所為。ハイ決定」

 

「……お気に入りの服が台無しだわ」

 

真下に居たなのは達が、打ち上がった水をモロにぶっかぶるのも必然だったりする。

皆して服がビショビショに濡れちまって、服が台無しになっていた。

こりゃ早く風呂に入らないと風邪引いちまうだろう。

あっ、でもアリサ辺りは、怒りで頭から湯気吹いてるから大丈夫かも――。

 

「そんなワケ無いでしょーがッ!!そこでボーっとしてないで、早くタオル持ってこいバカ定明ーーーッ!!!」

 

「あいあいさー」

 

俺の考えを読んだアリサの怒りに染まった咆哮を聞いて、俺はスタコラサッサと受付まで走る。

今回に限っては、俺が全面的に悪いから、怒れるアリサの言う事を聞いておこう。

はぁ……旅行に来ても、俺の日常は騒がしいなぁ、ったく。

一緒に手伝うと申し出てくれた相馬の友情に感謝しつつ、俺は受付へと走るのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

カポーン。

 

「ふいぃ~……あぁ~……気持ち良い~」

 

「お前……おっさんじゃないんだから、もう少し子供らしい事言えないのか?……山の緑が綺麗だな」

 

「てめーこそ、小学生にしては落ち着きあり過ぎだっての。山見て言う事がソレかよ」

 

失礼な奴だな。風呂が気持ち良くて何が悪い。

隣りで同じく温泉に浸かってる相馬のお小言を聞き流しつつ、俺は温泉を満喫する。

先程、女子全員にタオルを渡したが、ここまで濡れてしまったなら、いっそ風呂に入ろうという事になった。

まぁそろそろ風呂に入ってもおかしくない時間になってたので、俺達は全員風呂に入ったワケだ。

気絶したユーノがなのはに抱えられて風呂へと向かって行ったが、直ぐその後で「キューッ!?」と元気な声が聞こえたので、問題無いだろう。

アリサ達もそんなに怒って無かったし、ゆっくりと寛げるってなモンだ。

 

「ハハハ、2人ともリラックスしてるね」

 

「いや、父さん。あの2人のはリラックスというよりも、俺より年季の入った寛ぎっぷりなんだが……」

 

ダル~っと温泉の角にある岩に凭れながらゆっくりしていた俺達の側に、身体を洗い終えた士郎さんと恭也さんが近づいてくる。

二人共かなり鍛えられた体付きをしていて、筋肉がしっかり引き締まったカッコイイ身体をしてた。

しかし――。

 

「……傷、凄いですね」

 

「ん……まぁ、剣の修行はかなり厳しいモノばかりだからな。どうしても生傷が絶えないんだ」

 

「僕達の家に伝わる剣術の御神流は、実践に重きを置いた古武術でね。他の流派と較べても、修行の内容がハードなんだよ」

 

相馬の呟きに、2人は笑顔で答えるが、答えてる内容はちと危なげな答えだ。

2人の身体は、傷が無い箇所を探す方が苦労する程に切創が刻まれている。

まぁ二人共イケメンだから、女の人からみれば黄色い悲鳴が上がる様なアクセントになるだろう。

 

「つっても、剣の修行ばっかで付いた傷じゃねぇのも残ってるっすね?士郎さんのソレとか、明らか剣じゃねぇでしょ?」

 

俺が指さしたのは、腹の辺りに刻まれたドデカイ傷跡だ。

丸々とした傷跡なんぞ、剣で付けようがねぇし。

 

「アハハ。これはちょっと、昔にね……それより、定明君も中々鍛えてる様じゃないか?」

 

俺の指摘に苦笑を浮かべた士郎さんは、露骨の話題を逸らす。

多分触れて欲しくねぇ話題なんだろう。俺もそんなに追求したかったワケじゃねぇので、その話題に乗り換えた。

 

「まぁ、走ったり泳いだりしてばっかなんで、自然とこうなったんス」

 

まぁ嘘だけど?

自慢じゃないが、俺の肉体もそこそこ鍛えあげられている。

これは、波紋の力を修行していく内にこうなった結果だ。

 

 

 

――波紋。

 

 

 

特殊な呼吸法で練り上げられる生命エネルギーを操り、超人的な力を発揮する異能。

人間が柱の一族、ひいては吸血鬼と戦う為に生み出した人間の技術だ。

人体にほんのちょっぴりだけ宿る生命エネルギーを増幅させて操る波紋のエネルギーは、太陽と同じバイブレーションを持っている。

これに気付いた者達が練磨し研鑽した技術こそ、波紋。

つまり呼吸からエネルギーを作り出す技術だからこそ、心肺能力と肉体性能は鍛える要なんだ。

今の俺の身体能力は、走る事にかけて小学生レベルから大きく逸脱してる。

長距離なら息を乱さず3キロまで走り続ける事が出来るからな。

まぁ、目標はジョナサンやジョセフの様に、何10キロと走っても息の乱れない強さだが。

 

「ふむ。確かに定明君の筋肉の付き方は、走る為に特化した筋肉ばかりだね……将来は長距離ランナーでも目指してるのかい?」

 

「いや、別にそういうワケじゃねぇッスけど、見ただけで何処の筋肉が鍛えられてるとか判るんスか?」

 

「ふふ。長い事武術をしてると、自然と観察する力が養われるものさ」

 

士郎さんはそう言って微笑むが、俺からしたらビックリものだ。

俺も鍛え方は意識して、瞬発力より持久力を上げる鍛え方をしてきた。

それをちょっと見ただけで理解するとは……恭也さんといい美由希といい、とんでもない武芸家揃いだな。

 

「逆に相馬君の鍛え方は、僕や恭也に近いモノがあるね」

 

「そうだな。何か剣を振るっているだろう?しかも長物……いや、太刀に近い大きな武器だ」

 

「そこまで判るんですか?確かに、かなり大きな太刀の練習をしてますけど……」

 

俺から視線を外した士郎さんは、次に相馬に質問を飛ばし、恭也さんもそれに同意する。

一方で言い当てられた相馬は目を見開いて驚いていた。

まぁ俺の場合、恭也さんが小太刀を持って戦いの場に現れたのを見てるからそこまで驚かねぇけど、相馬は見た事無いのかも。

 

「僕達は小太刀を主に使う流派だけど、良かったらウチの道場に練習に来ないかい?多分だけど相馬君、独学でやっているんじゃないかな?」

 

「あっ、はい。太刀を教えてくれる道場は無いので……でも、良いんですか?お邪魔しても?」

 

「ははっ。構わないよ。武器は違っても、先達者として教えられる事はあると思うんだ。君さえ良ければ一度道場に来てみてくれ」

 

「ありがとうございます。またお邪魔させてもらいます」

 

士郎さんの申し入れに、相馬は頭を下げてお礼を言う。

まぁ1人で遣るよりも、先輩とかが居た方が効率は上がるモンだ。

多分相馬はあのドデカイ大剣を振るう為に鍛えてるんだろう。

前見た時は、まだ刀に振り回されてる様にも見えたし。

そんな感じで話ていたが、もう温泉も充分に堪能したので俺と相馬は上がる事にし、恭也さん達はサウナに向かった。

 

「あんだよ。ここって脱衣所なのに自販機ねーのな」

 

風呂上りにコーヒー牛乳が飲みたかったってのによぉ。

 

「確か、出て少し行った所に自販機があったぞ?そこで買うしか無いだろうな」

 

「ん。まぁいっか。そこで買えば良い訳だし」

 

着替えながら情報をくれた相馬にサンキューと返し、俺も持ってきた浴衣に着替える。

浴衣って良いよな、涼しいだけじゃなく、動きやすくて。

日本が生んだ良き分化だと思う。

そんな事を考えながら着替えていると、壁に掛けられた広告が目に入る。

何々?温泉街マップ……へぇ、古い神社の境内から見える景色は絶景、か……後で行ってみっか。

思いがけない情報を手に入れた俺は相馬と一緒に脱衣所を後にし、自販機で購入したコーヒー牛乳を飲みながら、渡り廊下でなのは達と合流したのだが……。

 

「アンタかい?ウチの子をあれしちゃってくれたのは?」

 

「ぶーーーッ!!?」

 

目の前からきた人間形態のアルフを見た瞬間、コーヒー牛乳を明後日の方角に吹きだした。

何でココに居るんだよテメー。俺の平和な日常がぁ……。

 

「ん?……あっ!?あんたジョジョだろッ!?久しぶりじゃんッ!!」

 

しかも俺を名指しかこの野郎。

アルフがニコニコ笑顔で俺のアダ名を呼ぶモンだから、相馬以外の面子が「えっ!?」って顔しながら俺を見てくる。

俺はその視線の嵐を受けながら、ニコニコ笑って近づいてくるアルフにオラオラしてやりたくなったぞ。

 

「……よぉ、アルフ。元気そうじゃねーか」

 

もうシカト決め込むのは不可能なので、俺は当たり障りの無い挨拶を返しておく。

 

「アタシは何時でも元気さ。あー、そだ。この前くれたサンドイッチのお店なんだけど、お昼頃に行っても売り切れでさぁ。全然食べられないんだよ」

 

「サンジェルマンか?あそこは超人気店だからな。昼前に行かないと直ぐ無くなるぜ?大体11時頃がピークだな」

 

「あーそうなんだ。じゃあ次はそのぐらいの時間に行ってみるよ。ありがとな」

 

「どう致しまして……それより、俺のダチにイチャモンつけてたみてーだが、なのはに会った事あんのかよ?」

 

俺はチラリとなのはを横目で見ながら、アルフに質問をしてみる。

一方で視線を向けられたなのはの方は「え、え?」って判らないという顔をしながらブンブンと首を横に振る。

……どうやら、こっちの人間形態でなのはと会った事は無えみたいだな。

前にすずかの家で遭遇した時は、狼形態だったのは知ってるし、それ以外では会って無さそうだ。

 

「ん?あぁいや、良く見たら違う子だったよ。ゴメンゴメン、アハハッ《聞こえてるだろ?今はジョジョの前だから何もしないけど、あんまりオイタが過ぎるとガブッといくからね》」

 

「「ッ!?」」

 

「……」

 

ん?何かなのはとユーノの顔がメチャクチャ驚いてんだけど、一体何だ?

相馬は相馬で、何か真剣な面してやがるし……アルフの奴、何かしやがったんじゃねーだろーな?

ちょっと良く判らない事態になってきて頭を捻っていると、アルフは「じゃあまたね、ジョジョ。」と言葉を残し、上機嫌で去って行った。

多分あの方角からして、風呂だろうな。

 

「……随分、親しげだったじゃない?アンタの知り合い?」

 

と、アルフが去った方向を見ていた俺に、如何にも「不機嫌です」って声音のアリサの声が聞こえてきた。

振り向けば、表情も不機嫌まっさかり。何故俺に怒る?

 

「あぁ。……前に偶々公園で会った人でな。町のパン屋で何処が一番美味しいかって話題で盛り上がった」

 

とりあえず、嘘の話しを盛りまくる俺。

今コイツ等にバカ正直にアイツが魔法関係者だって話したら、俺まで巻き込まれるのは目に見えてるからな。

俺はそんな面倒事に対して動く気はねぇし、勘弁願いたいぜ。

 

「ふーん?……まぁ、別に?アンタが何処でどんな女と知り合ってようが、アタシには、ア・タ・シ・に・は・ッ!!関係ないけどねッ!!フンッ!!」

 

じゃあ何でそんなに不機嫌なんだよ?

 

「……だ、大丈夫。落ち着いてすずか。あの人とはどう考えても歳が離れすぎてるし、そんな感じはしなかったもん……まだ大丈夫、ファイトだよ(ぼそぼそ)」

 

すずかはすずかで、何やら心肺そうな表情を浮かべながらぼそぼそと呟いている。

何だこのカオス?

 

「……聞かない方が、ジョジョにとっては嬉しいでしょうから、何も聞かないでおくわ」

 

リサリサは微笑を浮かべながら俺にそう耳打ちすると、軽やかに部屋を目指して歩き出す。

まぁ聞かれない方がありがたいっちゃありがたいが……何でこんな面倒くせー事に。

 

「さ、定明君ッ!!あの人とは何処で会ったのか、詳しく聞かせて欲しいのッ!!」

 

コイツはコイツで空気読まねぇしよぉ……ッ!!リサリサの小指の爪の垢でも煎じて飲ませてやりてぇぜ。

かなり必死な感じで俺に詰め寄ってくるなのはに当たり障りの無く、嘘っぽくない様に話しながら、俺も皆と一緒に部屋へと帰るのであった。

 

 





やはり楽しく逝こうゼ?とIS~ワンサマーの親友も執筆していると、更新がかなり遅れてしまいますね。申し訳ありません。

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