ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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遅くなって誠に申し訳ありません。

言い訳?特にありません。

強いて言うならGTAオンラインのサービス対応の悪さにピキピキ状態で執筆が進まなかったと言った所です。
後、ジョジョASBでアナスイとヴァニラ・アイスの強さに愕然としてたって所です。
……そろそろ小説内でも使うスタンド増やして行きたい……。



パワーはねぇが、この俺のハイウェイ・スター。追跡は決してやめな(ry

「あ、あわわとッ!?お、おわととととっ!?」

 

室内にお茶を持って入室したファリンさんの足元を走り回り始めた猫とユーノの所為で、ファリンさんはバランスを崩してしまう。

っていうか猫に餌としか思われてないだろ、ユーノよ。何故なのはの直ぐ近くへと避難しなかった?

 

「あぁ~~うぅ~~……」

 

そして、零れそうになった紅茶を何とか安定させようとしたファリンさんはその場で回転してた。

しかしそうやって紅茶を安定させようとした代償に、ファリンさんはかなりの速度でスピンする羽目になってる。

回転が納まった頃には、ファリンさんの目はナルトの様に渦を巻いてフラフラ状態だった。

 

「あっ、ファリンさんッ!?」

 

「ファリンッ!!危ないッ!?」

 

そしてそのまま倒れていくファリンさんを見て、なのはとすずかが悲鳴を挙げながらファリンさんへと駆けつける。

俺達の中で比較的ファリンさんに近かったから、2人が間に合わなきゃ俺達じゃ無理。

っち、俺が近くに居たらクラフト・ワークで紅茶とカップだけでも落ちない様に固定出来たんだが、ここじゃ射程距離外だ。

ならハイエロファントを飛ばして……。

 

「しょうがないわね……ストーン・フリーッ」

 

シュルルルルルッ!!

 

だが、俺がハイエロファント・グリーンの触手を飛ばそうとしたその時、俺の後ろからアリサが小さく呟きながらスタンドの糸を伸ばす。

指から伸ばされた複数の糸は、ポットやカップをトレーに抑え付ける様に巻き付き、中身が零れたりカップが落ちるのを阻止した。

 

「よいしょっ!!」

 

「えいッ!!」

 

更にグットタイミングともいえるタイミングで、なのはとすずかがファリンさんに到達。

すずかが倒れそうになってたファリンさんの背中を支え、なのはが紅茶の乗ったトレーを支える。

 

「ど、どうにかセーフ……」

 

「……だったね」

 

「ホントにギリギリだったな」

 

とりあえず事無きを得た事で安堵したなのはとすずかが溜息を吐き、相馬が額を拭う仕草をした。

良く見ると、相馬の手の上には高そうなカップの受け皿が2枚納まっている。

多分、アリサの糸が間に合わなくてトレーから落ちた分だろうな。

俺?俺はちゃんと二次災害が起きない様に――。

 

「キュー」

 

「ニャァー」

 

走ってた猫とユーノの首根っこを持って捕まえてますが?

こういう風に、何か起きる事前に不安要素の芽を摘むのも大事な仕事だ。

 

「ふわッ!?な、なのはちゃん、すずかちゃんッ!!ごめんなさいぃいいッ!?」

 

と、今になって回転の余波から復活したファリンさんが、助けてくれた二人にお礼を言う。

2人は別に良いよと笑顔で言いながら席に戻り、アリサもトレーの無事を確認してからストーン・フリーの糸を外す。

とりあえず場が落ち着いたので、俺も主犯であるユーノと名も無き猫を地面に開放してやった。

 

「ナイスアシストだったぜ、アリサ。糸のコントロールもバッチリだったじゃねぇか」

 

「フフン♪当然。アタシにかかればあれぐらいお茶の子歳々よ」

 

俺は他のメンバーに聞こえない様に、なるべく声を潜めてアリサのアシストを褒める。

アリサも皆に聞こえない様に小声で返事を返して胸を張る。

すずかはファリンさんの背中を支えてたからストーン・フリーの糸が見えて無くて、アリサのアシストに気付いて無かった。

だからアリサは俺以外の人間からは労われなかったから俺だけでもと思ったけど、本人はそれ程気にしてない様だ。

寧ろ1人からでも労われたのが嬉しいのか上機嫌になってる。

この短期間であそこまで糸のコントロールをマスターするとは……やっぱ並みの才能じゃねぇ。

ったく、すずか達を見てると、自分との才能の差に軽く落ち込むぜ。

まぁそんなこんながあったけど、俺達は今日の目的であるお茶会を開催するのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「にしてもよぉ、すずかの家は何時来ても猫屋敷だな」

 

何時の間にか俺の膝の上に陣取って眠り始めた猫の背を撫でながら、俺はすずかへ言葉を紡ぐ。

俺の膝の上の他にも、窓辺や部屋の端なんかにもわんさか居る。

言葉通り、すずかの家にはこれでもかッ!!って数の猫が住み着いてて、俺も最初はビックリしたモンだ。

すずか達と初めて会った日に猫は居るって聞いてたけど、そん時は見かけなかったしな。

後から聞いた話じゃ、忍さんが大事な話しをするからって理由で別の部屋に入れてたらしい。

 

「うん♪皆とっても可愛いでしょ?知り合いから貰ったりしてたら、何時の間にかこんなにいっぱいになっちゃったの」

 

いや、可愛いかどうかは聞いてねぇんだが……まぁ良いか。

 

「アタシの所も、先週新しい子が来たわ」

 

「にゃはは。アリサちゃんのお家は、猫屋敷ならぬ犬屋敷だよね~。今度はどんな子が来たの?」

 

「ミニチュアダックスよ。名前はテリーっていうんだけど、これがまた腕白な子でビックリしたわ」

 

話の流れに乗っかってきたなのはに、アリサは首を振って「やれやれ」って顔をしながら新しい犬の説明を始める。

そう、何故かアリサの家はすずかと違って犬屋敷なのだ。

動物好きなのは親友同士似通ってるらしい。

そうなると、必然的に話の話題は動物の話へと流れていく。

 

「動物と言えば、相馬君のお家は飼ってないんだよね?」

 

「ウチは父さんがアレルギーでな。動物好きなのに、触れないって嘆いていたよ」

 

「あぁ~。確かに動物好きな人からしたら辛いよね。相馬君は大丈夫なの?」

 

「俺と母さんは大丈夫なんだ。だから、父さんは無理してでも動物を飼おうとして、母さんに叱られてたな」

 

「そりゃまた……何ともパワフルな父ちゃんだな」

 

自分の体質的にNGな事を圧してまで動物を飼いたいとか……度胸あるなぁ。

父親の様子を思い出してか、苦笑しながら言う相馬。

ウチも犬を飼おうか迷ってんだが……何時になる事やら。

 

「定明のお家は、動物を飼わないの?」

 

「ん?いや、飼うかどうかっていうより、飼う種類で揉めてるって感じだ」

 

「へ~?ちなみに何が候補に上がってるのよ?」

 

ファリンさんが淹れてくれた紅茶を飲みながらそう言うと、アリサが興味津々って感じで身を乗り出して聞いてくる。

他の皆の視線も向いてるし、こりゃ俺が話す流れだな。

 

「まず、父ちゃんが飼いたいのはチワワかプードルのドッチかなんだと」

 

「チワワにプードルかぁ……どっちも可愛らしいよね。それじゃあお母さんが飼いたいのは何かな?」

 

「ロッドワイラー」

 

「「「「なんでッ!?」」」」

 

母ちゃんイチオシの犬種を述べると、皆して大声を出しながら驚愕してしまう。

まぁその反応が普通だよな。

予想の範疇にあった反応がそのまま出てきて、俺は苦笑を浮かべる。

ちなみにロッドワイラーとは、ドイツのロットワイル地方原産の牧牛用・警備用の犬種である。

もともと闘犬として使われていた犬なので、パワフルでかつ頭の切れる優れた犬達だ。

体躯は大きく、がっしりとした筋肉質で骨太な……まぁ、要はデブマッチョな体格をしている。

余談だが、大人の年齢に達したロッドワイラーは成人男性ですら噛み殺してしまう程に強いらしい。

すずかとアリサは家の両親に会ってるから、尚更そんな犬を飼いたいって言ってるのがあの優しそうな母ちゃんだなんて想像出来ねぇんだろう。

 

「なんでロッドワイラーなワケッ!?普通あの優しそうなお母さんなら、アンタのお父さんが飼いたいって言ってるプードルとかじゃないのッ!?」

 

「まぁ普通はそう思うわな……理由としては、頼れる上に逞しい犬が良いってさ。愛らしさは二の次らしいぜ?」

 

「それにしたって普通は女の人がロッドワイラー飼いたいなんて言わないわよッ!!」

 

「ちなみにどちらかといえば、俺もロッドワイラーが良いかなとは思ってる」

 

何やら不満があるのか猛るアリサに、俺も母ちゃんの案に同意だと応えた。

大型犬の中でも強いし、タフだし、プードルとかの臆病な性格よりはソッチの方が良いだろ。

そう言うとアリサは少し俺を睨んで唸ってたかと思えば、目を瞑って深呼吸をし始める。

 

「スゥ……ハァ……よし。落ち着いた……まぁ、個人の主張をどうこう言うのもアレだし、これ以上は言わないけど、もしも飼うならちゃんと世話してあげなさいよ?」

 

「もし飼う事になればな。まだ母ちゃんと父ちゃんが決めきれてないし」

 

「猫とかは飼わないのか?お前も膝の猫を嬉しそうに撫でてるし、満更でも無いだろう?」

 

念を押す様に忠告してくるアリサにそう返すと、アリサも満足したのか「なら良いわ」と言って再び紅茶に手を伸ばす。

アリサとの話しが終わって直ぐに、今度は相馬が苦笑しながら俺に問う。

確かに相馬の言う通り、膝の上で大人しくしてる猫を撫でるのが嬉しかったりする。

猫は少し気ままな所があるけど、愛らしいって理由では犬と双壁を為す。

 

「確かに好きだけど、ウチじゃまだ猫のペット化は話に上がってねぇな」

 

理由は特に無いはずなんだけど、ウチでは余り猫の話題は上がらない。

っていうか多分、父ちゃんも母ちゃんも犬に重点を置いてて猫の存在忘れてる可能性もあるな。

まぁそんな感じで俺達は動物の話しで盛り上がっていたんだが……。

 

「キュッ!!(ダッ!!)」

 

「あッ!?ユーノ君ッ!!」

 

突如、ユーノが展望室の窓から飛び出して、月村家の裏手にある庭の方へと駆けて行ってしまう。

その光景に驚いた声を挙げるなのはと同じ様に、俺達はユーノが駆け抜けた窓際を凝視する。

何だ?さっきまで大人しかったのに、まるで何かに弾かれる様に突然走り出して……まさか。

 

「等々なのはの胃袋に収まってしまう事を予知して、明日をも知れない自然に飛び出したか……幸福に生きてみせろよ、ユーノ」

 

「その話まだ引っ張るのッ!?何度も言うけど食べないよッ!!私そんな悪食じゃないもんッ!!」

 

俺の繰り出す不意打ちとも言えるボケに対して、打てば響くツッコミを返してくるなのは。

っていうか悪食ってお前、それじゃユーノが不味くて食えたモンじゃないって言ってるのと同じだから。

確かに食用のフェレットなんて聞いた事無いけども。無いけども。

なのはは俺にツッコミを返すと直ぐに立ち上がり、ユーノを探してくると言いながら部屋を出て行った。

 

「じゃあ俺も行って来る。なのは1人だと、何かあった時に危ないからな」

 

「あっ、それじゃあ私達も一緒に行くよ」

 

「そうね。人数は多い方が見つけ易いわ」

 

と、なのはが出て行ったのを見計らうかの様なタイミングで相馬もなのはと一緒に行くと言う。

更にアリサとすずかも立ち上がろうとするが、それは相馬に止められてしまう。

 

「いや、皆はここで待っていてくれ。俺となのはだけで行って来るから」

 

「な、何でよッ!?別に皆で探せばあっという間じゃないッ!!」

 

「アリサちゃんの言う通りだよ。そんな事で遠慮しなくても良いよ、相馬君」

 

まぁ当然の如く、相馬の提案が気に入らないアリサは声を荒げ、すずかは悲しそうな声を出した。

一緒に探そうっていう親切からくる提案を蹴られちゃ、2人だってあんまり面白くねぇだろう。

その一方で、俺は椅子に座ったままその様子を眺めているだけだ。

別に俺は行きたくねぇとかそういうんじゃ無いけど……なーんか引っ掛かるんだよなぁ。

猫に追われる以外では本当に大人しかったユーノがいきなり外に飛び出すという不自然な光景。

動物に詳しいワケじゃねぇけど、どうにもあの行動に納得が出来ないから、ユーノを追っかけても良いモノか悩む。

そもそもユーノ自体が動物として怪しい感じだしな。

 

「2人の気持ちは嬉しいけど、皆で行ってしまったらなのはが申し訳なく思ってしまうと思うんだ。自分が連れてきたユーノが逃げ出した所為で、せっかくのお茶会が中断してしまったってね」

 

「そんな……」

 

「別にアタシ達はそんなの気にしないのに……」

 

いや、そりゃ幾ら何でも無いだろう。

そう思えてしまう相馬の言い分だが、あのなのはならそんな事を考えるかもしれねぇ。

アリサ達も否定してる途中でそう思えてしまったのか、悲しそうな顔を見せる。

そんな2人の様子を見た相馬は苦笑しながらも言葉を続けていく。

 

「まぁもしかしたらって話だけど、なのはがそんな事を考えない為にも、3人はここで待っていてくれ。直ぐに戻る」

 

「あっ!?ちょっと相馬ッ!!」

 

アリサの静止の声も聞かず、相馬は玄関まで猛ダッシュしていき、部屋から出て行ってしまう。

そんな相馬の後姿を手を伸ばしたまま見送ってしまうアリサだったが、不機嫌な顔で椅子に座って腕を組む。

最初は大人しく待っていたんだが、大体10分~15分が過ぎた頃から足で床をタンタンと踏んでリズムを刻み始め……。

 

「……ッ!!……~ッ!!」

 

「ア、アリサちゃん落ち着こう?もう直ぐ帰ってくるかもしれないし……」

 

何やら唸り声を挙げながらイライラしてますって表情を全面に押し出していた。

そんなアリサの様子を見て、すずかは慌てながらも彼女の心を鎮めようと声を掛ける。

どうやらアイツ等が帰ってくるの遅くて待ちきれなくなってきたらしい。

まっ、俺もユーノの不可解な行動の謎が判らねぇ限り動くつもりはな――。

 

「あぁ~もうッ!!定明ッ!!何ボサッとしてんのッ!!アンタもスタンドでユーノを追い掛けて見つけなさいッ!!」

 

「えー……何でだよ?」

 

ところがどっこい、そうは問屋が卸さねぇとばかりに、アリサが俺にユーノの追跡を命じてきた。

え?何で俺がやるの?ちょー面倒くせんですけど。

そう思ってアリサに面倒くささMAXですって視線を向ければ、アリサは腕組みして俺に視線を送ってくる。

 

「相馬はああ言ったけど、幾ら何でも遅すぎるッ!!それにアンタのスタンド能力の……ほら、前に神無月を学校の屋上で気絶させたあのスタンドなら遠くにも行けるみたいだし、ユーノを探すのなんか朝飯前でしょッ!!早く見つけてお茶会の続きするわよッ!!」

 

そう言いつつアリサは、ズビシッ!!と風を切る音を奏でて指を1本立てると、そのまま俺に指差してきた。

しかもハイウェイ・スターを使って、早く終わらせろとご所望の様だ。

あぁ、成る程?自分達が置いてかれたのが気に食わないから、サッサと騒動の種を見つけて連れ戻せって事か。

っていうかマジ面倒くせーんですけど?優雅にここであいつ等が帰ってくんの待ってればそれで良くね?

 

「別に良いじゃねぇか。相馬が任せとけって言ってんだし、俺達はココでゆっくりとお茶して待ってれば――」

 

ズギュンッ!!

 

「 追 い 掛 け な さ い 」

 

『……』

 

ドドドドドドドドドドドド……。

 

渋る俺にスゴ味を効かせた視線で睨みつけながら、アリサはストーン・フリーを呼び出して拳を構える。

何ともはや、アリサの命令一つであの固そうな拳が飛んでくるだろう。

おいおい……この流れって、俺がスタンド出して動かないと延々続くパターンですか……しゃあねぇ。

ここでゴネてアリサの相手するぐらいなら探しに出た方がマシだと判断し、俺は両手を挙げてアリサに降伏を示す。

 

「わあった。わあったからストーン・フリーの拳を納めてくれ。そんなモンがコッチに向いてちゃ、怖くてしょうがねぇぜ」

 

「ダメよ。アンタが『先』に仕事をするの。アタシがスタンドを納めても良いと思える『結果』を出しなさい。スタンドを解除するのはその『後』……シンプルで分かりやすいでしょ?」

 

「……グレートな言い分だぜ、まったく……ハイウェイ・スター」

 

余りにも隙の無い言い分に完全に言い負かされ、俺はササッとハイウェイ・スターを呼び出す。

いや、別に戦おうと思えば戦えるけど、そんな意固地になるほど嫌ってワケじゃねぇしな。

それに、スタンドというアイツ等に見えない力で偵察するってのも、俺に面倒事が降りかからないという点では有力だ。

それなら安全に覗き見できるし、ユーノの正体が何なのか見極めるためにちょうど良い機会だろう。

俺はそういった考えの元に行動をする意志を固め、ハイウェイ・スターになのはの背負ってきたリュックの中身を匂わせる。

ここに来る時にリュックの中に入っていたユーノの臭いを嗅ぎ取らせる為だ。

前に一度嗅いだから、なのはの匂いと嗅ぎ分けるのは簡単に出来る。

 

『クンクン、クンクン……』

 

「え?……定明君、このスタンド……ハイウェイ・スターだったよね?一体何をしてるの?」

 

「何か、匂いを嗅いでる様に見えるけど……」

 

リュックに顔を突っ込んで匂いを嗅ぐというシュールな行動をしてるハイウェイ・スターに疑問を持ったのか、2人は首を傾げながら質問してくる。

 

「まぁアリサの言う通り、ハイウェイ・スターは今、匂いを嗅いで覚えてるんだ。リュックに入っていたユーノの匂いをな。つまり対象の匂いを記憶して追跡していく……それがハイウェイ・スターの能力」

 

そして、ユーノの匂いを記憶したハイウェイ・スターが足跡の形に身体を分解すると、ハイウェイ・スターは窓からその身を外へと飛翔させていく。

さあて、匂いのする方向へと急いでくれよハイウェイ・スター。

 

「ハイウェイ・スターは警察犬を超える嗅覚を持ってる。例え対象がどれだけ遠くに離れても、一度匂いを覚えたら追跡は決して止めないのさ」

 

「どれだけ遠くにって……そんなに鼻が効くの?」

 

「あぁ。本体の俺まで鼻が良くなるぐらいだからな……例えば」

 

窓から飛び去って行ったハイウェイ・スターを興味深そうに見ていたアリサ達に能力を解説しながら、俺はニヤついた笑みですずかに視線を送る。

いきなりそんな笑顔で見つめられたすずかはビクッと怯えながら目を逸らしてしまう。

でも言った筈だぜ?匂いで判るって。

 

「そう例えば……クンクン……すずかが今朝食った朝食が和食で、メニューにキムチがあり、結構な量の魚を食ったってのも分かるぐれーには鋭いぜ?」

 

「ふぇえええッ!?」

 

「ちょっ!?そんな細かい事まで分かるのッ!?もう警察犬なんてレベルを軽く超えてるじゃないッ!!」

 

俺の言葉を聞いたアリサとすずかは目を見開いて驚き、すずかは何故か口元を手で隠して顔を真っ赤にする。

まぁ女の子が直球で「口からキムチとか魚の匂いがしてます」なんて言われたら恥ずかしくもなるか。

俺は自分の発言を少しだけ反省し、すずかに笑顔のまま喋りかけた。

 

「大丈夫だ。臭うとかそんなんじゃねぇって。只単に、今の俺の鼻が鋭すぎてるだけだよ」

 

「それでも気になっちゃうよ~ッ!!ち、ちょっと待っててッ!!」

 

俺がフォローのつもりでそう言うと、すずかは真っ赤な顔のまま反論して叫び、口元を抑えて部屋を飛び出してしまう。

ありゃりゃ……かなり恥ずかしかったみてえだな……悪いな、すずか。

 

「ったく、アンタはデリカシーってモノが無いわね。女の子にそんな事を言っちゃ駄目でしょうが」

 

「いや、全く持ってアリサの言う通りだな。今後は反省しつつ自重してみるぜ」

 

「そうしなさい。まぁ兎に角、そのハイウェイ・スターの能力ならユーノは簡単に探せるみたいだし、アンタは早くユーノを見つけて相馬達の居る所に連れて行く事。動物のユーノだったら、スタンドは見えないから触ってもスタンドの事がバレないでしょ?」

 

「……あぁ……そうだと良いな(ぼそっ)」

 

アリサの上機嫌な質問に、俺は自分にしか聞こえない程度の声量で呟く。

まずユーノが本当に純粋な動物なのかどうかすらわかんねぇからなぁ……出来る事ならなのは達が先に見つけてくれてる事を祈る。

ハイウェイ・スターが足跡に変化して飛んでいったのを見て満足したのか、アリサはストーン・フリーを消して笑顔で椅子に座り直す。

どうやらもう見つかるのは時間の問題と、アリサの中では片付いてる様だ。

信頼の現れって言われたら聞こえは良いけど、この場合どうなんだろうか。

そんな感じで若干能天気なアリサの様子を見て、俺は深い溜息を吐きながら、ハイウェイ・スターを匂いのする場所まで飛ばしていく。

しかし、ユーノの匂いは予想よりも大分遠い場所に居るらしく、ハイウェイ・スターとの距離もかなり開いていた。

まさかあの短い時間でこんなに遠くに移動するとは……しかも匂いがかなり弱い。

仕方ねぇな……よし、少しばかりテレポートさせるとしよう。

俺はハイウェイ・スターに、ユーノの匂いが一番強い大体の場所にテレポートする様命令する。

 

ボンッ!!ボボンッ!!

 

すると、ハイウェイ・スターは一度姿を消し、さっきまで居た場所とは違う雑木林に転移して、地面からユーノの匂いを嗅ぎ分け始める。

この能力はハイウェイ・スターが相手の匂いを覚えた時のみに発動できる能力だ。

対象の匂いが自分と離れてしまった場合において、相手の近くの位置までテレポートしてから、再び匂いを辿って追跡を開始する。

感覚的に伝わってくるハイウェイ・スターの位置は、すずかの家の裏手にある雑木林の中程に差し掛かりそうな位置だった。

そこにテレポートして匂いを再び発見したハイウェイ・スターは足跡の形や円盤の形が集まって形を形成し直し、人型の像をとる。

どうやら直ぐ傍に居るみてえだな。

 

「定明、ユーノ君は見つかった?」

 

「ん。もうそろそろだと思うけ――は?」

 

「?どうしたのよ?」

 

ちょうど良いタイミングで聞いてきたアリサに言葉を返す俺だったが、その直ぐ後に見えてきた光景に、思わず素っ頓狂な声を挙げてしまう。

そんな俺を見て、アリサが訝しげに声を掛けてくるが、俺はそれに返事を返す余裕すら無かった。

俺がハイウェイ・スターを通して見てる光景――。

 

『えっと……これって、どういう事なのかな、ユーノ君?』

 

『多分……あの子の『大きくなりたいって願い』をジュエルシードが叶えた結果じゃないかと』

 

『まぁ、確かに願い自体は叶ってるな……只――』

 

その先、つまり相馬となのは、そしてフェレットのユーノが喋っているという摩訶不思議な光景の先に、更に輪をかけて不可思議な存在がいる。

大きさは優に20メートルはあるであろう体躯に、手入れの行き届いた薄いグレーの毛並み。

つぶらで可愛らしく、そして愛らしい瞳で相馬達を見下ろしながら、『ソイツ』は人懐っこい笑みを浮かべて一鳴き。

 

『――ナァ~ゴ♪』

 

自分を見つけてもらって嬉しそうな鳴き声を挙げる、手足の短い『巨大な子猫』。

『巨大な子猫』とか俺の表現の仕方がおかしいと思えるが、そうとしか表現のしようがねぇんだ。

何せ体長20メートルはある『子猫』なんだし。

 

『もう少し慎ましい『大きさ』だったなら、尚良かったんだがな』

 

そんな愛らしくもデカイ子猫を見上げながら呆然と呟く相馬。

俺も相馬の意見には大賛成だな。

こんな爆盛り級の子猫とか、じゃれつかれたら死にかねねぇっての。

ましてや成長して成体にでも成られたら、下手するとパクッと食われて終わりでしょ。

っていうかおいおい……今さっきジュエルシードつったよね?またここにきて面倒事かよ。

 

「どうしたの定明?何かあったの?」

 

「いや、まだ見つかってねぇってだけだ。もう少し待ちな」

 

首を傾げながら結果の催促をしてくるアリサに返事を返しつつ、俺は胸中でユーノの正体について考察する。

やっぱり、あのユーノってフェレットが、相馬の言ってたユーノって奴で間違い無いって事か……にしても動物が宇宙船に乗ってたなんて、何処のファンタジーだよ。

俺が今まで感じてた違和感、黄金長方形の見えない動物、そして不自然なほど獣の匂いがしない理由。

まだそこまでは考えが辿り着いてねぇけど、おそらくユーノは意志を持った人間に近い存在か何かなんだろう。

今もハイウェイ・スターの視界の先で直立したままなのは達と喋るユーノを見ながらそう結論づける。

しかしそれだけがおかしいって事じゃねぇ。

良く周りを見ると、景色の色がさっきまでと違ってモノクロに変わっている。

まるで時を止めた時に似た現象であり、良く見るとユーノの足元に緑色に光る魔法陣が現れていた。

これって、この前テスタロッサが使ってた結界だよな……そうか、だから途中からユーノの匂いが弱まってたのか。

改めて考えてみれば、ハイウェイ・スターの存在がかなり遠くに感じられるし、結界の中にテレポートしたってワケだ。

 

『て、敵意は無さそうだけど、このままじゃ危険だから元に戻さないと』

 

『そ、そうだよね。あんなに大きかったら、すずかちゃんのお家もエサ代だけでかなり大変になっちゃうだろうし』

 

『いやなのは、問題はそこじゃ無い』

 

なのはのボケっぷりが発揮される台詞に突っ込む相馬。

俺も思わずハイウェイ・スターと動きをシンクロさせて「うんうん」と頷いてしまう。

エサ代云々の前に、世界中からマスコミがこぞって集まるだろうよ。

だがまぁ、あの子猫を大きくしたのがジュエルシードという危険物なのは理解してる様で、なのはの顔付きは真剣なモノになっている。

 

『襲ってこないなら、ササッと封印しちゃおう。相馬君は今回はお休みしてて』

 

相馬に笑顔を向けながらそう言いつつ、胸元から赤い宝石を取り出すなのは。

どうやらアレがなのはのデバイスの待機状態の様だな。

俺はハイウェイ・スターでその様子を見ながら、とりあえず一安心する。

俺は今までジュエルシードの暴走ってのは見た事は無えけど、どうやら今回もすんなりと封印して終わりそう――。

 

 

 

『いや、なのは。どうやらそうも――』

 

 

 

そう思っていた時に、相馬が今までに聞いた事の無い程に真剣な声音で何かを呟いた時――。

 

 

 

バシュウゥウウウッ!!

 

 

 

『言ってられない様だッ!!斬月ッ!!』

 

『承知』

 

ガギィイイインッ!!

 

 

 

なのは達の後方から金色の光線が飛来し、それを相馬が何処からか出したバカデカイ『出刃包丁』の様な剣で切り落とした。

 

『『『ッ!?』』』

 

そのままいけば、件の子猫にブチ当たる軌道だった何かの存在を感知して、俺やなのは達は驚きに目を見開いてしまう。

相馬が弾き落とさなけりゃ、間違いなくあの光は猫に当たっていただろう。

サクッとファインプレーをカマした相馬は地面に着地すると、注意深く剣を構え直す。

 

『斬月、バリアジャケットを展開してくれ』

 

『了解した、主』

 

光の飛んできた方向を睨みながら相馬がそう口にすると、剣から渋い日本語で返答が返り、相馬の姿が光に包まれていく。

やがて、光が完全に納まると、そこには真っ黒の和服に袴、白い足袋に草履という出で立ちの相馬が現れた。

黒い和服に黒い出刃包丁の様な大剣。

どう見てもブリーチの黒崎一護の死覇装と斬魄刀です、本当にありがとうございます。

っていうか、相馬の特典ってそれだったのか……ブリーチ自体、あんまり詳しい事は知らねぇけど。

そんな事を思っているとなのはもバリアジャケットを展開し、何やらメカメカしい杖の様な物を持って、相馬の後ろに立っていた。

なのはのバリアジャケットは白を基調としたモノで、青色のストライプが各所に施されている。

ゆったりとしたロングスカートの終わりにはフリルがあしらわれ、胸元に大きな赤いリボン。

何か、初めて魔法少女らしい出で立ちを見た気がするが……何か、アレに近い服を見た事がある様な……まぁ良いけど。

 

『い、今のって、もしかして……』

 

『間違い無い……魔法の光だった……2人とも、気を付けてッ!!また撃ってくるかもしれないッ!!』

 

いきなり飛来した魔法に困惑するなのはに、ユーノが叫びながら注意を促す。

俺もユーノの言葉を聞いて意識を引き締めると、ハイウェイ・スターを操作して上空へと飛び上がる。

そして、上空から周りを見渡せば――。

 

『――魔導師?』

 

すずかの家の敷地の外、その電柱の上に彼女は居た。

太陽の様な金髪に寂しそうなルビー色の瞳、黒いマントにレオタードという格好の少女。

俺が前に遭遇したフェイト・テスタロッサだ。

まさかココでテスタロッサが出てくるとは……なーんか事態がややこしくなってきたぞ。

 

『……間違いない。僕と同じ世界の住人』

 

『……』

 

バウッ!!バウッ!!

 

ユーノの呟きにテスタロッサは何の反応もせず、構えていたバルディッシュから更に光弾を連射する。

その光は相馬達の頭上を通り過ぎて、今もボケッと突っ立っている巨大な子猫へと迫りゆく。

あのままじゃ間違い無く直撃コースだ。

 

『おっとッ!!』

 

ガギィイイインッ!!

 

だがしかし、それは光線の射線に割りこんだ相馬の剣によって防がれる。

幅広の出刃包丁……斬月の刃の腹を縦にする様に構えて、光線を弾いたのだ。

大の大人並みの長さがある大剣を軽々と扱うとは……相馬も特訓をして、身体を鍛えてたって事か。

足元から黒い影の様なモノを吹き出して空に浮遊する相馬は、自分を見てくるテスタロッサに対して油断無く剣を構えなおす。

 

『……俺達を攻撃せずに子猫を狙った……あくまでも、君の目的はジュエルシードって事か?』

 

『……』

 

相馬の問い掛けに対して、テスタロッサは何も答えず、地面近くに居るなのはと相馬を交互に見やる。

っていうか、俺と会った時とキャラの差が凄いな……いや、俺も最初に会った時はあんな感じだったっけ。

トコトン冷めてるっつーか、ドライっつーか。

 

『バルディッシュと同じ、インテリジェンスデバイス……』

 

『……バルディッシュ?』

 

そして、やっと喋ったか言葉を拾いながら、なのはは困惑した表情を見せる。

まぁ今までジュエルシードの思念体って奴等とは戦ってきても、まさか同じ人間と戦う羽目になるとは思って無かったんだろう。

困惑するなのは、注意深くテスタロッサに視線を送る相馬の2人を前に、テスタロッサはバルディッシュをサイスフォームという鎌の様なモードを展開しながら口を開く。

 

『ロストロギア、ジュエルシード……申し訳無いけど、頂いて行きます』

 

それだけ言うと、テスタロッサはバルディッシュを水平に構えて急降下し、なのはへと迫る。

その速度たるや、さすが速度特化の能力を持ってるだけはあり、かなり速い。

 

『悪いが速度なら、俺も自信は多少あるッ!!』

 

『ッ!?せやッ!!』

 

ギャァアンッ!!

 

だがしかし、なのはへと肉薄しようとしたテスタロッサに、相馬がテスタロッサを上回るスピードで割り込み、剣を振るう。

テスタロッサは相馬のスピードに驚愕しながらも、冷静に対処し、互いのデバイスをぶつけて鍔迫り合いの体勢に持ち込む。

 

『く、うッ!?』

 

しかしここで誤算だったのは、相馬はスピードだけじゃなくパワーもテスタロッサを上回っていた事だ。

まぁあの見るからに重そうなバカでかい剣を振り回してる時点で尋常じゃない筋力だと思うが。

そうやってなのはに向かう筈だった脅威を足止めしつつ、相馬はなのはに向かって叫ぶ。

 

『なのはッ!!この子は俺が抑えてるから、今の内に封印をッ!!』

 

『う、うんッ!!分かったのッ!!レイジングハートッ!!』

 

『AccelFin』

 

相馬の叫びを聞いたなのはは自らのデバイス……レイジングハートと呼んだソレを翳すと、杖から女性の音声で何かが呟かれる。

なのはの足元にピンク色の魔法陣が浮かび上がり、彼女の足にピンクの小さな翼が生え、なのはの体が浮遊する。

うおぉ……スゲエ簡単に空を……魔法って便利なんだな。

初めて魔法らしい魔法を見てテンションが若干上がる俺だったが、ふとこの結界の中にもう一つ別の匂いが混ざって来たのを感じ取り、俺は意識を戻す。

何だ?人間……いや、それにしては獣の匂いも混ざってる……まるでその間って感じがするな。

 

『……させません』

 

『ガァアアアアアアアッ!!』

 

『何ッ!?(ドゴォッ!!)うぐッ!?』

 

『ッ!?相馬君ッ!?』

 

『相馬ッ!!』

 

と、新たな乱入者の匂いを嗅ぎ分けていた時に、空中でテスタロッサを抑えていた相馬の呻き声、そして獣の雄叫びが聞こえてきた。

その声のする方向へ視線を向けると空中に佇むテスタロッサの傍に、かなり大きな体躯を持つ、オレンジ色の狼が居るではないか。

っていうか、あの狼って……そうか、アルフだったのか。

テスタロッサの隣りで、相馬達に威嚇してるアルフを見て納得した。

考えてみれば、この前話した時に、アルフは自分の事を狼の使い魔だって言ってたし、前に見た女性の姿だけじゃなくて、狼の姿にもなれるって事だろう。

一方、先ほどまで鍔迫り合いをしていた相馬は、少し離れた場所で少し苦しそうな表情を浮かべ、手の平に黒い影を宿し、その手を翳していた。

その手の平からは白い煙が若干上がってる……アレで防いだのか?

 

『……ギリギリガードが間に合ったが、少しダメージも貰ってしまったか……油断した』

 

『相馬君ッ!!大丈夫ッ!?』

 

どうにか攻撃を防ぐ事が出来た相馬に声を掛けながらなのはは相馬の元へ戻ろうとする。

だが、それは他ならぬ相馬自身によってストップの声が掛かった。

 

『俺は大丈夫だから、なのはは早くジュエルシードを封印してくれッ!!ここは俺が食い止めるッ!!』

 

『で、でもッ!?』

 

相馬の拒否の言葉に動揺し、どもるなのはだが、テスタロッサはその隙を逃さずに動く。

 

『いくよ、アルフッ!!』

 

『グルアァアアアアアアッ!!』

 

『ッ!?うぉおおおおおおおおおおおおおおおッ!!』

 

なのはと相馬が喋ってた隙をついて迫るテスタロッサとアルフ。

相馬は気合の雄叫びを挙げながら斬月を構えなおし、真っ向から2人を抑えにかかる。

 

『急いで、なのはッ!!ジュエルシードを封印してしまえば、僕達全員で相手出来るッ!!向こうの相手は相馬に任せて、今は目の前の危険を止めるのが先決だよッ!!』

 

『わ、分かったよユーノ君ッ!!』

 

下で事態を見守っていたユーノの指示を聞き、なのはは慌てながらもジュエルシードの元へと向かう。

そのなのはの背中を護り、テスタロッサ達を足止めする相馬……さて、俺もこのまま参戦して、さっさか事態を収拾しちま――。

 

 

 

「何時までアタシを無視してんのよこのバカァアアッ!!ストーン・フリーッ!!」

 

 

 

『オラァッ!!』

 

ゴッチィイイ~~ンッ!!

 

「がッ!!?」

 

しかし、突然頭頂部に走った激痛の所為で、俺は意識をスタンドから切り離してしまう。

俺自身がダメージを負った上に意識を途切れさせた所為か、ハイウェイ・スターの存在もアッサリと消えた。

っていうか……。

 

「~~ッ!?い、いきなり何しやがるアリサッ!!」

 

俺は殴られた頭を両手で抑えたままに、いきなり俺の頭をシバいてくれやがったアリサに食って掛かる。

両手を腰に当てて、俺に「怒ってます」って表情を見せるアリサの傍では、ストーン・フリーが拳を下ろした体勢で待機してる。

コイツ、スタンドのパンチで俺の頭を殴りやがった。

いきなりにも程がある理不尽な攻撃に怒る俺だったが、アリサも負けず劣らずといった具合で怒ってやがった。

 

「何しやがる、じゃないわよバカッ!!さっきからアタシが「大丈夫?」って何回も何回も心配してたのに、肩を叩いても揺すっても全部無視したのはアンタじゃないのッ!!」

 

「仕方ねぇだろッ!!スタンドの操作に集中してたから喋れなかったし、触られたのも感じ取れなかったんだよッ!!っていうかそれにしたっていきなり殴る奴があるかッ!!しかもストーン・フリー使いやがってッ!!」

 

痛いなんてモンじゃねぇんだぞ畜生ッ!!気が緩んでた分、ダメージもデカイんだからなッ!!

だが、俺はアリサの怒りに満ちた言い分もそれ以上の怒りで返す。

確かに無視してたのは悪かったと思ってるが、幾ら何でもいきなり殴られて笑って済ませられる程、俺は温厚じゃねぇ。

俺の怒鳴り声を聞いて、アリサもいきなり殴ったのは遣りすぎと思ってるのか、目が左右に泳ぐ。

ったく、またハイウェイ・スターを結界の中に送り込まなきゃいけねえじゃねぇか。

 

「もうちょっとでユーノを見つけられるトコだったってのに……今からやり直すから、今度はいきなり殴ったりすんじゃねぇぞ?コッチはお前のリクエスト通りに急いで探してたんだからな」

 

「う゛…………ごめん……あんまりにも無視されてたから、つい……」

 

呆れた表情でアリサに釘を刺すと、アリサは両手をグニグニと揉みこみながら目を逸らし、気まずそうに謝罪してくる。

とはいえ俺も悪い所があったワケだし、これ以上強く言う必要も無いだろう。

 

「まぁ、コッチこそ悪かったな。無視する様な対応になっちまってよ……直ぐに相馬達を見つけだすから、もう少しだけ我慢しといてくれ」

 

「……うん」

 

俺もアリサにちゃんと謝罪し、もう1度ハイウェイ・スターを呼び出す。

まだハイウェイ・スターはユーノの匂いを記憶してるから、追跡のし直し自体は簡単だった。

直ぐにハイウェイ・スターはさっきの結界内にテレポートして、再び相馬達の下へと駆けつけたが――。

 

「……ハァ(遅かったか……)」

 

さっきの場所に戻ったハイウェイ・スターの視界に飛び込んできたのは、地面に倒れ伏して息を荒げてるなのはと相馬の姿だった。

彼等の見つめてる先には、ボロボロのバリアジャケットを着て息を吐くテスタロッサと、これまたかなり傷ついてるアルフの1人と一匹が浮遊していた。

しかもテスタロッサ達の姿は既に少しづつ透け始めている。

多分この場所から転移するんだろう……どうしたモンか……。

テスタロッサを取り巻く今の状況を知ってる俺としちゃ、さすがにテスタロッサからジュエルシードを取り上げるのは気が引けるし。

かといってこのままテスタロッサがジュエルシードを集め続けたら、それこそ地球BURNって展開もあり得るし……面倒くせぇな。

 

『……もう、ジュエルシードに関わらないで』

 

『ま、待ってッ!?』

 

と、そんな事を考えていたら、テスタロッサはなのは達に向かって悲しそうな表情で関わるなと言い放ち、目を閉じた。

なのはの悲痛な引き止めすらも意に介さず、テスタロッサとアルフは虚空へと姿を消してしまう。

あー、くそ。考え事してたら取り逃しちまった……仕方ない、今回は見送るしかねぇか。

そんでまぁ、なのは達もジュエルシードが持ってかれてしまった事で一応の決着を迎え、この結界も解除される。

ユーノ以外、つまりなのはと相馬はゼェゼェ言いながらバリアジャケットを解除、元の服装に戻った。

 

『……あの子は、一体?……ジュエルシードの存在を何処で知ったんだ?ユーノは何か分からないか?』

 

『ゴメン……僕も検討が付かない……ジュエルシードの存在は、船が墜落した時に管理局に通報はしてあるんだ。けど、一般の人間には知られてない筈』

 

『だが、あの子は確実にジュエルシードの事を知っていた……目的は分からないが』

 

『うん。ジュエルシードは歪んだ形で願いを叶える、とても危険なロストロギアだ……利用価値があるとすれば、その中に秘められた膨大な魔力だと思うけど……』

 

ハッキリ言って三文芝居も良い所だが、相馬はまるでそ知らぬ顔をしながらユーノにテスタロッサの事を質問する。

まぁ寧ろ、知っている俺達の存在自体が異常なんだけろうけど。

 

『……あの子…………何で、あんなに悲しそうだったんだろう』

 

と、テスタロッサの正体について討議している相馬達には混じらずにいたなのはが空を見つめながらポツリと呟く。

なのはからすれば、テスタロッサがジュエルシードを奪っていった理由と同じくらい、さっきのテスタロッサが見せた表情が気になる様だ。

新たな乱入者の登場により、かなり困惑気味ななのは陣営だが……まぁ相馬が居るんだし、そこまで酷い事にはならねぇだろう。

さあて、そろそろ俺が直接迎えに行ってやるとしますかね。お嬢様もさっきからソワソワしてるし。

俺はここでハイウェイ・スターから視界の同調を止め、さっきから椅子に座ったまま俺にチラチラと視線を送ってくるアリサに視線を向ける。

 

「やっと見つかったぜ。なのはと相馬も一緒に居るみてーだから、俺が迎えに行ってくるよ」

 

俺の言葉を聞いてアリサは満面の笑顔を見せてくれたが、すぐに気を取り直して「は、早く呼んで来なさいッ!!」と言ってきた。

やれやれ、何時もの理不尽なアリサが顔を出しやがった……まぁ、この方がアリサらしいけど。

俺はアリサの機嫌を損ねない様に笑いながら行ってくると言い残して、部屋を後にする。

途中で恥ずかしそうに顔を赤らめたすずかと出会ったんだけど、かなり切羽詰まった表情で詰め寄ってきた。

 

「さ、定明君……も、もう大丈夫、かな?」

 

不安そうな表情で俺にそう問い掛けながら、すずかは口を小さく開いて息を吐く。

すずかが聞いてるのは間違いなく口臭の事だろうが……残念ながら、ハイウェイ・スターの力の前では、かなり薄い匂いでも嗅ぎ分けちまう。

幾らミントの葉っぱを噛んでも無意味なんだよなぁ……まぁ、さっき反省したばかりだし、これ以上は言わねぇ。

 

「大丈夫だ。ミントの良い香りしかしねぇよ……ごめんな、デリカシーの無い事言って」

 

「う、ううん。もう良いよ……でも、もうあんな事言わないでね?すっごく恥ずかしかったんだから」

 

「あぁ。約束するよ。もう二度とやらかさねぇ」

 

「……よろしい♪それじゃあ許してあげる♪」

 

俺は少しだけ苦笑しながら自分の犯した所業を反省し、すずかにもちゃんと謝罪の言葉を贈る。

すずかも俺がちゃんと反省してるのを感じてくれた様で、可愛らしい笑顔を浮かべて俺を許してくれた。

それで何とか今回の事は水に流して貰えたので、俺は再びなのは達の下へと足を進めて行く。

 

 

 

さて……ジュエルシードにテスタロッサの問題、そして来るであろう管理局……問題は山積みだな。

 

 

 

どうにかパパッと解決して、平和な日々を過ごしたいモンだ。

 

 

 

勿論、問題の解決も俺の関係無い所で納まってくれれば、それで万事OKなんだけど。

 

 

 

なんて他力本願な事を考えながら、俺はあいつ等の居るであろう雑木林に向かって歩を進める。

サッサと戻ってクッキーでも食べながらのんびりまったりと洒落込みたいからな。

 

 

 




それと、これからISとか楽逝も書き始めますので、この作品も更新贈れますが、何卒リスナーの皆様にはご理解いただけますよう、お願い申し上げます。

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