ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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最近投稿スピードが落ちてる……誰かヘルペス・ミー


女の前では紳士ぶってるが最低のサイコ野郎だ、反吐がで(ry

「good morning、ジョジョ。もう朝の10時よ。お休みの所悪いけど、起きてくれるかしら?」

 

「ん……?」

 

さっきまで心地よい微睡みの中に居た俺、城戸定明は、普段使ってる目覚ましとは違う声で起こされた。

しかも俺の意識を夢から引き上げる様に身体をユサユサと揺らされている。

何だよ……もう朝なのか……眠い……。

俺はその動作に意識をゆっくりと覚醒させられ、布団から上半身を起こして伸びをする。

 

「ぬぅ~~ッ!!……ハァ……おはよう、母ちゃん……英語で挨拶とか、ちと洒落過ぎじゃねぇの?」

 

眠たい目を擦りながら、俺を起こした張本人である母ちゃんに挨拶をして……ん?と首を捻った。

待て、ちょい待て?……今まで母ちゃんが俺を『ジョジョ』なんて呼んだ事は無いよな?

それに声が大分若いというか……幼い?

何か色々とおかしいというか辻褄が合わないと感じ始めた時、部屋のカーテンがシャッと軽快な音を立てて開かれた。

その音を聞いてカーテンの方に目を向ければ――。

 

「私とお母様を勘違いするなんて……寝ぼけちゃダメよ、ジョジョ?」

 

腰に手を当ててヤレヤレって感じに首を振るリサリサの姿が……ってちょっと待てい。

 

「……何でリサリサが俺の部屋に居んだ?」

 

「あのねぇ……今日はすずか達と一緒にサッカーの観戦に行くって約束してたじゃない」

 

「……あ……そういえば、そうだったな……って時間過ぎてたか?」

 

リサリサの言葉で今日の予定を思い出し、目覚まし時計に目を向けると、確かにリサリサが来る時間になりかけてた。

どうやら俺は物の見事に寝坊してしまったらしい。

まだすずか達が迎えに来るまで時間はあるが、そろそろ準備を始めないとマズイ。

 

「っと。悪いリサリサ。直ぐに着替えて準備すっから、少し部屋の外に居てくれ」

 

俺は直ぐに布団から起き上がって、タンスから服を取り出す。

ササッと準備しとかねぇと、迎えの車が来ちまう。

 

「えぇ。下で待たせてもらうから、早く来てね?」

 

俺のお願いを聞いたリサリサは微笑みを浮かべながら部屋を出ていき、俺はリサリサの言葉に「おう」と短く返事を返した。

そこから直ぐに服を着替え、腰にガンベルトを巻き付け、ホルスターに鉄球を収める。

普段はコレを付けていく事は無いけど、今日は隣町のなのは達が居る場所に行く。

それはつまり、只今現在進行形で起こっている原作イベント目白押しの地雷地帯に自分から足を踏み入れる事以外に無い。

なら少しは防衛手段を増やしておこうと考えたってワケだ。

エニグマの紙に保存しても良いかと考えたが、いざって時に紙から取り出すタイムラグを考えれば、腰に付けとくのがベストだと判断した。

それに警戒しなきゃいけねえのは原作イベントだけじゃなくて――。

 

「オリ主君と鉢合わせする可能性もあるんだよなぁ……面倒くせ」

 

向こうの町で俺の名前を知りつつ、俺に喧嘩売ってくる可能性大なオリ主君の存在が一番困る。

相馬の話じゃいきなり襲い掛かってきたらしいからな……準備しといても損はねぇだろ。

その考えからジャンパーの裏ポケットにベアリング弾も10発程忍ばせておく。

 

「……うし、こんなモンで良いだろ」

 

着替え終えた俺は下の階に降り、洗面所で顔を洗い歯を磨く。

何時もなら着替える前に済ませるけど、今日は仕方ない。

そしてまだ時間が少しあるのを確認してから、俺は軽く朝食を食べる為に居間へ入った。

 

「(ガチャ)悪いなリサリサ、待たせちまっ……」

 

恐らく居間に居るであろうリサリサへと謝罪の言葉を投げ掛けながら居間に視線を向けると――。

 

「うふふ~♪定明ったら、こんな可愛い子と友達だったなんて~♪紹介してくれても良いのにねぇ~?」

 

「あぁ、全くだな母さん。アイツもそういう事が恥ずかしくなってきたのかな。それとも、私達には秘密にしときたかったのか?」

 

「ありがとうございます、お母様、お父様。これからもジョジョ……いいえ、定明君と仲良くさせて下さい♪」

 

「いえいえコチラこそ~♪なんだったら、定明のお嫁さんにならない~?アリサちゃんなら大歓迎よ~♪」

 

ニコニコ顔のリサリサが父ちゃんと母ちゃんと一緒に仲良く談笑してる場面に出くわした。

その光景を見て口が半開きになってしまう俺、何やってんだよ母ちゃん達ぃ……。

 

「そ、そんなお嫁さんだなんて……あ、あらジョジョ?もう準備出来たの?」

 

「あら、定明?おはよう~♪」

 

「おはよう定明。アリサちゃんと約束してたならちゃんと起きないとダメじゃないか」

 

脳天気な事を言ってる母ちゃん達に頭を抱えていると、母ちゃんの言葉に顔を赤く染めたリサリサが俺に気付いて声を掛けてきた。

まぁいきなりそんな事言われたらそういう反応になるわな。

そして、リサリサの声で俺が居間に入ってきたのに気付いた母ちゃん達も俺に朝の挨拶を言ってきた。

俺は母ちゃん達に「おはよう」と返しながら、リサリサに頭を軽く下げる。

 

「あぁ。悪かったな、寝坊しちまってよ」

 

「ま、まぁ仕方無いわ。日曜日なんて、大体の人は普段より遅く起きるものだし、私は気にしてないから」

 

「そう言ってくれっと助かるぜ……朝飯もパパっと片しちまうから、もうちょっとだけ待ってくれ」

 

「え、えぇ。ゆっくり食べてくれて構わないから(き、聞かれてなかったのかしら……ホッ)」

 

俺はちゃんとリサリサに謝罪してから、テーブルの上に並べられた朝食に手を伸ばす。

つっても母ちゃんと父ちゃんは食べ終えてっから、俺の分のフレンチトーストと牛乳が置いてあるだけだ。

手を合わせて「いただきます」と言いながら、俺はフレンチトーストをガブリと頬張る。

俺の分は3切れだけだったからそれも手早く済んで……。

 

ピンポーン。

 

「おや?こんな時間にまたお客さんかな?」

 

「あー、父ちゃん。多分迎えが来てくれたんだ」

 

「そうなのか?まぁ兎に角応対しなくちゃな」

 

俺の言葉を聞いた父ちゃんは居間を出て、玄関に来客したであろうアリサ達の元へと向かった。

俺はその様子を見てから財布の中身を確認して、ソファーに座って待っていてくれたリサリサの元へ近づく。

 

「悪い、もう準備は出来てるから、そろそろ行くか?」

 

「えぇ、私は大丈夫だけど……」

 

「ん?どうした?」

 

リサリサは何故か俺の言葉に苦笑いしながら返事を返してくるので、俺は聞き返す。

 

「ほら。今迎えに来てるのがアリサだったら、貴方のお父様、きっとビックリするんじゃないかなって……」

 

「あ」

 

そういえばそうだった、何て思ってる俺の耳に父ちゃんの驚きに満ちた悲鳴が聞こえてくる。

その悲鳴を聞いて母ちゃんが不思議そうな表情で居間からでれば、更に重なる驚きの声。

急に騒がしくなり始めた玄関の喧騒を聞いて溜息を吐きながら、俺は苦笑いしてるリサリサと共に玄関へと向かった。

 

「もぉ~♪定明ったら、アリサちゃんの他に2人も女の子と友達になってたんだ~♪お母さんにもちゃんと紹介してくれても良いのに。ねぇすずかちゃん?」

 

「は、はい!!いつも仲良くさせてもらってます!!」

 

「しかも皆可愛い子ばかりじゃないか……定明も、随分プレイボーイになってしまったものだなぁ」

 

「か、可愛いだなんてそんな……あの、これからも定明とこうやって遊ぶ事があると思いますので、よろしくお願いします」

 

そして玄関に向かえば、仲良く意気投合して話してる母ちゃん達とすずか達。

アンタ等今さっき会ったばっかりだってのに……まぁ良いけどさ。

 

「おはようさんだ、二人共。迎えに来てくれてありがとよ」

 

「おはよう、すずか、アリサ。今日はお誘いありがとね?」

 

とりあえず俺とリサリサも、アリサ達に朝の挨拶とお礼を言う。

すると、俺達の声を聞いた2人が笑顔を浮かべながら視線を向けてきた。

 

「おはよう、定明君、リサリサちゃん」

 

「うん。ちゃんと起きてる様で何よりだわ。寝坊なんてしてたら承知しなかったんだから」

 

「あー……まぁ、ギリ寝坊にはなってねぇかな?」

 

リサリサと約束してた時間には寝坊したが、2人が来る時間には起きて準備も出来てたから大丈夫な筈だ。

そんな事を思っていれば、隣に居るリサリサがニヤニヤした顔で俺に視線を送ってくる。

……頼むからバラさないでくれよ、リサリサ。

確かに寝坊したのは悪かったと思ってるが、朝から説教されんのは勘弁だ。

 

「フフ♪貸し一つ、ね♪(ぼそ)」

 

「……GOOD」

 

そんな俺の思いを見透かしている様で、リサリサはニヤニヤ顔から一転して輝かしい笑顔で俺に小さく呟いてきた。

俺は若干瞼をピクピクさせながらも、リサリサの要求に従う。

俺が断れないのを理解して尚且つそれを楯に貸しを作るとか……逞しいなぁ、おい。

そんな俺達を不思議そうに見てくるアリサ達に「なんでもない」と言いながら、俺達は鮫島さんの運転する車に乗って隣町へと向かうのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「にゃあッ!?ほ、ホントにアリサちゃんのそっくりさんだったのッ!?」

 

「……い、いやはや驚いたな……ここまでそっくりだとは思わなかった」

 

「何よ、二人共アタシの言う事信じて無かったのッ!?失礼しちゃうんだからッ!!」

 

さて、場所は変わって、ココは海鳴の町の河川敷。

そこの広場にて、現在俺達は先に来ていたなのはと相馬と合流した所だが……。

 

「まぁまぁアリサちゃん。リサリサちゃんとアリサちゃんって本当にそっくりだし、会ってみないと信じ難いと思うよ」

 

なのはと相馬が信じてなかったのが気に食わないのか、アリサは2人の言葉に眉を吊り上げ、そんなアリサを横からすずかが諌めていた。

まぁ原因は言うまでもなく……。

 

「フフ。やっぱりアリサの友達と会うと、こういうリアクション見をせられちゃうのね……初めまして、アリサ・ローウェルよ。気軽にリサリサと呼んでちょうだい♪」

 

「わわッ!?な、名前までアリサちゃんと一緒なのッ!?」

 

2人は名前まで自分の友達と一緒だという事に驚いているが、それでも二人共笑顔で自己紹介をし、俺達の顔合わせは終わった。

そう、大事な顔合わせは終わったので、なのはが笑顔で俺達にサッカー場を指差して口を開く。

 

「それじゃあ皆、お父さんが待ってるから応援席に行こ……」

 

「ちょ~~っと待とうや、なのは?」

 

そして、応援席へと促そうとしたなのはに、俺はストップを掛ける。

ちょっとなのはには大事な大事なお話が残ってるんだよなぁ。

俺がニコニコしながら肩を掴んでストップを掛けると、なのはは不思議そうな顔をして振り返った。

 

「ほえ?どうしたの、定明君?」

 

「いやなに、ちぃと小耳に挟んだんだが……お前、俺の事をDQNネーム君にバラしたらしいじゃねぇか?」

 

「ギクゥッ!?」

 

おい、口でギクッとか……俺の事舐めてんですかね、この子は?

俺の問いかけを聞いて思い出したのか、なのはは冷や汗をダラダラ流しながら明後日の方へと視線を逸らす。

 

「な、なな、何の事かな~?なのは、わかんなーい♪」

 

「(プッツン)……そうかそうか、そんなにそのツインテールを3つの団子に変えられてぇのか、ん~~?」

 

「ごめんなさーいッ!?あ、謝るからサザエさんみたいな髪型は勘弁して欲しいのーッ!?」

 

何故かブリっ子を演じて誤魔化しに掛かったなのはに、俺は極上の笑顔を向けながら肩を掴む力を増していく。

俺の笑顔の迫力にビビッたのか、それとも余程サザエさんヘアーは嫌なのか、なのはは逃げ出そうとジタバタと藻掻き始める。

ちなみに我が背後には既にロボットのような見た目を持ち、体の部分をモンタージュのようにイメージ変換し、人相や運勢を固定する。『シンデレラ』を立たせてたりする。

うん、結構さっきのブリっ子モードが妙にイラッときたからな……コレは断罪だ。

勿論スタンドが見えてるアリサ達は少しギョッとした顔をしてなのはに「ご愁傷様」って視線を向けてた。

 

「次に舐めた事ぬかしやがったら、どれだけいじってもサザエさんヘアーにしかならねぇ呪いを掛けてやっからな?OK?」

 

「OKなのッ!!もう絶対にあんな事言わないから、許してッ!!ねっ!!ねっ!!ねっ!?」

 

「あぁ。許してやろう――――サザエさんヘアーは……な?」

 

「……にゃ?」

 

俺の許すという言葉を聞いて安堵の息を吐くなのはだったが、その直ぐ後に続いた言葉を聞いて猫っぽい声を挙げる。

 

「とりあえず俺の事をDQN君にバラした罪……サザエさんヘアーは可哀想だから許すとして……さっきイラッとさせられた分のおしおき自体が無くなるワケじゃねぇからな?」

 

「それ許せてないッ!?一つも許せてないよッ!?そこは寛大な心で全部を許すべきだと思うのーッ!!」

 

えぇい、いちいちやかましいヤツだな、ったく。

喚くなのはの肩を抑えていた手を離し、即座になのはの側頭部に両拳を当てて待機。

ガッチリと固定された事に、なのははビクッと肩を震わせながら俺に視線を向けてくる。

俺はそうやってビクビクしてるなのはにニッコリと笑みを送りながら口を開いた。

 

「Question。俺がこれから動かすのは……ドッチの手でしょう?」

 

少~しづつ、少~しづつ手に力を込めながら問いかけると、なのははブルブルと震えながら口を開く。

 

「……み……右?」

 

「NO!NO!NO!」

 

「え?……ひ、左……かな?」

 

「NO!NO!NO!」

 

「りょ、りょうほ~ですかぁぁ~~?」

 

「YES!YES!YES!……YES!」

 

「もしかしてグリグリですかぁ~~~ッ!?」

 

「YES!YES!YES!OHMYGOD!」

 

俺は最高のスマイルを見せながら最後の答えを優秀な生徒、なのは=クンに送りつつ、手を高速で左右に回転させる。

この痛みを刻んで少しは反省しやがれってんだ、このおっとり系ドジっ娘めッ!!

 

「オラララオラオラオラオラオラオラオラオラオラァアッ!!!」

 

グリグリグリグリグリグリグリグリッ!!!

 

「ぎにゃぁぁあああああッ!!?」

 

晴れ渡る晴天の大空、朝の清々しい空気に紛れて、なのはの悲鳴が木霊するのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「そうかそうか、君が恭也となのはが話していた定明君か。前にお店で一度会ってるけど、僕はなのはと恭也の父親の高町士郎という。今日は来てくれてありがとう」

 

「あっ、やっぱどっかで見た人だと思ってたんスよ。翠屋だったのか……っていけねぇや。俺はなのはと友達させてもらってる城戸定明っていいます。今日はお誘いありがとう御座います」

 

「ははっ、そんなに畏まらなくても良いよ。これからも是非、なのはと仲良くしてやってくれ」

 

さて、なのはにお仕置きを終えた事で気分がスッキリした俺は、アリサ達と共に応援席へと赴き、そこでチームの監督をしてたなのはのお父さんと挨拶を交わしていた。

何処かで見た事のある人だと思ってたら、翠屋でウェイターをしてた若いお兄さんだったから驚きだ。

何せ士郎さんの見た目ときたら、まだ二十代前半でも通用するってぐらいの若さだったからな。

恭也さんと並んでも、下手したら兄妹に見えそうなレベルだ。

ってあれ?士郎さんがなのはと恭也さんの親父さんって事はもしかして……。

 

「まさか、翠屋で士郎さんと並んで立ってたお姉さんって……」

 

「ん?あぁ。あの美人な女の人は、なのはのお母さんであり、僕の世界で一番大切な奥さんでもある桃子だよ」

 

俺の質問にササッと答えを導き出して、若干の惚気を飛ばしてくる士郎さん。

だが、俺は士郎さんの言葉を聞いて、逆に言葉を失う。

あの人がなのはのお母さんって……どう見てもまだ二十代ちょっとにしか見えなかったぞ。

 

「……若さを保つ秘訣でもあるんスか?」

 

「ははっ。僕も桃子も特に何かをしてるワケじゃないけどね。やっぱり、近所の人達から見てもかなり若く見られてるよ」

 

そりゃ当たり前でしょうに。

はっきり言って子持ちには見えない若さ……いや、それを言うならウチの母ちゃんもか。

何故か父ちゃんは歳相応に老けてっから、近所からはロリコンの称号を送られてたりする……父ちゃんぇ……。

 

「うにゅう~……まだ頭がクラクラするの……」

 

「大丈夫か、なのは?……やっぱり、あの場では巫山戯なかった方が良かっただろ?」

 

「あうぅ。反省するの」

 

「よしよし。定明もアレでお終いだって言ってたから、元気を出せって(撫で撫で)」

 

「ふわ……。あ、ありがとう、相馬君♪」

 

「いいさ。なのはが笑顔を見せてくれたら(キラキラ)」

 

……何で俺はこんな甘い空間を形成してるバカップルの近くに居なきゃならねーんだ?

俺のぐりぐり攻撃で刻まれた痛みに、なのはは頭を抑えながらフラフラしていたが、ソコに相馬が近寄って優しく声を掛ける。

それを享受したなのはは一気に顔を満面の笑顔に染めて嬉しそうにしてるではないか。

更に相馬が笑顔を見せながらなのはの頭を優しく撫でる二重の極み……何だこのバカップル共は?

 

「何かよ。もうササッと結婚しちまえよ、お前等」

 

そんな光景を間近で見せられちゃ、こんな言葉が出るのも仕方ねぇんだ。

 

「うにゃッ!!?け、けけけけけ、結婚ってッ!?な、なのはは別にそにょ……ッ!?」

 

「おいおい定明?いきなり何を言い出すんだよ?」

 

俺の言葉に過剰な反応を示して顔から蒸気を吹き出すなのはと、俺の言葉に呆れた様に首を振る相馬。

そんな2人に、俺は肩を竦めながら呆れたぜって顔を見せた。

 

「別に~?只、傍から見たら相馬となのはって結構お似合いだと思ってよ。なぁアリサ?」

 

1人の言葉で足りないならば増やせば良いって感じに、俺は同じくベンチに座っていたアリサに声を掛ける。

聡明なアリサはそれだけで、これが俺からの振りだと気付いたんだろう。

面白そうだって感じにニヤリと口角を吊り上げて参戦してきた。

 

「ホント、なのはったら学校でもこんな感じなのよ?もうそろそろ「付き合ってます」、ぐらいの報告はあっても良いと思うんだけどなぁ?」

 

「そうだよね。二人共とってもお似合いだと思うもん♪」

 

「ア、アリサちゃんッ!?すずかちゃんッ!?」

 

思わぬ場所からの追加攻撃に、なのはは顔をショックに染めて2人に視線を送っている。

まさかこの場で自分が槍玉に挙げられるなんて思ってもみなかったんだろう。

まぁ2人の顔は茶化す感じじゃなくて、「マジでそう思ってます」って応援してる表情だったけど。

やっぱ親友の恋路ってヤツは気になるだろうし、恋バナってのが2人の好奇心を煽りまくった結果だろうな。

 

「確かにね。今日初めて会った私から見ても、2人はお似合いのカップルだと思うわよ?」

 

「リ、リサリサちゃんまでッ!?リアル四面楚歌状態なのーッ!?」

 

もはや自分の味方は居ないと悟ったなのはが絶望に染まった悲鳴を挙げる。

俺の隣に居る士郎さんに視線を向けるも、士郎さんは士郎さんで「ハハハ、気が早過ぎるなぁ……せめて手を繋ぐのは社会人になってから」とか呟いてるだけだ。

っていうか服を握ってる手に血管が浮き出てるし……ギリギリと服が悲鳴挙げてますけど?

しかも言ってる事が恭也さんとモロかぶりな件について……そういや士郎さん、翠屋でなのは達がイチャついてるの見て血の涙流してたっけ。

何か微妙にバーサークモードに入りかけてる士郎さんから目を背ければ、何故かヤレヤレって感じに首を振ってる相馬を発見。

 

「皆、なのはをからかうのもそこまでにしろよ。大体、なのはが俺を好きなワケ無いだろう?前提から間違って……」

 

おっとー?何か見当違いな事ほざき始めたぞコイツ?

相馬の朴念仁振りに呆れていた俺だが、相馬が自分の持論を語りながらなのはに目を向けると……。

 

「……むー」

 

「な、なのは?どうしたんだ?」

 

「……別に……何でもないもん(プイッ)」

 

当のなのはは不貞腐れた様に頬を膨らませて、焦る相馬からプイッと視線を外してしまう。

いきなり怒りだしたなのはの行動にワケが判らないと慌てる相馬だが、俺達は皆一様に呆れた表情を見せつつ……。

 

「分かってないのは貴方だけよ?」

 

「理解してないのはアンタだけ」

 

「分かってないのは相馬君だけだよ?」

 

「勘違いしてんのはオメーだけだっつの」

 

全員で声を揃えて、同じ感想を相馬に送ってやった。

まぁそんなこんながあったが、その後は皆で士郎さんが監督してる『翠屋JFC』の試合を見ていた。

試合はとても白熱し、相手のチームとの一進一退の攻防ってヤツだ。

俺自身、サッカーはあんまり詳しくルールは知らなかったけど、見てる分には充分楽しめたな。

ただ、試合の途中でこっちの選手が1人怪我して替えが居ないってハプニングがあったんだが、その時にアリサ達に推薦されて俺が出る羽目になりかけたのは焦ったぜ。

まぁ最終的に全部相馬に押し付けたけど。

その後は相馬が皆と協力して負け気味だった流れを完全に変えやがった。

チーム全員で戦う仲間プレイを意識しつつ、個人プレイに走らない遣り方が功を奏し、試合を勝利に導いた。

もう横でなのはがキャーキャー言ってウルセェから、ジッパーで口塞いでやろうかと思ったぞホント。

まぁ兎に角、結果的に翠屋JFCが勝利を納め、彼らは翠屋で祝勝会を開く事となり、俺達もそれにお呼ばれする流れとなった。

 

「……良し、居た」

 

「ん?何だよ相馬?」

 

そして、全員で移動する運びになり、彼らサッカーチームのメンバーが撤収作業をしているのを見ていた時、相馬が誰かに視線を送りながらポツリと呟きを漏らす。

少し気になって、相馬の見てる先に視線を送ると、そこには1人のサッカーチームのメンバーが居た。

 

「アレって、今日活躍してたゴールキーパーの人じゃねぇか?あの人がどうかしたのか?」

 

彼がどうかしたのかと問い返そうと思い、相馬に視線を向ければ、相馬は真剣な表情で彼を見ている。

何故か相馬の隣に居るなのはまでもが、かなり真剣な表情を浮かべていた。

 

「ん?あぁ。ちょっと俺となのははあの人に用事があるから、少し行ってくるよ」

 

俺の質問に答える相馬だが、何やらメンドくせー理由がありそうだ。

ここは係らずに相馬達に任せるのが吉か。

 

「ハァ……まぁ、分かった。じゃあ俺達はここで待ってるからな」

 

「あぁ。直ぐに戻る。じゃあなのは、行こう」

 

「うん。皆、直ぐに戻るからちょっと待ってて」

 

2人は俺達に声を掛けると、片付けをしていたゴールキーパーの少年の元へと走って行く。

その様子に首を捻っていたアリサ達だが、アリサとすずかは直ぐにニコニコした笑顔を浮かべて嬉しそうな声を挙げた。

 

「それにしても、今日はあのバカの顔を見なくて良かったわ。それだけで一日がハッピーに感じるもの」

 

「うん♪もしかしたら来るかもって思ってたけど……本当に良かったよ」

 

アリサとすずかは2人揃って「ねー♪」とか言ってはしゃいでる。

2人が言ってる人物……多分、オリ主の事だろうなぁ。

しかし会わなかったら一日がハッピーって……やっぱトンデモねぇ嫌われ様なんだな。

 

「そういえば……貴女達にご執心な筈の男が、貴女達がココに居るのを知ってて来ないっていうのもおかしくないかしら?……まさかとは思うけど、何処かで待ち伏せを……」

 

「えッ!?嘘ッ!?」

 

「……帰りはノエル達に迎えに来て貰うのに……嫌だなぁ」

 

が、そんなハッピーな気分を崩すかの如く、リサリサが2人にとって最悪な予想を語る。

まぁリサリサの考えも判らないワケじゃねぇが、『それは無い』。

 

「心配要らねえよ。DQN君はどう足掻いたって、俺達の居る場所には『近寄れねぇ』んだからな」

 

「えッ!?ど、どういう事、定明君?」

 

「……もしかして、アイツがここに来なかったのって……定明の仕業?」

 

「おう。俺のスタンドの一つ、黒い琥珀の記憶(メモリー・オブ・ジェット)の能力だ」

 

 

 

――黒い琥珀の記憶(メモリー・オブ・ジェット)

 

 

 

このスタンドは第四部の小説に登場したスタンドで、自身の指定した領域に誰も侵入させなくする能力を持ってる。

ただ、小説版でもスタンドの容姿の説明が無かった所為なのか、コイツには固有のヴィジョンが無い。

ハッキリ言えば、ヴィジョンが無いからスタンドの中で一番超能力ってカテゴリに近いスタンドだな。

今、俺達が居る場所の河川敷は、アクセスするのに両端の道路のどちらかを使うしか無い場所だ。

だから俺は、この河川敷に広がる道路から、およそ1キロ先の両端を指定して能力を使用した。

これで、この河川敷は完全に隔離された場所になっていたんだ。

コレもオリ主君に会いたくないが為に俺が張った予防策だったりする。

オリ主君以外の他の人達もこっちに来る事が一切出来なくなるが、そこは制御出来ないので諦めた。

そう説明してやると、3人は「成る程」と頷いて納得し、俺は笑顔を浮かべながら更に言葉を続けていく。

 

「ちなみに、相馬が前もってDQN君には違う場所を教えてたらしいからな。どっちみち、お前等の言ってるDQN君は俺達に会う事は無えのさ」

 

尤も、コレは相馬が独断でしてた事だから、俺もついさっき知ったばかりである。

その事を伝えれば、彼女達はあからさまに嬉しそうな顔ではしゃいでいた。

そうして少しの間談笑していると、相馬達が戻ってきて俺達と合流し、俺達は翠屋JFCのメンバーと共に、翠屋へと足を運ぶのであった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「……ンめッ。このペペロンチーノマジにうめえよオイ」

 

余りの旨さに笑顔を見せながらペペロンチーノを頬張る俺だが、隣に座るアリサが呆れた様に注意を飛ばしてくる。

 

「コラ定明。ズルズルと音を立てて食べるな。はしたないわよ?」

 

「固ぇ事言うなよな、アリサ。別にどっかの粛々としたパーティってワケじゃねーんだ。これぐらい良いだろ別に」

 

「そういうのは心構えの問題。普段から気を付けてないと、何処かで恥を掻くのはアンタなんだからね」

 

「ヘイヘイ。気を付けるって」

 

はい、只今翠屋の外にあるオープンテラスです。

あっ、勿論この周辺の道路には1キロ単位でメモリー・オブ・ジェットの能力を使用中だ。

オリ主君対策はバッチリな状態でございます。

そのオープンテラスで、俺は腹が減って注文したペペロンチーノの食べ方について、アリサから苦言を頂いております。

おかしい、何故に俺は飯を食うだけで注意されにゃならんのだ?

大体がだアリサ、こちとらお前さん達の様な上流階級とは育ちが違うんだよ。

俺達の遣り取りを傍で聞いていたすずかとリサリサ、相馬はアリサの意見に賛成なのか、小さく笑うだけで誰も擁護してくれない。

ここに俺の味方は居ねーのか。

ちなみになのはは俺達の分を含めたデザートを取りに行っててここには居なかったりする。

 

「まったくもう、アンタは少し相馬を見習った方が良いわ。相馬は普段からテーブルマナーもちゃんとしてるわよ?」

 

「生憎、俺は好きな様に飯を食うし、そんなテーブルマナーの必要なパーティーに出る機会は一生ねぇ」

 

「ハァ……ああ言えば……」

 

「こうも言いたくなるが、何か?」

 

「ぐぬぬぬぬ……ッ!?」

 

食べ終えたペペロンチーノの皿を脇に避けながらアリサをあしらえば、アリサは悔しげにうめき声を挙げる。

へっ。こちたら小学3年生なんだ、ちょっとくらいお行儀が悪くても見逃せってんだい。

いい感じに膨れた腹を擦りながら、俺はテーブルの水へと手を伸ばすが、中身が空だった。

 

「ハイ。どうぞ定明君」

 

「お?サンキュー、なのは」

 

だが、俺が代わりの飲み物を探そうとした時、グッドタイミングでなのはがトレーに乗ってたメロンソーダを差し出してくれた。

俺はなのはにお礼を言ってそれを受け取り、辛味で支配されてた口の中へと飲み込む。

さっぱりとしたソーダの風味が辛味を中和してくれて爽やかさMAXだな。

 

「ふぅ~……ん?何だソイツ?なのはのペッ……非常食か?」

 

「キュッ!!?」

 

「何でッ!?しかも何でペットって言いかけてそっちに言い直したのッ!?」

 

何やらなのはが肩に乗せて連れてきた動物を見ながら、俺は何気なく話を振ってみる。

その内容に驚きを顕にするなのはと、身を竦めてビビる小動物。

ヤベエ、軽い冗談のつもりだったのに……セットでイジると輝くな、コイツ等。

 

「いやだって、お前この前『新しいメニューが増えた♪』って楽しそうに話してたじゃ……」

 

「嘘だよねッ!?前に会った時はユーノ君まだ居なかったよッ!?ってユーノ君どうして逃げようとしてるのッ!?違うからねッ!?怖がらないでよぉッ!!」

 

「おい定明、なのはをあんまり苛めてやるなって」

 

必死に弁解するなのはと、そんななのはの肩の上でビクビク震える小動物。

その光景を見ながら笑う俺と、そんな俺をやんわりと注意してくる相馬。

 

「ワリィワリィ。なのはってイジるとホントに面白れぇから、ついつい遣り過ぎちまうんだ」

 

「全然謝られてる気がしないよぉ……」

 

ケラケラ笑いながら謝るが、なのはは納得がいかないかの様に項垂れて小さく呟く。

何時の間にかなのはの肩の上からテーブルへと移動していた小動物を見ながら、リサリサが口を開く。

 

「この子は……フェレット……なのかしら?」

 

「そういえば、ちょっと違うかも……動物病院の院長さんも、変わった子だねって言ってたし……」

 

「確かに、改めて良くみたら違う気が……」

 

「「「ギクゥッ!?」」」

 

何故かリサリサ達の感想にビクッと飛び上がって驚く相馬達だが、俺もリサリサ達と同意見だ。

何故そう思うかと言うなら、このフェレットらしき動物には『黄金長方形』が見えない。

それはつまり、この動物が自然界で生まれた純粋な動物じゃ無いって事に他ならねぇ。

勿論、それだけが理由じゃ無く……。

 

「クンクン、クンクン……な~んかこのフェレット。『人間』くせぇ臭いがすんだよなぁ~?」

 

「「ギクゥッ!?」」

 

「ふぇ?に、人間臭い?そんなの判るの?」

 

ハイウェイ・スターの能力を使用して鼻をスンスンさせながら訝しむ様な表情でそう言うと、相馬とフェレットだけがビクッとし、なのはは純粋に驚いている。

何かリアクションの違いが気になるが、とりあえず俺はなのはの疑問に答える事にした。

 

「ん~。人間臭いっていうか……コイツからは、動物特有の動物臭さが一切しねぇんだよなぁ……普通はどんなペットでもする臭いだってーのに……何か怪しいなぁ?」

 

「キ、キュ……(ダラダラ)」

 

「え、えーっと……ま、まぁちょっと変わったフェレットって事でッ!!ほ、ほらユーノ君、お手ッ!!」

 

「キュッ!!」

 

「「わぁ~ッ!?可愛い~~ッ!!」」

 

「いや、普通はフェレットにそんな事出来ないと思うんだけど……」

 

「奇遇だなリサリサ。俺もさすがにアレはねぇと思う」

 

まさかのお手という動物芸をフェレットが行った光景に、すずかとアリサは燥ぎながらフェレットのユーノを撫でまわしている。

そんな光景を見ながら、俺とリサリサは益々動物らしくねぇと感じていた。

ってちょっと待てよ?今なのはは、このフェレットの名前を『ユーノ』って言ってたよな?

……確かユーノってジュエルシードを探してるって奴じゃなかったっけ?

おかしいなと、頭に過った疑問に首を捻りながら相馬に視線を向けてみるが……。

 

「……」

 

「相馬?おいどうしたんだよ?」

 

何やら相馬は途方も無く面倒くさそうな表情で、席から離れて道路の向こう側を睨んでいた。

俺も気になったので、皆に断りを入れてから席を立って相馬に近づき、声を掛けた。

だが、相馬は俺の言葉に返事をかえさず道路の向こう側を見続けているのでそれに従って道路に目を向けるが、これといっておかしな所はない。

そもそもメモリー・オブ・ジェットの能力を発動させているから、ここから1キロ圏内に人の影は無いしな。

車すら通らない事に何人かは首を傾げていたが。

 

「……定明、マズイぞ」

 

「あ?……何がだよ?」

 

俺の問いかけを聞いた相馬は声を潜めて、小さく俺にだけ聞こえる様に話してきたので、俺もそれに倣って小声で問い返した。

 

「ここから1キロ先の場所で、神無月がサーチャーという探索魔法を使って、俺達の事を監視してる……お前の顔がバレたぞ」

 

「……冗談じゃねぇぞ、ったく」

 

どうやらこのまますんなりと帰る事は出来なくなってしまった様だ。

相馬の話によると、何故かDQN君が俺達の事を魔法で盗み見てるらしい。

俺は伝えられた面倒事に、思わずデッカイ溜息を吐いてしまう。

 

「やはり、サッカーの行われる場所を違う場所だと伝えるだけじゃダメだったか……そもそも俺達が今翠屋に居るのも、原作のイベントだしな」

 

成る程、サッカーの当てが外れてもココに来れば自動的になのは達に会えると踏んだってワケか。

 

「……ここから先は俺の勝手な想像だけど、良いか?」

 

「……何だ?言ってみてくれよ」

 

随分と真剣な表情で語りかけてくる相馬に、俺は諦めの混じった声音で返す。

今日はバトらねぇワケにゃいかねぇかもしれねぇしな。

 

「定明、俺はお前の特典がスタンドだと思ってる……だから、お前がそうだと仮定しての話だが、お前何か能力を使ってるだろう?俺も今サーチャーを展開して分かったんだが、神無月の奴、ココに向かおうとしては出来なくて、かなり苛立った表情をしてるからな」

 

おぉ、かなり近い所までバレてたか……まぁ、スタンドだけじゃねぇけど。

しっかし、こりゃ参ったぞ……このまま能力を使用してれば、オリ主君に会う事は絶対無い。

でもそれは、アリサとすずかの迎えもここに来れないって事だ。

俺とリサリサも、帰りはすずかの家の車に乗せてもらう事になってるから、さすがに何時までもこのままじゃ困る。

と、いう事はだ……やっぱ俺がオリ主君の相手をするしかねぇか……やれやれ。

俺は頭を振りながら相馬へと視線を移す。

 

「相馬、奴はアッチ側の道路に居るんだな?」

 

「そうだが……どうするつもりなんだ?」

 

「まぁとりあえず……アリサ達が帰るのもそろそろだし、お前はなのはを家に送ってやれ。俺はちと、野暮用が出来たからよ」

 

主にゴミ掃除って野暮用が。

そう言うと、相馬は野暮用の意味を察してくれたんだろう、「1人で大丈夫か?」と心配してくれた。

俺はその言葉に問題無いと返しつつ、少しの間は皆と一緒に談笑に加わっていた。

やがて、アリサとすずかがそろそろ迎えが来ると携帯片手に言ってきたので、俺はドッチから来るのか聞いてみた。

2人は俺の真剣な表情を見て「何でそんな事を聞くのか?」って顔してたけど町の方から、つまりオリ主君とは反対の方から来ると答える。

それを聞いて、俺は直ぐにメモリー・オブ・ジェットをオリ主君の前だけに発動。

反対側から来る鮫島さんとノエルさんが通れるルートを確保する。

これで、俺達は皆問題なく帰れるワケだが……。

 

「ねぇ、ホントに良いの、定明君?」

 

迎えに来てくれたノエルさんの車に乗りながら、すずかが俺に問いかけてくる。

見ればリサリサも俺が一緒に帰らないと言い出して不満そうだ。

 

「あぁ、どうしても俺1人でやらなきゃならねぇ野暮用があってな。ワリイけど先に帰っててくれや」

 

そんな2人に、俺は肩を竦めながら答えを返す。

そう、俺は2人とは一緒に帰らず、1人で家に帰る事にしたのだった。

理由はこの先に居るであろうオリ主君の存在だ。

俺の顔が割れたって事は、このまま俺の住処まで追跡されて家がバレるのは困る。

それに、もし俺の母ちゃんと父ちゃんに手を出されたら……俺はオリ主君を殺しちまう。

考えすぎかもしれねぇが、相馬が既に殺されかけたって前例もある。

なら、不安の種は今のうちにキッチリと排除しておきてぇ。

俺の大事なモンに手を出される前に……再起不能になってもらうとしますか。

まぁそれも全てはオリ主君の態度次第だけどな。

俺は不満たらたらのアリサ、リサリサ、すずかを諌め、皆に何とか帰ってもらう事に成功。

なのはは相馬が一緒に帰るらしく、さっき俺に別れの挨拶をして自分の家へと戻っていった。

帰る時、相馬が真剣な目で俺の事を心配してたけどな。

 

「俺はサーチャーでお前たちの事を見ておくよ……もし、お前が危なくなったら、直ぐに駆けつけるからな……気を付けろ」

 

何て事を帰り際に言われた……心配してくれてありがとうよ、相馬。

友達が心配してくれてるって事に嬉しい気持ちが溢れてくるが、俺は直ぐに頭を切り替えて歩き出す。

目的地は暫く歩いた所にある公園だ。

もうメモリー・オブ・ジェットは解除して、オリ主君は自由に動けるワケだが……。

 

「フゥ……かなり怒ってるな、ありゃ」

 

俺の後方800メートル先で走って俺に向かってきているオリ主君の形相は怒りに染まっていた。

メモリー・オブ・ジェットを解除してからスター・プラチナで後ろを見てたけど、直ぐに見つかったよ。

普通じゃ有り得ない銀髪が良く目立つからな。

こりゃ……戦う事になるな、間違い無く。

とりあえず、今までの相手とは全然違う……俺と同じで、何かの戦闘用の特典は持ってるだろうし……面倒くせ。

この後に起こるであろう面倒事の事を考えながら、俺は憂鬱な気分で人気の無い公園を目指すのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「おいッ!!待ちやがれテメェッ!!」

 

「……」

 

そして、俺が公園に着いた瞬間、オリ主もやっと俺に追い付いた様で、後ろから怒鳴り散らしてくる。

だが、俺は奴の呼びかけに答えず、そのまま公園の中央へと足を進めていく。

 

「テメェ……無視してんじゃねぇぞコラァッ!!!」

 

俺が奴の呼び掛けを無視した事にキレたのか、奴は俺の後ろから足音を荒らげて近寄ってくる。

それだけならまだ良かったんだが……。

 

「オラァ、くたばれぇええええッ!!!」

 

あの野郎、俺がエピタフ(墓碑銘)で予知した通りに後ろから殴りかかってきやがった。

オイオイ……たかが無視しただけで殴り掛かるとか、短気過ぎやしねぇか?

俺もさすがに無抵抗で殴られるのは嫌なので、直ぐ様キング・クリムゾンの能力を使用。

時間を1秒だけ消し飛ばし、奴の攻撃をすり抜ける。

 

「時は再び刻み始める」

 

「ざまぁみやが(ゴスッ!!)ごぶぁっ!?」

 

俺が奴の後ろに周った瞬間、時間が元通りに刻み始め、当たる目標を失って奴は地面へと顔面を強打した。

更にプラスでキング・クリムゾンで軽く奴の頭を殴っておいたから、地面にぶつかるスピードも上がってる。

地面に倒れ込んだオリ主を、俺はその場に立ちながら見下ろし、遂にオリ主と対話を始めるのであった。

 

「ハァ……何か言ったか?俺のケツと話をされてもよぉ~~おケツじゃ聞こえやしねぇ……しかも、いきなり殴りかかられる覚えもねぇんだが?」

 

「こ、この野郎ぉ~ッ!!ブッ殺すッ!!」

 

俺の呆れた物言いが琴線に触れたのか、オリ主は顔中に青筋を刻みながら立ち上がり、即座に俺との距離離して指輪を嵌めだした。

だから短気過ぎんだよなぁ……カルシウム不足し過ぎじゃねぇの?

今正に襲いかかろうとしてる相手に、俺は両手を向けて落ち着かせようと試みる。

 

「おいおい落ち着けって……何をそんなにキレてんだ?っていうかお前誰?」

 

清々しいくらい白切ってるが、向こうは俺が知ってるとは思ってねぇ筈なので、対応的にはこれで良いだろ。

 

「あぁッ!?ンなもんこれから死ぬお前が知る必要はねぇんだよッ!!俺の女達に手を出した事を後悔しながら死にやがれッ!!ギルガメッシュ、セットア『オラァッ!!』ぎゃぼッ!?」

 

俺の質問にも答えず悪態を吐いてきたオリ主の顔を、スタープラチナでブン殴る。

何かセット何とかって言おうとしやがったから、何かしようとしたんだろうが、別にどうでも良いか。

打ち下ろしの様に殴られて頭から再び地面に突っ伏したオリ主に、更に追撃として俺自らサッカーボールキックを繰り出す。

 

「あらよっと」

 

グワシャァアッ!!!

 

「おげぁあああッ!?テ、テテテ、テメェェェ……ッ!!お、俺が変身する前に攻撃するなんて、陰険な卑怯者めッ!!」

 

「は?知るかンな事。そもそもテメエがいきなり後ろから殴りかかってきたのが発端だろうに」

 

俺に蹴り飛ばされ、スタープラチナで殴られた所為か、オリ主は鼻から血をダラダラと流し、それを手で抑えつけている。

何だコイツ?相馬が言ってた様な凶悪っていうか、自分勝手な思考はあるけど、てんで弱いじゃねぇか?

……もしかして変身出来ねえと何も出来ねえのか?それなら変身する前にボコボコにしちまえば良いって事だな。

遣り方はかなりエゲツねぇけど、簡単に人を殺そうとしてくるヤツに遠慮なんか要らねぇ。

 

「お、俺の美しい顔を足蹴にしやがって……ッ!!許さねぇッ!!テメエだけは絶対に許さねぇッ!!テメエをブッ殺した後でテメエの家族も皆殺しにしてやるッ!!」

 

「(ピクッ)…………あ?」

 

ササッと片付けて、厄介事は終わらせようと考えていた俺の耳に、何ヤラ不快デ、フザケタ言葉ガ聞コエテキタ。

オイ待テヨ……今、何テ言ッタンダ、コイツ?

俺が小さく呟きながらオリ主に目を向けると、奴は顔をニンマリと汚く、下卑た表情に変えていく。

 

「へ、へへへ……俺を怒らせやがったんだッ!!お前の家族は足から順に切り刻んで……いや、お前の母親は見た目が良かったら、俺の性奴隷にでもしてやるよッ!!勿論飽きたらグチャグチャにするけどなぁ♪あぁそうだッ!!お前の側に居たあのアリサそっくりの女も、俺がタップリと可愛がって俺専属の愛玩人形にしてや(スパァアンッ!!)……へ?……いぎゃぁああああああッ!!?」

 

下らない上に不快な事をほざき始めたバカの身に付けてる金ピカの指輪が嵌った指だけを、シルバー・チャリオッツで切り落とす。

 

「……もう良い……もう喋るな……空気が汚れちまうだろ」

 

ビービー喚くクソ野郎の悲鳴を聞きながら、俺は静かに口を開く。

誰の家族に手を出すだ?……リサリサをどうするだって?……もう、駄目だな。

 

「ぎぃいいいいいッ!!?こ、このクソウジ虫のモブ野郎がぁあああッ!!?お、俺の指をッ!!デバイスを取ったぐらいで、調子に乗るんじゃねぇえええええッ!!」

 

クソ野郎は唾を飛ばしながら俺に怒鳴ると、上空へと手を翳す。

そして次の瞬間、奴の背後にある空間に金色の波紋が幾つも広がり、そこから様々な刀剣類が姿を表わした。

どうやら奴はまだヤル気らしい……ゴミが何粋がってんだよ。

俺はその光景を見ながら、ジャンパーの内ポケットに忍ばせてきた『手鏡』を取り出す。

俺の大事な家族に手を出すなんて抜かしやがったんだ……あの野郎は、力が無い絶望ってヤツをたっぷりと味わせながらブチのめしてやる。

 

「テメエなんぞに、オリ主であるこの俺様が負けるワケねえんだッ!!ゲートオブバビ――」

 

喚き散らしながら俺に悪意の視線を送ってくるクソ野郎に、俺は手に持った手鏡を翳し――。

 

「ンな事ぁ1ミリ足りとも聞いてねぇんだよ。テメエみてえにゴチャゴチャうるせえヤツはコッチの世界へご招待してやる――――コイツを引き摺り込めッ!!『マン・イン・ザ・ミラー』ッ!!!」

 

奴を、『絶望の世界』へと誘ってやった。

俺がヤツに鏡を翳した瞬間、俺の背後からゴーグルを付けた派手な衣装のスタンド、『マン・イン・ザ・ミラー』が姿を表す。

マン・イン・ザ・ミラーは俺の命令通りに動いて、『俺の身体を鏡の中へと滑り込ませていく』。

そのまま中に入りきる瞬間、マン・イン・ザ・ミラーが鏡の『内側』から手を伸ばすと、奴の腕が片方『消えた』。

クソ野郎はそれに気付かず、俺が鏡の中に消えていく現象に驚いているが、その間にもヤツの身体は足、腕、顔と徐々に『引きずり込まれていく』。

招待してやるぜ、クソ野郎……俺だけの『独壇場』になぁ。

 

「――ッ!?な、何だここはぁッ!?」

 

ヤツの身体全てが引きずり込まれると、クソ野郎は行き成り変わった風景に声を荒げる。

別にさっきまでと場所が違うとかそういうのじゃねぇ……只、全ての色が白黒になってるってだけだ。

空も、物体も……全てが『死んでる』ってだけの世界。

そんな空間に行き成り放り込まれて驚くクソ野郎だが、俺はそれには構わず奴に近づいていく。

 

「テ、テメエ何をしやがったッ!!……ッ!?そ、そうか……テメェ結界を(なのはに気付かれない様に俺を殺そうってか?ハッ、馬鹿な奴だぜ。魔力を使って結界を張るなんざ、気付いてくれって言ってる様なもんだ。すぐに俺の嫁であるなのはが気付いて駆けつけてくるッ!!)」

 

何やら勝手に勘違いしてる様だが、俺はそれに構わず奴との距離を縮め、更に近づく。

マン・イン・ザ・ミラー自身の射程距離は数メートルしかなぁからな……近づかないとブチのめせねぇ。

 

「……」

 

「フン、なのはが来るのを待つまでもねぇ……俺が直々にブッ殺してやるから、精々光栄に思いやがれッ!!ゲート・オブ・バビロンッ!!」

 

俺が近づくのを確認しながら、奴は得意げな顔と声で何かを声高に叫ぶ。

 

シーン。

 

「……ん?ど、どうした?ゲ、ゲート・オブ・バビロンッ!!」

 

だが、奴が叫んだ事で、この世界に何か起きたかと言えば、『特に何も起きていない』。

そりゃそうだ、ここは『鏡の中の世界』であって、外の『現実の世界』とは違う。

 

「ゲート・オブ・バビロン、ゲート・オブ・バビロン、ゲート・オブ・バビロン、ゲート・オブ・バビロン、ゲート・オブ・バビロンッ!!!クソおおおッ!!何で出ないんだよオオオオオオオオッ!?」

 

何度言っても自分の力が出て来ない事に、奴は発狂した様に周りを見渡しながら叫び声を挙げる。

それにも構わずに、俺は奴との距離をマン・イン・ザ・ミラーの射程距離に捉え……。

 

ボゴォッ!!!

 

無言で奴の顔を殴り飛ばしてやった。

 

「ブゲウッ!!?」

 

マン・イン・ザ・ミラーに殴り飛ばされ、奴は近くのゴミ箱にぶつかるが、ゴミ箱はヤツにブチ当たっても倒れない。

奴は苦しげ呻きながら視線を俺に向けてから、何かを探す様にキョロキョロと辺りを見渡す。

そして、何かを見つけると目を見開き、その方向へと駆け出していった。

俺も奴の動きに従って奴の目指す方向に視線を向けると、そこには、俺が斬り落としてやった奴の指輪と指が落ちていた。

恐らく、あの指輪が奴のデバイスなんだろう。この前のテスタロッサが持ってたバルディッシュの様に。

地面に落ちたそれを拾おうとして、ヤツが屈み……。

 

「こ、これがあればッ!!(グッグッ)な、何で持ち上がらねぇんだよッ!?どうなってんだッ!!」

 

地面に落ちたデバイスが、何度やっても持ち上がらない事に焦っていた。

まぁ無理も無いだろう。この世界にある物体は全て、俺にしか移動させる事は出来ないからだ。

俺は少し離れた場所でデバイスを持ち上げようと無駄な努力を続けてるオリ主に、再度距離を詰めていく。

 

「く、くそッ!!くそぉおおおおッ!!テメェ一体何しやがったぁああああッ!!!」

 

そして、俺の姿を確認したオリ主はまたもや俺を指さしながら喚き散らしだす。

はぁ……まぁ、教えてやっても良いか……どうせ、ここでコイツは再起不能になるんだからな。

せめてもの土産に、俺は少しだけ自分の……マン・イン・ザ・ミラーの能力を教えてやる事にした。

 

「……その世界にあるのは全て命の無い物質だけだ。他の生き物は、俺か、俺の許可した生き物だけ……お前は、鏡の中に引きずり込まれたんだよ」

 

そう、これがマン・イン・ザ・ミラーの能力。

『鏡の中の世界』を作り出し、鏡を出入り口としてその中に出入りする事が出来る。

この世界は所謂『死の世界』であり、ここにある物体の全ては俺かマン・イン・ザ・ミラー以外に動かす事は出来ない。

鏡の世界は俺を支点として大体数百メートルってトコだが、俺が動けば鏡の世界の支点も動く。

 

「鏡の中だぁッ!?じゃあ何で俺のレアスキルが発動しねーんだよッ!!大嘘こいてんじゃねーぞッ!!」

 

俺の説明に納得がいかねぇのか、オリ主は更に怒声を挙げてくる。

いちいちウルセェ野郎だな。

 

「俺が何のためにお前をここに引き摺り込んだと思う?お前と一緒に『闘えるモノ』を引き摺り込んじゃあ、俺が危険になっちまうじゃねーか?」

 

「闘えるモノ?……ッ!?ま、まさかテメエッ!?」

 

やっと自分の置かれてる現状を把握したのか、オリ主は顔を真っ青にしてガタガタと震え出す。

そうだ……テメエみたいなゲスは、それぐらい絶望してもらわなきゃ困るんだよ。

 

「ここには、俺が許可した力以外は入る事は出来ねえ……お前『本体』だけを入る事を許可した……他の特別な力は一切許可していないのさ……安全で無敵に振る舞える『鏡の中』……それが俺の能力」

 

そうやって丁寧に説明しながらも、俺は奴との距離を詰めて、マン・イン・ザ・ミラーに攻撃を繰り出させる。

 

「ッ!?ひ、ひぃッ!!?俺の力が出ない――」

 

「テメエの力は『外』に置いてあるんだよッ!!」

 

ズドドドドドドドドドドドッ!!!

 

自分の状況がマズイものだと理解したオリ主は逃げ出そうとするが、俺はすかさずマン・イン・ザ・ミラーでラッシュを叩き込む。

マン・イン・ザ・ミラーは鏡の世界を作り出す事にエネルギーを使っている所為でパワーは貧弱だが、それでも生身の人間とは比較にならない強さだ。

しかも、相手が只の9歳時程度なら、骨をへし折るぐらい造作も無い。

 

ポキッポキッポキッ。

 

「うぎぇええッ!?」

 

殴り飛ばしてやった奴の身体のアチコチから骨の折れる音が聞こえてくる、俺は更に追撃を掛ける。

俺の家族に手ぇ出そうなんて輩は、骨の15~6本はへし折ってやらねぇとなッ!!

 

「これが俺の――『マン・イン・ザ・ミラー』ッ!!」

 

ドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴドゴォッ!!!

 

「ぐぶごぁあああああああッ!!?」

 

奴の全身の骨を叩き折るつもりでブチのめしてやると、奴は最後のラッシュを喰らってベンチへと突っ込んでいく。

だが、オリ主はベンチに倒れ伏しながらも、ズルズルと身体を引き摺って逃げようと試みる。

ちっ、マン・イン・ザ・ミラーは苦痛を与えるには使い易いが、徹底的に傷めつけても中々気絶しない程度の破壊力しかねぇのがネックだな。

更に奴を絶望の中へと叩き込んでやろうと近づいていく俺だったが……。

 

「ひ、ひぃいいいいッ!?も、もう止めてくれッ!!降参するから命だけは助けて下さいッ!!」

 

「はぁ?調子に乗るんじゃねぇよこの屑主野郎が。敵わないと思ったら降参でハイお終い、なんてなるワケねぇだろ」

 

何とこの屑は、恥も外聞も投げ捨てて土下座しながら、俺に命を助けて欲しいと懇願してきやがった。

その呆れてしまう態度に、俺は青筋を浮かべながらアホかと切り返す。

 

「おっしゃる事は分かってますッ!!でも俺は死にたくないんですッ!!もう両腕が折れて凄く痛いし、歯も殆どが折れちまって死にそうなんですぅうううッ!!な、なのは達も全て差し上げますから、命だけは助けて下さいッ!!」

 

差し上げるって……コイツはマジに真性の屑だな。

別にコイツのモノじゃねぇってのにこの扱い方……っていうか人間をモノ扱いしてる時点でアウトだろ。

とは言え、俺自身殺人なんて遣りたくねぇし、こんな屑の為に殺人を冒したなんて十字架を背負うなんて真平御免だ。

かと言ってこのままコイツを野放しにすんのも後から絶対に報復してくるだろうし……大量に枷を嵌めておくか。

 

「……仕方ねぇ、命『だけ』は助けてやるよ」

 

「ほ、ほんどうでずがッ!!?」

 

俺の呆れた物言いに、涙と鼻水を垂れ流したオリ主が嬉しそうに顔を上げる。うん、キメエ。

 

「あぁ、本当だ。但し俺は一切テメエの事を信用して無いから、テメエの危ない特典は全部封印若しくは取り上げさせてもらう。今後一切俺や俺の家族に手を出せない様にな」

 

「あ、ありがとうございま(ドゴォッ!!)ぼごぁッ!?」

 

涙を流しながらお礼を言ってたオリ主を殴り飛ばして完全に気絶させる。

起きてる状態で鏡の世界から元の世界へ戻して闇討ち、なんてされても叶わねぇからな。

ヤツが完全に気を失ったのを確認して、俺はマン・イン・ザ・ミラーの世界を解除させる。

 

「とりあえず、ヘブンズ・ドアー」

 

そして、元の世界に戻って俺がやった事は、まずヘブンズ・ドアーで安全装置(セイフティーロック)を掛ける事だった。

内容は俺は勿論、俺の家族やリサリサ、アリサやすずか、相馬やなのは達への攻撃は出来ない事。

更に俺達の半径5メートル以内には近づけないし話も出来ない。

翠屋にも、あいつ等や俺が良く立ち寄る場所には絶対に来れないと書き込んでおく。

要はコイツが嫌いな俺達に干渉出来ない様に書き込んでやったってワケだ。

さすがに5メートル以上だと、学校での生活が送れねぇし、そうなると教師とかも介入してきて話がややこしくなりそうだから無理だがな。

そして、奴の記憶を読んで情報を漁ると、奴の特典の最後が分かった。

ゲート・オブ・バビロンとかいうヤツが言ってた名は、宝具という危ない代物の原典が詰まった異次元の宝物庫。

簡単に言うと戦闘用の転生特典だ。

とりあえず、コレはコイツには勿体無いので、ホワイト・スネイクでDISC化を試みた。

何とアッサリとDISCに出来たから驚きである。

まぁコレでコイツの危ない力は奪い取ってやれたので良しとする。

次に、コイツの使ってるニコポ・ナデポは完全封印して、効力自体を打ち消してやった。

これは簡単に言えば、対象に使う暗示とか呪いの類に近いので、この場で封じてやった時点で、学校に居るコイツの取り巻き達は正気に戻るだろう。

コイツに好きな子取られて転校してしまったという男子の仇は、これで取れたな。

そんでもって、コイツはどうも魔導師ってヤツらしく、リンカーコアという魔力を生成する器官があったのでこれも完全封印。

これでコイツは完全に普通の人間になったワケだ。

 

「後は……どぉ~れ、『便所そうじ』でもしてもらうか」

 

公園の隅にあったある場所を見て閃いた俺は、ニヤニヤしながらオリ主に命令を書き込む。

最後に、俺は気絶してるオリ主にヘブンズ・ドアーである命令を書き込み、奴の記憶を閉じてやる。

俺の大事なモノに対する侮辱を篭めた台詞に対する報復は、これでチャラにしてやるか……。

 

「でもやっぱり、あれはよぉッ!!かなりムカついたから台詞だから、痛みだけはタップリと味わってもらうぜッ!!『黄金体験(ゴールド・エクスペリエンス)』ッ!!」

 

でも、思い返してみればかなりムカついたので、俺はてんとう虫をモチーフにした近距離パワー型スタンド、黄金体験(ゴールド・エクスペリエンス)を呼び出し……。

 

『無駄ァッ!!!』

 

ドゴォッ!!!

 

気絶してるオリ主に強烈なパワーで拳を叩き込む。

これで終わり……なワケはねぇよな、こっからもう一つ痛みを味わいな。

俺はブン殴ったオリ主に対してゴールド・エクスペリエンスの能力を発動させる。

コイツの能力は殴るか触れるかした物質に生命を与え、地球上に存在する動物や植物に変える能力を持つ。

生み出す生命の種類は俺が認識・理解している限り無限(絶滅種や空想上の生物は無効)に生み出せる。

この能力で生まれた命は、俺の意思で成長や死が自在であり、瞬時に生み出したり時間差で遅く生み出したりすることができ、命を失うと再び元の物体に戻る。

また、生み出された生命は生み出す前の物質の持ち主のところへ戻っていく習性がある。

要約すれば、ゴールドエクスペリエンスの能力は物質に生命を与える能力だが……これを『生きた人間』に与えるとどうなるか?

 

「最後に一発、鋭い痛みってヤツを……味わいやがれ」

 

それは、元々生命を持っている者に過剰に生命を与えることで、相手の感覚だけを暴走させる事が出来るんだ。

これを使えば、例え気絶していても痛覚がとても敏感になる。

更に、身体の感じる世界の感覚が遅くなっちまうので、鋭い痛みがゆっくりとやってくるのだ。

俺はそんな拷問にも等しいパンチを、オリ主の顔面に撃ち込み……。

 

ズドォオオッ!!!

 

思いっ切り殴り抜けて、公園の隅にある『公衆便所』の中へと叩き込んでやった。

 

「あ~スッキリしたぜ……さて、帰るか……そうだ、おいDQNネームッ!!舐める様に『便器』を綺麗にするんだぞッ!!舐める様にッ!!ぬアアアめるよォオオオオにィィィィッ!!だよん♪」

 

気絶してるであろうオリ主に俺はニヤニヤしながらアドバイスを飛ばし、ルンルン気分で公園を後にする。

 

 

 

え?ヘブンズ・ドアーで最後に何を書き込んだのかって?

 

 

 

ん~……まぁ大した事じゃねぇよ?

 

 

 

『便所の便器を全て、舌でベロベロ舐めてピカピカにする』ってだけだぜ?

 

 

 

ほら、別に大した事じゃねぇだろ?

 

 

 

 

 

――2日後、相馬から電話が掛かってきて、オリ主君が全治4ヶ月の重症で病院に担ぎ込まれたそうな。

それと発見された時は公衆便所で口の周りに大量の排泄物を付着させていて、危うく肝炎になりそうな状態だったらしい。

身体もアチコチの骨が折れたりしてて、回復には時間が掛かるとか。

学校じゃ通り魔にやられたんじゃないかと噂されてるそうだが、誰も特に心配してないと。

驚いた事にあれだけオリ主を追い掛け回してた女子も誰も心配してないそうだ。

 

「いや~、世の中ってホント怖いな?いたいけな小学生をそこまで叩きのめすなんてよ」

 

相馬に笑いながらそう言う俺だったが……。

 

『……定明、頼むから節度と加減というものを覚えてくれ』

 

と、何故か真剣な声で懇願されてしまうのだった。

いや、別に悲しんでるヤツが居ないならそれで良いんじゃね?

奴はそれだけ、俺を怒らせたって事なんだからな。

 

 

 




う~ん……もう少し徹底的に叩きのめした方が良かったかも?

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