ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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中々ストーリーが固まらない……ちくせう


お茶でも飲んで……話しでもしよ(ry

 

 

「さて、相馬の言ってた通りなら、そろそろの筈だけど……」

 

学校も終わった夕方過ぎの寛ぎの時間。

俺は自分の部屋で椅子に腰掛けながら、来ると約束していた相馬を待ってる。

今日は色々と話しをする為に、少し遅い時間まで居たいらしい。

コッチはとりあえず母ちゃんと父ちゃんに話を通して、夕食は一人分多く作ってほしいと頼んでおいた。

なので俺側の準備は万端なワケだけども……。

 

「……おっかしいな……もう5時は軽く過ぎてるぞ?……アイツ約束忘れてんのか?」

 

約束の時間を過ぎても、相馬の奴は中々姿を現さずで俺は少し待ち草臥れてきてる。

ったく、指定してきたのは向こうだってのに何やってんだか。

こうしてても時間が勿体無ねぇなぁ……良し、ココ最近やってなかったスタンドの制御練習しよう。

俺ももっと上手くスタンドを使えるようにしとかねぇと、アリサ達に抜かれるかもしれねぇしな。

 

「そうと決まればさっそく……法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)

 

暇つぶしとばかりに俺が呼び出したスタンドは、全身がエメラルドグリーンに輝く遠隔操作型スタンド、法皇の緑(ハイエロファント・グリーン)だ。

見た目的には緑の身と白っぽい筋という、正に『光るメロン』って表現がピッタリ嵌る。

だがしかし、ハイエロファントの強さは遠隔操作型の中ではかなり上位クラスの性能を持ってる。

操作範囲は100メートルとかなり距離がある上に、破壊のエネルギーヴィジョンである『エメラルド・スプラッシュ』は強力無比の破壊力を誇る。

人型のヴィジョンの時は手の平から溢れる緑色の液体が固まってエメラルド・スプラッシュを撃ち出すが、それは人型で無くとも使える。

 

「時間も惜しいし、ハイエロファント。『結界』を張れ」

 

俺の命令に従ってハイエロファントは足先から身体を紐状に変え、部屋中に結界を形成した。

そう、ハイエロファント・グリーンの特徴は、体を人型から紐状(実際は帯状に近い)に分解して活動できる遠隔操作型のスタンドって事だ。

スタンド自体が長大に伸びていくから、射程距離がとても広い。

更に紐状になった状態では人間の体内に潜り込んだり、射程を生かして至る所に張り巡らし、触れるとエメラルド・スプラッシュを発射する結界を造ることができる。

俺が今ハイエロファントを操作して張った結界がそれだ。

もし今この結界に触れたりしたら、触れた者にエメラルド・スプラッシュが降り注ぐ事になる。

 

 

 

まぁもしもの為に結界はベットの上だけに展開したし、エメラルド・スプラッシュ自体のパワーは弱めてあるから、精々エアガンに乱射された程度の痛みで済むだろうけ――。

 

 

 

「(パアァッ)すまない定明、遅くな(カチッ)――」

 

「あっ」

 

ドババババババババババババッ!!!

 

……こーゆう場合、どう慰めたら良いんだろうか?

 

 

 

「――まぁ、遅れたのは俺だし、定明が暇になって力の練習をしてたってのは納得できる……只、幾ら何でもあの仕打ちは無いと思うんだが?」

 

「いや、ホントにすまねぇ相馬。まさかあんなドンピシャなタイミングでベットの上に転移してくるとは思わなくてよ」

 

俺のベットに寝転んで……いや正しくは起き上がれないので寝てる相馬が俺に愚痴を飛ばしてくる。

そんな不満たらたらの相馬に対して、俺は頭を下げて謝罪する他無かった。

さっきの状況を詳しく説明すると、まず相馬が何故かベットの上に転移してきた。

そして相馬の頭が運悪くハイエロファントの結界にタッチ、スイッチ発動。

真上からナイアガラの滝の如き勢いでエメラルド・スプラッシュが相馬に降り注いだってワケだ。

あれはホントの意味でゼロ距離射撃だったよ……触れてる結界から直で撃ち込まれてんだもんなぁ。

 

「次から気を付けてくれよ?それと、俺も遅れて悪かった」

 

「いや、ここはいっそ互いに悪いって事にしとこうや。俺もマジで悪かったな」

 

疲れた様に身体をベットから起こす相馬と互いに謝罪し、互いに苦笑しながら顔を合わせてしまう。

 

「しかし相馬よぉ、何でまた遅れたりしたんだ?何かトラブルでもあったのかよ?」

 

俺は部屋の隅に設置してあったジュース用の冷蔵庫から午前の紅茶を取り出しつつ、背中越しに問いかける。

向こうから時間指定してきたんだし、都合事態は付いてた筈だからな。

飲み物を取り出した俺は相馬に向き合い、彼に紅茶のペットボトルを一本投げ渡す。

相馬はそれを華麗にキャッチすると「ありがとう」とお礼を言いながら、紅茶を口に含む。

 

「ゴクッ……フゥ……いや、実は出る直前になのはが何処に行くのか問い詰めてきてな。それを諌めるのに時間が掛かってしまっただけだ」

 

「なのはに?なんだ、一緒に居たのか?」

 

「一緒に居たというより、転移しようかと思ってたら念話で話し掛けられたんだ。さすがにお前の事を教える訳にもいかないし、適当に女友達に会いに行くと言っておいたんだが……」

 

待て、ちょっと待て?それってどう考えても死亡フラグだと思うぞ?

その時の様子を思い出しながら語っている相馬の顔に一筋の冷や汗が流れる。

……まさか、心当たりがあんのか?

ちょっとした好奇心から、俺は相馬に真剣な表情を浮かべてゆっくりと質問してみた。

 

「……なのは、何か言ってたか?」

 

「な、何かというよりは、その……凄く冷たい声で『ふぅん……そうなんだ……明日、ゆっっっくり……オハナシしようね?』としか言われなかった……」

 

「お前それ間違いなくカチ切れてるだろ?そんな状態のなのはを放っておいて大丈夫なのか?」

 

「……大丈夫だ、問題ない」

 

嘗てこれほど頼りない大丈夫って台詞は聞いた事ねぇんだけど?

 

「一番良い(防御)装備を頼む」

 

「俺は武具屋じゃねぇ、ってかお前全然ダメじゃねぇか」

 

微妙に震えながら儚い笑みを浮かべる相馬。

ヤベエ、気の所為か薄っすらと相馬の背後に死相が見えてるんだが?

俺としては助けてやりたいトコだが……人の恋を邪魔するヤツは馬になんとやらって言うしな。

うん、野暮な事はしないでおこう、それが俺の為だ。

目の前で震える友をアッサリと見捨てて、俺は椅子に座り直す。

 

「まぁそんな事は置いといて、早速だけど聞かせてくれよ、相馬……プレシア・テスタロッサのやろうとしてる事、そしてソレに伴う地球の具体的な被害ってヤツを」

 

「いや、俺からしたら命に関わりそうな話しなんだが……」

 

知らねーよンな事、全てはなのはの嫉妬を煽るような言い方したオメーが悪い。

明日からの事を想像して項垂れる相馬の愚痴を無視して、俺はサクサクと話を進める様に催促する。

さて、一体どんな理由があってこの地球が危険に陥るんだろうか?

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「――と、以上がプレシア・テスタロッサの目的だ」

 

話し始めてから凡そ30分程経って、相馬は話を締め括る。

そのまま相馬は一息ついて、手に持っていた紅茶をグイっと煽った。

 

「成る程なぁ……ありがとよ、長い話しをしてくれて……まっ、これでも食ってくれ。夕食までの軽い繋ぎだがな」

 

俺は話疲れたであろう相馬を労いながら柿ピーとチーズおかきの入った盆を勧める。

相馬は「サンキュー」と言いながらそのお菓子に手を伸ばす。

俺も同じ様にチーズおかきを頬張りながら、天井に視線を向けて考えこむ。

誰も喋らないから、部屋にはポリポリと菓子を食う音のみが響く。

しっかし……参った……軽い気持ちで考えて聞いちまったけども……。

 

「まさかそのプレシアって奴の目的が……自分の娘を『生き返らせる』たぁなぁ……ヘビーな話だ」

 

座っている椅子に更に体重を掛けて深く沈み込みながら、俺はどうしたもんかと頭を悩ませる。

プレシアの目的……それは、自分が手がけていた魔法のプロジェクトで死亡した『唯一』の娘である『アリシア・テスタロッサ』の蘇生。

その為に地球にユーノって奴が乗ってた宇宙船を攻撃して、地球に『落とさせた』ジュエルシードを掻き集めているそうだ。

……『娘』、では『無い』フェイトを利用して……。

 

「あぁ……その辺りを知ってるから、そうにも俺はフェイトって子とは戦いたく無いって気持ちがあるんだ……」

 

俺の愚痴を聞いた相馬は若干疲れた顔でそう呟く。

まぁ確かにあの子……テスタロッサの『未来』を知ってる相馬としちゃあ、これから先戦い辛いだろうな。

 

「確かに、ジュエルシードをフェイトに渡したらヤバイのは分かってる……だが、あの子が幾つか集めないと……恐らくあの子は、プレシアの逆鱗に触れる……くそっ」

 

相馬の言いたい事は判る。

確かにジュエルシードをなのは達と集めなきゃ、ヘタすると地球が滅亡する可能性が早まっちまう。

原作ではフェイトになのはが襲われて、ジュエルシードを奪われる事もあるらしいが、この世界には相馬が居る。

相馬も特典を貰ってる身としては、もしフェイトと戦っても簡単にはやられないだろう。

現に俺は問題なく勝てたしな。

だが、かといってフェイトにジュエルシードを渡さずに勝ち続ければ、フェイトはプレシアに嬲られてしまう。

相馬の話しなら、プレシアはソコに躊躇しない……娘と『思ってない』からだ。

事情を知ってる身としてはそれが見逃せないって事なんだが……。

 

「……せめて、ジュエルシードの強さが違った様に、プレシアがフェイトを虐待して無い事を祈りたい所だ……」

 

相馬はそう言って項垂れるが……その望みは叶えられそうも無い。

俺は実際にテスタロッサの身体に無数の傷跡が刻まれてるのを見ちまってる。

……ヤッパ、これは相馬に教えておいた方が良いかもな……あの時、ホントは何があったのかを。

 

「……悪いな相馬、実はこの前言ってた話なんだけどよ――」

 

俺はこの前起きた出来事を包み隠さず相馬に話した。

本当は俺がジュエルシードを発見し、そこにテスタロッサが現れた事。

話しを聞いてくれる雰囲気じゃ無かったので止むを得ず倒した事。

事情を聞く為に介抱して話し合い、言葉を交わした事も、虐待されてた事も含め全てをだ。

一応、俺のスタンド能力の事は話さずに置いてある。

理由としてはまぁ、相馬に教えて余計な面倒が増える可能性を防ぐ為。

相馬の口が固いのは良く知ってるけど、何時何処でバレるか判らないからな。

相馬もその辺りは理解してくれてるのか、俺の能力に対しての追求はしてこなかった。

まぁジョジョってアダ名で大体の事は察してるだろうけど。

 

「――ってワケで、俺はテスタロッサにジュエルシードを渡したんだ……悪いな、こんな事黙ってて」

 

この前の事情を語り終えた俺は相馬に頭を下げて詫びを示す。

実際、俺は相馬に嘘を付いてたわけだし。

 

「いや、お前が謝る必要は無いよ……確かに、その時のお前からしたらフェイトにジュエルシードを渡した方が都合も、気分も良く終われただろうし」

 

「まぁ、な……俺としちゃこの町からジュエルシードさえ運び出してくれればそれで構わねぇし、さすがにあんな傷を見ちまったら……渡さないと後味が悪くて仕方なかった」

 

頭を下げて謝罪する俺の肩を叩きながら、相馬は微笑んで俺に声を掛けてくれた。

俺としてはかなり怒られると思ってたんだが、少し肩透かしを食らった気分だぜ。

 

「しかし、そうか……やはりフェイトは虐待を……」

 

「少なくとも、お前の話と照らし合わせればまず間違いねぇな」

 

身体に刻まれた無数の線傷、そして痛々しいミミズ腫れの跡……確実に鞭で付けられた傷だった。

オマケに相馬の話てくれた原作の通りなら、アレはプレシアに嬲られた跡って事になる。

知識だけとは言え、小さな子供が嬲られてるのを知ってる相馬はソレを止められないのが悔しいと零す。

 

「せめて、何とか止める切欠が掴めれば……」

 

「でもよ?実際今の段階でお前に出来る事って、なのは達とジュエルシード集めるくらいじゃね?まだ会った事も無いテスタロッサを助けるなんざ無理だろ」

 

「……悔しいがお前の言う通りだ……だからせめて、幾つかのジュエルシードは原作通りフェイトに取らせるしか無い」

 

あーでもないこーでもないと話しを少しづつ聞きながら、俺は相馬に幾つかのアドバイスを出す。

基本俺は表に出て戦いたくなんてねぇし、管理局とやらの遣り口を聞いてたら余計関わりたく無くなった。

だからまぁ、俺の今後取る方針は依然変わらねぇし、テスタロッサの救済とジュエルシードの確保は相馬に任せる。

冷たい様だが、俺だって一回会っただけの子の為に人生賭けるつもりは欠片もねぇからな。

そのまま俺と相馬は話し合い、というか互いの現状確認を済ませて、母ちゃんが作ってくれた晩ご飯を一緒に食べた。

母ちゃんと父ちゃんは相馬を気に入ってくれ、「また何時でも遊びに来なさい」とまで言い出してる。

相馬も笑顔でそれに応え、今度は俺に家まで来てくれと誘ってくれたので、俺も何時か相馬の家にお邪魔しよう。

 

「ふぅ……ご馳走様だ、定明。おばさんとおじさんにもよろしく言っておいてくれ」

 

そして時間は午後7時を過ぎた頃。

やはり相馬も小学生なので、そろそろ家に帰らないとマズイ。

っていうか普通はもう遅い時間なワケだが、今日は相馬の両親が遅く帰るとの事なので、まだ言い訳は効くらしい。

 

「あぁ。また来てくれ。今度は普通に遊ぶ目的でな?」

 

「そうだな。今日は話し合いばかりで遊べなかったからな……学校じゃそんなに親しい男友達が居なくて、こーいうのは何か嬉しいな」

 

「は?ダチが居ねぇ?どーゆうこったそりゃ?」

 

ベットに腰掛けて恥ずかしそうに頬を掻く相馬の言葉に俺は首を傾げる。

アリサ達の話通りなら、相馬は学校の奴等に好かれてる筈なんだが……。

 

「いや……ウチの学校って、神無月のニコポに堕ちた女子とか女教師が大半でな……その神無月に面と向かって反論してる俺は、何時も目の敵にされてるのさ」

 

「……男子の友達は何で居ねぇんだ?まさか男のオリ主君に惚れてるワケでもあるまいに?」

 

「ん?あぁ。確かに男子の大半は神無月を嫌ってるんだが……俺に加担して、他の女子から槍玉に上げられるのを怖がってるんだ」

 

おいおいそれって……。

 

「所謂、長い物には巻かれろ主義ってヤツか?」

 

「端的に言うと、そうなる」

 

「こいつぁまぁ……でも仕方ねぇか……俺達みてーに、オリ主君に立ち向かう力がある訳でもないんだしな」

 

聖祥の男子達の様子を聞いて呆れそうになるが、それも仕方無いと思い直し、相馬も俺の考えに頷く。

俺や相馬みてーに、神様に強い力を貰ったなら言える事で、普通の人にはオリ主君に逆らう事は出来ない。

俺だって一般的な力しかなかったらオリ主君に逆らえず今の男子達と同じ事をしてたし、アリサ達を助ける事なんて夢のまた夢だ。

だから、聖祥の男子達を卑下する資格は、俺には無い。

 

「まぁそれに、最近神無月の鼻が曲がってきた所為でなのか、ニコポの効果が落ちてきてる。女子も少しづつ正気を取り戻して神無月から離れだしてるんだ」

 

「へぇ?ならオリ主君の学校天下もそろそろ終わりか……ってそういえばよ、今日はオリ主君学校に来てたのか?」

 

今になって、相馬に聞きたかった事を思い出した俺は、相馬に質問を飛ばす。

そう、実は今日、日曜日のサッカー観戦の時に遭遇しない様にオリ主君の養分を吸い取ってしまおうと考えていたんだが、彼は学校の何処にも居なかったんだ。

アリサとすずかに見つからない様に隠れて動いてたから全部を見れた訳じゃねぇけど、少なくとも俺の視界には映らなかった。

普段はアリサ、すずかやなのは達にストーカーの如く付き纏ってるって話しだったのに見当たらなかったから不思議に思ってたんだよな。

 

「あぁ……神無月なら、朝の体育の授業ですずかにノックアウトされて早退してたぞ?」

 

「は?体育の授業でノックアウト?一体どんな状況だよソレ?」

 

「いや、俺にもよく理解出来なかったんだが……今日、俺達は体育の授業でドッチボールをやってたんだ」

 

「ふむふむ?」

 

「それで、すずかの投げる球って、実はとんでも無い速さと強さがあってな」

 

帰る準備を一旦止めて、身振り手振りを駆使しながら話す相馬に、俺は相槌を打って続きを促す。

まぁすずかは夜の一族だけあって、身体能力が大人顔負けなスペックだしな。

だからすずかの投げる球が凄いってのも頷ける。

 

「その豪速球を神無月が顔面で受けた……でも、ドッチボールじゃ顔面はセーフだろ?」

 

「まぁ、な……何かオチが読めた様な……」

 

「だから神無月はアウトにならなかったんだが……『何故か』すずかの手元にボールが綺麗に戻ってきてな……当然、すずかは神無月をアウトにしようとボールを投げるんだが……」

 

「また顔面に当たってすずかの手元に、そしてまた神無月の顔面に……そんなトコか?」

 

「…………正解……それが5回続いた時点で神無月が気絶。哀れ奴は学校早退となったんだ」

 

何故だろう?すっげえニコニコしながらボールを投げるすずかのイメージが浮かんできやがる。

その時の光景を思い出しているのか、少々青ざめた表情の相馬に視線を送りながら、俺は再度質問してみた。

 

「……すずかの近くにアリサは居たか?」

 

「……ニコニコ顔で直ぐ近くに居てな……皆は気付いてなかったけど、アリサが小さく手を動かす度にボールが戻ってきてた様に俺には見えたんだ」

 

確定、アイツ等コンビプレーしやがったんだな。

ドッチボールのボールにアリサがストーン・フリーの糸を繋げて、オリ主君にブチ当てた瞬間に引き戻す。

戻ってきたボールをすずかがまた全力で投げる……恐ろしいコンボだぜ。

よくそれだけ無茶苦茶やってすずかは怒られなかったなと思ったが、相馬にはその質問も想定内だったらしい。

知っての通り、聖祥は私学のお嬢様、お坊ちゃんの通う名門学校として有名だ。

だからこそ生徒の保護者はイジメとかが絶対に無い安心の学校として子供を預けている。

まぁ高い学費払ってんだからその辺は当たり前だと思ってるんだろう。

所がどっこい。ここで浮かんでくる問題がオリ主君の行動だ。

学校ではかなりやりたい放題してるのに問題にならねぇのは、ニコポで落とした女教師達がオリ主君を擁護してたらしい。

更に学園長とか教頭は、騒ぎが外へ出るのを恐れて揉み消してるそうな。

私学でそんな問題児が居るのにそれを御し切れて無いとなれば、それは一斉に責任者の監督不行き届きって決着に行き着く。

それを学園の上役は恐れてるってこったな。

普通は親に言う奴も居るだろうが、男子も女子もそれをしてハブられると思い込んでるから誰も言わないらしい。

アリサやすずか、そしてなのはは高い学費を払って学園に行かせて貰ってるから、親には心配掛けたくないそうだ。

まぁ尤も、アリサとすずかにはスタンドがあるし、なのはは相馬が守ってる。

この先暫くは何とかなるだろう。

それと最近、相馬の見立てでは例のオリ主君が何やら動き出そうとしてるらしい。

現在進行形で動き出してる原作、オリ主君がそれに関わらないって事は絶対に無いだろう。

相馬やなのはは、オリ主君がジュエルシード探索に入ってきたら嫌だろうけど、ユーノって奴はオリ主君の性格を知らない。

転生した人間だけあって、オリ主君もかなりの魔力と武器を持ってるから、下手したらユーノが協力を仰ぐ可能性もあるそうな。

もしそうなったら相馬の気苦労、倍プッシュだな……お疲れ。

転移する直前にやたら悲壮な表情を浮かべながら愚痴る相馬に、俺は同情の視線を向けながら別れを告げ、今日の話し合いはお開きとなった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ふぁ~あ……眠いなちくしょぉ……」

 

一夜明けて、時刻は朝の9時半。

俺はすずかとの約束を守って、待ち合わせ場所である俺の町の駅前に来ていた。

休日だってーのに、朝からサラリーマンのおっさんや高校生達が電車やバスに乗るために結構集まってる。

家族を養う為、リーマン戦士の皆さんご苦労様です。

そして部活に精を出す高校生、俺も何時かあんな風に平穏な青春を送りたいな、切実に。

そんな風に駅前の様子を観察してると――。

 

「お、おい。アレって……リムジンじゃねぇのか?」

 

「オイオイ。この町でそんなの走ってるワケ……ホントだ」

 

「すっごーい……お金持ちなのかなぁ」

 

「私も玉の輿に乗って、あんなのに乗ってみたいわ」

 

黒塗りのリムジンが駅前のロータリーにゆっくりと入ってきた……ってオイ。

まさかなーと微妙に現実逃避をしていると、何故かそのリムジンはドンピシャで俺の側に停車。

それと共にざわつきが波紋の如く広がる駅内、同時に強まる俺への視線……勘弁してくれ。

間の前の現実を見て重い溜息が出そうになったところで、後部座席の窓が降りる。

 

「お、おはよう定明君……ま、待たせちゃったかな?」

 

そこからピョコンと顔を出したすずかが、笑顔で俺に声を掛けてきた。

とても人に向かってゴムスタン弾を撃ち込んだ人物には見えない。

 

「いや、別に待ってねぇけど……それより早く行こうや。正直、周りの視線が痛え……」

 

俺は後ろからビシビシと突き刺さる視線の事を指摘して、すずかに早く駅を出ようと促す。

俺の言いたい事を直ぐに理解してくれたのか、すずかは「あっ」と小さく声を出すと、直ぐに頷いた。

 

「ご、ごめん。ちょっと目立っちゃうよね?どうぞ、乗って」

 

「おう、じゃあちょいと失礼しま――」

 

「(ガチャッ)お早う御座います、定明君ッ!!今私がドアを開けますのでッ!!」

 

「ちょっ!?ファリンッ!?こんな所で出ちゃ――」

 

ササッとリムジンにお邪魔してこの場を立ち去ろうとした俺に声を掛けてきたのは、すずかの専属メイドであるファリンさん。

しかも運転席から降りて……ご丁寧に『メイド服』で俺にドアを開けようかと声を掛けてくるモンだから……。

 

「お、おいッ!!メイドさんだぞッ!?」

 

「うっひょーッ!?しかもメッチャ美人ッ!!あの笑顔堪んねーッ!!」

 

「……負けた……同じ女として……」

 

「あの影の無い純粋な笑顔……完敗ね」

 

駅内のどよめきが一層ヒートアップしてしまった。

……オーマイガッ。

 

「え?え?あ、あれ?」

 

そんな中でやっと自分が注目されてる事に気付いたのか、ファリンさんは頬を赤く染めてそそくさと俺の目の前のドアを開けてくれた。

 

「ど、どうぞですッ!!そ、そそそれでは私は運転に戻りますのでッ!!」

 

もはや恥ずかしさで居た堪れないって表情のファリンさんは早口でそう捲し立てると、素早く運転席に戻っていく。

俺も早くこの駅内から出たかったので、サッサとすずかの座ってる後部座席に乗り込み、リムジンはそそくさと駅を後にした。

そこで漸く人の目が無くなったので、俺は大きく息を吐いて座席に深く凭れ掛かる。

 

「ふぅ~……まさかリムジンで来るとは思わなかったぜ?」

 

「あはは……き、今日はちょっとだけ遠いから、成る可くゆったり出来る車を出してもらったんだけど……迷惑、だったかな?」

 

「迷惑だなんて思っちゃいねぇさ。寧ろその辺の配慮までしてもらって、なんか申し訳ねぇってトコだが……まぁ何はともあれ、今日はお誘いありがとうな、すずか。ファリンさんも迎え有難うございます」

 

俺はすずかに礼を言いながら運転席に座ってるファリンさんにも声を掛けた。

すると、運転席のファリンさんはバックミラー越しに笑顔を浮かべて「いえいえ♪」と返してくる。

俺の隣に座ってるすずかもファリンさんと同じように笑いながら、俺の言葉に首を振った。

 

「ううん。私から誘った事だもん……でも、良かった。定明君がこういう事に興味が無かったら、他に一緒に行く人も居なかったし」

 

「興味があった、つうか……まぁ、『乗馬』は前々からやってみたかったんだよ」

 

すずかの安心した声音に、俺は肩を竦めて答える。

そう、この前すずかに電話で誘われたのは、とある農園で体験できる『動物や自然との触れ合い』というイベント。

そこの全てのアトラクションを一日フリーパスで出来る園内体験ツアーの誘いだったんだ。

俺はそれの乗馬体験というアトラクションに惹かれて、すずかの誘いを受けた。

乗馬の技術を磨いて、馬のパワーを下半身から吸収して騎乗で戦う『技術』を身に付ける為に。

それはツェペリ一族の伝えてきた鉄球の技術、その無限回転エネルギーに至る為に絶対必要な技術だ。

これを身に付けなけりゃ、俺は前回と同じく、タスクを進化させる事も、鉄球の技術を完全習得する事も出来ない。

前世の体験スクールで乗馬は少しだけ齧ったが、もう9年も昔の事なので覚え直す必要がある。

他にもアーチェリーやパターゴルフ、パン造り工房にスワンボートとかも色々あって、かなり人気の高い場所だったりする。

だから動きやすい様に俺の服装はズボンにシャツ、そしてもっこりしてないジャンパーと軽装だ。

すずかは少し丈の長いズボンと装飾の少ないシャツ、そして上着と、何時もより活発なイメージが強くなっている。

 

「そういや、さっき一緒に行く人が居ないって言ってたけど、アリサやなのはは駄目だったのか?」

 

「えっ!?そ、それはえっと……」

 

ふと心に過ぎった質問をしてみれば、すずかは何故か眼に見えて慌て出す。

何だ?と思って首を傾げていると、すずかはゆっくりと深呼吸をして、胸に手を当てる。

 

「ア、アリサちゃんは塾で忙しいって聞いてたし、そ、それになのはちゃんは……その……う、運動苦手だから……あ、あはは(ごめんなのはちゃんっ!!でも他に言い訳が見つからないから許してっ!!)」

 

「あー、なるほど……なのはって、つまりは鈍くさいんだな」

 

普通に大人しい動物達と触れ合うことですら親友にここまで配慮される程とは……強く生きろ、なのは。

軽く胸の前で十字を切り、俺は休みを満喫してるであろうなのはの幸運を祈った。

その後はすずかと楽しくお者bリしながら、俺達は3つ向こうの町にある農園を目指した。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「わぁ……ッ。見て見て定明君。アルパカさんだよ」

 

「へぇ~。ラクダの仲間らしいけど、随分とモコモコしてんなぁ」

 

時間は過ぎて、俺達は目的の農園で牧場の動物と触れ合えるコーナーに来ていた。

すずかはカポカポ歩いて近寄ってくるアルパカに目を輝かせてはしゃいでいる。

俺もこんな動物達と会う機会はそうねぇから、少しばかりテンションが上ってたりする。

アルパカはある程度俺達に近寄ってくると、一度止まってじーっと俺とすずかを見ていた。

その無垢な瞳がとても可愛らしい。

 

「可愛い~♪……触っても大丈夫かな?」

 

「性格は大人しいらしいから、多分大丈夫だと思うぜ?撫でてみたらどうだ?」

 

「う、うん……そ~っと、そ~っと……」

 

すずかは俺達の前でジッとしているアルパカに触ってみたくなったのか、おっかなびっくりと言った具合でアルパカに近づき、そのモコモコした毛並みに触れる。

少し遠慮がちに撫でていたすずかだが、アルパカが嫌がらないのに気付いて満面の笑顔を浮かべてアルパカに近づいた。

 

「ふわぁ……柔らか~い♪定明君も触ってみて?すっごいフカフカだよ」

 

「どれどれ?……ほおぉ……コイツは良いな……柔らかくて触り飽きねぇ」

 

すずかに促されて触れてみたアルパカの毛は、マジに極上の毛並みと柔らかさを持ってる。

思わず時間を忘れてすずかと一緒に夢中でなでてしまう俺であった。

二人がかりでグリグリ撫で撫でされてるにも関わらず、アルパカは静かに棒立ちしてる。

随分と人懐っこいアルパカだな。

 

「ん~♪とっても気持ち良い♪……あれ?そういえば、ファリンは何処に行っちゃったのかな?」

 

「え?確かさっきまでそこに……」

 

アルパカの撫で心地に夢中になっていたすずかと俺だが、ふと一緒に居た筈のファリンさんの声が聞こえないのでそちらに目を向ければ……。

 

『『めぇ~~』』

 

「あ、ちょッ!?ヤ、ヤギさん達何で私のスカートを噛むんですかぁああああッ!?餌を出してるんですから餌を食べて下さいぃぃいいいッ!?た、助けてすずかちゃぁああんッ!!」

 

「「あ」」

 

ヤギの群れに囲まれてアッチコッチからスカートの端を噛まれ、そのまま引っ張られるファリンさんを発見。

何故か餌では無くファリンさんのスカートに夢中なエロヤギ。

ファリンさんは捲られそうなスカートの裾を涙目になりながら必死こいて抑えて助けを求めてた。

従業員の人達も何とかしようと奮戦してるが、ヤギは一向に口を離さない。

っていうか男の従業員の目が完全にファリンさんのスカートが捲れるのを待ってやがる。

しかも柵の近場に居た家族連れのオッサン達まで……おい、奥さんがスゲエ怖い目してるぞ。

 

「あ、あわわ……ど、どうしよう定明君?何とか出来ない?」

 

「いや、まぁ出来ない事はねぇだろうけど……」

 

正直メンドくせーからヤなんだけど……ファリンさんマジ泣き一歩手前だし……しゃーねぇか。

兎に角騒ぎを納めねばと思い直し、俺は懐に手を入れてファリンさんwithエロヤギーズに近づいていく。

 

「あっ。でも定明君。ヤギさん達に酷い事しちゃダメだよ?スタンドで殴るとかは絶対にダメだからね」

 

……コイツの中で、俺のイメージってどうなってんだろう?

俺は軽くすずか達の中にある俺のイメージ像に傷つきながら、『ホルスター』の上ボタンを外す。

俺が着ているジャケットに取り付けた『ガンベルト』の中から、一発の『鉄球』を手の平に乗せる。

 

「?定明君、それって何なの?……ボールに見えるけど、黒っぽいし、鉄みたい」

 

「これか?これは俺の特技の一つ……鉄球だ」

 

不思議そうな顔で俺の手元にある鉄球を見ながら質問してくるすずかに、俺は軽く答える。

そう、これはジャイロ・ツェペリが使用していた『鉄球』、その模造品だ。

別にスタンド、例えばエコーズACT1の『音を染み込ませる』能力でヤギ達を追っ払う事も出来るが、俺はこの鉄球の力を試してみたかった。

今までは使えなかった黄金長方形の軌跡で起こす回転、それを試してみたいって思いがある。

普段ならスタンドの能力は極力隠してきたけど、ここは俺らの町から3つも離れた場所。

少しぐらいハッチャケても、バレはしないだろう。

 

「まぁ見てな?面白いモン見せてやるからよ……すぅ……俺が『観る』のは『自然』、得るのはスケールってか?……そおらッ!!」

 

ゴォウッ!!

 

俺は手首と肘に特殊な回転を加え、更にヤギを観る事で黄金長方形を得た。

そのまま勢い良く鉄球をヤギ達の下に向かって投げ飛ばす。

鉄球は地面に落ちるが、まだ回転は続いている。

 

『何だ?あの男の子、何か投げたぞ?』

 

『地面の石コロだろ。あの女の人からヤギを引き離そうとしたんじゃないのか?』

 

『でも、ありゃあダメだ。フォームが全然なってないし、ヤギに当たるどころか地面に落ちちまってるよ』

 

俺が投げた球がヤギ達に巻き込まれた様に見えたのか、周りから失笑が出ている。

……何が起こるか、目をひん剥いて見てやがれってんだよ、マヌケ。

 

「……『スキャン』」

 

俺は鉄球が地面で回転を始めたと同時に、ジャイロ・ツェペリのチューン・アップされた能力のスキャンを発動。

鉄球に右目を搭載し、鉄球の回転で巻き起こる振動がエコーの様に波紋となって、俺の右目に詳細な景色を送り込んでくる。

その景色は生物の裏側、つまり骨まで見える様になる……ファリンさんは機械の身体だが。

俺の右目に映る景色では、ヤギ達の足元が写っている。

ふむ……これなら、今投げた鉄球に掛かってる回転の力でも問題ねぇだろ。

多少、ヤギ達には可哀想だが……エロ根性見せた報いだと思って諦めてもらおう。

 

ギャルギャルギャルギャルッ!!!

 

俺が投げた鉄球は、地面に落ちた状態からファリンさんの周りを回って、群がるヤギ達の足の毛を少しづつ剃り落としていく。

さすがに従業員が指示しても聞かないヤギ達でも、自分の毛が剃られたらスカートどころじゃねぇだろ。

 

『『めぇ~っ!?』』

 

「お、おいどうしたんだッ!?(も、もう少しで見えそうだったのにぃいいッ!?)」

 

案の定、俺が考えた通りに毛を剃られたヤギ達は2匹、3匹とファリンさんから離れていった。

従業員達はファリンさんのスカートに目がいってる所為で、毛の剃られた瞬間を見逃している。

だから、突然離れたヤギの足の毛が少しだけ不自然に剃られてても気付かなかった。

しかし、まだファリンさんの周りには残ってるヤギが居る。

ちょっと一発じゃキツかったか……そんじゃ。

 

「第二投、行って来いやッ!!」

 

俺は更に片方のガンベルトから鉄球を取り出し、スキャンで繋がっている鉄球へと回転の力を加える様に投げた。

鉄球同士がぶつかりあって、両方の回転は均一にヤギ達の毛を剃っていく。

さすがにエロ根性の据わったヤギ達も自分達の毛が狩り尽くされては堪らないと思ったのか、ぞろぞろと徒党を組んで畜舎の方へと逃げていった。

従業員達もファリンさんに謝罪しながら悔しそうな顔を浮かべて、ヤギ達の後を追って畜舎の方へと走っていった。

 

「こ、これって……?」

 

と、ヤギ達が完全に居なくなったので自分の足元が見える様になったファリンさんが、目を見開いて呆然とした声を挙げる。

ファリンさんの足元では、俺の放った鉄球がファリンさんを守るように外周を回転していたからだ。

柵の周りに居た大人たち(妻と子供含む)も、ファリンさんを守る様に回転している鉄球を見て不思議そうな顔をしてる。

同時に何人かは俺が投げた鉄球だと勘付いたんだろう、俺に「嘘だろ?」って視線を向けていた。

俺はそんな視線を受けても微動だにせず、鉄球が戻ってくるのを待っている。

偶には少し派手な事してもバチは当たんねえだろ。

そんな事を考えていれば、エロヤギ達から開放されたファリンさんが不思議そうな顔で鉄球を見つめているではないか。

だがしかし、鉄球は役目を終えて、俺の手元へと飛んで戻ってきた。

 

シュルルルルッ!!

 

「えっ!?さ、定明君ッ!?すずかちゃんッ!?」

 

「よっと(パシッ)大丈夫っすか、ファリンさん?」

 

驚いた様に声を掛けてくるファリンさんに、俺は手の平で受け止めた鉄球を手の上で回転させたまま言葉を返す。

そこから鉄球を素早くホルスターに戻し、何事も無かったかの様に振る舞う。

 

「ふぇ?あっ、大丈夫ですけど……ひ、ひょっとして今のって、定明君が助けてくれたんですか?」

 

「まぁ、軽く追っ払っただけッスけどね……」

 

ファリンさんにそう言葉を返しながら振り返ると、ソコにはやけに瞳をキラキラさせたすずかが居た。

その視線は、俺のジャケットの内側にある鉄球に注がれてる。

 

「す、凄いよ定明君ッ!?今のもう一回見せてッ!!お願いッ!!」

 

「ん~?……また今度な」

 

「えぇッ!?そんなぁ……お願いッ!!もう一回だけで良いからっ!!」

 

苦笑しながら今はダメだと言えば、物凄く残念そうな顔から一転、更に食い下がってくる。

俺は手品師じゃねぇんだけどなぁ……。

 

「わ、私もさっきのでどうやって助けてもらったのか見たいですッ!!お願いします、定明君ッ!!」

 

アンタもかファリンさん。

しつこく「見せろ見せろ」と言ってくる2人をいなして、俺は2人を連れて触れ合い広場から離れた。

何時までもそこに居て目立つのも面倒だったし、俺の本来の目的は乗馬体験だからな。

その後、俺達は乗馬体験に向かい、そこで馬の基本的な乗り降りや停止、歩行等の練習をスタッフの人から教えてもらってこなした。

ファリンさんはメイド服でスカートだったから乗れなかったけど、俺とすずかは楽しく乗馬を満喫した。

最初はサークルをクルクル回るだけだったけど、しばらくしてから草原に出て歩いたり、馬のブラッシングとかも体験できたぜ。

俺もすずかも普通より大分飲み込みが早かったらしく、スタッフの人から筋が良いと褒められた。

だから、俺達は特別に許可を貰って草原の中を馬で走り回って遊んだ。

楽しみながらも、俺は馬の動かし方、そして肝となる鐙から伝わる『馬の運動エネルギー』を徹底的に身体に染み込ませて、その日は終了。

帰りの車の中で、遊び疲れて眠ってしまったすずかを肩で支えながら、俺は確かな手応えを身体に感じていた。

もっともっと練習を重ねれば、いずれACT4やポールブレイカーを発現出来るだろう。

もしかしたら何時かソイツ等の力が必要になる時が来るかも知れねえ。

だから、俺はこれからも暇を見つけて乗馬の訓練をしようと、固く心に誓う。

楽しい平穏な……それこそ、今日みたいな自分の日常をしっかりと守っていきてぇからな。

 

 






さぁ、そろそろオリ主君を半分くらいブッ殺しますか(ゲス顔)

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