ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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何故こうなったしwww

後ね?皆修羅場を期待し過ぎてワロタwww

でもね?そんな期待をチョコラータ風にゴミ収集車にヤッダバァアアッ!!するのが俺クォリティwww




俺の事を無意味にイラつかせない方が良(ry

 

『……って事で、俺はなのはと一緒にフェレットのユーノが落としたジュエルシードって宝石を封印してるんだ』

 

「宝石ねぇ……そんな危ねぇシロモン落とすとか、そいつ頭脳がマヌケか?」

 

あの土曜日のLESSON3を行った日から数日経ったある日の事。

俺は自宅で前に知り合った転生者、北宮相馬と電話で話している。

相馬の電話先なんか全く持って知らなかった俺がどうやって電話してるのかと言えば、すずか達に教えてもらったらしい。

すずか達と言えば、俺がすずかを抱いてザ・フールで遊覧飛行した時が大変だった。

地上に着いてすずかを降ろした時に、何故かアリサが羨ましそうな目ですずかを見ていたんだ。

そんで多分同じ事したかったのかなと思ってアリサに両手を広げて「乗りてぇのか?」と聞けば、顔真っ赤にするし。

しかもダンマリ決め込むから違ったのかと思って手を下ろすと乗せろとせがまれる。

終いんはリサリサも便乗してきてマジ大変だったよ。

まぁそんな面倒くせー事は置いといて、相馬が電話してきた『表向き』の理由は、知り合った男友達と親睦を深めたい。

そんで『裏向き』の要件っていやぁ、今起きてる原作の流れを俺に教えておこうと思っての連絡だとか。

普通転生者ってのは大抵が対立するモンだが、相馬はかなり良い奴って事だろ。

前もって協力はしねぇって伝えてるのに、それでもコッチの流れを知っておけば知らない事態に巻き込まれても対処できるだろうとの返し。

ドンだけ良い奴なんだか。

 

『いや、それはユーノの所為じゃ無いんだ。何でも輸送してた宇宙船が事故に遭って、ジュエルシードが地球にバラ撒かれてしまったらしい。この辺も原作とは差異は無いんだけど……』

 

「だけど……その言い方じゃ、その先は差異がある様に聞こえるぜ?」

 

俺の住む地球に危険物をバラ撒いてくれたマヌケ野郎を罵倒しようとした所で相馬がユーノって奴を弁護し、説明の途中で言葉を濁してしまう。

しかもさっそく原作との相違点が出て来たんだな。

 

『いや、違うというよりも……定明だから言うけど、そのジュエルシードというのがどういうモノかは理解してくれたか?』

 

「あぁ。確か願いを歪んだ形で叶えるってんだろ?」

 

――ジュエルシード。

 

これがこの世界で火種となるマジックアイテムの名前だ。

元は遺跡の奥深くに埋まっていた物を、ユーノって奴が発掘して時空管理局っていう……まぁ要は、宇宙規模の警察機関に届けようとしてたらしい。

最初は、その時空管理局ってとこに輸送を依頼したらしいけど、手が空いてないから、発掘したユーノってヤツに持ってくる様に返事してきたとの事。

ってかもうその時点で警察として終わってんだろ。

公僕が市民に命令してちゃ、市民は何の為に自分の稼ぎから税金払ってんだよって話になるからな。

俺ら市民を守る為の組織が税金貰っておいて持って来いは無い。

随分腐った組織だなオイ。

結局の所、俺らの住む町に被害が来たのは、管理局とやらの職務怠慢で起きた皺寄せじゃねぇか。

って話が逸れたな……まぁ兎に角、そのジュエルシードってマジックアイテムはとてつもなく危険な代物で、ロストロギアとかいう危険物指定されてるらしい。

だから危険物指定された物の回収しないとか職務怠慢。

 

『あぁ。歪んだ形で叶えられた余りあるエネルギーが起こす暴走、それがジュエルシードの思念体っていう、俺となのはの敵になるんだけど……強すぎるんだ』

 

「は?そりゃーそんな危ねぇシロモンの暴走なら、強くても当たり前じゃね?」

 

何を言ってるんだと言わんばかりの返しだというのに、それを聞いた相馬は溜息を吐きながら言葉の先を語る。

 

『そうじゃなくて、原作よりも強いんだ。本来ならなのは一人でも何とか出来てたジュエルシードが、俺となのはの二人がかりでって状況なんだよ。俺も結構全力でやってるんだぜ?』

 

「オイオイ……それってあんまり嬉しくねぇ誤差だな」

 

『全くだ。何でそうなのかっていう原因は判らないけど、油断は出来ない状況だ』

 

かなり疲れた様子で受話器越しに溜息を吐く相馬に、俺は同情する。

ほぼ原作の渦中に居る相馬からしたら、敵のパワーアップは勘弁だろうなぁ。

しかも間の悪い事は更に続き……。

 

『オマケに、明日は神無月が退院して登校してくるしな……』

 

「その点はマジで同情するぜ、相馬」

 

そう、明日はいよいよあの自称オリ主君が学校に復帰してくるのだ。

コレは俺にとっても嫌なニュースだが、同じ学校じゃないので相馬程辛くは無い。

その点はマジで救いだし、相馬には心底同情しちまう。

奴もオリ主を自称するからには、間違いなくこの物語のキーマン(マン?)のなのはに対して積極的に接触しようとするだろう。

しかし、当のなのはは相馬にベッタリで、それは相馬が必然的にオリ主君に絡まれる事を意味する。

……オリ主君が入ってきた所為で、回収遅れたりしねーよね?

ヤバイ、有り得そうで怖え。

もしそうなったら再び養分を吸って入院して頂こう。

 

『そういえば……なぁ定明?一つ聞きたい事があるんだけど……』

 

「ん?何だよ改まって」

 

俺が対オリ主君パワーダウン計画を練っていると、電話の向こうから相馬の窺うような声が飛んできた。

その質問に何だと返しつつ、俺は相馬が何を言うのかを待つ。

 

『いや、そのな……お前、すずかとアリサに何かしたのか?』

 

「あん?……そりゃどーいう意味だよ?」

 

『あのな……神無月が登校してくるって聞いて、何時もならその名前を聞くだけで怒ったり落ち込んだりしてたアリサとすずか何だけど……今日、笑ってたんだ』

 

「笑って?」

 

何だそりゃ?もしかしてあの2人、オリ主君が好きなの?

いや、それは時が何巡しても有り得ねえか。

 

『あぁ……こう、物凄く静かに……獰猛な笑みを浮かべてたんだ』

 

電話の向こうで2人の様子を思い出しているのか、相馬はさっきまでとは違い、まるで引き攣った様な声音で俺にそう伝えてくる。

獰猛なって……オリ主君が別に意味で入院ルート開拓か?

具体的にはオラオラとワナビーが炸裂するって意味合いで……あり得る。

何せオリ主君に対する怒りだけでスタンドを発現なんて荒業を成し遂げた2人だ。

その拳の行き先がノコノコ現れるってだけでテンションUPしても不思議じゃねぇ。

具体的に起きそうなイメージが過り、俺も冷や汗が出て来た。

 

『ハッキリ言って、俺はあの時2人に恐怖したよ……目の前の2人が、本当に俺の知ってるアリサとすずかなのか、一瞬だけど自信が持てなかった……あの物静かなすずかでさえ、エンジン音だけ聞いてブルドーザーだと認識出来る様に分かったんだ……微笑みの裏に隠れた、とんでもない凄味ってヤツが……なのはなんか物凄く震えてたし』

 

DIO様かよあの2人は?

こりゃもしかしたら、俺が出るまでも無えかも知れねえな。

 

「気にすんな相馬。アイツ等はオリ主君に対してその凄味を出してるだけで、お前やなのはをどうこうしようとは思ってねぇよ……怒りさえ買わなきゃな」

 

『サラッと最後に怖い事言わないでくれ』

 

だってそうとしか言えねぇんだって、マジで。

かなりビビってる相馬を慰め、俺は後一言二言喋って相馬との通話を終えた。

さて……ちょっと2人の様子が気になるし、明日は一応覗いてみるか。

最近、行動がストーカーちっくになってる事に軽く気落ちしつつ、俺は就寝する。

何にしても明日見てみない事には、どうなるかなんて分かんねぇしな。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「さて、明けて次の日の昼休みなワケですが」

 

「……急にどうしたの、ジョジョ?」

 

何時もの人目に付かないベンチにリサリサと2人で座りつつ、横から『何言ってんだコイツ?』みたいな目で見てくるリサリサに何でも無いと返す俺。

まぁこうしてる間にも、俺のハイウェイ・スターが既になのは達聖祥の屋上にて様子を伺ってるんだが……。

 

『テメエ北宮ッ!!また性懲りも無く俺の嫁達に手ぇ出してんのかッ!!俺が入院してて何も出来ない隙を狙うなんて、なんて卑劣な野郎だっ!!』

 

既に局面はのっけからクライマックス状態でした。

復活して早々、また女子軍団を引き連れて現れた自称オリ主君ことDQNネーム君。

しかしこの前とは違って、相馬に対して歯を剥きだして怒ってる。

 

『ハァ……勝手な事を言うな、神無月。そもそもお前が入院してたのは、お前の自己管理が出来ていなかったからだろ?何でもかんでも俺の所為にするな』

 

『そうだよッ!!私は相馬君と一緒に居たいから居るのッ!!神無月君の言ってるのは只の妄想だよッ!!もう何処かに行ってよッ!!』

 

『なのは……ッ!?コイツに操られて……ッ!!待ってろ、直ぐに助けてやるからなッ!!』

 

DQN君のアホらしい喧嘩の売り方を溜息混じりに流す相馬だが、そこに話に上がってるなのはが相馬と一緒に反論するモンだから火に油状態になっていく。

アリサ達の話じゃ、他の男子に対しても敵意剥き出しで、それに反論する男子は容赦なく殴る蹴るの暴行になる。

しかもオリ主君の取り巻きの女の子軍団からも虐められ、ニコポにやられたであろう女教師にまで叱られてしまうそうだ。

酷い話しじゃ、DQN君の取り巻きの中に好きな女の子が居た男子が居たらしく、それがあってDQN君に歯向かってたんだけど……事もあろうに、DQN君はそれに勘付いて、その男子の前でワザとその女の子にキスしたり、自分の事を好きか聞かせたり、更にはその男子の事をどう思うか聞いたらしい。

……不条理だとは思うが、その男子は好きな子に散々罵られて転校したそうだ。

 

『この俺が散々警告してやったのに、まだなのは達の周りを目障りにもウロチョロしやがってッ!!俺の女達に手を出したテメエには死刑以外に道はねぇえッ!!』

 

と、事の成行を見守っていた俺の視界に、ブチ切れたDQN君が拳を握って相馬に殴りかかるシーンが飛び込んでくる。

オイオイ、不意打ちとか堂々とやる事じゃねぇだろ。

さすがに相馬もそれは判っていたらしく、ファイティングポーズを取ってDQN君を迎え撃つつもりの様だ。

 

『オルァアアアッ!!!死ねぇえええッ!!』

 

そして、DQN君の大振りなテレフォンパンチが相馬に向かって振るわれ……。

 

ボグシャッ!!

 

DQN君の鼻っ面にブチ当たった……あれ?おかしくね?

そう思ったのは俺だけじゃなくて相馬やなのはもポカンとした顔を見せる。

 

『ホゲェエエッ!?』

 

『か、神無月様ッ!?何をしてるのッ!?』

 

『自分で自分を……』

 

自分の拳でブン殴られて鼻血と口が切れて血を流すDQN君に、取り巻きの女の子達も困惑しているが……一番混乱してんのはDQN君自身じゃね?

もう口元抑えて「!?」って顔してるし……ん?

ハイウェイ・スターの視界から流れこんでくる光景を見ていると、相馬やなのは達が座っていたベンチの更に隣にあるベンチ。

ソコに座っているアリサが小さくガッツポーズをしてた。

隣りに座ってるすずかも、少し苦笑いしながらも嬉しそうだ。

って良く見たらアリサの片手の指先から5本の糸が出てやがるじゃねぇッスか。

しかもそれを辿ってくと……DQN君の手首に巻きついてる。

下手人はっけーん。

アリサ、DQN君の腕をストーン・フリーの糸で誘導して向きを変えやがったな。

 

『い、痛えぇ……ッ!?な、何で俺のパンチが……』

 

自分の拳で殴られる羽目になったDQN君は。口元から手を離して辺りをキョロキョロし始めるが、特に変わった風景はソコには無い。

……スタンド使いじゃねぇ奴等にとっては、な。

俺らスタンド使いにはアリサの指先から伸びてる糸が見えるから、直ぐに犯人は分かったけど、スタンドが見えない奴等からしたら何も判らない。

……やる事えげつねぇな、アリサの奴。

 

『……そうか分かったぞッ!!北宮ッ!!テメエ俺に何かしやがったなッ!?』

 

『……は?』

 

ほくそ笑むアリサにそんな感想を抱いていると、起き上がったDQN君が口元を抑えながら立ち上がり、何が起きたのかって顔してた相馬を指差して吠えた。

ヤベエ、真実を知ってる身としてはここまで滑稽なのはそうねぇぞ。

アリサとすずかの奴ですら、腹抑えて皆から顔が見えない様にして震えてる。

あぁ、ありゃ間違いなく爆笑してますね、わかります。

 

『こんなワケの判らない手段を使ってまで俺からなのは達を引き離そうとするなんて、人間の風上にもおけねえッ!!みっともなく俺の女達に手を出すんじゃねえよカス野郎がッ!!』

 

『いや……俺にも何が何だか……』

 

見当違い街道爆進中のDQN君の言いがかりに困惑する相馬。

今日も皺寄せが来てて大変そうだな……乙。

少しばかり可哀想な相馬に同情している間にも鼻血をドバドバ流しながらあの言葉この言葉で相馬を侮辱していくDQN君。

正直言って、被害妄想甚だしいとしか思えん。

 

『テメェみたいな害虫がなのは達の周りをうろつくんじゃねぇぞッ!!身の程を弁え『いい加減にしてよッ!!!』……なの、は?』

 

遂には害虫扱いかよと思っていた矢先、DQN君の言葉を遮ってなのはが大声を出す。

良く見ればなのはは目尻に涙を溜めて震えているではないか。

まぁ、あんだけ好きな奴をボロクソに言われた上に、好きでもねぇ相手から勝手に自分の女宣言されてちゃ堪まったモンじゃねぇか。

 

『何時も何時も勝手な事ばっかり言って……どうして私達の楽しい時間を邪魔するのッ!?私達は相馬君と一緒に居て楽しいから居るのにッ!!神無月君からアレコレ指図される覚えは無いよッ!!』

 

『なのは……?一体コイツに何をされたんだッ!?まさか弱みでも握られて……』

 

『そんなの何も無いよッ!!もう――私達に近づかないでッ!!』

 

『何言ってんだッ!!北宮の様にクソみたいな奴に従う必要は無いんだぜッ!?俺がちゃんと守って――』

 

うっひゃぁ~……完全なる拒絶ってヤツか。

普段、というか前に会った時の様な快活さを消して、なのはは大声でDQN君を拒絶する。

横に居る相馬はなのはの豹変ぶりに目を見開いて驚いてた。

だが、その拒絶の声を聞いても、DQN君はただ困惑した表情を浮かべるだけで、全く持ってなのはの言葉の真意を捉えていない様だ。

つうか、自分に都合の悪い事は一切耳に入らないとか、随分便利だな。

傍から見りゃ、完全なる昼ドラだよコレ。

……まぁ、俺には別に関係無いから良いんだけ――。

 

『私の大事な友達の事を悪く言わないでッ!!神無月君が何を思ってるのか知らないし、知りたくも無いけど、私が男の子で友達だと思ってるのは、相馬君と定明君だけなのッ!!』

 

『お、おいなのはッ!?』

 

『……サダアキィ?誰なんだソイツはッ!?』

 

…………最悪だ。オーマイガッ。

折角相馬が俺の事秘密にしてくれてたっつうのに、なのはの奴バラしやがった。

余りの理不尽さにマジ泣きしそうだ。

いや、確かにすずか達とツルんでたら、遅かれ早かれDQN君には俺の事が知られると覚悟してたけどよぉ……そーいうのは成る可く遅い方が良かったぜ。

 

『ッ!?……そうか、3人目ってワケか……なのはッ!!そのサダアキとかいう糞ウジ虫野郎は何処のドイツ……』

 

バチィイイイインッ!!!

 

と、俺の名前を聞いたDQN君が俺の事をウジ虫呼ばわりしてなのはに俺の居場所を聞き出そうとした瞬間、何かとんでもなく痛烈な音が鳴り響いて、DQN君が仰向けにブッ飛んだ。

悲鳴すら挙げず、しかも倒れてから白目を向いてビクンビクンと痙攣してる……何が起こった?

 

『……ふざけないで(ぼそっ)』

 

と、いきなりブッ飛んだDQN君に視線が集まる中、ハイウェイ・スターの耳に何か小さく呟く声が聞こえてきたので、そちらに視線を向ければ……。

 

『定明君は……貴方の言う様なウジ虫なんかじゃない……ッ!!』

 

そこには、両目に涙を溜めて目尻を吊り上げ、小さく呟くすずかの姿があった。

しかも後ろにスパイス・ガールが何かを『撃った』体勢で顕現してる。

まさか、今のはすずかがやったのか?

なるべく状況を把握しようとすずかの周りを観察していると、すずかの足元のコンクリートブロックが一部分だけ変にエグレてる部分があるのを発見。

更にスパイス・ガールの手元からも、少しだけコンクリの破片が零れ落ち、パラパラと宙に舞っていた。

……もしかしてアレを撃ったのか?スパイス・ガールの殺人的なパワーで?

いや、それならDQN君の頭はトマトの如く綺麗に弾け飛んでる筈だし……あっ、そうか。

 

『……ちょっとだけ柔らかくしたけど、次はもっと固くするから……定明君が私を守れる様にってくれた力で人を傷つけるなんて、ホントは嫌なのに……』

 

行き成り白目を向いて倒れたDQN君を、前回と同じ様に取り囲んで悲鳴を上げる取り巻き達を見ながら、すずかはそういって不機嫌そうに食事を再開する。

すずかの奴……スパイス・ガールの能力使って、コンクリートを少しだけ柔らかくしたな。

その少しだけ柔らかくしたコンクリの破片をゴム弾みてーに撃ち込んだって訳だ。

確かにある程度の硬さの弾丸とパワー型スタンドの破壊力があれば不可能じゃねぇ技だ。

殺傷能力を消しつつ、微妙に柔らかい事で生まれる破壊力は外よりも中に響くから、DQN君は脳震盪を起こしたんだろう。

額の部分から少し血も流れてるし……ありゃ相当痛えぞ。

 

『もう……すずかが遣っちゃったから、アタシはこれで我慢しとくわ』

 

そう言ってストーン・フリーの糸を使って硬貨の粉をDQN君の口の中にサラサラと流し込むアリサ。

いや、これで我慢って……500円玉1枚分流し込んどいて我慢って……エゲツねぇ。

 

『ゴメンね、アリサちゃん……気付いたら、体が動いちゃってて……』

 

『まぁ、良いわ。もし復活したら、今度はアタシがやるだけだもの』

 

『うん。その時は私に言ってね?ちょっと固めの弾丸用意するから♪』

 

良し、ここらで追跡止めよう。

これ以上覗いてたら、俺の心にダメージが残っちまう。

にこやかに笑いながら物騒な事を呟くアリサ達に見つからない様に、俺はハイウェイ・スターに戻る様命令する。

いやはや……女の怖い一面ってヤツを垣間見る羽目になるとは……ハァ。

でもまぁしかし、アイツ等は俺の為に怒ってくれたんだよな……それとなく礼はしとくか。

俺はハイウェイ・スターを消して、残りの昼休みの時間をリサリサと談笑しながら過ごすのだった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

『なぁ定明?本当にすずか達に何したんだ?チラッとしか見えなかったけど、何かすずかの方から神無月に向かって飛んでた様に見えたんだよ』

 

その日の夜、俺は再び家の電話で相馬とダベっていた。

つっても談笑とかの類じゃなくて、8割方相馬の愚痴みてーなモンだが。

 

「別にお前が気にする事じゃねーって。そんな事より、俺に何か言う事があって電話してきたんだろ?」

 

『そんな事って……ハァ……まぁ良いか。それより、お前に一つ言っておかなきゃなと思って……お前の事が神無月にバレた』

 

知ってる。見てたから良~く知ってる。

しかし受話器の向こうの相馬にはそれが判らないので、凄く申し訳なさそうな声を出してた。

これじゃ何か俺が悪い事してる気分なんだが?

 

『今日、とうとうなのはがヤツに対して切れてな……遂、口走ってしまった……悪かったな』

 

「いや、なのはが言っちまったんならオメエが謝る事でもねぇだろ?」

 

『そう言ってくれると助かるよ……でも、神無月の奴、恐らくお前が転生者だと当たりを付けてるぞ?俺達全員、神様から3人送るって言われてたからな』

 

「そりゃ面倒くせえが……要は会わなきゃ良いだけだろ?俺がソッチの町に行くのを減らしゃ、それで会う確率はグンと下がるって」

 

実際、態々隣町まで調べに来る様な奴じゃねぇのは見てりゃ判る。

そんな事するぐらいなら同じ学校のなのは達主人公勢に絡んでいこうとするだろう。

見えない相手より目先の女に食い付くタイプだからな、ありゃ。

 

『まぁ、確かにそうか……あの神無月が、そんな手間の掛かる事をする筈も無いな……それと、もう一つ伝えておきたい事があるんだ』

 

え?もう一つ?……オリ主君の事以外にもあんのか?

そんな疑問が浮かんでくるが、受話器越しに聞こえる相馬の声が真剣だったので、俺も気持ちを入れ替えて聞く事にした。

 

『今日の帰りにユーノが教えてくれたんだが、もしかしたらジュエルシードがそっちの町に落ちてるかもしれない、だと』

 

「オイ待て完璧に疑いの余地も無くパーフェクトに十中八九キレーに間違いなく面倒事じゃねぇか」

 

え?何?こっちの町、っていうか俺のテリトリーにまで面倒事がくるワケ?

っていうかそんなのが原作にもあったのかよ。

 

『断っておくけど、これは原作に無かった流れで、完全にイレギュラーな事態だ……俺達が居る事に関係してるかもしれない』

 

「マジかよ……それ、暴走したらかなり厄介なんだろ?」

 

もし見つけたらどうすっか……ザ・ハンドかクリームの能力で完璧にこの世から消すとしよう。

相馬に対策案を聞きつつ、俺の心の中では少しづつ対策プランが組み上がっていた。

 

『まず間違い無く、発動したら面倒事じゃ済まない事になるだろうな……ジュエルシードには封印処理が施されてたらしいけど、落下の衝撃で封印が解けてるし』

 

ん?封印『されてた』?……アレ?それなら俺でも何とか対処出来るんじゃね?

ジュエルシードにクレイジー・ダイヤモンドを叩き込んで、『封印される前の状態』に『治して戻せば』万事OKだろ。

原作でも重ちーのハーヴェストが外したパイプのボルトを『パイプが繋がってた状態』まで『治す』事で元に戻ってたし。

それに、存在してた物を消してしまって原作に悪影響が出たら、この世界がそう動くのか判らねぇ。

あんまり迂闊にザ・ハンドやクリームを使って消し飛ばすのも得策じゃねぇか……。

 

「……そのジュエルシード。もし俺の町に落ちてるとしたら、一体幾つぐらい落ちてるんだ?」

 

数によっちゃあ俺が対処しねーとヤバイかもしれねえ。

俺の家族とか、リサリサが巻き込まれてからじゃ遅えからな。

 

『あぁ、数は一つだけらしいから安心して……いや、一つでも落ちてたら安心なんて出来ないよな』

 

「たりめーだ。ホントなら一つとして落ちて欲しくねぇっての」

 

『ははっ。全くだな。でも、幾らお前の住んでる町とは言っても、必ずしもお前の近くに落ちてるってワケじゃないから安心しても良いと思うぞ?』

 

何やらお気楽な感じで俺にリラックスする様に言ってくる相馬だが……ホントに大丈夫か?

いや、でも相馬の言う通り、一口に俺の町とは言ってもかなり広い範囲だ。

俺だってココに9年住んでるけど、未だに行った事のねぇ場所なんざ幾らでもある。

なら安心してても大丈夫だろ、うん。

相馬達も時期を見てコッチの町を探すらしいし、俺は相馬達に任せてゆっくりとしてれば良いのさ。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「そんな事を思ってた時期が、俺にもありました……ってか?」

 

はい、現在なんですが、あの電話があって早2日後の学校帰り。

リサリサと別れて、近道になるからと横切った公園で見つけちまったよ、キラキラと青に輝く怪しげな宝石。

そして中央に赤く光るⅣの文字……間違い無くジュエルシードじゃねぇッスか。

ボヤボヤと光って「触れ」とでも言いたそうな自己主張を発光で伝えてきやがる。

何が近くに落ちてるワケじゃねぇ、だよ相馬く~ん?

モロ俺ん家の近くに落ちてやがるぜ……さて、どうすっか。

俺は茂みの脇でピカピカ光るウザったい宝石を見ながら対処するか考える。

つっても、落ちてるのが既に俺のテリトリー内だし、対処しないで放置したら更に面倒くさくなるのは確定。

 

「とりあえず、考えてた手を試すか……クレイジー・ダイヤモンド」

 

ズキュゥゥゥンッ!!

 

兼ねてから考えていたプランの通り、俺はまずクレイジー・ダイヤモンドを呼び出す。

そのままクレイジー・ダイヤモンドの人差し指で、ジュエルシードに触れて能力を発動させる。

 

「上手くいってくれよ……コイツを封印が解ける前の状態まで、治して戻す」

 

『ドラァッ!!』

 

キュウゥウウウンッ!!

 

俺は祈る気持ちで能力を発動させると、クレイジー・ダイヤモンドが触れていたジュエルシードの輝きが鈍くなった。

そのまま少し待っていると、段々光が弱くなり、遂に発光自体が収まっていく。

良し、どうやら封印は出来たみてーだな。

俺は対策が上手くいった事で大きく息を吐いて安堵し、ジュエルシードを手で持った。

一見すれば普通の宝石、だが放つ威圧感は相当なモンだ。

こんなモンが落ちてきた所為で俺の町が危うく大変な目に遭うトコだったと思うとゾッとするぜ。

ともあれ、今は封印も出来て脅威はもう無い。

後はこの事を相馬に教えてやって、この厄介なシロモンを回収してもらえ――。

 

 

 

 

 

「……見つけた……『ジュエルシード』」

 

「ッ!!?」

 

 

 

 

 

突如、後ろから聞こえてきた言葉に、俺は弾かれたように振り返る。

そこには、黒いマントを翻すレオタードの様な衣装を着込んだ金髪の女の子が居た。

更にその隣には、額に赤い宝石の様なモノが付いたオレンジ頭の女性が、俺の事を怖い目で睨んでる。

……ココに来てトラブルかよ……勘弁してくんねぇかな?

どう考えても歓迎出来る状況じゃ無ぇので、俺は面倒くささに溜息を吐いてしまう。

 

「……俺に何か用か?お二人さんよ?」

 

「……」

 

質問を投げかけてはみるが、金髪少女とお姉さんから返ってくるのは無言のみ。

何故か周りの空気も緊迫していく。

っていうか、どう考えても友好的な目付きじゃねぇな……ったく。

しかもさっき、あの子はジュエルシードっつったぞ?コレってつまり、この宝石の価値を『知ってる』、若しくは――。

 

「聞いてんだぜ?…………俺に用があんのか?あぁ?」

 

『原作』に出て来る奴以外にゃ居ねぇわな。

何も語らない少女にイラついて、俺は声を荒らげて再度問う。

その言葉にお姉さんの方は更にイラついた顔をするが、少女の方は表情を変えない。

面倒くせえな……と、考えていれば、少女が持ってる機械的な……杖?みたいなモンを上に翳した。

 

「バルディッシュ……結界を」

 

『Yes,Sir』

 

更に何事かを呟けば、その杖?が機械的な音声を発声して、真ん中の球が光る。

アレって、もしかして『機械』なのか?

そんな事を考えていると、周りの空間が時を止めた時の様にモノクロの景色へと変わっていく。

ただまぁ、俺やあっちの2人は動けるみてえだが。

 

「……そのジュエルシードを渡して下さい」

 

「……はぁ?」

 

そして、等々謎の少女が喋ってくれたかと思えば、手を俺に向けてジュエルシードを要求してきやがった。

余りにも巫山戯た要求に、俺の眉が吊り上がっていく。

人の話も聞かずにモノ要求するたぁ……一体何様のつもりだよコイツ?

段々とムカムカしてきたが、一旦それを押し留めて、俺は少女へと口を開く。

 

「生憎と、コイツは俺のダチのダチが落としたモンなんでな。ソイツに返してやらなきゃならねーんだ」

 

手元にある宝石を空中でキャッチしては放り投げながら、俺は少女に拒否を言い渡す。

別に渡しても良いかもしれねーが、この子が厄介事を起こさないって保証は何処にもねぇ。

ならヤッパリ、ここは要求を跳ね除けて相馬に渡した方が良いだ――。

 

「ゴチャゴチャ言ってないでコッチに渡せってんだよ、このガキんちょッ!!」

 

「ッ!?アルフッ!?」

 

俺の言葉を聞いたアルフとかいう女は、少女の言葉を無視して俺に向かってズカズカと歩いてくる。

どうにも話しにならねーから強行手段に出た様だが……舐めんなよ?

俺が突っ立ってる間にもアルフは俺に近づき、遂には俺の目の前に立って手を伸ばしてきた。

面倒だから掻っ攫おうってんだろう。

 

「アタシはかったるい事は嫌いなんだよッ!!痛い目に遭いたくなきゃ寄越し(ガシィッ)なッ!?な、なんだよコレッ!?」

 

俺はアルフの腕が俺に触れる前に、クレイジー・ダイヤモンドの手でアルフの手を掴み直した。

突如何も無い空中で自らの手が掴まれた様な感触に、アルフは驚きの声を上げて下がろうとするが、クレイジー・ダイヤモンドはソレを許さない。

むしろ更に掴む力を上げて、アルフの手を圧迫させていく。

 

「い、痛たたたたたたッ!?何でアタシの腕が勝手に――」

 

「奇遇だな、オネーチャンよぉ……俺もなんだわ」

 

「ッ!?こ、コレはアンタの仕業――」

 

俺の言葉に反応したアルフが動く前に、俺はクレイジー・ダイヤモンドに命令して、奴を持ち上げさせる。

いきなり足が浮き上がった事に声も出ないって表情のアルフに、俺はニヤリとした笑顔を浮かべながら――。

 

 

 

「かったるい事は嫌いなタチなんで……このまま――」

 

 

 

――ブチ壊させてもらうぜ?

 

この喧嘩買った宣言を送ってやった。

 

「ッ!?」

 

俺の笑顔に何かしら感じるモノがあったんだろう。

アルフは掴まれて動けない腕以外の場所を、恥も外聞も無く丸めて防御の体勢を取る。

まぁそんなモンは――。

 

『ドララララララララララララララ、ラァッ!!!』

 

ズドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドドッ!!

 

「あぐうぅッ!!?」

 

纏めてブッ潰すだけだがな?

身体を固めて防御の体勢を取るアルフに、俺はクレイジー・ダイヤモンドのラッシュをお見舞いしてやる。

それは防御をしてるアルフに容赦無く襲いかかり、無遠慮に彼女の身体を叩きのめした。

そのラッシュをまともに受けたアルフは吹き飛び、再び黒い女の子の側に戻っていく。

フン、ちったぁ懲りたかよ?

 

「ッ!?アルフ、大丈夫ッ!?」

 

2人からしてみれば見えない力でフッ飛ばされた様にしか見えなかったんだろう。

黒い女の子は目を見開いてアルフに駆け寄るが、アルフは地面に転がって息を荒く吐いている。

そう簡単には起き上がれねぇだろーな。

 

「はぁ、はぁッ!!……き、気を付けてフェイト……アイツ、ただもんじゃ無いよ……ッ!?」

 

「うん……もう、力尽くで行くしか「ソイツは良いじゃねぇか?」ッ!?」

 

倒れ伏すアルフを心配する女の子……フェイトとか呼ばれた少女に、俺は笑顔で声を掛ける。

すると、彼女は直ぐ様後ろ、つまり俺に厳しい視線を向けてくる。

 

「力尽く、大いに結構だ……それなら俺も、テメエ等をブッ潰すのに遠慮も心置きも無く清々しい気分でやれるってなモンだぜ」

 

中途半端に向かってくるより、寧ろやりやすいからな。

そう言って自然体で立つ俺に向かって、フェイトはその機会的な杖を向けてくる。

 

「ジュエルシードを貰う為に……少し、痛い目に遭ってもらいます」

 

『Scythe Form set up』

 

彼女の言葉に反応した杖が機械的な音声を発すると、杖の形が変わって死神の鎌の様な形状になる。

ソレを剣道でいうトコの正道の構えにして、少女は真っ直ぐに俺へと向かってきた。

 

「『痛い目』だ?上等じゃねぇか。こちとら連日のトラブル続きでムカッ腹が立ってんだ……少しストレス発散に付き合ってもらうぜッ!!シルバーッ!!」

 

彼女の横薙ぎの攻撃、そして俺はソレに対して――。

 

「……ハッ!!」

 

「チャリオッツッ!!」

 

初撃をシルバー・チャリオッツに応戦させる。

人間てのは自分の理解の範疇を超えた時には大抵行動がストップするモンだ。

急に自分の攻撃が見えない壁に阻まれりゃ、普通ならそこで脳が理解出来ず動きが鈍るが……。

 

「セィッ!!ハァアアッ!!」

 

一度目の前でその光景を見てるからか、少女の剣戟は止まらず、更に加速していく。

その勢い、こないだ戦ったイレイン以上だ。

それこそ正に普通の人間なら出せない速度で鎌を振るってくる。

ヤッパこの子も、原作のタイトル通り魔法とかゆー力を持ってんのか?

だとしても、剣でチャリオッツが普通の人間に遅れを取る事はねぇよ。

 

「ガンガンスピード上げるぜッ!!着いてこれなきゃ突きまくってやらあッ!!」

 

「ッ!?くぅッ!!?」

 

連撃を見せた少女にお返しとばかりに振るった突きのラッシュだが、彼女は俺の叫びに反応して射程外に離脱した。

ギリギリ射程距離から離れる前に彼女の髪とマントを掠めるだけに終わるが、少女は俺の目の前で浮いている抉れたマントを見て、距離を詰めようとはしない。

どうやら戦闘の経験があるみてーだな……其処らの少女の動きじゃねぇ。

 

「(接近戦は分が悪い……ならッ!!)バルディッシュッ!!」

 

『Photon Lancer Full autofire』

 

と、目の前の少女の動きを観察していると、彼女がバルディッシュと呼ぶ杖から鎌の様な光が消え去る。

少女はそのまま俺にバルディッシュの先を向けると、その先に黄色い光が集まり始めた。

チッ、何かを撃ちだすつもりか?……なら、その力――。

 

「ファイアッ!!」

 

ガガガガガガガガガガガガッ!!

 

ちぃと調べさせてもらうぜッ!!

俺の予想通り、何かの光の玉が何十発と撃ち出され、それは俺に向かって飛来してくる。

直ぐ様俺はチャリオッツを戻し、別のスタンドを呼び出す。

そのスタンドを呼び出すと、普通は聞こえない雷のゴロゴロ音と共に雲が俺の目の前に現れる。

 

「ウェザー・リポートッ!!」

 

そう、天候を操るスタンド、ウェザー・リポートだ。

俺はウェザー・リポートの能力で、『自分の目の前』に何重にも空気の層を作り出し、抵抗を生み出す。

向こうからすりゃ何も見えなくとも――。

 

ギュオォオオオオンッ!!

 

「ッ!!?」

 

俺の目の前に存在する空気の層が、全てを防御してくれる。

突如自分の打ち出した球が俺を避ける様に目標からズレ、幾つかの球は木やベンチにブチ当たった。

その光景に目を見開いて驚き、少女は今度こそ動きが止まってしまう。

俺はその間に雲に引っ掛かった球を観察するが……。

 

バチチッ!!

 

「うッ!?……こりゃ、『電気』か?」

 

俺の目の前でバチバチとスパークを放つ黄色い球を見て、俺はその球の性質が電気である事に気付いた。

どうやら、あの少女の持ってるバルディッシュってのは、電気……いや、もしあの子が原作のタイトル通り魔法少女ってカテゴリーなら少し違うか?

もしファンタジー物の定義通りなら、アレは魔力を変換してるって事になるが……試してみる価値は有り、か。

俺は考えを纏めると直ぐに球を弾き飛ばし、少女に向かって走りだす。

少女の距離約10メートル、まずはコレを詰めてからだ。

只、あまり一気に詰めると、何時か俺が時を止められる事がバレちまう可能性もある。

なら、気付かれないよう『小刻み』にやりゃあ良いって事かッ!!

 

「……キング・クリムゾン」

 

俺は今だに呆けてる少女に聞こえないように、未来を余知し、時間を数十秒飛ばせるスタンド、『キング・クリムゾン』を呼び出す。

コイツの時を飛ばす能力で、時間を0,5秒ずつ消し飛ばせば、移動速度はかなり上がる。

 

「ッ!?フェイト、逃げてッ!!」

 

「……ッ!?(い、何時の間にここまでッ!?)」

 

事実、少女との距離があと5メートルまでに縮まってから、やっと少女は俺が肉薄しようとしてる事を悟る。

あのアルフってオネーチャンが声を掛けた事も大きいがな。

だが、俺の行動に気付いた所でもう遅え。

しっかりと射程距離に入った俺は、少女の持つバルディッシュと呼ばれる杖に、あるスタンドを『送り込む』。

それが成功した瞬間、彼女は苦い顔をしながら俺から半歩距離を取り、バルディッシュを振り上げた。

 

『……』

 

「ッ!?バルディッシュ、どうしたのッ!?」

 

『……』

 

だが、彼女はバルディッシュを振り上げたのにも関わらず、何かに驚愕したかの様に声を張り上げる。

それでも少女に呼ばれた杖は答えようとしない……いや、答えられねえ。

俺が既に送り込んだスタンドによって、内部は全て掌握させてもらったからな。

 

「(魔力を送り込んでるのに、バルディッシュが反応しないッ!?)バルディッシュッ!!どうして動かないのッ!?」

 

彼女は躍起になって杖に魔力を送り込むが、それは内部に潜む俺のスタンドの『エネルギー』に変換されてる。

更に杖……バルディッシュの中に保存されてるデータもしっかりと俺の頭に流れ込んでんだぜ?

魔力、ミッドチルダ、リニス、魔力変換資質……色々と詰め込まれてるが、とりあえず……。

 

「早いトコその杖から手を離して降参しな……コレは警告だぜ?」

 

「……警告?」

 

最大限の隙に攻撃もせずに俺が言葉を掛けてくるのを訝しく思ったのか、少女の眉間に少し皺が寄る。

 

「そう、警告だ……今その杖から手を離して降参すんなら、心優しい俺はお嬢ちゃんから優しく事情を聞くよ……だが――」

 

俺は片手をポケットに入れたままもう片方の手で少女を指差し、迫力を篭めた顔つきを見せた。

ここが最終降参地点だぜ……こっから先はもう受け入れねぇぞ?

 

「まだヤル気だってんなら、俺はお嬢ちゃんに質問しねぇ……お嬢ちゃんにも、あっちのオネーチャンにも、再起不能になってもらう……これがラストチャンスだ」

 

「……」

 

俺の顔付きを見て、俺が嘘を言ってないと理解してくれたんだろう。

金髪少女は俺の言葉を吟味しながらオネーチャンにも視線を送る。

多分あのアルフってのを心配してると思う。

だが、俺は目の前の少女から目を離して無いから、後ろのアルフってのがそんな顔をしてるか把握できない。

やがて、2人の間で結論が出たのか、金髪少女は俺に真剣な目を見せてきた。

 

「ジュエルシードは……渡せません」

 

と、俺の提案に対して明確な拒絶を示した……ハァ。

 

「……OK,交渉は決裂ってワケだ…………やれ、『チリ・ペッパー』」

 

疲れたって感情をアリアリと乗せて、俺はバルディッシュの内部に潜ませたスタンドに命令する。

 

ズギュウウウンッ!!

 

「えッ!?コレは(ガシイィッ!!)ぐっ!?……かはっ!?」

 

「フェイトッ!?フェイトォォオオオッ!?」

 

俺の命令に従って姿を表したスタンドの名前は『レッド・ホット・チリ・ペッパー』という電気に潜むスタンドだ。

チリ・ペッパーが出る時、バルディッシュが今までに無い光り方をし、それに困惑した金髪少女が杖を覗きこむと、そこから出て来たチリ・ペッパーの手に首を絞められる。

スタンドが見えない人からすれば、首元に手の形が浮き上がってるだけに見えるんだろうな。

 

「ぐっ……けほっ」

 

チリ・ペッパーに首を絞められて苦しそうに呻く少女だが、俺は一切力を緩めるつもりはねぇ。

色々と聞かなきゃならねぇ事情が出来ちまったし、ちょいと締め付けさせて貰うぜ?

気を失った所で場所を変えて色々と聞かせてもらうとすっか。

 

「うっ……(ガクッ)」

 

そして遂に少女は酸素不足で気を失い、その様子にオネーチャンが叫びながら彼女の名前を呼ぶ。

しかも目に涙をタップリと溜めながら……いや、もう既に溢れてるし。

あれ?傍から見たら俺完全に悪役じゃね?

自分の町を守る為だとは言え、女の子叩きのめしたからなぁ。

ままならない現実ってヤツに、俺は盛大な溜息を吐きながら、未だに喚くオネーサンをチリ・ペッパーの手刀で気絶させる。

やれやれ……ジュエルシードを回収したと思えば、次は質問せにゃならんとは……面倒くぜ。

モノクロから普通に空間へと戻りつつある光景を目にする俺の目尻には、一筋の涙が出ていたとか出ていなかったとか。

 

 




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ヤバイ、滅茶苦茶嬉しいwww

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