ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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タイトル修羅場風味添え。

でも中身はほのぼのwww( ・´ー・`)ドヤァ


『スタンド使い』と『スタンド使い』はいずれ引かれ(ry

「ジョジョ。貴方次の休みは空いてる?」

 

「藪から棒に何だよアリサ?」

 

現在、俺は給食を食べ終わって、アリサと共に学校の中庭の端に座っている。

理由としては、給食を食べ終わった時にアリサが訪ねてきたってだけなんだがな。

……つうか、昨日のほっぺにチューの所為で顔を合わせ辛かったのは俺だけか?

今もアリサはそんな様子一っ欠片だって見せてねぇし。

やっぱあのキスはお礼って事で深く考えねぇ方が良いのか?

そんな事を考えつつ、俺は木に凭れ掛かってアリサに質問を返し、アリサはそんな俺に不満気な表情を見せてくる。

 

「疑問文に疑問文で返すのは関心しないわよ、ジョジョ?」

 

「へーへー、スイマセェン……次の休みかぁ……」

 

そんなお叱りを受けつつ予定を思い返すが、土曜日は既に埋まってる。

今んトコ空いてるのは日曜だけだ。

 

「土曜は無理だが、日曜なら空いてるぜ?」

 

「あら?先約があったの?」

 

「先約って程でも無えが、昨日話した2人いるだろ?アリサとすずか」

 

「……えぇ……その2人と遊ぶ予定?」

 

昨日の話を思い出しているのか、指を顎に当てて思案するアリスを尻目に、俺は肩を竦めて苦笑する。

 

「うんにゃ。スタンドの制御訓練。その総仕上げってトコだ」

 

とりあえずソレで俺のレクチャーは終わり、後はアイツ等自身が見つけるだろ。

俺は休みの子が出て余ったキャロットパンをポケットから出して封を開ける。

俺のじゃねぇが、さっきから横でピーピー喚いてる奴等の『食事』だ。

 

『オイ定明ッ!!早クソレ食ワセテクレヨッ!!』

 

『最近何モ食ベサセテクレネーンダモンナァ』

 

『ウヒョーッ!!コレガ噂ノ甘イキャロットガ入ッタパンカァーッ!!』

 

『ウエェ~ンッ!!ボクハ定明ノ母チャンノツミレガ食ベタイヨォオ~ッ!!』

 

『コリャ堪ランッ!!ヨダレッ!!ズビッ!!』

 

『アレ絶品ダモンナァ』

 

しかも俺がキャロットパンを取り出すのを目敏く見つけて勝手に出て来やがった。

そう、俺の周りを好き勝手に喚きながら飛び交うコイツ等こそ、俺がこのパンを食わせてやろうと考えた相手、『セックス・ピストルズ』だ。

 

「るっせーぞピストルズ。ちゃんと夕食(チェーナー)が食える時は食わせてやってんだろーが。それとNO,5。今度母ちゃんに頼んでつみれ作ってもらうから、今は我慢しろ」

 

現れたパンに群がって喚くピストルズにそう返しながらパンをベンチの隅に置いてやると、ピストルズは一斉にパンを食べ始める。

ココは学校でもかなり隅っこにある場所で、人は滅多に寄り付かない。

だからこそこうやって堂々とピストルズに飯食わせてやれるんだけどな。

 

「……それ、何匹居るの?」

 

「匹?人って言ってくれ。ペット扱いすると機嫌が悪くなっちまう」

 

ピストルズを見ながら窺う様に質問してくるアリサに注意しつつ、俺は彼女の質問に答える為に言葉を紡いだ。

 

「全部で6人だ。NO,1からNO,7まで居る」

 

「……計算が合わないわよ?」

 

「あぁワリイ。NO,4は居ねぇんだ。4て数は縁起が悪いからな」

 

「あぁ、そういう事なの……スタンドってご飯も食べるのね」

 

「いや、それはコイツ等だけだ。コイツ等は自我を持ったスタンドだからな、試しに飯食わせてみたら、こうやって偶に食いたくなって勝手に出て来やがる」

 

興味深そうにしゃがみ込んで、ベンチに置かれたキャロットパンを食べるピストルズに視線を送るアリサ。

そう、ホントに好奇心で母ちゃんの飯を食わせたら、マジでピストルズは飯を時々強請る様になっちまった。

普段は大人しくしてるってのに、偶に食いたいモンが目の前にあったら、俺が呼び出さなくても勝手に出て来てその食い物を強請る。

ぶっちゃけバニングス邸で出て来なかったのが不思議だ。

だっていうのに、ピストルズは今日の給食でキャロットパンが出たら群がる様に現れて、俺にキャロットパンを催促してきた。

危うく勝手に行動したNO,2とNO,3の所為で、パンが空中で食われていくって場面になりかけて焦ったぜ。

不思議がるアリサにそう説明してやると、彼女は「へぇ」と興味深そうに頷きながら食事中のセックス・ピストルズを観察し……。

 

「あっ……」

 

「ん?」

 

小さく声を挙げたので、何事かとアリサの見てる先に視線を巡らせれば……。

 

『ガツガツガツ!!ウメエ~~ッ!!』

 

『ウエエェェンッ!!取ラレタァアア~~ッ!!』

 

NO,6に食べていたパンを横取りされて泣き喚くNO,5が居た。

全くコイツ等は……仲良く食うって事が全然出来ねえんだもんな。

もう食われたモンはしょうがねぇなと思いつつ、NO,6を注意しようとしたが……。

 

「……あ、あの……NO,5?」

 

『フェ?……グスッ、グスッ』

 

俺よりも先にアリサが動きを見せ、しゃがんだ体勢でNO,5と目線を合わせたアリサは、恐る恐るって感じで声を掛けつつ、ポケットから何かの包みを取り出した。

その様子にNO,5だけでなく他の奴等も動きを止めてアリサに視線を向けている。

 

「えっと……これで良かったら、食べる?」

 

NO,5を怯えさせない様にか、笑顔を浮かべてアリサが差し出した手の平の物体は茶色の小さい四角形のモノ、形からしてキャラメルだろう。

今まで食べた事の無いモンだからか、NO,5はキャラメルとアリサの顔を見比べ、食べて大丈夫かと考えてるようだ。

そんなNO,5の様子を察してか、アリサは笑顔のまま口を開く。

 

「これは、キャラメルっていうお菓子。甘くて美味しいわよ?」

 

『……キャラメル?』

 

まるで小さな子供に語り掛ける様な口調で、アリサはNO,5をあやしつつ、NO,5の行動を見守っている。

やがてアリサの笑顔に悪意が無いと感じ取ったのか、NO,5はふわりと空中に浮遊してアリサの手の上に乗り、キャラメルを齧る。

その行動に少しだけ緊張した表情を見せるアリサだが……。

 

『ウンまぁあ~~~~~~いいッ!!!??』

 

「そう……良かったわ」

 

喜んでガッツき始めたNO,5を見て、ふわりと笑った。

そのままキャラメルをパクパクと齧るNO,5を優しく見つめながら、アリサはもう片手の指でNO,5の頭を優しく撫でる。

つっても、スタンドはスタンドでしか触れないから、撫でるモーションを取ってるだけなんだが。

彼女の行動に照れ笑いを浮かべながらキャラメルを食べるNO,5。

やれやれ、泣いてた奴がもう泣き止みやがった。

 

『チ、チクショウッ!!NO,5メェ~~~ッ!!』

 

『綺麗ナオネーチャン二撫デラレルナンテ羨マシ過ギルゼッ!!』

 

と、NO,5が思いも寄らぬハッピーイベントを享受してるのが気にいらねぇのか他のピストルズがやいのやいのと騒ぎ出す。

お前等食うか騒ぐかドッチかにしろや、マジで。

そんなピストルズの声はアリサにも届いていた様で、彼女はNO,5に向けたのと同じ柔らかい笑顔を浮かべつつ、服のポケットから『スタンド』の手を使って人数分のキャラメルを出した。

 

「仲良く食べてくれるなら、ピストルズ皆にあげるわ。約束してくれる?」

 

『『『『『オォーーウッ!!仲良ク食ウゼーーッ!!』』』』』

 

コイツ等ェ……俺の時より遥かに統率されてやがる。

女の子相手に調子の良いピストルズの様子に呆れながら、アリサの『スタンド』の手の平に乗せられたキャラメルに群がるピストルズを見……あれ?

待て待て待て?今、俺は、何を、見た?……『スタンド』の手?……あれ?

 

「あっ、そういえばジョジョ?次の休みが空いてるかって聞いた件だけど……」

 

自分の目で見た光景が信じられず茫然とする俺を他所に、アリサは如何にも楽しげな笑みを浮かべて俺に声を掛けてくる。

恐らく今の俺は相当間抜けな顔をアリサに晒してる事だろう。

そんな俺に笑顔を見せつつ、アリサは手だけ出していたスタンドを全身表わす。

体中に付いた『キスマーク』と、頭部に無数の『ピン』が刺さった王冠の様な頭。

 

 

 

「私にも訓練を付けてくれないかしら?……『キッス』の力を知る為に、ね♪」

 

 

 

昨日貸したばかりの近距離パワー型スタンド、『キッス』を背後に従えながら、アリサは俺に「してやったり」な笑顔を浮かべる。

彼女の背後に居るキッスは、アリサの命令に従う様にポーズを取って静止してた。

たった一日で完璧に制御してやがる……この世界の女の子ってどうなってんだ?

俺みたいに特典あるワケじゃねぇのに、スペック高過ぎだろ。

しかも俺はアリサに何一つアドバイスしてねぇってのに。

騒ぐピストルズ、微笑むアリサ、項垂れる俺。

そんな3すくみというカオスな状況の中、取り敢えず今日の放課後からスタンドの訓練をする、とアリサに話して昼休みを終える俺であった。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「と、いう訳で、土曜日はリサリサも連れてくからヨロ」

 

『その前にリサリサって誰だって聞いてんのよッ!!答えなさいバカ明ッ!!』

 

誰がバカ明だ誰が。

現在、俺はリサリサにアリサ達がやったのと同じ様に、人目に付かない場所で訓練をし終えてから、彼女も土曜日にすずかの家出訓練を受けてもらう様節目して帰宅した所、グッドタイミングで電話を掛けてきたアリサに土曜日の日程変更を伝えていた。

まぁ何の説明も無しにヨロとか言ってるからアリサが切れんのも無理無い。

今も受話器の向こうで盛大に怒ってるしな。

 

「誰かって言われりゃ、俺のダチとしか言えねえよ」

 

『アンタの友達ぃ?……長い付き合いなの?』

 

「昨日から」

 

『付き合い浅ぁッ!?ってちょっと待ちなさいよッ!!土曜はアタシとすずかと一緒にスタンドの特訓するって約束でしょうがッ!!その子連れてきたらスタンドの訓練なんて出来なくなるでしょッ!!』

 

どうにもアリサは難色を示してるが、その点については問題無いんだよなぁ。

 

「気にすんな。リサリサもスタンド使いだからよ」

 

『ハァッ!?ど、どーいう事よソレッ!!』

 

電話の向こうで、もう何が何やらって感じに叫んでるアリサが落ち着いたのを見計らって、俺は昨日リサリサと知り合う切っ掛けになった誘拐事件の事を話した。

とは言っても、リサリサがアリサそっくりだって事は話してない。

向こうで初めてリサリサとアリサが会った時の反応が面白そうだからだ。

 

「……とまぁ、以上がリサリサと知り合う切っ掛けになった事件って訳だ」

 

『そんな事があったのね……』

 

自分も同じ様な体験をしてるからか、電話の向こうのアリサの声は複雑そうだ。

考えてみりゃリサリサもアリサも、俺と知り合う経緯だけじゃなくて色々と似てる点があり過ぎる気が……容姿も含めてスゲエ偶然だよな。

 

『分かったわ。アタシは了解したけど、すずかには自分で伝えなさいよ?』

 

「え~?面倒くせえな。お前からすずかに伝えといてくれよ、学校同じなんだし」

 

一々電話かけ直すのは面倒くさくて仕方ねぇ。

そんな事を考えてると受話器からアリサの溜息が聞こえてくる。

 

『アンタねぇ、それが遊びに行く相手に対する最低限の礼儀ってモンでしょうが?そのリサリサって子は、アンタの友達であって、アタシとすずかは全く知らないのよ?だったらすずかに了解を取るのはアンタの仕事。理解した(ドゥーユーアンダスタン)?』

 

確かにアリサの言ってる事は正論だ。

知らない相手が来る事を知らない第3者が伝えても仕方ねぇ。

だから必然的に俺がしなきゃいけねえのは判るが……。

 

「俺、すずかの番号知らねぇんだけど?」

 

『……ハァ……アタシが教えてあげるわ』

 

俺の言葉に呆れを多分に含んだ声音でアリサは溜息を吐き、すずかの携帯番号を教えてくれた。

それを聞いた後は2,3言話して電話を切り、すずかにTEL。

いきなり携帯に掛けた所為でかなり驚いていたが、そこはアリサに聞いたからと言うと納得してくれたので、俺はアリサに話したのと同じ様にリサリサの事を話し、土曜日にリサリサも連れて行って良いかと聞く。

 

『うん。定明君のお友達なら大歓迎だよ♪』

 

「そう言ってくれると助かるぜ。急に面子増やして悪かったな、すずか」

 

『大丈夫だよ、私もそのリサリサちゃんに会ってみたいから』

 

そして、すずかは優しい声音でリサリサの動向を許してくれた。

自分の知らない所で自分の知らない人間を連れて行くと俺が独断で決めてたにも関わらず問題ないと言ってくれたすずかに感謝する。

やっぱすずかは優しいな……コイツをバケモンだなんて呼ぶ奴は擦り潰してやる。

 

「そんじゃ、次の土曜日の昼過ぎぐらいで良いか?」

 

『うん、じゃあその時間に、ファリンに迎えに行ってもらうから……あっ。それと定明君、ちょっと良い?』

 

そんな決意を心に決めてから、俺は土曜日の待ち合わせの時間をすずかと確認して電話を切ろうとしたんだが、その途中ですずかにストップを掛けられる。

 

「どうした?」

 

『あのね、今日なのはちゃんとアリサちゃんと、相馬君の3人でお昼ご飯を食べてた時の話なんだけど……』

 

すずかが話してきたのは、特に何でも無い、というか他愛無い世間話だった。

昼休みに何したとか、今日の授業で何処を習ったとか、そんな感じの何気ない日常の話。

でも話してるすずかの声はとてもイキイキしてて、聞いてるだけでも楽しいと感じられる。

どうやらあのオリ主君が居ないだけで随分学校生活を満喫してる様だ。

他の男子もオリ主君が居なくなって楽しくやってるらしい。

それを聞いたらオリ主君を入院させるまで養分吸った甲斐があったな。

だから俺もすずかの話に付き合って相槌を打ち、逆に俺の学校であった事なんかも

話の種に乗せた。

 

「それでよ、ソイツが倉庫のマリオ・セガールってオッサンに似てるってゴリちゃんに言い出してな。まだ小学生なのにヒゲ生えたオッサンに似てるって言われてマジギレ。ゴリちゃんもう怒りまくって大変だったぜ」

 

『アハハッ。だ、駄目だよそんな事言っちゃ……あっ』

 

「ん?どしたすずか?」

 

『そういえば今日皆で帰ってる時に、なのはちゃんが「声が聞こえる」って急に立ち止まったの』

 

「声?誰か近くに居たのか?」

 

『ううん。誰も居なかったよ……でも、なのはちゃんは間違いないって言って、林の中まで走りだしちゃったんだけど、そしたら怪我してるフェレットが居たんだ』

 

「フェレット……」

 

『うん。怪我してたから直ぐに獣医さんに診てもらったけど……定明君?』

 

すずかの言ったなのはの少し奇っ怪な行動。

実を言うと、俺はこの話について少し前から『知っている』。

理由は簡単、相馬に教えてもらったからだ。

アイツは俺があのオリ主君みたいにハーレムを狙ってたり、なのは達に危害を加える奴じゃ無いという事を知って、俺に少し情報をくれた。

それは原作、つまりこの「魔法少女リリカルなのは」というブッ飛んだ世界の初まりを意味する出来事の前兆。

それが、あのなのはが学校の帰りにフェレットという動物を拾う事だと聞いた。

全ての出来事を教えてもらわなかったのは、俺や相馬、そしてオリ主君の存在がこれから先の出来事にどんな影響を及ぼすのか解らねぇからだ。

オリ主君は言うまでも無く相馬もこれから原作に関わっていくだろう。

なら、先が歪むかも知れねえ出来事なんか知ってても意味がねぇからな。

しかしそうか……等々、その原作とやらが始まるのか……面倒くせ。

 

『定明君?どうしたの?』

 

「ん?いや、ワリイ……何でもねぇさ」

 

きっとこの先も何か色々起きるんだろうなぁ、と感じてしまって口を閉ざしたのがいけねぇんだろう。

電話の向こうのすずかの声音が心配する様な声に変わってる。

焦るな焦るな、例え原作が始まろうとも俺には関係ねぇ。

俺がやるのは至ってシンプル。

降り懸かる火の粉は特大の炎にしてブッかけてやるだけだ。

 

「しかしなのはの奴、まさか幻聴が聞こえてるとはな……疲れてるんだろうか?」

 

『そうかもしれないね……もしそうだったらどうしたら良いかな?』

 

「そーゆう時は、優しく接してやりゃ良いんじゃね?労ってやりゃ良いと思う」

 

本人が居ない所で結構ボロカスに言ってる気がするが気の所為だろう。

心なしか、どっかから「にゃぁああッ!?」って叫び声が聞こえた気が……。

ヤベエ、俺も疲れてるのか?今日は少し早く寝よう。

 

「じゃあ、そろそろ眠くなってきたから切るわ」

 

『うん。おやすみ、定明君。土曜日は楽しみにしてるから♪』

 

「あぁ、俺も楽しみにしてる。お休み、すずか」

 

その後俺はすずかと軽い談笑をして電話を切り、早めの就寝に着く事にした。

原作が始まるなら、俺もソレに備えて色々と準備しとかなきゃいけねぇ。

土曜日の訓練ですずか達が各々のスタンドの力全てを使いこなせる様になれば、これから先誘拐されそうな事態になっても何とかなるだろう。

となれば、後は俺自身の問題だ。

これから先すずか達と一緒に居れば、間違いなく俺はあのオリ主君に目をつけられちまう。

関わりたくなくても無理だろうなぁ。

相馬から聞いた話しじゃ、何もしていなかったのに転生者だとバレただけで有無を言わさず襲い掛かってきたそうだ。

「オリ主はこの俺だけで充分なんだよッ!!」とか言ってたらしいから、俺がオリ主君を放置しても向こうが向かってくるのは間違いない。

幾ら俺に全スタンドの力があっても、相手の力が解らねぇ内は戦いたくねぇ。

今、判明してるオリ主君の特典はニコポ、ナデポのみ……いや、あの容姿もか。

そういえば容姿も転生特典に含まれるってあのボインな神様言ってたっけ。

ならこれで3つ……いや、ニコポナデポは1つに纏められてるんだ。

そうじゃなきゃ相馬に襲いかかっても返り討ちに遭うだけだろ。

って事は、最後の1つが戦闘用の特典って事になる。

 

「……何か、これじゃ原作っていうよりオリ主君の対策じゃねぇか」

 

アホらしい、寝よ寝よ。

何で転生先の世界でこんな事やってんのかと自問しつつ、俺は眠りについた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

さて、日にちが進んで今日は少し楽しみにしてた土曜日。

さっそく、俺とリサリサは俺の家の前で待ち合わせて、迎えに来たファリンさんにお礼を言ったんだけど、ファリンさんもリサリサの容姿に驚くとは思ってたが、まさかビックリ仰天してスッ転ぶとは思わなかったぜ。

まぁそんな感じで俺とアリサは月村家へ赴き、遂に……。

 

「ア、アリサちゃんにそっくりッ!?」

 

「……(ぱくぱく)」

 

「……驚いたわ……ジョジョの言ってた通りね……まるで鏡を見てる気分よ」

 

感動のご対面と相成ったわけだが、その驚き様は3者3様だった。

すずかは純粋に驚き、アリサとリサリサの顔を行ったり来たりして見比べてる。

リサリサは前もって聞いてたからそうでも無えけど、それでも目を見開いてた。

んでもって……。

 

「な……なぁ……ッ!?」

 

アリサの驚き様は群を抜いて凄まじかった。

目はコレでもかと見開かれ、口はパクパクと空気を求める魚の様な動き。

やっと絞り出した言葉も言葉とは取れない単語だ。

そうそう、俺はこれが見たかったんだよ。

予想以上に面白い顔になってるアリサを見ながら、俺はニヤニヤと笑ってしまう。

 

「……さ、定明ッ!!アンタ一体これはどういう事よッ!?何でアタシがもう一人居るのよぉおおおッ!!?」

 

そして、遂に火山が噴火した。

やっとこさ言葉を絞り出せたアリサは猛然と俺に食って掛かる。

まぁ俺が連れてきたダチだから俺に食って掛かるのは判るが。

 

「生憎、リサリサはもう一人のお前じゃ無くて、ちゃんとした別人だ。なぁリサリサ?」

 

「えぇ。そういえば自己紹介してなかったわね。ごめんなさい」

 

まだ自分の名前すら言ってないとリサリサは思い出し、居住まいを正して2人に笑顔を向ける。

 

「初めまして。ジョジョの友達の『アリサ』・ローウェルよ。よろしくね?」

 

「ア、アリサッ!?」

 

「えッ!?で、でも、定明君はリサリサってッ!?」

 

容姿どころかファーストネームまで一緒だった事に困惑する2人。

俺はその2人をニヤニヤしながら見詰めつつ口を開く。

 

「リサリサってのは、俺がアリサに付けた愛称だ。同じ名前が2人も居たらややこしいだろ?」

 

「そ、そうだったんだ……」

 

「何で定明と会う時はいっつも驚かされなきゃなんないのよ……」

 

俺の補足を聞いてすずかは納得し、アリサは項垂れてしまう。

そんな2人を見ながら、リサリサは苦笑いしてた。

まぁ自己紹介だけでここまでカオスになるとは思ってなかったんだろうよ。

そう思っていれば、項垂れた状態から復活したアリサがリサリサの前に立つ。

 

「えーっと……兎に角、アタシはアリサ・バニングス。アリサで良いわ。そのかわりアタシは貴女の事をリサリサって呼ぶから」

 

「初めまして。月村すずかです。私の事はすずかって呼んでね。私もリサリサちゃんって呼んでも良いかな?」

 

「えぇ、よろしくね、アリサ、すずか。私の事はリサリサで良いわ」

 

どうやら3人は問題無く打ち解けた様だ。

楽しく笑っている3人を見ながら、俺も良かった良かったと思う。

コレを機にリサリサにも同性のダチが出来れば良いと思ってたからな。

俺1人しかダチが居ねぇなんて、さすがにほっとけねぇよ。

それをリサリサ自身が納得してたら話は別だけど、リサリサは学校の終わりに同性と楽しくお喋りしてる姿を見て、少し寂しそうな顔してたし。

そうこうしてる内に、ノエルさんがお茶を持ってきてくれたんだが、例によってノエルさんもアリサとリサリサを見比べて心底驚いてた。

もうそのリアクション良いってとは思ってたが、アリサの知り合いに会う度にこうなるんじゃねぇかと確信めいた予想がある。

 

「それと定明様、少しよろしいでしょうか?」

 

「ン?何スか、ノエルさん?」

 

と、お茶が来た所で訓練に入る前に少しお喋りしようとすずかから提案があったんだが、俺はお茶を持ってきてくれたノエルさんに呼び止められて振り返る。

 

「実は忍お嬢様が定明様にお話したい事があるとの事で、申し訳ありませんが少しお時間を頂けませんか?」

 

「忍さんが?俺に?」

 

一体何の用だろうと思いすずかに視線を向けるが、すずかも「?」って疑問符を頭の上に浮かべながら首を横に振るだけで、何も聞いてない様だ。

まぁ別に急ぎの用があるって訳でも無し、別に良いか。

 

「分かりました。何処に行ったら良いスか?」

 

「ありがとうございます。ご案内させて頂きますので、私に着いて来て下さい」

 

「了解ッス。そんじゃあ3人とも、わりーけど先に始めててくれや」

 

俺の言葉に了解と頷いた3人は、それぞれ楽しそうな声でお喋りを始めた。

そんな楽しそうな喧騒をバックミュージックに、俺はノエルさんの後を着いて忍さんが居るという部屋まで向かう。

しかし一体何の用なんだろうか?

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「着きました。コチラになります」

 

そしてノエルさんに着いていった先は、部屋とかじゃなかった。

連れて来られたのは、何と隠し階段を下って入る地下室の部屋だ。

何かそこらかしこにぶっといコードが伸びてて、機械の作動音がしてる。

え?何ここ?

思わずノエルさんの顔を凝視してしまうが、ノエルさんは微笑むばかり。

え?マジでここの奥に行けと仰る?

そう思って更にノエルさんを見つめれば、今度はビッと親指を立ててくる。

……行きますか。

最早何を言っても無駄だと判断し、俺は目の前にある扉を開け放つ。

すると……。

 

「あっ。待ってたわよ定明くーん♪」

 

ドライバーとラチェットを両手に持ってニコニコ微笑む忍さんが居た……良し。

 

「俺を解剖する気ッスか?来るなら来いやその顔面削り取ってやる」

 

容赦なく戦闘態勢に入るべきだなコリャ。

俺は直ぐ様ザ・ハンドを呼び出して臨戦態勢を取る。

何てこった、良き友人になろうとか言ってた忍さんが牙を向くなんて。

ガチで想像だにしてなかったが、俺はそう簡単にバラされるつもりはねぇぞコラ。

 

「へ?……ち、違うわよッ!?解剖なんてしないから多分出してると思われるスタンド引っ込めてくれないかしらッ!?削り取るって、顔は女の命なのよッ!?」

 

と、何故か俺が臨戦態勢に入った瞬間に忍さんはポカンとした表情を浮かべ、次には道具を放り出してワタワタと手を振る。

ありゃ?……ひょっとして俺の勘違いか?

そうは思うものの、こんな場所に呼ばれた意図が判らねぇ。

従って理由がハッキリする迄、俺はザ・ハンドを消さないつもりだ。

 

「さ、定明君を呼んだのは、コレの修理をお願いしたいからなのよッ!!」

 

と、俺が厳しい目のままだった事で疑惑が腫れてないと感じたのか、忍さんは部屋の隅にあるボタンを押した。

そうすると、部屋の一箇所にスポットライトが当たり、そこに鎮座してたモノが俺の視界に飛び込んでくる。

ただし、見た目はボロボロで見れたモンじゃなかったが、それは俺の所為だ。

 

「これって、イレインっすよね?」

 

そう、忍さんが修理してほしいと言ってきたのは、あのすずか達と初めて会った日、俺がシルバー・チャリオッツでボロボロにした自動人形のイレインだった。

見た目のメイド服も中の機械も一切修理が施されておらず、目は閉じられている。

コレを治せってか?

 

「えぇ。イレインはね?ノエルやファリンと同じで、今は失われたオーバーテクノロジーで作られた自動人形なんだけど……自立回路に重きを置きすぎて制御が甘く、暴走の可能性が高い危険な存在なの……暴走した時の事は、定明君も覚えてるでしょ?」

 

「暴走……あのプッツンモードの事っすか?」

 

ぶっちゃけそうとしか言えない怒りようだったし。

 

「プッツンて……ま、まぁ良いわ……兎に角、そういう暴走しやすい面があったから、彼女は長い間封印されてきた存在って事よ」

 

「はぁ……それじゃ、何で忍さんはそんな危ねぇヤツを治せと?」

 

危ないってんならそのままポイしちまえば良いと思うんだが……。

そう思って質問すれば、忍さんは少し遠い目をした。

 

「……定明君のエニグマ、だっけ?あの紙に物体をファイルする力」

 

「そうっすけど……それがどうしたんすか?」

 

「うん……実はね?あの紙からイレイン達を取り出したら、イレインにはまだ意識があったの。と言っても、もう身体は動けない状態だったんだけど……その時ね?彼女、言ったのよ」

 

「言った?……何を?」

 

余り忍さんの言いたい事が要領を得ない事だったので、俺は先を急かす。

忍さんは俺の質問には答えず、停止したイレインの頬に触れる。

そのままイレインを見ていた忍さんは振り返り、俺に視線を合わせてきた。

 

「――『自由になりたい』……そう言って、彼女は停止したわ」

 

「……」

 

自由。

それの意味する所が俺には判らねぇ。

イレインが何に対して自由になりたかったのか、俺には想像もつかない。

でも、忍さんにはソレが何なのか判ってるんだろう。

そうじゃなきゃ、こんなお願いはしてこねぇ筈だ。

 

「もう彼女の武装は全て取り払ってあるし、もしここで暴れてもノエルが抑えてくれるわ……だからお願い、定明君……彼女を起こして欲しいの」

 

そんで多分、忍さんはイレインの気持ちに共感してんだろう。

イレインの思いを叶えてあげたい、そう思って俺にこんな事頼んでる筈だ。

俺が何も言わずに忍さんの言葉を聞いてると、忍さんは表情に悔しさを見せる。

 

「私の手で直せたらそれに越した事は無いんだけど、イレインの中枢部品は、私でも見た事の無いオーパーツの固まりなの。これじゃあ手の付けようが無いし、今から部品を探してたら何年掛かるか……」

 

「分かりました。分かりましたよ……俺が治します」

 

もう何時までもこんな場所に居るのは気が滅入るし、年上に何度も頭を下げられるのも気分の良いモノじゃねぇ。

 

「ッ!?あ、ありがとうッ!!お礼にすずかをお嫁さんに上げるわッ!!」

 

「サラッと妹を嫁に出さんで下さい」

 

っていうかすずかにその気が無いなら意味なくね?

そう思い、俺はササッとクレイジー・ダイヤモンドでイレインに触れる。

クレイジー・ダイヤモンドの拳が触れると、脇に避けてあったパーツの山からイレインのパーツだけが飛び上がり、チャリオッツでブチ開けた穴が綺麗に塞がっていく。

やがてイレインからキュイン、というパソコンの起動音の様な音が鳴り――。

 

 

 

 

 

その後の顛末を語るなら、俺は助けた相手に殴りかかられたって事だ。

感謝されるどころか殴り掛かってくるとは俺も思わなかったぜ。

 

 

 




連日のタイトル詐欺www


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