ジョジョの奇妙な冒険、第?部『マジカル・オーシャン』   作:piguzam]

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タイトル詐欺(キリッ)

作者にネーミングセンスは皆無(´Д⊂グスン

それは本編で判る。


信じるわ……貴方は『魔法使い』よ(ry

 

 

「改めて自己紹介しておくわ。名前はアリサ・ローウェル。海鳴第一小学校の4年2組よ……貴方の本名も聞かせてくれる、ジョジョ?」

 

「……もうクラスまでバレちゃ言い訳出来ねえか……本名は城戸定明。何処にでも居る平凡な小学生だ」

 

時は放課後、場所は学校から少し離れた所に位置する小さな公園。

其処で俺とローウェルはベンチに座って話をしていた。

但しローウェルは上品に微笑みながら、俺は少し疲れた表情だがな。

 

「定明、ね……でも、私はこれからもジョジョって呼ばせてもらうわ……私の事もアリサと呼んでくれるかしら?」

 

何やら朝と比べてこう……生き生きとした表情のローウェルは自然に名前呼びをリクエストしてくるが、俺はその問いに片を竦める。

 

「生憎、アリサって名前の知り合いは既に居るからな。お宅の事はローウェルって呼ばせてもらうぜ」

 

両方ごっちゃになっちゃ面倒くせえからな。

俺の返答に少しだけ詰まらなそうな表情を見せるローウェルにそう言って、俺はここに来てから買ったジュースに口を付けた。

あの昼休みの早すぎて突然過ぎる再会を得た俺達だが、お互いに色々と話し合おうとローウェルに提案され、昼休みではなく放課後にまた会うという約束を俺は一方的に押し付けられたのさ。

兎に角呆然としてたから断る前に居なくなっちまったので、俺は放課後にクラスへ迎えに来たローウェルと共に、こうして公園に足を運んだって訳だ。

今まで女の子が俺を迎えに来るなんて事は無かったから、クラスの奴等目ン玉ひん剥いて驚いてたよ。

 

「ゴクゴク……そんで?俺に何を聞きたいんだ?」

 

明日からクラスで質問攻めにあうかもなぁ、と軽くショゲながら考えた俺は、ここに来た本題を話すべく、単刀直入にローウェルへと話を振る。

それを受けたローウェルは居住まいを正して、俺に真剣な表情を見せてきた。

 

「まずは、お礼を言わせて……貴方のお陰で、私は恐ろしい目に遭わなくて済んだわ……私を救ってくれて、本当にありがとう。ジョジョ」

 

ペコリと頭を下げてくるローウェルに、俺はプラプラと手を振って答える。

 

「構わねえよ。お前を助けれて、俺も心穏やかな気持ちでこれからも生活出来るからな……それより聞きてえんだが、警察に俺の事は……」

 

俺が目下心配なのは、警察が俺の事を探してるかどうかだ。

幾らバニングスが誤魔化しても、あの場には俺の事を直接見た犯人が残ってる。

もしソイツ等に俺の事を喋られたら、警察が俺を見つけるのも時間の問題だろう。

見つけられたら最後、俺は研究材料にでもされかねねえ。

この世界で認知されてる超能力って言えば、前に話したHGSくらいだ。

HGSは病院の検査で判明するぐらいだが、俺のスタンドは絶対に無理。

となれば、HGSとも全く違う新しい能力と認定されるかも知れない。

しかもHGSが電気を放出したりサイコキネシスの様な物を動かす力。

レアなので心を読むなんてのもあるらしいが、俺なんか時間すら止められちゃう。

そんな超常現象を超えた力がバレたら俺の平穏は一環の終わりだぜ。

軽く鬱の入った声で質問されたローウェルはと言うと、真っ直ぐな瞳で笑いながら俺の事を見ている。

 

「その事なら心配しないで。私は気絶してたから何も知らぬ存ぜぬで通せたわ」

 

「通せたって……あの場に居た唯一無傷な人間だぜ?良く警察がその言葉だけで取り調べを止めて、しかもその日の昼に帰らせてくれたモンだな?」

 

俺の尤もな疑問を聞いて、ローウェルはニヤリと笑う。

普通事件に巻き込まれた被害者なら、その日は家に帰らされるモンだと思うが。

 

「えぇ。ちょっと泣きながら覚えてませんって言えばそれで取り調べは止めてくれたし、最初は家に帰る様に孤児院にも連絡されたんだけど……学校に居る大切な人の側に居たいって言ったらアッサリ帰してくれたわ」

 

「大切な人って……恋人でも居るのか?」

 

だったら俺とここで二人っきりってのはマズイんじゃね?

 

「あら?私は別に恋人だなんて一言も言ってないわよ?大切=恋人なんて方程式は何処の誰が決めたの?大切って定義には思慕以外に友愛や親愛も含まれるのよ?」

 

え?ヤダ何この子?考え方が大人過ぎる。

そう言って微笑むローウェルだが、俺の心境は「えー?」って感じだ。

疑問では無くそれってどうなのよ?と思う心境だが、彼女は微笑みを崩さない。

 

「私は友達が居ないって言ったでしょう?なら学校に居る大切な人なんて……」

 

話の途中で言葉を溜める様に口を閉ざしたローウェルは、俺との距離を少し詰めながら、ベンチに置いていた俺の手に自分の手を重ねてくる。

おい待て?まさかその大切な人って……。

 

「一人ぼっちの私を助けてくれた貴方以外に居ないわ……ジョジョ」

 

「……何で俺が同じ学校だと?」

 

あの場では何にも言ってなかった筈なんですけど?

 

「ヒントその1。まずあの時間帯に外に居る子供なんて、通学以外には無い。という事はあの近辺の学校に通う生徒……それはウチの学校しかないわ」

 

俺の疑問に一本の指をピンと立てながら先生の様に話し始めるローウェル。

何故か不意に教師が良く似合うと思っちまった。

 

「ヒントその2。貴方の服装……それが制服ではなく私服だった事ね。この辺りにある小学校は全部で3つ。海鳴第一、第二小学校。そして市立聖祥大学附属小学校だけど、まず聖祥はこの辺りの校区でも、市立だから通っている子は何人か居るわ。只彼処は制服でしょ?私服を着てた貴方はそれで候補から外れる」

 

アンタどんだけ頭良いの?小学生でそこまで頭回ったりしねーよ。

そう考えつつも口には出さないでいると、ローウェルの推理は更に進む。

 

「もう一つの第二小学校も校区が全然違うし、校区外登校なら保護者と一緒に車で行くのがセオリー、でも貴方は自分1人だった……消去法なら、案外簡単だったわよ?」

 

簡単な筈無いと思うんだが?

確かに誘拐されてからさっきの昼休みまで時間はそこそこあったとは思うけど、そこまで考えつくには普通相当時間が掛かる。

なのに、それを理解して俺を探す工程を昼休みに完了させ、放課後にこうして約束を取り付けるとか……行動力が半端じゃねぇ。

ニコニコしたまま俺を見つめるローウェルに、俺は両手を挙げて降参する。

 

「参った、降参だ……ローウェルの頭の良さには驚かされたよ」

 

「フフ……貴方になら、褒められるのも案外悪くないものね……フフ」

 

俺は諦めた様に笑い、ローウェルはそんな俺の様子が可笑しいのか手を口元に当てて上品にクスクスと笑う。

こんな穏やかな時間も悪くは無いが……そろそろ本題に入りますか。

 

「聞きてぇんじゃねえのか?……俺の力の事を」

 

俺が姿勢を変えてそう言うと、ローウェルは何故か表情を苦笑に変えてしまう。

あれ?違ったか?と考えていると、ローウェルは俺の顔を見てから口を開いた。

 

「無理に聞くつもりは無いわ……誰にでも話したく無い事はあるもの……只」

 

ローウェルは話を途中で一度区切ると、少し拗ねた様な口調を取る。

 

「貴方が他の人にあの力の事を話してて……例えば、えぇホント例えばの話しだけど、私と同じ名前のアリサって子には話せて私には話せないというのなら……ホンの少しだけ、寂しい気持ちはあるわね。でも『勿論』、その子にも貴方は話していないのでしょう?大事な、とても大事な『秘密』ですものね?」

 

あれ?何かコイツ怒ってね?

表面上はニコニコしてる様に見えるけど……何か内側で静かに怒ってね?

っていうかコレはアレか、自分には話せないのに他の子に話してたらその内分けは一体どんな基準なのかって言われてんだよな俺?

しかも件のアリサにはガッツリ話したどころかスタンド貸してるし。

笑顔で貴方の秘密は聞きませんって言ってるけど、副音声なら早く話せやゴルァと仰ってるローウェル……最近、何か俺の秘密を知る人間が増えすぎて困る。

でもまぁ、一度スタンドを見られたら話さない訳にいかねぇし、ローウェルの思いを聞かされた後じゃヘブンズ・ドアーで記憶を書き換えるのも無理。

とくれば……。

 

「……分かった分かった。お前に俺の力の事を話すけどよぉ……誰にも一切、他言は無し、だぜ?それを守ってくれんなら、話してやるよ……俺のスタンドの事を」

 

話して秘密にしてもらうしか無ぇよなぁ……やれやれ。

俺が確認を取る様にローウェルに問いかければ、彼女も表情を真剣なモノにして俺の顔を見ながら首を縦に振る。

ここまできたらもう話さないって訳にゃいかねぇだろう。

俺は「少し長くなる」とだけ前置きして、自分の身に宿る異能の事を話し始めた。

スタンドと呼ぶ俺の持つ数々の異能。

普通の人には見えない力が齎す超常現象を超えた力の強さ。

アリサ達がそれを何故知ってるのか。

勿論夜の一族の事は伏せて話したから、少しややこしくなっちまったけど。

全てを語り終えた頃には、大分時間が掛かっちまった。

 

「……これが、俺の持ってる異能、スタンド能力の全容だ」

 

もはや語る事はもう無いので、俺は手に持ってたジュースを一気に煽る。

長々と話して喉が乾いちまったよ。

ジュースで喉を潤しながらチラリとローウェルに視線を送ってみると彼女は難しい顔をしながら顎に手を当てて虚空を見ていた。

 

「どうした?聞いて後悔したかよ?」

 

はっきり言えば、スタンドなんて普通の人からしたらオカルトの領域だからな。

俺の言葉を聞いてハッとした表情を見せたローウェルは「違うわ」と言い返す。

 

「後悔なんて無いけど、そのスタンドという力をこの目で見る事が出来ないのが残念なの……私を助けてくれた力がどういったモノなのか、それを見てみたかっただけよ。気にしないで」

 

ローウェルは少し寂しそうな表情を浮かべてそう愚痴る。

ホントは聞くだけじゃなくて見て理解したかったのかも知れねえ。

……だからだろうか?

彼女があんまりにも寂しそうに言うもんだから、俺もつい口を滑らせちまった。

 

「まぁ一般人にはスタンドが見えねーからな。アリサ達みてーにスタンド使いにならねーと無理「ちょっと待って」ん?何だよ?」

 

喋ってる途中であんまりにも迫力ある声で聞き返してくるモンだから、俺は途中でローウェルの静止を聞いて話を止めてしまう。

 

「ジョジョ、今貴方は「アリサみたいにスタンド使いにならないと」って言ったけど、スタンドというのは貴方個人で所有してる力なのでしょう?なのに、今の貴方の言い方はまるで、その子が『最近スタンド使いになった』様な言い草だわ」

 

「……あー……それは、だな……」

 

ヤベエ、口が滑って要らねぇ事まで言っちまった。

言い難い事なのでどうしたモンかと視線を逸らせば、伸びてきた腕にガシッと顔を挟まれて俺は強制的にローウェルと視線を合わせてしまう。

俺の顔を捕まえるローウェルの瞳は、何やら熱意に溢れていた。

 

「……有るのね?普通の人がスタンド使いになれる方法が?いいえ、貴方の話し通りなら、スタンドという概念は他の人では無く貴方自身が名付けたモノ。なら、考えられる可能性は唯一つ……ジョジョ。恐らく貴方は、何かしらの貴方が持つスタンドの能力を使う事で、他人に別のスタンドを与える事が出来るのよ」

 

予感とか当てずっぽう、ましてや憶測じゃねぇ。

ローウェルは、確信を持って俺に質問、いや詰問してきてる。

もう全て判ってるんだぞ?みたいな目で見られてる俺は、どうしたもんかと内心で諦め混じりに嘆いてたりするんだが。

っていうかあんだけの言葉でそこまで判るとか頭良いなんて話しじゃねぇぞ。

 

「……ローウェル」

 

「何かしら?」

 

動く事も出来ず、ローウェルに両方の頬を挟まれ、正面から見つめ合う体勢のままに、俺は溜息混じりに声を出す。

 

「お前ってさ……所謂、天才って奴なのか?」

 

あの一言で俺のホワイト・スネイクの存在にここまで気付ける奴が他に居るか?

すずかやアリサだって気付かなかったぞ?

俺の言葉にローウェルはこれでもかとニッコリ微笑む。

只まぁ、その微笑みは所謂「してやったり」なお顔なんですが。

 

「フフ、ジョジョにそう言ってもらえるのは嬉しいけど、私は自分で自分の事を天才だなんて思った事は一度も無いわ……IQは200ちょっとあるけど♪」

 

紛う事無き天才児じゃねぇッスかローウェルさん。

あの「ジッチャンの名にかけて」な高校生よりIQが上とか何そのハイスペック?

しかもIQ200ちょいって上限MAXカンストじゃねぇかよ。

これじゃハイスペックじゃなくて廃スペックだ。

目の前でニコニコ微笑む少女のナチュラルスペックに脱帽している俺だったが、そんな俺に構わず彼女は上品に微笑みながら俺と顔の距離を更に近づけてくる。

 

「フフ……ねぇジョジョ?」

 

「……何スか?ローウェルさん」

 

表面上にこやか、でも俺からしたらライオンに追い詰められたガゼルな心境だぜ。

 

「まどろっこしいのは抜きで単刀直入に言うわ……私にも、スタンドを与えて欲しいの」

 

「ホントに単刀直入だな」

 

「あら?下手に飾った言葉と真っ直ぐな本心……心に響くのはどっちかしら?」

 

そりゃ勿論後者だろーけど、幾ら何でもストレート過ぎやしねぇか?

そう考えながらも、俺自身でまだ納得出来る理由が無い。

だから俺はローウェルの本心を図りかねてんだよなぁ。

その心境が表情で伝わったのか、ローウェルは少し困った様に笑った。

 

「正直、今回みたいな事になっても大丈夫な様に、自衛の為に欲しいという気持ちだけど……本心はね?貴方がスタンドを操る姿がこの目で見てみたいのよ」

 

「スタンドを?」

 

「えぇ……私を救ってくれた貴方の力。そのイメージが知りたい。今まで人と触れ合う事が少なかったから、少し小難しい事を言いそうだったけど……」

 

一度言葉を切ったローウェルは自嘲する様に語りながら、それでも俺から視線を逸らそうとしない。

 

「貴方が私を助けてくれた時、どうやって戦ったのか、貴方の言うスタンドっていうのはどんな形をしてるのか……それを使う貴方の事が、少しでも知りたい……だから、この場限りでも良いの。例え私の身体に異常が出ても良いから……もっと貴方の事を深く教えて……ジョジョ」

 

真っ直ぐな瞳で俺を見つめながら、臆面も無くそんな事を言ってくるローウェル。

貴方の事が知りたいとか……それじゃまるで……。

 

「……その台詞、まるで愛の告白みてえだぞ?」

 

この場限りとか、都合の良い愛人やります的な台詞止めてくれません?

悪戯げに笑いながらそう返すと、ローウェルは頬を少し赤く染める。

表情は余り変えねぇが、そう言われると恥ずかしいらしい。

遂には俺の目を見ていられなくなったのか、プイッと目を逸らす。

 

「し、仕方無いじゃない……こんな気持ち、自分でも初めてなんだもの……自分が貴方に焦がれてるのか、それともヒーローの様に思ってるのか、判らないのよ」

 

「まぁ、真っ直ぐっちゃあ真っ直ぐだけどよ……」

 

幾ら何でも対人スキル低すぎやしねぇか?

自分の言いたい事をオブラートに包むのが出来ねえからってここまで飾らねぇ言葉は初めて聞いたぞ?

ここまで真っ直ぐな言葉聞かされて……それで心動かなかったら、駄目だよな?

俺は両方の頬を抑えてるローウェルの手に触れる。

その行動に少しビクッと震えたが、俺はそれに構わず口を開く。

 

「あのな、ローウェル。俺がアリサ達にスタンドを貸したのは、アイツ等が俺のダチだからだ」

 

「……」

 

そう話すと、ローウェルは寂しそうな表情で俺に目を向けてくる。

多分彼女は、俺にダチじゃねぇと言われてる様に感じてる筈だ。

誰もそんな事言ってねぇのにな。

 

「ダチが危険な……それこそ、今回みてーな奴等に襲われても自分の身を守れる様に……そう考えたからこそ、俺はスタンドを与えた」

 

俺はそう伝えて、自分の頬に添えられた手をゆっくりと引き離す。

その行動に等々彼女は涙を零してしまう。

って泣くな泣くな。まだ話は終わってねぇよ。

 

「だから、俺からスタンドを借りたいって言うならよぉ?……ローウェルには俺の『ダチ』になってもらう」

 

「……え?」

 

いや、「え?」じゃねーから。

顔を挙げて少し呆けた顔を見せる彼女に、俺は苦笑いする。

 

「俺の秘密を話した上に、ローウェルはその事を黙っててくれるっつうんだ……なら、今度は俺がローウェルの、いや『友達』の願いを叶える番だろ?」

 

さすがにここまで色々と秘密を共有してる相手に力を貸さない訳にゃいかねえ。

ソイツが「何かデカイ事をしたい」とかいう理由だったなら絶対貸さねぇ。

けどまぁ、自分の身を守りたいとかなら、俺は彼女に力を貸す。

もう関わって、話をして、それが俺の日常になるなら、俺の穏やかな日常を守る為に力を貸すのは悪い事じゃねぇ筈だ。

俺がアリサとすずかにスタンドを貸したのはそういう理由だったし。

俺の言葉の意味を頭の中で理解してくれたんだろう。

彼女は涙を拭かずにニッコリと、微笑みじゃなくて笑顔を浮かべた。

 

「友達……初めての友達が、まさかあんな事件が切っ掛けで出来るなんて……もし神様が居るとしたら、随分意地悪よね?」

 

「違いねぇ」

 

2人揃って言った事が可笑しくて、俺達は小さく笑う。

暫くそうして笑っていると、ローウェルは涙を拭って俺を見つめてきた。

 

「さっきの告白紛いの言葉、訂正するわ……これから教えてくれるんでしょ?」

 

(それに……気持ちが固まったら、ちゃんと告白したいもの)

 

「まぁ、そこまで面白れぇ事じゃねぇけど……知りたいなら、教えてやるよ」

 

ローウェルの言葉に軽く返しながら、俺はホワイト・スネイクを使ってあるスタンドをDISC化して取り出す。

勿論例の如くローウェルもその光景に驚いてたがな。

彼女にDISCの事を説明すると、ローウェルはそのDISCを躊躇せずに自分の頭に埋め込んだ。

その思い切りの良さに呆れて「怖くなかったのか?」と聞くと、ローウェルは可笑しそうに笑いながら「信じてるもの」と返してきた。

どんだけ思い切りが良いっていうか、度胸あるなぁっていうか。

 

「変わった感じはしないわね……それじゃあスタンドの事を(ポツッ)あら?」

 

「(ポツッポツッ)ん?」

 

さぁ本題にと気を漲らせてたローウェルだが、それは天の妨害で阻まれてしまう。

急に落ちた水滴に2人揃って空を見上げると、曇り空が俺達を取り囲んでいた。

しかもポツポツという音は更に頻度を増してくる。

どうにも雨が降り出した様だ。

あらら……天気予報じゃ何も言ってなかったってのに、予報が外れたか。

っていうかローウェルって傘持ってねぇよな?

そう思ってベンチから立ち上がったまま不機嫌顔のローウェルに視線を向ける。

これからって時に出鼻を挫かれたのが癪な様だ。

でも怒鳴ったりしない辺り、やっぱアリサとは違うんだなぁと感じてしまう。

 

「本当、神様って意地悪……残念だけど、今日はここまでにしましょう」

 

「そりゃ別に良いけど、お前傘持ってねぇだろ?家は近いのか?」

 

ベンチに置いていたランドセルを持ち直すローウェルに、俺はそう声を掛ける。

俺もそうだが、ローウェルも傘は常備してない。

結構規模の大きそうな雨だから、走って帰るつもりかもしれない。

 

「ここから歩いて30分位掛かるけど……雨宿りしながら帰るしかないわね」

 

ランドセルを担ぎながらそう困った笑顔で俺に言ってくるローウェル。

そりゃ幾ら何でも風邪引いちまうだろ……ハァ、仕方ねぇ。

少し頭の中で面倒だと考えるが、これもダチのためと自分を納得させる。

 

「それじゃあね、ジョジョ。貴方も風邪引かないように。バイバイ♪」

 

「待て待てローウェル。俺が送ってやるよ」

 

さっきまでの不機嫌さを感じさせない柔らかな声音で俺にさよならと言ってくる彼女の肩を掴み、俺はローウェルの行動を阻む。

俺の行動に「え?」と言いながら振り向いてくるローウェルに、俺はニヤリとした笑顔を見せる。

 

「さすがに雨が振る中、傘を持ってねぇお前を1人で帰せられるかよ。俺が家まで送り届けてやる、『傘代わり』にな」

 

「傘代わりって……貴方も傘は持ってないでしょ?一体どうする気……ッ!?」

 

ローウェルは俺の言ってる事にごく当然な疑問を投げ掛けてくるが、それは途中で

驚愕の声に変わり、目付きも驚きを表して見開かれる。

スタンドDISCを埋め込んでスタンド使いとなった彼女なら、俺の周りに漂う『雲』もハッキリと見えているんだろう。

驚きで声も出ないって様子のローウェルに笑顔を見せたまま、今度は俺が喋る。

 

「生憎、俺には傘なんて『要らねぇ』んだよ……『操れる』からな」

 

驚く彼女にそれだけ言って、俺はあるスタンドを呼び出す。

雲の様に柔らかそうな見た目の天候を操るスタンド、『ウェザー・リポート』だ。

俺はウェザー・リポートの拳を握りこませて、天に向けて撃つ体勢を取る。

初めてスタンドを見るローウェルに、ちょっとだけサービスだ。

 

「ウェザー・リポートッ!!!」

 

俺の声に呼応してウェザー・リポートは拳を空に向けて突き出し、能力を使用。

俺とローウェルが歩く3メートルぐらいの部分だけ雨雲を取り払った。

結構強めの勢いで降り出した雨が、俺達の周りだけ何とも無くなる。

これなら問題無く帰れるな。

 

「さぁ、行こうぜ?俺も早く帰りてえしな」

 

ポカンとした顔のローウェルにそう声を掛けると、彼女は薄っすらと微笑む。

 

「……まるで魔法使い、ね」

 

「そんなメルヘンチックな存在じゃねぇよ」

 

スタンド使いだからな?

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「ここよ。ここが私の家」

 

あの公園から歩いて30分。

何気ない学校での出来事とか話しながらだったら直ぐだった。

そして、ローウェルが指したのは普通の孤児院。

特に汚れが酷いとか金持ち過ぎるって訳も無く極めて普通な場所だ。

今も雨が降ってるから、孤児院の庭には人影が無い。

多分帰ってきてる人達は皆中に入ってるんだろう。

そんな事を考えてると、ローウェルは門を潜る前に振り返って俺を見てくる。

 

「……ねぇ、ジョジョ。もう一つお願いがあるんだけど、いいかしら?」

 

「あ?もう一つ?」

 

今この土壇場で頼むお願いって何だ?

一体何だと思って聞き返した俺に、ローウェルはちょっと恥ずかしそうな表情をしながら、ボソボソと口を開いた。

 

「……貴方には断られたけど……や、やっぱり私の事、名前で呼んでくれない?」

 

「は?」

 

意味が分からないといった表情を浮かべて聞き返す俺に、ローウェルはもじもじと身体を揺らしながら言葉を続ける。

 

「あ……憧れてたのよ……近い歳の子に……というよりその、友達に名前で呼ばれるの……そ、そのアリサっていう子が居ない時だけで良いの。もしも一緒に居た時なら、私の事はローウェルで良いから……駄目かしら?」

 

頬に少しだけ赤みを刺しながら頼んでくるローウェル。

ヤバイ、何というか健気過ぎる。

今まで友達居なかっただけじゃなく同年代に名前で呼ばれた事無いとか……。

うん?今まで苗字で呼んでた俺って結構可哀想な事してたんじゃね?

 

「そうだな。ダチになったら名前で呼ばなきゃだよな、『アリサ』」

 

そんな最悪過ぎる考えが頭に過った瞬間、俺は今までの態度をコロッと変えて、自然に彼女を名前で呼んだ。

そんな最低過ぎる俺に怒る事無く嬉しそうに笑うアリサ。

俺って結構心汚れてるんだろうか?

何か名前呼びだけじゃアリサにした仕打ちの詫びにならねぇ。

どうしたモンかと頭を捻って……捻って……あっ。

 

「そうだ、アダ名だよアダ名」

 

「え?……アダ名?」

 

「そうそう、愛称っつうか、ニックネーム?もう一人のアリサが居たら、ソッチで呼ぶってのはどうだ?」

 

これなら他人行儀な呼び方しなくても済むぜ?と聞いてみれば、目を輝かせて俺の提案にコクコクと頷くアリサ。

その様子は何というか、初めてクリスマスプレゼントを手に入れた子供みたいだ。

出来の悪い俺の頭じゃそうとしか言えねぇや。

そんなアリサの様子から目を外し、脳内で頭をコレでもかと捻る。

俺は他人にアダ名を付けた事があってもあんまり受け良く無かったからなぁ。

顔がゴリラみたいだったからゴリちゃんとか。

しかし俺が初めての友達っていうアリサに下手なアダ名付ける訳にゃいかねぇ。

さてどうすっか……アリア、は何か違う。

っていうか独唱曲って完璧アリサをバカにしてるだろ?

アリ、アリ…………アリアリアリアリってコレは違う、違いすぎる。

 

「う~む……おっ?そうだ……『リサリサ』ってのはどうだ?」

 

思い浮かんだアダ名に、俺は少しテンションを上げてアリサに聞いてみる。

ジョジョの原作第二部に登場したクールな波紋使いの美女、リサリサ。

その正体はジョセフ・ジョースターの母親なんだが、まぁそれは割合する。

リサリサのイメージとアリサのイメージはバッチリ合うから、このアダ名はサイコーにぴったりだと思うんだが……。

そう思ってアリサに視線を向けると、彼女も気に入ってくれたのか笑顔で今の愛称を何度も連呼していた。

 

「リサリサ、リサリサ、か……うん。凄く気に入ったわ」

 

「そっか。それなら、もし次にアリサが2人いたらリサリサって呼ぶ事にすんぜ」

 

「えぇ。私も自分にそっくりな子にあってみたいし、その時は是非そう呼んで」

 

嬉しそうなアリサに「おう」と返事をしてから、俺は帰るためにアリサと孤児院に背を向ける。

何時の間にか雨は上がっていて、ウェザー・リポートで作った雲の隙間ごと拭われて、夕焼空が顔を出していた。

さあて、帰って飯食うか……今日の飯は天ぷらだって母ちゃん言ってたし。

 

「それじゃあな、アリサ。また学校で会おうや」

 

それだけ言って、俺は家に向かって歩を進める。

今日は朝からハードワークだったし、家でゆっくりとしよう。

 

「……ジ、ジョジョッ!!」

 

「ん?どうし(チュッ)ッ!?」

 

後ろからアリサに呼びかけられて振り向いた刹那、頬に何か柔らかいモノが当たる感触、そして目を瞑るアリサのドアップな顔が俺の目に飛び込んできた。

ちょ、ちょっと待て?これって所謂……。

余りの急展開に混乱しかけている俺を他所に、アリサは唇を俺の頬から離すと、両手を後ろで組んだまま、若干下から覗き込む様な体勢で離れていく。

呆ける俺から離れていくアリサはトマトの様に真っ赤な顔色だった。

 

「き、今日のお礼……助けてくれて、ありがとう……じゃあね。チャオ♪」

 

はにかむ様な笑顔を浮かべてそう言ったアリサは俺に背を向けると、一目散に孤児院の玄関へと走って行った。

 

「……い、いや。確かに外国じゃ頬へのキスは親愛の証らしいけど……」

 

この場合どっちなんだ?本人は今日のお礼と言ってたし、公園でしたあの愛の告白紛いの言葉は取り消してとは言ってたが……わ、分からん。

取り消したものかそう受け取ったものかと悩みつつ、俺は家路に着いた。

 

 

 

 

 

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

「(ガチャッ)ただいまー」

 

そして歩くこと大体……40分ぐらいか?

アリサの家まで行ったのでちょい遠回りになったが、俺は家に帰宅した。

今日は疲れた……飯、まだかな。

 

「(ガチャッ)あぁ、帰ってきたわね~。お帰り定明~」

 

「おう、ただいま、母ちゃん」

 

そう考えつつ玄関で靴を脱いでいると、居間の扉が開いて母ちゃんが顔を出した。

うん、相変わらずポケ~っとした顔してんな。

……ついでに今日の面倒事に俺を放り込んでくれたのも母ちゃんだったな。

いや、確かにアリサを助けれたのは良いんだけど……素直に感謝はしたくねぇ。

 

「ちょうど良かったわ~。定明に電話よ~?」

 

「ん?俺に?誰からだよ?」

 

俺の家に電話かけてくる奴なんて、大体学校のダチくらいしか居ねえが。

電話の相手を聞くと、母ちゃんは指を顎に当てて「ん~」とか唸りだす。

いや、相手の名前聞いてねぇのかよ?

そう思いつつ待っていると、やがて母ちゃんは「あ~」とか言って手の平にポンともう片方の手を当てる仕草をした。

 

「ほら~、この前来てた~、鮫島さんの仕えてるお屋敷の女の子~」

 

「アリサから?」

 

何か用事でもあんのか?

 

「そう~、でもグッドタイミングね~♪電話が掛かってきたの……」

 

ちょうど今なのか?

 

「ちょうど~12回目で~、今かかってきてるの~」

 

全然グッドタイミングじゃねぇ。

そう思いつつ居間に入ると、保留の文字を光らせている我が家の電話。

……心なしか「早く出なさいッ!!」ってオーラが見えるんですけど?

考えても仕方ねぇか……また怒ってるんだろうなぁ、アイツ。

ドッチにしろ電話を取らないという選択肢は無いので、俺は溜息を吐きつつ保留を解除、恐る恐る受話器を手に取り……。

 

「……もしもし?」

 

受話器から耳を30センチくらい離して声を掛ける。

 

『遅いッ!!こんな遅い時間まで何処ほっつき歩いてるのよアンタはッ!!』

 

そして待ってましたと言わんばかりにデカイ声が帰ってきた。

その後も受話器から聞こえるやんややんやという怒りの言葉。

さっきのアリサとは正反対過ぎて、でも声は同じだから頭痛くなりそうだぜ。

それを聞き流しつつ、俺は受話器に声を掛ける。

 

「ハァ……OKOK,俺が悪かったよ……んで?一体何の様だ?」

 

『何よ、その面倒くさそうな声……仕方無いわね……定明。アンタ次は何時アタシとすずかにスタンドの練習させんの?確か、まだLESSOM3が残ってるって言ってたでしょ?』

 

「あぁ、それか……ん~、出来れば休みの日が良いんだけどなぁ」

 

さすがに学校が終わった後でやるのも面倒くせえからな。

なら休みの日にやる方が気分的に楽だ。

 

『な、なら、来週はアタシとすずかも塾が休みだから、来週の土曜日はどう?』

 

「土曜か……ちょっと待てよ」

 

日取りの指定をしてきたアリサに待ってくれと言いつつ、俺は電話横に備え付けられた壁掛けのカレンダーに目を通す。

何か特に予定は……うん、入ってねぇな。

 

「おう、俺も土曜日は何も無いから、またコッチに迎え頼む」

 

『えぇ、今度はすずかの家でやるつもりだから、すずかに伝えとくわ』

 

「ん?じゃあ何ですずかじゃねぇんだ?」

 

普通やるモンの家から連絡あるモンじゃねぇのか?

 

『何よ、アタシじゃ不満だっての?』

 

「誰もンな事言ってねぇだろーが?只、普通は家主が連絡するモンじゃねぇか?」

 

『そうだけど、今日はすずか、家の事でちょっと話し合いがあるらしくて、アタシが代わりに連絡したのよ……兎に角、ちゃんと伝えたからね?忘れずにちゃんと来るのよ?』

 

とりあえずこれで話は終わりらしく、受話器の向こうのアリサは最後に念を押す様に確認を取ってきた。

そこまで言われなくてもちゃんと行くっての。

向こうから聞こえてくる元気良すぎな声にそう返そうとして……。

 

 

 

 

 

「分かったって。じゃあな、『リサリサ』」

 

『ホントに分かって……ちょっと待ちなさい?その『リサリサ』って誰よ?』

 

ミスった。

 

『ねぇ誰?ソイツ誰なのよ?何でアタシと喋ってて違う奴の名前が出てくるワケ?しかも名前の感じからしてソイツ女……』

 

「おぉーっとヤベェもうすぐスティール・ボール・ラン(この世界の競馬)が始まる時間だすっかり忘れてたぜーそれじゃあまた土曜日になアリサー(棒読み)」

 

『ちょ、ちょっと待ちなさ……』

 

向こうで何か言ってるが全て無視して、俺は受話器を置いて電話を切る。

更に直ぐ電話が掛かってくるかもしれないので対策に受話器を若干外しておく。

これでアリサからの電話対策はバッチリだ。

ある程度遅い時間まで粘ればアリサも諦めてくれるだろう。

 

「後は……レッド・ホット・チリ・ペッパーで電気メーター誤魔化しておくか」

 

夕食前にやらなければならない事が増え、俺は盛大な溜息を吐く。

土曜日は荒れるだろうなぁ……。

 

 




アリサ改めリサリサのスペックの高さヤベー(;・∀・)

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