おら主人公、フレーゲル様を見習いさっさと前半自堕落な生活して後半獅子帝にズタボロにされて狂いながら毒杯呷るんだあくしろよ!(鬼畜)
ツェツィーリア・フォン・ティルピッツ伯爵夫人は遡ればその血筋はアルレスハイム=ゴールデンバウム家に辿り着く。
現皇帝グスタフ三世の兄弟姉妹の末妹が母に当たり、父は帝室に所縁ある名門バルトバッフェル侯爵家の当主の息子に当たる。恐らく母方の血を最も濃く受け継いでいた。雪のように白い肌に艶があり煌びやかに輝く銀髪、端正で細い線の顔立ち、括れた腰に豊かな胸、高慢であるが確かな礼節と品性を兼ね備え、何よりも甘え上手である所が母親と瓜二つであった。
母は前皇帝たる父や皇后たる母、そして兄や姉に対して無邪気に甘え、よくよく可愛がられていた。彼女もまた父こそ早くに失ったが、母、それに叔父叔母、そして二人の兄に溺愛される、と言える程に可愛がられていたしそれを当然のように受け取り、人の懐に躊躇なく入り込み屈託のない笑顔で「お願い」が出来る性格だった。
そのため当然のように玉座に座る至高の存在にも遠慮なく接する事が出来たし、皇帝グスタフ三世にとっても気負いなく接する事の出来る姪子を一際目にかけていた。
そんな彼女には当然求婚する名家の御曹司も多い訳だが、気紛れで、えり好みし、我儘癖の強い彼女の御眼鏡に適う者はそうそういなかった。
宮廷で行われたとある夜会においても同様で、あれも駄目、これも物足りない、と扇子を手に胡乱気に目配せしていた少女の目に留まったのがティルピッツ伯爵家の当主となったアドルフである。
行き遅れ、という訳ではないが少々婚期を過ぎていた三十になろうという伯爵家本家の次男は長らく夜会に出席する事も、またこれと言って浮いた話や結婚話もなかった。
彼自身は実家の父や兄と何か揉め事があった訳でもなく、また性格的に問題があった、という訳でもない。唯士官学校を卒業して以来、自由惑星同盟軍の一軍人として一心不乱に勤めを果たすうちに実家に戻る事もなく、また浮ついた話もなくこの歳となってしまっただけである。
無論その甲斐あり、前線後方問わず功績を上げ昇進と勲章を得て、三十になるかならないかという歳で末端とはいえ提督の地位に立つ事が出来た。将来的には分艦隊司令官や正規艦隊司令官、最終的には宇宙艦隊副司令長官辺りには昇進出来るかも知れないと期待もされていた。
そんな折、本家で不運にも父と兄が纏めてヴァルハラに旅立ったために急遽呼び戻され、あれよあれよという間に長老達により家を継ぐ事になり、今宵の夜会に久々に出席する事になったのだ。余りに久しぶりなので顔馴染みの貴族すら目を丸くして驚く程であった。
顔立ちが格別に優れていた訳ではない。確かに美形といえるがどちらかと言えば厳格で堅苦しい印象があった。ほかの言い寄る貴公子達のように爽やかさはない。
格別に名門と言うわけではない。確かに帝国の誕生以来の名家ではあるが、比類する家の者からの求婚者がいなかった訳ではない。
社交術が上手いと言うわけでもなかった。寧ろ長年同盟の市民軍に在籍していたからだろう。無骨で、洒落も上手い訳ではなかった。もっと魅力的なお喋りが出来る青年なら幾らでもいた。
それでも彼女の琴線に触れ、声をかけたのは彼女に少なくとも「自身に合った」男を探す審美眼があった、という事だろう。
厳ついが決して気難しい訳ではない。不器用ながらも自身を喜ばせようという努力は微笑ましく思えたし、軽薄さはなく真摯で実直であったのは好感が持てた。
同盟軍に長らく勤めていたためであろう、所謂門閥貴族の中でも忍耐力があり(他の者が無い、という訳ではないが)、体力があり、我儘にも嫌な顔をせず紳士的に付き合ってくれたのも良かった。
彼女の家が同じ軍人家系のバルトバッフェル家であった事も幸運だ。武門貴族の文化については予め知っていたし、それに慣れてもいた。
何よりも子供らしい性格の彼女にとって堅物ではあるが頼り甲斐があり、包容力もある点が魅力的だったのかも知れない。目敏く脈がある事を見抜いた一族の長老であり、アドルフを本家当主に据えたラントシュトラーゼ=ティルピッツ子爵家の当主アルフレートは、巧妙に根回しを行い幾度かの園遊会や食事の席を用意し、最終的にはツェツィーリアの実家と典礼省、そして至高の玉座の承諾を得て式を挙げさせる事に成功した。
夫婦仲は悪くなかった。順風満帆な人生と言えた。この時までは。
原因は不明だ。毒かもしれないし、濁った黄金樹の血が悪かったのか、ストレスか、偶然か、兎も角も一度目は流産し、二度目は死産した。
だからこそ三回目の時に対する執念は尋常なものではなかった。食事に入浴、睡眠、水から空気から全て安全を確保し、信頼出来る医者を常時数名控えさせ、毎日のように検診を受け、僅かの異常も見過ごさなかった。
そうした細心の注意に注意を重ねて、腹を痛めて産んだ子が可愛くない筈もない。その上、夫が軍務で忙しくなれば一層我が子を溺愛しようと言うものだ。本来なら乳母や子守女中に任せる世話も全て自分でやる程である。
産まれて暫くは心配の連続であった。ほんの少しの怪我で死んでしまいそうな我が子のためにありとあらゆる手段でその身を守る。大人しく、余り泣かない事が逆に心配であったがそれもすぐに杞憂に終わる。
すぐに拗ね、我が儘を言う子供に育っても何の問題もなかった。元気なのは良い事だ。我が儘といっても皇族生まれの彼女にとっては慎ましい、大した事でもないことばかり、付き人が幾ら送り返されようと、使用人に理不尽な命令を言おうとどうでも良い事だ。大事なのは息子が気に入るか、命令を聞けるかどうか、その身の安全が守られるかどうかだ。
池に落ちた時と宮廷で遭難した時は流石にショックで失神しかけた。風邪を引くだけでも一大事だというのに……周囲の無能共はどうしてくれようか。夫の処分は余りに軽すぎて不満が無かった訳では無いが、最後は渋々ながらも認めるしかなかった。
息子が失態を演じた付き人を気に入って手元に置くと言った時には困惑したが仕方無い。可愛い我が子が泣きじゃくる姿を見るのは胸を引き裂かれる程に辛い事だ。
息子が軍人になることは当然であったが、同時に戦死する可能性はほんの少しも想像の内に無かった。何のための付き人であり盾艦か?
同盟軍に所属していた父は早くに戦死したが、それは盾艦も付き人もいない状況での事、親戚一同は口々に亡命軍に入隊していれば、付き人や盾艦が傍にあればこのような事は起こり得なかった、と彼女に語ったものだ。
そして軍事に疎く、平均的な門閥貴族の姫らしく、弾除けが傍に有る限りは可愛い我が子が血を流す事はあり得ない、それを彼女は心の底から確信していた。だからこそ弾除けがある限り、息子を幼年学校に送る事には何の躊躇も無かった。
だからこそ、幼年学校で撃たれた時は同盟の市民軍共に罵声を浴びせ、卑しい海賊共は二度と我が子に害を与えないように夫に懇願して滅ぼさせた。降伏した海賊数千人をその場で処刑させようとしたのを止められたのは不満だったが。
初任地は安全な役職を与えたのに重傷を負ったと聞いたときは気を失った。代償に同盟で一番の病院で入院させるよう要求をしたのは当然の権利であった。名誉勲章授与は同盟の査定部からすれば大盤振る舞いのつもりだったかも知れないが彼女の価値観からすれば不足だった。何故自由戦士勲章ではないのか?
地元ならば絶対に安全であろうと考えた。無能な付き人も取り換えた。二度も目の前で失態を演じた従士なぞきっと息子も失望したに違いない。無論、息子の「御気に入り」だった事は知っているし、それを取り上げるのは苦渋の決断だった。だが、子を思う母としてここは涙を呑んでやらなければならない事だ。
代わりは慎重に選んだ。好みに合うように顔立ちや髪色、瞳色は同じ、出来れば血縁も近い方が良かろう。性格も、声調も、スタイルも前のより良い方が喜ぶだろう、完全なる善意でツェツィーリアはノルドグレーン従士家本家の次女を選んだ。
………まさか卑しい逃亡兵の捕囚となった上、対応した息子が怪我するとは想像もしていなかった。
知らせを聞いたと同時に気絶して、意識を取り戻した後、急いで息子を安全な自宅に連れ戻そうと考えたが息子から直々に拒否されてしまいベッドで号泣した。
軽傷であると聞いたが何の慰めにもならない。貴き血筋の血一滴は数千に及ぶ賎民の命よりも重いのだ。軽傷?怪我そのものがあってはならないのだ!死ぬのは士族共や平民共の仕事だ。貴族、まして我が子の血がこう何度も何度も流させられてたまるものか!
本当ならば今すぐに可愛い我が子の元に駆け付けたい。きっと凄く痛かった筈なのだ。今すぐ抱きしめて慰めてやり、安全な領地の本邸に匿って上げたかった。ケッテラー伯爵家の領地の軍病院にいるため比較的安全ではあろうが、安心しているとは限らない。
そして彼女は思い至る。きっと息子は同盟の市民軍で虐められているに違いない!息子の拒否もきっと卑しい平民の上司に無理矢理言わされているに決まっている!そうでなければ安全な地に配属していながら何故これ程までに息子が怪我するのか?まして安全な本邸にも、母の元にも帰ってこないのか?
完全に八つ当たりの被害妄想ではあるが、あらゆる事が願えば叶い、我儘が通って来た生まれながらの尊き血筋の末裔にとっては自身の考えが真実を突いていると確信し疑ってもいなかった。
だからこそ、何の知らせも無しに可愛い我が子がアルフォートの屋敷に戻ってきたと連絡を聞いた時、ツェツィーリアは、ベッドから飛び上がると共に屋敷中の使用人に歓迎の準備を命令したのである。
「ヴォルター、折角帰ってくるのなら早く言ってくれたら良いのに、そうすればきちんと歓迎の準備が出来たのよ?」
「はは、ワロス」
星都アルフォードの標準時にて0100時、つまり真夜中、私は美しい声に対してそう答えるしかなかった。
リムジンめいた地上車から降りた視界に映り込むのは一斉に頭を下げる執事・女中の皆様と家政婦長やら侍女を控えさせながら屋敷の玄関で満面の笑みを浮かべる我が母である。
ノルドグレーン少尉との話し合いと聞き取りの後、私は現地から土壇場で有給申請をし(そして処理するコクラン大尉が胃痛に苦しむ事になるだろう)、飛行機で星都アルフォートの中央街に構えている星都邸宅にひっそりと向かおうとしていた。
……まさか民間空港を降りた時点で連絡しても無いのに護衛付き地上車が控え、家まで(強制)エスコートされるとはたまげたなぁ。おい、どうやって行動把握した。ばれないようにハイネセン資本の便で来たのに……。
使用人達も可哀そうに、こんな夜中に叩き起こされ私の出迎え準備に右往左往させられたと思うと彼ら彼女らのブラック環境ぶりに涙が出てくる。嫌な顔一つせず笑みを浮かべて頭を下げる君達は使用人の鑑だ。
因みに使用人、と一口に言ってもその中には細かく厳しい階級と秩序がある。家令と家政婦長を最上位に置き、執事・秘書・料理長・料理人・小間使い・侍女・客間女中・家女中・乳母・家庭教師等が上位使用人と呼ばれる。彼らは従士階級であり、世襲で代々自分達の主家に仕えている。
その下に奉公人としての平民が従僕・台所女中・洗い場女中・洗濯女中・園丁・馬丁・狩場番人・御者・小姓等の仕事をしている。彼らは中位使用人と呼ばれこれまた代々世襲で仕える。当然だ、どこの馬の骨かも分からない輩を家におけるか。毒を盛られたり、盗みやスパイ行為されたらどうする、という話だ。
その下がようやく民間で募集をかける下級使用人である。尤も仕事といえば殆どが取るに足らない、あるいは卑しい雑用であり、数も多くない(それでも給金と就業による社会的信用度は凄まじいので倍率はやばくなる)。
基本的に上位・中位使用人だけで使用人の八割以上は満たされており、伯爵家本家の場合は三百名になるか程度の数に及ぶ。これが多いか少ないかは判断に困る。星都の邸宅以外にも本領の本邸、避暑地等にある複数の別荘の維持管理にも相応の人数が必要だからだ。
「さぁヴォルター、外は寒いから早く屋敷に入りましょう?罅が出来たら大変だわ」
そう言って私の下に駆け寄りにこにこ顔で手を引く母。その優しさをずっと外で立ちんぼさせられていた使用人達にも分けてあげて。
……いや、言った瞬間に小首傾げられそうだけど。
屋敷に上がると共にホワイトプリムに白いエプロン、黒いロングスカートにレースを装飾したクラシカル調のメイド服を着た女中が数名で同盟軍正式士官軍装の上着とスカーフ、ベレー帽を当然の如く脱がせる。
脱がせた服を折り畳むと恭しく礼をして足音も立てず下がる使用人達。普段は静かにそれぞれの仕事を果たし、求めに従い粛々と命令を果たし、終われば静かに存在を消して下がるのが使用人(少なくとも家令と家政婦長以外は)の役割だ。凄いよね、こいつら普段足音も立てずに仕事しているんだぜ?沈黙のうちに仕事しながら互いに見ずに避け合うとかマジかよ。
さて、まぁ機先を制された事はこの際仕方無い。まずは母上の御機嫌を取り話し合い(懇願・泣き落としとも言う)の場を設けるのが先決、導かれるままに屋敷の中に連れられる。
「お腹減ってる?それともお風呂が良い?」
ドレスに首飾り、指輪に髪飾りで着飾りと化粧をしていない(してなくても十分に美人だが)以外は完全にめかし込んだ母はご機嫌にそう尋ねる。
「まさか両方準備しています?」
「勿論でしょう?ヴォルターが何したいか言ってもすぐに叶えられるようにしないと」
「アッハイ」
そりゃあ、また使用人達にとっては傍迷惑な事だ。
尤も、ここで御厚意を断るのも母の機嫌を損ねかねないし、準備した(させられた)使用人達が哀れだ。まぁ、私も移動で疲れたのもあるが。
「……では先に入浴を、その後食事を頂きます」
尚、入浴は自分一人でするから供はいらない、と(母がいない場所で)使用人達に命じる。これ、予め言っておかないと場合によっては神(ライトスタッフルール=サン)の神罰が下るからね、仕方無いね。
簡単に入浴をすませばシャツにベストという略装に身を包み、老執事に先導される形で居間に通される。多分七十を過ぎているのに背中をピンと伸ばし、皴一つ、埃一つ付いていない燕尾服を華麗に着こなす姿は優美である。そこには500年二十世代以上に渡り代々一族の親戚一同に至るまで使用人として働いてきた誇りと伝統が感じられた。
通された居間のソファーで母がニコニコ顔で待っていた。皿の置かれたテーブルと二つのソファー、その他調度品が置かれた室内にいるのは母の他にはすぐ後ろに控える侍女が二人と老境の家政婦長、恐らくは寝ている所を蹴り起こされたに違いない肥満気味の屋敷の料理長と配膳役の給仕女中が一名という構成だ。可哀そうに私と母のせいで深夜勤務だ。
「ヴォルター、ささ、いらっしゃい。夜だから余り大仰な物は用意出来ないけど、もし不満なら今すぐ作り直させるわよ?」
手招きする母が心配そうに尋ねる。いや、私子供じゃないんですから……。
「いえ、構いません。ほんの軽食のつもりでしたから。寧ろ世話をかけて恐縮です」
と謝罪するのは料理長ではなく母上に向けて言わなければならない。御免ね、料理長?
ソファーに座り母に向け愛想笑いを浮かべながら食事を始める。牛乳とシナモンの香りが立ち込める温かいミルヒライスに仔牛のウィーン風グヤーシュ(煮込みシチュー)、濃厚な味わいのルーラーデン、杏ジャムのパラチンケ(クレープ)、ヴァイセンブロート(小麦パン)は料理と料理の間の口直しだ。デザートにシャーベット、ババロア、幾つかの果物が控える。
……あれ、これって軽食なのだろうか?ボブは訝しんだ。
絶対急いで必死の形相で調理していたに違いない。厨房では熟睡している所で叩き起こされて阿鼻叫喚だったに違いない。御免ね、帰ってくる連絡しなくて。テーブルの上に置かれた銀のナイフやスプーン、フォークを使い食事を続けながら私は内心で本日何度目かの使用人達への謝罪をする。
一方、我が母は食事は兎も角、お茶もせず唯々食事をする私に笑顔を向け続ける。幼い子供がお子様ランチを食べるのを見る母親のようだ、いや母親だけど。
「あらあら、口元についているわよ、仕方ない子ねぇ」
と、自分で拭こうとした所をナプキンを奪われ五歳のように口元を母に拭き取られる。羞恥プレイかな?
……正直、滅茶苦茶恥ずかしいがここは御機嫌取りのため我慢だ。子供らしい態度をして甘えておけば我が母を煽てるのは比較的容易い(無論私以外がやっても効果は皆無だが)。
「御手数おかけします、母上」
「あらあら良いのよ?昔は良くしてあげたけど幼年学校に入ってからは家に戻る事も無くて……勉強熱心なのは良いけど家族に甘えられなくて寂しかったでしょ?こういう時くらいどんどん甘えていいのよ?」
私が謝罪すれば母は当然のようにそう語る。いえ、ベアトに散々甘えていたし、正直胃が痛くなるので帰りたく無かったス。うーん、口に出しては言えないなぁ。
というか自意識過剰かも知れないが寂しがってたの多分母上だよね?
「それに最近はヴォルターも苦労が多いでしょう?この前も怪我をしたって聞いて心配したのよ?本当に大丈夫?」
心底心配していた、と一目で分かる不安そうな表情で私を見つめる母。
「私は大丈夫です。この通り、怪我と言っても擦り傷みたいなものです。御心配には及びません」
私は安心させるように母にそう伝える。色々面倒な所があるが私の身を心配しているのは事実なのでその点は心苦しい。
まぁ、だったらまず軍人になるのを反対して欲しいのだが……。えっ?可愛い息子が賊軍なんかに殺されるなんて有り得ない?さいですか。
「折角あの人やアルフレートの叔父様にもお願いして安全な地元勤務にしてあげたのだけれど……御免なさいね、こんな事になるなんて」
うん、次はハイネセンの後方勤務本部の窓際部署お願い!私の成績じゃあ無理だろうけどね!
一通りの食事を終え、給仕の女中に注いでもらった(平然と酌させる私も相当貴族に毒されているな)シャンパン入りのグラスを小さく口元に入れ、テーブルに静かに置く。給仕女中が恭しく礼をして銀食器を下げた頃、そこで私は敢えて浮かない顔を見せる。
「あら、ヴォルター?元気が無いわ。疲れたのかしら?それとも何か嫌な事とかあったの?」
私の複雑そうな表情にすぐさま気付いた母が尋ねる。よし、食いついた。
「……実は、此度の帰宅についてはお恥ずかしながらお願いしたい事があり帰って来ました。ずっとどうしようか、御迷惑をおかけしないか、と悩みましたが……やはり今一つ辛抱が足らない性格のようで恥を忍んでここに参上したのです」
言い淀みながら(半分演技で半分はマジだ)そう母にそっと俯き加減で視線を向ける。傍から見れば久々に戻ったどら息子が金なり物なりをせびる図に似ていた。糞野郎かな?
「あら?おねだりなら遠慮しなくて良いのよ?可愛い息子のためならすぐに用意してあげるわぁ。何が欲しいの?馬?別荘?車?船?妾?言ってみなさい?」
尤も、我が母にとっては一切気にならないようであった。にこやかに何が欲しいのか尋ねて来る。というかおい、最後。人身売買じゃないんだから……。
「本当に、ですか……?」
「えぇ、当然よ?お母さんがヴォルターを虐めるような事する訳ないでしょ?」
うん、胃に穴開けるような事はしそうだけどね?
兎も角ここまで勿体振って見せた訳だから、ある程度要求を通す敷居は低くなっている……といいなぁ。
まずは小手調べ、か。
「その……付き人を、ゴトフリートとノルドグレーンについてだけど……手元に置いたままにしておきたいんだ、駄目…かな……?」
若干上目遣いで攻めてみた。
さてさて、この「御願い」に対して鬼が出るか蛇が出るか……。
「……ヴォルター、何を言っているのか分かっているの?」
低い、冷たい声が室内に響いた。
……虎でも蛇でもなく竜が出るとはこの李白でも見抜けなんだ。
室内の空気が変わった。母の口調からは、相当に不機嫌である事が分かった。重々しくなる室内で使用人達は可能な限り自身に意識が向かないようにあらん限りの技術を使い気配を薄めていた。母の背後の侍女達は不安に震え、老境の家政婦長のみが堂々と佇んでいた。
「……はい、母上。理解しているつもりです」
「つもり、では無いわよ?」
気まずさの流れる室内、暫しの沈黙の後に少々緊張した声で私は答え、母が即座に返す。それはいたずらをした子供に厳しく躾ける母親のようであった。尤も、私は今生の母に叱られた事が一度も無いのでこの表現が正しいかは分からない。
ふぅ、と小さな溜息を吐く母。それは呆れるというよりかは怒りを抑え自身を落ち着かせようとしているように思える。
先程より若干和らいだ声で諭すように母は語る。
「良い?お母さんの御話を良く聞きなさい。前任の役立たずと今回の木偶、双方とも折角拝命しておきながら無様にも付き人としての役割を果たせなかったわ。ヴォルター、付き人の役割は主人を支え、補助し、守り抜く事。特に最後が一番大事な義務なのよ?」
知っている。そもそも、付き人制度自体それが成立理由だ。
銀河連邦末期から帝政初期にかけての社会的混乱と動乱、抗争と粛清の嵐の中でルドルフ・フォン・ゴールデンバウムを頂点とする改革勢力が権力を握り、従来の既得特権や腐敗企業・犯罪組織・カルト宗教・武装勢力と衝突を繰り広げ帝国の成立と人類社会の再建を実現させた。
その中でルドルフから選ばれた(引き摺られた)優秀な同志達(奴隷)が辺境総督、後に門閥貴族として辺境平定・統治・復興を進めるが同時に彼らの内志半ばで暗殺や戦死した者も少なくない。反帝国派は毒殺や爆殺、刺殺、狙撃、中には高層ビルやスペースコロニー毎吹き飛ばしたり、街一つをバイオテロや化学テロで滅ぼし、無辜の市民、子供まで利用した自爆テロを起こしてルドルフから派遣された秩序再建のための新しい支配者達を葬り去った。
ルドルフ自身生涯に(実行に移され、公式記録に残るものだけでも)最低66回の暗殺を潜り抜けて来た。大帝陛下は企業不正を弾劾する多くの活動家を暗殺してきたソウカイヤシックスナイツ、腐敗や犯罪と戦った銀河連邦最後の良心的国家元首ハーバード・スペンサーを殺害した暗殺者集団「タランチュラ」、「エンジェル・カウントダウン事件」で名を馳せた連続爆弾魔ボマー博士、シリウス情報総局の残党が闇社会で結成したと言われる暗殺教団「山翁衆」の襲撃からすら生存し、数百名を暗殺した伝説の狙撃手ゴロー31世が生涯で二人のみ逃した獲物の一人でもある。
それは大帝陛下自身の恐ろしいまでの身体能力と知能、瞬時の判断能力、何よりも強運により為せた業であった。その凄まじさはルドルフ未来人説、クローン人間説、予言者説、超能力者説、やらせ説等が当時半分本気で流布される程であった。
無論、大帝陛下に選ばれた門閥貴族達も大帝陛下に認められた以上極めて優秀ではあった。だが大帝陛下程に幸運ではなかった(というより大帝陛下に目を付けられた時点で幸運E確定だ)。
大帝陛下の代わりにその手足たる門閥貴族達は次々とテロや暗殺の標的となり殺害されていった。ヴルヴァシー事件並みの主人公補正が無ければ無理ゲー暗殺事件に巻き込まれた貴族が何人いた事か。
ファルストロングの場合は色んな意味で酷い。過去七度ルドルフの巻き添えでローンの残る新築マイホームを吹き飛ばされ、それでも悪運強く重傷を負いながらも生存しその度に新しい家の警備体制を強化してきた。だが宮廷の敷地を出てすぐの民間住宅街にて千名以上の無辜の市民ごと爆殺された。
付き人制度はそんな中で門閥貴族達が裏切りや内通の心配の無い信頼出来る部下に身辺警護に当たらせたのが始まりだ。当初は護衛部隊の指揮官的なものであったのが世代を重ねるうちに幼少期から傍に控える忠臣や主人の右腕としての意味合いが強くなった。
「付き人は主人の命を扱うも同然よ。それこそ自身が死んででも守らなけばならない、そしてそれはこの上無い名誉だわ。それを………前の役立たずは幾度も失態を演じたのよ。役目を軽視し、貴方を危機に晒したの。本来なら……本来ならば万死に値する所業だわ!」
テーブルを叩きながら憎々し気な口調で母は叫んだ。その美しい表情は敵意に歪み、侍女達がぴくっと肩を震わせながら怯える。
「今回の木偶については私の失態だったわ。あんな無能を代わりに傍に置いたのは私の責任ね」
腹立たし気にそう吐き捨て、続いて私の方に視線を向けると人が変わったように慈愛の笑みを向ける。
「だからねヴォルター、私のために遠慮しなくていいのよ?アレを選んだのはお母さんの失敗、貴方を危険な目に合わせて御免ね?……そうそう、次はヴォルターと選べばいいのよ!リストはもう出来ているの。後はヴォルターの好みに一番合うものを選びましょう?」
目を輝かせて、優し気に、まるで新しい玩具か洋服を選ぶように母は提案する。だが……。
「……いえ、母上。母上が私のために身を粉にして考えてくれている事は重々理解しております。アレらの失態も……ですがその上で私はゴトフリートの返還とノルドグレーンの所有の継続を許して欲しいのです」
私は、内心戦々恐々としつつも表向きは平然とそう答える。
「えっ……?ヴォルター?どうしたの?私は……どうして……どうしてそんな事を言うの?」
自身の意見が一蹴された上、明らかに私の利益にならない(と考える)要望を口にする事に母は困惑した表情を浮かべる。断られる事なぞ想像していなかったに違いない、相当な動揺ぶりだ。
私はきりきりと痛む胃を我慢しつつ、懇願するように自身の考えを伝えていく。
「母上の御考えは分かります。……確かに彼女達は付き人の役目を果たす事が出来ませんでした。その結果として少なくとも私が負傷したのは事実です」
「ええ、そうよ。だからお母さんはヴォルターのためにもっと役立つ付き人を付けてあげようって……」
母の口上を、しかしその先の言葉を私は遮る。
「ですが……いえ、だからこそ私にとっては新しい者よりゴトフリートやノルドグレーンが良いのです」
私は一つ一つ説明する。
「まずは実力です。当然ながら母上や父上に初期に選ばれたゴトフリートやノルドグレーンは候補の中でも高い方の筈です」
付き人として選ぶなら有望な者から選んでいくのは当然だ。ならば返品した者は除くとしても基本的に優秀な者から紹介される。当然ベアトはノルドグレーン少尉よりも下ではないし、恐らく顔立ち等も考慮に入れたとしても残りの候補からノルドグレーン少尉より明確に上と断言出来る者はそういない筈だ。
「また暫く使って、既にある程度実力が分かっている二人は取り扱う上で安心して使えます」
少なくとも能力を見誤って分不相応な職務を与えないで済む。
「次に、そもそも各種の失態は全面的に付き人の責任ではない点です」
カプチェランカにしろ、今回の騒動にしろ、自身の身の安全の身を考えればそこまで危険に晒されずに終わらせる事が出来たのだ。双方とも部下を見捨てればそれだけで無傷で終える事が出来ただろう。それをしなかったのは私の判断だ。
「寧ろ諫言や注意をしりぞけ、武功欲しさや興奮で無謀な行動をした私にも責任がある事は否定出来ない事実です」
その点で付き人の罪を問うのも酷な事だ。実際には武功欲しさ、という訳ではないがそれでも自ら危険に飛び込んだ形になるのは変わらない。
……そして最後には信頼だ。
「私が昔から気難しい性格であったのは覚えておいでだと思います。我儘と好き嫌いで随分と多くの付き人候補を追い出しました」
母自身はその行いについて気にしてもいないだろう。だが、私がその行動をしていた事実自体がここでは重要だ。
「私は、自分でも疑り深く、愚かな事であるとは考えています。ですがやはり言葉のみの忠誠心よりも実際の行動を重要視してしまう傾向があるのです」
確かにベアトも少尉も私を守り切れなかった。だが、私を守ろうとしたのは事実であり、二人共咄嗟の判断で私を庇おうとして重傷を負った。下手すれば死んでいても可笑しくない状況で自身の命を顧みずに庇う事が出来るのは少なくとも忠臣には違いない。
「無論、他の者達も間違いなくその場に立てば同じように行動してくれると信じています。……ですが私としてはそれを実際に行動で示した者の方が確実に信頼出来るのです」
とはいうものの、多分十人に一、二人くらいは命惜しさに逃げる奴がいても可笑しくないし、それを非難出来ないが。まぁ、誰でも死にたくはないのでいたとしても当然だ。だが実際、いざというときに備えて傍に置くなら確実な者を置きたいのが人の性というものだ。
「母上の御気持ちは理解しているつもりです。……ですが失態については私自身の行動も遠因ですし、彼女達の過失については私も直々に指導致します。彼女達もまた代々仕える従士の一員です。忠誠心自体は本物、今一度機会を与えればより奮起し、役目を果たそうと励む筈、どうかその辺りを御配慮頂けないでしょうか?」
少々甘えるように私は母に頼み込む。これで受け入れてくれれば一番楽なんだが……。
「ヴォルター……」
これまで静かに私の話を聞いていた母がようやく口を開いた。あ、これは……。
「阿婆擦れ共に懇願でもされたの?」
あー、駄目かぁ……。私、ではなくこの場にいない(そして無罪の)付き人経験者に対してこれ以上無い、と思える程の敵意を向ける母上である。これは少し斜め上の展開だ。
「ヴォルター、気持ちは分かるわ。けどね?御気に入りの懇願でも公私は分けないといけないわ」
母上は生徒に教える教師のように注意する。
「ヴォルター、覚えておいてね?ベッドの上でお願いしてくる女の言う事を聞いて良い事は一つも無いわ。そう言う女は適当な屋敷に閉じ込めて、使う時以外は時たま手紙や贈り物を送るだけでいいのよ?入れ込み過ぎは良く無いわ」
………おう、「口添えを御願いされた」だけなら兎も角、直角九十度な解釈をして来るとは流石に思わなかったなぁ。
「良い?依存させても依存しては駄目よ?」
相手の生活基盤を抑えた上で飼い殺しにしろ、最初は優しく否定せずに共感した振りして依存させなさい、釣った魚は死なない程度に飢えさせなさい、一人に執着したら危険だから複数ストックしなさいとこれまでにない程真剣に指導してくる。止めくれませんかね、内容が生々しすぎるんだけど!?というか母親から指導されるとか公開処刑ものだよね!?気配消しているけど使用人がいるからね!?
「いや、そういうのじゃなくて……!」
取り敢えず同盟マスコミにすっぱ抜きされたら詰みそうな話は終わらせて、誤解を解かないと……。
「えっ、だっていつも前の物も一緒にいたし……てっきりちゃんと使っていると……」
「使ってませんよっ!?」
というより、ちゃんとって何だよ(哲学)。
そりゃあ多分その気になれば向こうは逆らえないし、そもそも逆らう発想が出るかも怪しいが……いや、違うよなぁ。
ベアトのきらきらした子犬のような瞳(向けられると辛い)を見れば分かる、あれは純粋な忠誠心だ。あの目を怖がらせて楽しめる程嗜虐趣味ではない、正直勢いに任せてやった後の空気は辛い。
「……兎も角、違います。私も武門の誉高い伯爵家の軍人として前線の危険性は理解しています。そんな戦場の供にする付き人を、そんな事で口添えする程愚か者ではありません。それとも母上は私がその程度の事で簡単に騙される低能と御思いで御座いますか?」
「む、そうじゃないけども……」
一応、ここで下世話な話は打ち切る。母は不満そうにするが流石に私自身の名誉棄損になる所に話を持っていけばその方面から責める事は出来ないらしい。実際その点では潔白だ。
というか、神(ライトスタッフルール)の逆鱗に触れかねないからね、仕方無いね。
「……ですので全て私が自発的に考えた事です。そこに他の者の意志なぞ御座いません。そして実際実戦や幾度かの危険を経験し、学び、私は自分の判断が最善であると確信しています。今後の私の軍での働きのため、どうぞ不肖の息子の希望を御認め下さい」
ここで再び懇願するように頭を下げて頼み込む。
……暫く室内を重苦しい沈黙が支配する。頭を下げる私には母の顔色がどのようになっているのか伺い知れない。
数秒、あるいは十数秒、いや数十秒の静寂………。
「ひくっ……ヴォルターが不良になっちゃった………」
吃逆するような音が響いた。
「へっ……?」
思わず頭を上げる……と、そこにいたのは頬を赤くして、涙目で今にも泣き出しそうな母である。
「お母さんが心配しているのにぃ……!!ひくっ…そんなに母よりも従士の方が大事なのぅ!?怪我する危ない事ばかりぃ…うっ…うっ…うえぇぇぇん!」
子供のようにすすり泣き、遂には泣きじゃくる母に思わず私は驚き、唖然としていた。
下手な泣き方ではあるが、顔立ちと美声のおかげで古典悲劇の名場面に見えるのは正直凄い、とつい場違いな事を考えた。控えていた侍女達はおろおろと戸惑い、侍女達のその姿を見かねた家政婦長が黙々とハンカチで涙を拭き取る。
正直、母がここまで泣く姿は殆ど見た事が無い。幼い頃怪我をするといつも慌てて駆け寄ってきたが、それでも泣き出す事は無かった。
そのため、激怒は想定しても号泣は想定してなかったので狼狽え具合では侍女達と良い勝負だ。
そしてこういう時、大概タイミングが悪い時に悪い事が重なるもので……。
「……何をしておる」
その風格のある声に私は一瞬肩を震わせ、恐る恐るそちらに視線を向ける。気付けば室内にいた使用人達も皆頭を下げて恭しく礼をしていた。誰に?そりゃあ決まっている。我が家で一番偉い御方だ。
亡命軍では将官以上の軍服は個々人のオーダーメイドであり、デザインが違う事は珍しくない。その点で言えば銀河帝国の元帥服を元にした軍服を着ても一切問題ない。
黒と銀を基調とした軍装に各種の勲章と漆黒のマントを着た気難しげな銀河帝国亡命政府軍宇宙艦隊司令長官兼自由惑星同盟軍予備役中将殿……つまり我が父上が居間の入り口で家令や護衛を引き連れた状態で鋭い視線で私を射抜く。
「あっ……」
「貴方ぁ!ヴォルターがぁ不良になっちゃったのぅ……!やっぱり市民軍なんか入れちゃ駄目よ!亡命軍に入れましょう!」
涙を拭く家政婦長を振り払い(完璧なタイミングで婦長も退いた)、立ち上がると父に抱き着き泣いて懇願する母上様である。
「………」
厳粛で落ち着いた表情で、少々要領を得ない母の話に耳を傾け、周囲を観察し、最後に家政婦長を呼び耳打ちをしてもらう父。呆れた感情を流石に隠し切れないかのように目を閉じ、僅かに頭を横に振る。
「帰宅してすぐこれとは……。ツェツィ、話は書斎で聞こう。ヴォルター!」
「はっ!」
慌てて私は立ち上がる。殆ど本能的に敬礼していたのは私も随分と軍人的思考に染まっている証拠であったかも知れない。
「職務の方は災難であったが、良く働いたな。此度の帰宅も歓迎する、がもう遅い。今日は寝ておくと良い。話ならまた時間をやる。ゴットホープ!」
「はい」
家令の名を呼べば燕尾服を着た品の良い初老の紳士が前に出る。私の部屋への案内をするつもりだろう。
「ち、父上、その……」
「悪いようにはせん。気にするな」
言い訳、あるいは弁明をしようとする私に淡々とそう言い放つ父。私はそれ以上の言葉を発する事も出来ず、恭しく先導する家令と数名の使用人に連れられ、自室へと向かわされる。
「………」
居間を出て、廊下を歩き始める。ふと、私は振り向き両親を見れば泣きじゃくる母と、それを少々困った表情で、それでいて済まなそうな表情で慰める父を視界に収める。
「………悪い事をした、かな」
今更ながらに罪悪感が湧き出し、しかしそれが必要であった事も理解する私は、複雑な心境でその場を後にするしかなかった。
……ああ、明日の事考えるとお腹痛い。えっ、胃薬?うむ、受け取ろう。
取り敢えず私は内心を読まれている事なぞ最早気にせず、家令から胃痛の飲み薬を受け取ったのだった……。
多分次で今章は終われる……筈