魔法少女リリカルなのは~黒衣の騎士物語~   作:将軍

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投稿します。
とてもお久しぶりです。
なかなか話しが進まないですが。。。
楽しんで頂けたら幸いです。
では、どうぞ。


vs 《闇の書》 ④

 祐一とフェイトが《闇の書》に吸収された後も、なのはは壮絶な戦闘を繰り広げていた。

 現在、なのはは闇の書との戦闘を繰り広げながら、市街地から海鳴の海上へと戦闘の場を移していた。

 

「アクセル……ッ!」

 

 なのはは空中を飛翔しながら、魔力弾を闇の書へと撃ち放つ。

 

「何度やっても同じことだ」

 

 しかし、なのはの放った攻撃は、闇の書に苦も無く防がれてしまう。このようなやり取りを、なのはは数回続けていた。

 

(やっぱり、生半可な攻撃じゃあ相手にダメージを与えられない)

 

 攻撃を防がれ、高速で飛翔する自分を負ってくる闇の書に目をやりながら、なのははそう考える。

 だが、考えているだけで対抗策は見出せず、自分の魔力と時間を無駄に浪費していることになのはは悔しげに表情を歪める。

 

(それに、このままじゃあわたしがやられなくても地球が崩壊してしまう……)

 

 高速で海上を飛翔する中、なのはは周囲を見渡しながらそう思っていた。

 平常時であれば綺麗に見えるはずの海が、今は闇の書の暴走の影響から、そこかしこに岩が隆起しており、それが地球の崩壊の予兆であるかのように見えた。

 

(相手は今までにないほどの強敵で、時間をあんまり掛けてると地球が崩壊する。……ほんとに考えれば考えるほど、最悪の状況だよね)

 

 そう考えながら、自分の背後から迫る闇の書の攻撃を、なのはは持ち前の空戦技術で寸前のところで回避する。

 

(リンディ提督やクロノくんたちも待ってたら来るんだろうけど、たぶん、まだしばらくは来ない)

 

 闇の書と戦闘が始まってから、リンディたちと連絡が取れなくなってかなりの時間が経っている。そのため、なのははリンディたちも何かしらの対策を考えていると思っているが、闇の書が張った結界もあることから、助けはまだ来ないだろうと考えていた。

 

(今ここにいるのはわたしだけ……なら、やっぱり、わたしだけでなんとかするしかない)

 

 さらに迫る闇の書の攻撃をなのはは全てギリギリのところで回避するが、何発か魔力弾が体を霞め、僅かに体に走った痛みに表情を歪めた。

 

(だけど、わたし一人でできるのかな……?)

 

 苛烈になりつつある闇の書の攻撃になのはの心が僅かに折れそうになる。

 だが、そんななのはの頭に祐一から言われた言葉が過ぎった。

 

 ――お前ならやれる。信じろ、自分の力を。

 

 その言葉を思い出し、なのははレイジングハートを持つ両手に力を込めた。

 

(そうだ。信じるんだ。祐一お兄さんが信じてくれたわたしの力と祐一お兄さんとフェイトちゃんを……)

 

 なのはは空中で回転しつつ、闇の書の攻撃を回避しながら魔力を集める。

 

「わたしが、やるんだっ!」

 

 回転する自身の体をレイジングハートのサポートで制御しつつ、なのはは瞬時にレイジングハートをバスターモードへと切り替え、その先端を闇の書へと向けた。

 闇の書はそんななのはの行動を見て、僅かに表情を変える。それは、今まで追っているだけであった相手が急に自身へと牙を向けてきたからに他ならない。

 瞬時に闇の書はなのはを追うために上げていた速度を落とし、その攻撃に備える。

 

「ディバインバスター!」

 

 なのはの声が周囲に響くと同時に、レイジングハートから桃色の閃光が闇の書目掛けて撃ち放たれた。

 そして、それが闇の書へと当たると爆発とともに周囲に轟音と響き渡った。

 

「これなら……」

 

 なのはは肩で息をしながら、使用したカートリッジを換えながら闇の書がいた方向をじっと見つめる。

 

(手応えは確かにあったけど、これで終わるような相手じゃないよね)

 

 油断なく闇の書がいた方をじっと見つめながら、なのははそう思っていた。

 すると、そんななのはの考えを読み取ったかのように爆煙の中から紫色の魔力弾がなのはへと放たれた。

 

「くっ!?」

 

 心の中でやっぱりと思いながら、なのははその場から移動することで攻撃を回避する。

 そして、魔力弾に追従するように、闇の書もなのは目掛けて突進してきた。その姿には特にダメージを負っているようには確認できなかった。

 

(やっぱり、こんな攻撃じゃ……っ!?)

 

 なのはは自分の攻撃が相手にほとんど通じていなかったことに、悔しげに表情を歪めた。

 そして、そんななのはを余所に闇の書はまたも逃げるなのはへと追いすがる。

 なのはの桃色の魔力弾と闇の書の漆黒の魔力弾が交錯し、隆起している岩礁がその余波で爆発する。その戦闘は激しさを増していく。

 しばらくの間、闇の書がなのはを追い、それをなのはが迎撃するという始めと同じ構図が続いたが、その均衡が崩れた。

 

(しまっ……)

 

 今まで闇の書の攻撃を寸前んのところで回避していたなのはが、少しの遅れで障壁を張ってそれを防いだ。

 そして、その硬直時間だけで闇の書には十分だった。

 

「捕まえたぞ」

「っ!?」

 

 障壁を張ったなのはに接近し、闇の書は右手をなのはの方へと向ける。

 

「撃ち貫け」

 

 一瞬で右手に魔力を集め、それをなのは目掛けて放った。

 

「きゃあぁぁっ!」

 

 寸前のところで再度障壁を張ったが、なのはは闇の書の攻撃によって吹き飛ばされ、その勢いのまま、海へと墜落した。

 

「…………」

 

 それを見届けた闇の書は、なのはが落ちた場所を空中から黙ったままじっと見つめていた。

 なのははその間に海中を移動し、隆起した岩場の影に身を潜めた。

 

「はぁ、はぁ……」

 

 肩で息を吐くなのはの体は、海に落ちたことからずぶ濡れで、また、再三にわたる闇の書の攻撃でバリアジャケットは破れ、その姿はボロボロとなっていた。

 しかし、そんな姿になってもなのはの瞳からは光は消えていなかった。

 

(マガジン残り三本、カートリッジ残り一八発……)

 

 なのははポケットを手で探り、マガジンを取り出すとレイジングハートへと装填すると、レイジングハートが明滅し、それに答えた。

 

(分かってたけど、さっきの攻撃で核心した。やっぱり生半可な攻撃じゃあ駄目だ。もっと思い切りの一発じゃないと……)

 

 なのははマガジンの装填が終わったレイジングハートを持つ手に力を込め、視線を闇の書へと向ける。

 そして、静かに息を吐いた。

 

「行こうか、レイジングハート」

『行きましょう、マスター』

 

 なのはの言葉に、レイジングハートは当然のように静かに答えた。そんないつものレイジングハートに力をもらいながら、なのははその場から飛翔する。

 そして、再び闇の書と相対する。

 

「出てこなければ、苦しい思いをしなくて済んだものを……」

「それは違うよ。ここで出ないと、わたしはさらに苦しい思いをすることになるんだよ」

「…………」

 

 そんな風に言葉を口にするなのはの表情には、僅かに笑みが浮かんでいた。

 闇の書は、そんななのはの表情を見て、僅かに眉を顰めた。

 

「……わからない。なぜ、貴様はこんなにも必死になる。黒衣の騎士を合わせた三人でも、この私に勝てなかったのだ。お前だけで勝てる可能性は皆無のはずだ」

「そうかもしれないね。だけど、ここで諦めたら本当に誰も救えない。あなたの主であるはやてちゃんも、いなくなってしまった祐一お兄さんも、フェイトちゃんも……」

 

 だから、となのははそこでレイジングハートを闇の書へと構えた。

 

「わたしは、諦めるわけにはいかないんだっ!」

「……そうか……ならば、お前はここで消えるがいい」

 

 そうして再び、なのはと闇の書の戦闘が再開された。

 

 ◆

 

 ――閃光。

 

 あれから、なのはと闇の書の戦闘は激しさを増していた。

 

 ――爆炎。

 

 なのはの砲撃が空中を裂き、闇の書の圧倒的な力が爆発する。

 そうして、幾たびも交錯し、互いの力をぶつけ合って数分が経過した。隆起した岩はいたるところが粉砕され、それが戦闘の激しさを物語っていた。

 

「っ!?」

 

 なのはが張った障壁に闇の書の攻撃が直撃し、轟音とともに辺りに粉塵が舞い上がった。

 その中から、闇の書の攻撃によってところどころ薄汚れているものの、致命的な怪我は負っていなかった。それだけでも、なのはの魔導師としての力量の高さが垣間見えた。

 しかし、それでもなお闇の書に決定的な一撃を加えることができていなかった。

 そんななのはの姿を闇の書は僅かに高い位置から、悠然と見下ろしながら静かに口を開いた。

 

「お前も、もう眠れ……」

「……いつかは眠るよ……」

 

 自分の方を見下ろしながら闇の書が投げ掛けてくる言葉を聞き、なのはは同じように静かに口を開いた。

 人はいつかは眠るもの。そんなことはなのはは百も承知だった。

 

(もう疲れたし、眠ってしまった方が楽なんだろうけど、それは違う)

 

 そう心の中で思い、なのはは息を静かに吐き、力強い瞳を闇の書へと向けた。

 

「だけどそれは、今じゃないっ!」

 

 自分を奮い立たせるように、なのはは叫ぶように声を上げる。それに呼応するように、レイジングハートも力強く光り輝いていた。

 そして、レイジングハートを両手で水平に構え、さらになのはは叫ぶ。

 

「エクセリオンモード――」

 

 続けて、カートリッジが立て続けに二発装填される。

 

「ドライブッ!!」

『イグニッション』

 

 そうなのはとレイジングハートの声が重なると同時に、二人の姿が変化する。

 薄汚れていたバリアジャケットは綺麗になり、ところどころ衣装が変わり、また、レイジングハートもいつものモードとは違うものとなっていた。

 

「悲しみも悪い夢も終わらせて見せるっ!」

 

 なのはの力強い叫びが周囲に響くと同時に、とてつもない魔力がなのはから溢れていた。

 

「…………」

 

 そんななのはを静かに見つめる闇の書は、特に感情を表に出すことなく、片腕を水平に上げる。

 すると、夥しい数の魔力弾が闇の書となのはの周りに展開された。

 しかし、そんな絶望的な状況にあって、なのははレイジングハートを振るい力強く声を上げる。

 

「わたしは、わたしたちはこんなところで終われない。だから、まだまだ付き合ってもらうよっ!」

 

 なのはの叫びと同時に、周囲に展開されていた魔力弾が一斉になのはへと殺到した。

 再び、轟音が周囲を支配し始めていた。

 




最後まで読んで頂き、ありがとうございます。
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