いつか見た理想郷へ(改訂版)   作:道道中道

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過去の歪みは、いずこへ?

「もぐもぐ……。じゃあ、いつ帰って来るかは分からないんだ」

 

 早朝。イタチはイロミの部屋の前にいた。静かで気温の下がっ空には雲一つなく、開けられた玄関に向かって朝の冷えた空気が流れていくのを、羽織っていた黒いコートの内側から感じた。

 

 イタチは、イロミに事情を大分端折って説明した。暗部の任務で里の外に出る必要が出てしまったということ、いつ帰って来るのかは状況次第ということを伝えたのである。イロミのリアクションに、イタチは頷いた。

 

「ああ。ただ、二週間以上は時間をかけるつもりはない」

「あ、じゃあ私がサスケくんの食事三食を作った方がいいってことだね」

 

 寝間着姿の―――上下黒と白の横縞模様の囚人服のような寝間着―――彼女は、どういう訳か右腕に抱えた生の白菜を左手のチャクラで吸着させて千切っては口に運び、小さく頷いた。後頭部の髪の毛は寝癖なのか何なのか、まるで子供の蛇がうねったようなヘアスタイルで、しかしイタチは特に深く追究することも無く、申し訳なさそうに小さく笑みを作った。

 

「すまない。サスケには一応、一人でご飯を作るようには言ってある。だが、あいつはあいつで忙しい。万が一というのがあるんだ。ああ、もちろんイロミちゃんも忙しいだろうから、その、できる限りでいい」

「あはは、イタチくんは心配性だなあ。でも、うん、分かったよ。任せて」

「俺が言うのもなんだが、本当に無理はしないでほしい。中忍選抜試験の用意で忙しいんじゃないか?」

「うーん、まあ、忙しくなってきたけどね。問題ないよ、全然」

「何か、あるのか?」

 

 イロミは白菜をまた一切れ毟り口に運びながら「昨日アンコさんにね」と呟いた。

 

「今日から、木ノ葉隠れの里に来る他里の下忍の子たちが、中忍選抜試験を受けようって集まってくるんだ。私と、あとフウちゃんが、まあ、その子たちに宿泊施設を案内したり、色々と説明するってわけ。受付役だね」

「ということは……朝から晩までか?」

「もしかしたらね。到着日時は申請されてるけど、具体的な時刻まではされてないの。だから、分からないんだ」

 

 しまったと思っていると、イロミは優しく笑う。

 

「大丈夫だよ。これからイタチくんとナルトくんの家に行ってご飯作ってくるから。それか、うーん、そうだなあ、レシピを書いたメモでも残せば問題ないと思うし。とにかく、気にしないで」

「……すまない」

 

 暗部に入ってから、ずっとイロミの世話になってしまっている。暗部の仕事をこなしながら、サスケの世話をするというのには、どうしても粗が出来てしまう。フウコを捜すために―――そして、うちは一族抹殺事件の真相を知るために―――暗部に入隊したが、イタチのその真意を知っているのは本当にごく一部。生まれてしまった粗に修正を加えてくれる人物は、イロミしかいなかった。

 

 もちろん、それは覚悟の上だった。非常に多忙になり、彼女に負担を与えてしまうのは。イロミも承知してくれてはいる。が、まさか、ここまで彼女に頼ってしまうとは予想できていなかった。本当に、頭が上がらない。

 

「イタチくんは朝ご飯食べたの? 食べてないなら、これ、食べる?」

 

 白菜を差し出され、申し訳ない気持ちは、不謹慎ながらも撤退してしまう。

 口からつい、彼女と対面してから微かに思っていた疑問を呟いた。

 

「……どうして、白菜を?」

「漬物作ろうと思ったんだけど、余っちゃって。ほら、私の冷蔵庫って小さいでしょ? だから、こうして食べてるの。こういうのを、節約術っていうんだよ。凄いでしょ?」

「……そうか。すまない、凄いかどうかは、よく分からないな」

 

 イロミと別れ、里の出入り口である門から出る。方角を確かめてから、部隊の者とのコンタクトポイントである最寄りの町に向かって走り出す。イタチの速度は、風を追い抜かし、木々に止まっていた小鳥たちを置き去りにしているにもかかわらず、一切の躊躇も無く幾何学的な動線を残していく。

 それでも、彼の全力ではない。写輪眼を展開しない彼が保てる速度であって、写輪眼の彼の速度は今よりも遥かに速い。チャクラコントロールによって集積された足元のチャクラは澄み渡りながらも強固だ。

 

 どれも、たとえ上忍でも容易なことではない。だが、もはやイタチにとっては癖にも似たような感覚でしかなく、頭の中では全く別のことに関心を向けていた。

 

 ―――綱手様が容易に里に戻ってくれるとは、考えにくい…………。

 

 木ノ葉の三忍と謳われる者の一人である彼女が、どのような経緯で里を去ったのか、それを明確に決定づける資料は集めても見つかりはしなかった。しかし、彼女が里を抜け出す前の出来事を調べ、ある程度の目途は付いている。

 

 戦争によって、綱手は弟と恋人を失っていた。おそらく、原因はその二人の人物なのだろう。何を想い、何を考え、ただ当てもなく、国中あるいは他国の賭博場に姿を現し、金貸し屋から逃げ続ける日々を送っているのかは定かではないものの、少なくとも木ノ葉隠れの里への関心は無いはず。むしろ、増悪嫌悪しているということも考えられる。

 

 そんな彼女に、事情を説明したとしても、素直に里に戻ってくれるというのは、現実離れした想定だ。

 

 何通りか手段は考案してはみたものの、綱手と会ったことがない以上、想定外は平然と起きる事だろう。結局は、出たとこ勝負、ということになってしまう。

 

 ―――……とにかく、まずは綱手様を見つけることが…………?!

 

 気配を感じた。

 

 たった一瞬で、砂粒よりも微かな不自然な音だったが、それでも彼には十分な程の違和感でイタチの思考を張り詰めさせ臨戦態勢に変えるには十分だった。

 

 瞬時に足を止めて、コートの下の右腕でクナイを握る。気配を感じとった方向に視線を向けた。気配の質からしてそれなりの手練れ、そう判断したイタチだったが、木々の隙間から幽霊のようにゆったりと姿を現した者の姿に、しかし警戒はそのままに強く尋ねた。

 

「何の用だ?」

「ダンゾウ様からの言伝を運びに参りました」

 

 暗部の姿と顔を隠す面。しかし、全身から漂う無味無臭のプラスチックかのような雰囲気は良く知っている。

 

【根】の者。そして―――暗部の中のもう一つの部下だった。イタチには、ダンゾウの次に、【根】を動かす権限が与えられている。だが、イタチが警戒を強めているのは、未だ信頼など露ほどにもしていないからである。

 

【根】の者はイタチから距離を縮めることなく、淡々と伝えた。

 

「『九尾の人柱力は所詮道具だ。あまり深入りをするな』と」

「……それだけか?」

 

 意識した訳ではなかったが、声が低くなってしまった。あまり好きではない声質。【根】の者に指示を出す時の声と酷似していたが、それよりも低い。はい、と平坦に軽く頷く【根】の者の態度に、さらにイタチの視線は鋭くなった。

 

「くだらないことを伝えに来るな。ダンゾウに言っておけ。俺を動かしたいなら、フウコの情報と引き換えだと」

「他に伝えるべきことは?」

「ない。さっさとフウコを捜せ」

「分かりました。では」

 

 イタチの感情のささくれも横に【根】の者は姿を消した。小さく息を吐きながら、それでも辺りに簡易の感知忍術を展開して、誰もいないことを確認してからようやくイタチはクナイを元の位置に戻した。

 

 ダンゾウの元に付いてしばらく年月は経ったが、決して彼のことを信頼している訳ではない。フウコがうちは一族を抹殺した原因があるはずなのだと考えている。

 

 しかし、どれほど調べても、はっきりとした情報は見つかっていない。ただ、シスイをフウコが殺したであろう当夜と前日の、二人の行動記録に不自然な部分が垣間見えるだけ。その不自然さも、フウコに何かを擦り付ける為の情報操作なのか、フウコという暗部の汚点を誤魔化すための印象操作なのか、判断が難しい。

 ダンゾウに問いただしても、憮然としながらも曖昧な返事しか引き出せない。

 

 明確な黒とも、明確な白とも、言い難い。

 

 だが、それらと警戒するべきか否かとは、また別の問題である。疑わしきは、敵なのだ。ただ利用するだけの、敵。ダンゾウも、自分を利用しようと考えている。ならば、あちらが交換条件を出さない限り、決して協力しなければいい。元々、ダンゾウがフウコを捜して素直に情報を渡すとは限らない。イタチにとっては、利用すると言っても、期待値はそれほど高くはなかった。

 

 ―――……フウコ、今、何をしているんだ…………?

 

 ここ最近、フウコの情報はぱったりと途絶えてしまっていた。

 

 彼女に掛けられた報奨金を目当てとした輩に殺されたということはないだろう。たとえどのような理由であっても、彼女が殺されればビンゴブックから名前は抹消されるはず。つい最近、ビンゴブックは更新されたが、Sランクの欄には彼女の名が記されている。

 

 おそらく―――彼女はどこかに潜伏しているのだろう。そしてこれは単なる勘だが……どこかの組織に属している。フウコの情報がまだ観測されていた時、ほとんどは、戦場だった。小さな国同士の戦争であったり、小さな忍里同士の戦争であったり。明らかに、何かしらの意図を持った行動だったからだ。彼女の意図ではない、誰かの意図。

 

 もしも。

 

 もしも、フウコがどこかの組織に属しているのだとしたら、何を目的とした組織なのだろうか。どれほどの規模の組織なのか。フウコは組織を利用しているのか、組織に利用されているのか。

 

 考えることは山ほどにもある。

 

 心はフウコを捜そうということに引っ張られてしまうが、イタチは目的通り、部下の待つコンタクトポイントに足を進めた。

 

 里の平和を守るということを、今は、優先しなければいけない。

 

 無暗に捜しても効果はない、ということ。その上でさらに、フウコが簡単に死なないだろうという信頼があったからだ。

 

 いつか必ず、彼女の足取りを追い、見つける。

 

 それまではまだ、里の安定を保たなければいけない。

 木ノ葉隠れの里は妹の故郷だから。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

「イロミちゃーん」

「なにー?」

「暇っすねー」

「暇だねー」

「こういう日は、きっと、カップルとかが、きゃっきゃうふふって、歩いているんすよねー」

「知らないよー」

「フウは、イタチさんと、きゃっきゃうふふってしたいっすよー」

「イタチくんはきゃっきゃうふふなんて言わないと思うよー?」

「フウが言うんすよ」

「きゃっきゃうふふ?」

「きゃっきゃうふふっす」

「そうなんだ。馬鹿みたいだねー」

「きゃっきゃうふふ言うカップルは、皆馬鹿なんすよきっとー」

「へー」

「……………………」

「……………………」

「あ、帰っていいっすか?」

「駄目」

 

 書類を整理しながらバッサリと帰宅を許してくれなかったイロミに、フウは大袈裟に受付カウンターに項垂れて「はぁ~」と大きくため息をついた。

 

「だって、全っ然来ないじゃないっすか~。まだ一組も来てないって、どういうことっすかッ!」

「今だけかもしれないよ? 一応、今日到着予定の申請は来てるんだからさ」

「イロミちゃんだけでもいいじゃないっすか。フウは腹が減ったっすよ」

 

 んー、とイロミは唇を尖らせながらテーブルの上の置き時計に視線を移した。あと少しで、長針と短針が一番高い所に向く。たしかに、空腹は感じ始めていた。

 

 朝、イタチから事情を聞かされてからイロミは彼の家とナルトの家に向かったが、両方ともカギが掛けられており、結局昼食も夕食も用意することができなかった。きっと、二人とも修行をしているのか、任務か演習なのだろう。

 

 ―――今頃は家に戻ってるのかな? 抜け出せる時に、ご飯を作っておきたいけど……この調子じゃあ、やっぱり、夜まで食い込みそう。

 

 昨日、アンコの所に行ったイロミは、彼女から中忍選抜試験に参加する他里の下忍の受付をするように言いつけられた。受付はフウと自分だけで、他の中忍や特別上忍は別の準備で忙しいらしく、他里の参加者が全員受け付け終わるまでずっとこの担当なのだという。火影の執務室が設けられている建物の出入り口に突如として設けられた簡素な受付は、確かに二人だけでも運営できそうなほど小さいものだった。

 

 受付の役割は単純で、受付に来た下忍のチームとその担当上司に正式な通行許可証を渡すこと、宿泊施設の案内、諸注意事項の説明などなど。正直、二人同時にいる必要はないほどに簡単なものだけれど、アンコが言うには「初日くらいは二人で参加者を迎えなさいねえ」ということらしい。なお、昼食夕食の説明は一切ない。勝手にしろ、ということなのだろう。

 

 ―――いつもアンコさんは無茶言うんだから……。

 

「ねえ、イロミちゃーん。こんな地味なこと、フウはもう嫌っすよ」

 

 地味云々という以前に、まだ誰も受付に来ておらず、何もしていないという表現が正しい。

 

「あー……じゃあ、一組来たら、休憩にしよっか。でも、二人とも離れたら問題だから、最初はフウちゃんでいいよ?」

「え、マジすか!? やったぁ! 早く来いー、早く来いー」

 

 受付を開始してから一組もまだやってきていない状態であり、もはや最初から休憩しっぱなしと言っても過言ではなかったのだが、フウは嬉しそうに両手を上げた。

 

 今日、木の葉隠れの里に到着する予定のチームは、合計で十一組だ。草隠れの里、砂隠れの里、雨隠れの里、あと音隠れの里。何時に到着する予定なのかは、流石にそこまで詳細な申請はされてはいないものの、もうそろそろ一組くらい到着してもおかしくはないだろう。深夜に到着する、というのは規定によって禁じられているため、そろそろのはずだ。

 

 ―――中忍選抜試験かぁ……。懐かしいなあ。

 

 書類整理も終わってしまうと、ふと、思った。

 

 何度も、落とされた。馬鹿みたいに、間抜けみたいに。最終試験の、一対一での戦闘形式の試験では、大名や忍頭たちの前で、情けなく泣いてしまったこともある。今思い出しても、顔から火が出そうになる感情に包まれるけれど、悪くない記憶だった。

 

 あの頃に比べて、自分はどれほど成長できたのだろう。

 

 泣き虫で、弱虫だったあの頃よりも、どれほど。

 中忍選抜試験を構成する側に立ったが、あまり、実感は沸かなかった。実力も付け、知識も多く手に入れた。だけど……どうして、実感が沸かないんだろう。

 

『イロリちゃん。次は、頑張ろ? 私も、教えるの頑張るから』

 

 きっと、やっぱり、彼女がいないから。

 

『全然努力しない人たちを、馬鹿にしてきた人たちを、驚かせよ? イロリちゃんなら、できるから』

 

 自分が頑張れたのは、彼女が言葉にして教えてくれたからだ。彼女が道を示してくれた、手を握ってどれほどの成長が出来たのか、教えてくれた。だから、彼女がいた頃は、成長できたという実感があったんだと思う。

 

 今は、道を示してくれる人はいなくなった。特別上忍という地位には着いたものの、実力を大きく発揮できる任務は回されなくなり、行えることは、雑務処理。彼女を捜すことも許されない。

 

 ―――もっと、努力しないと。……早く、上忍に。

 

「こちらが、受付でいいですか?」

 

 建物の入口から男性の声が耳に届くと、イロミは少しだけ慌てて声の方を見た。隣のフウも嬉しそうに顔をそちらに向ける。入口に立っていたのは、三人の子供たちと一人の男性だった。

 

 イロミは笑顔を浮かべながら「はい。中忍選抜試験参加の方ですね?」と、男性に尋ねた。

 

 男性は背が高かった。長い黒髪を頭頂部よりもやや後ろの所で一纏めにしており、上忍のジャケットを羽織っている。中肉中背で、髭の一つも生えていないスラリとした頬は清潔感を現していたが、目尻が長く蛇のように鋭い視線は男性の用心深さを感じさせた。

 

 額に巻いている額当てには、音符のようなマークが彫られている。手元にある書類を確認した時に、そのマークが何を示すのかは、頭の中に叩き込んでいる。

 

 音隠れの里の忍(、、、、、、、)だ。

 

 男性の後ろには、三人の子供が立っている。内一人は、黒髪の女の子だ。他二人の男の子は、一人は短髪の少年で、もう一人は右腕に分厚い手甲を付けており、顔のほとんどは包帯が巻かれていた。

 

「少し、遅かったですかね?」

 

 と、男性は受付に近づくと、笑みを浮かべながら尋ねてくる。イロミは事務的な爽やかな笑顔で応えた。

 

「いえ。みなさんが一番ノリです。到着早々で申し訳ないのですが、受付作業に時間をいただいてもいいですか?」

「ええ、構いませんよ」

「ではまず、こちらの書類に皆さんの名前の欄に署名、それと親指で押し印をしてください。あと、そちらに届けた仮通行許可証はこの場で回収となります」

「こちらっす。皆さんは音隠れの里からの参加で間違いないっすよね?」

 

 四人はそれぞれ署名をし、朱肉で染めた親指の腹で押し印をした。ティッシュを渡し、仮の通行許可証を受け取り、イロミは口を開いた。

 

「今からみなさんには、中忍選抜試験が始まるまで、及び試験期間中にご利用してもらう宿泊施設の案内、試験期間中における注意事項の説明と誓約書にサイン、最後に正式な通行許可証の配布をさせていただきます。諸々のご質問などは、それぞれの項目の説明が終わってから受け付けますので、ご了承ください」

 

 それから半刻ほど、イロミが一人でしゃべり続けた。決まった言葉なため、特に深く考えることも無くスムーズに話すことができた。フウは隣で、今か今かと休憩のタイミングを見計らっている。

 一通り説明し終わってから、最後に総括の質問を受け付けたが、音隠れの男性は特に何も無いようだった。

 

「以上で、説明は終わりですので、こちら、通行許可証です。無くさないようにしてください。再発行は受け付けておりませんので」

「ありがとう」

 

 四人分の通行許可証を受け取った男性は、下忍の子たちに渡した後、再びイロミに向き直った。

 

「試験開始まで、何かするべきことはありますか?」

「特にありません。先ほど言ったように、他の参加者とのいざこざは避けていただくこと、許可なく里の外に出ること、犯罪に抵触する行為をしないこと、試験規定に違反しないこと、これらを守っていただければ原則的に何をしても構いません。あ、もしよろしければ、観光スポットなど紹介しますけど?」

「いえいえ。そうですか……。もしよろしかったら、私と一緒に昼食はいかがですか?」

「……はい?」

 

 唐突な男性の提案に、イロミは頭を傾げた。

 

 一体目の前の男性は何を言っているのだろうか? 素直にそう思う。それ以外の感情は一切に湧き上がってこない。きょとんとするイロミの横で、フウが「おーっ!」と、ラブコメの女の子のように過剰にキラキラと瞳を輝かせながらよく分からない歓声を上げていたが、対して男性の後ろの子供たちは怪訝な視線をイロミに向けている。

 

「あの……言い忘れていましたが、試験期間前と試験期間中は、特別上忍との不用意なコンタクトは禁止されているんです。お誘いは嬉しいんですけどムグッ!?」

 

 断ろうとするや否や、突然フウがイロミの口を塞いで、強引に後ろを振り向かされた。頬と頬がぶつかるほどの距離まで、フウの顔が近くなる。肩はガッチリとフウの腕にロックされて、ちょっとやそっとでは抜け出せなくなっていた。

 

 フウは目を未だキラキラと輝かせながらも、とても小さな声で呟いた。

 

(何言ってんすかイロミちゃん! ここは、ゴーッ! っすよ!)

 

 ゴーッ! って。意味が分からない。何を言っているんだこの子はと思いながら、イロミは大きくため息を吐いた。

 

(……あのね、フウちゃん。言っておくけど―――)

(四の五の言わないで、イエスって言うんすよッ! ノーって言う暇があるならイエスと言うんす!)

(いや、だからね、私も私で、これからサスケくんとナルトくんにお昼とか、お夕飯とかの準備をしなくちゃいけない訳なの。休憩時間もあまりないんだし。それに、言った通り、ほら、私が目の前の人と食事なんかしたら、色々とね? 試験内容を流出させたんじゃないかとかなんだとかで、面倒だし)

(馬鹿言っちゃいけないっすよッ! 春が来たんすよ春が!)

(試験が始まる頃には七月だけどね)

(言葉遊びなんかどうでもいいんすよッ! いいっすか? ぶっちゃけイロミちゃんには青春が必要なんすよ。ガイさんみたいな全身タイツの暑苦しいやつじゃねえっすけど、こう、なんていうか、将来性? 母性? みたいな、そういった青春が足りないんす。友人として、すげー心配してるんすよ? 将来、しっかり子孫繁栄が出来るのかって!)

(無駄な心配しないでよ……。そんな心配されてたなんて、少しショックだよ)

(いいから、とにかく―――)

(どっちにしても、特別上忍の接触は厳禁なのッ! 離してッ!)

 

 掴まれた肩のチャクラを水のようにスライドさせると、あっさりとロックから抜け出すことができた。フウは勢い余って床に転んだが、イロミは何事もなかったかのように振り返り、男性を見上げた。

 

「すみません。お食事のお誘いは嬉しいのですが、また、別の機会ということでよろしいでしょうか?」

 

 特別上忍になってから学んだ社交辞令という上品な断りを入れた。上品さが、大人に近づくにつれて会話の最初と最後に必要なのだと、ここ最近知ったことである。

 

 男性は「そうですか」と呟くが、特に残念がる様子は無かった。もしかしたら、この男性は軟派な方なのかもしれないと、イロミは思う。

 

「仕方ないですね」

「そうですね、仕方ありませんね」

「でしたらせめて、お名前だけでも教えてもらえませんか?」

「…………………」

 

 名前を聞かれているだけなのに、どうしてだろう。体温が下がっていく。襟からカキ氷を引っ繰り返されて入れられたような感覚だったが、社交的な笑顔を保つことができたことに、イロミは自分に賛辞を送りたくなった。本当なら名前すら教えたくなかったが、仕方なく、教えた。

 

「それなら、ええ、問題はありません」

 

 私は、

 

 猿飛イロミと、

 

 言います。

 

 

 

 寒気がした。

 

 

 

 名前を聞かれた時とは違う、本能が訴えかけてくる切迫したもの。刹那にも満たない瞬間だけ、感じた。

 

 目の前の男性の視線が、狂気に満ちたような色をしたのだ。

 

 男性は貼りついた笑みを浮かべたまま、呟いた。

 

「それでは、失礼します。貴方とは、またどこかで会いそうな気がしますので、その時に」

 

 そう言って、男性は子供立ちを引き連れて、入ってきた入口から外に出て行った。寒気は無く、名残のような動悸だけが残った。

 殺意とも、怒気とも違う、漠然としたもの。暗闇の中を歩くだけで怖くなるのと、同じ。

 

 頬に小さく汗が出ているのを感じ、グローブを付けている右手で拭った。小さく油の混じった汗は、グローブの上にべったりと貼りついた。

 

 ―――どうして、あんな眼をしてたんだろ……。

 

 見えなくなった男性の後姿を眺めながら、呑気なことを考える。殺意だったら、危険人物だと思っただろう。怒気なら、自分に不手際があったのだと思っただろう。あるいは、彼と顔見知りだったのなら、また別のことを思っただろう。

 

 音隠れの里の忍と会ったことは、一度も無い。

 

 その事実が、男性の視線に含まれる好奇心とそれによる高揚を不鮮明させてしまった。

 

「あーッ! イロミちゃんの春が終わったっすー!」

 

 隣で立ち上がったフウは雨乞いをするかのように両手を上げて、悲痛な声を出していた。

 

「これでイロミちゃんは、一生独り身が確定したっす。イロミちゃん、年老いても、フウに介護を申し込まないでくださいっすよ?」

「頼むとしたらもっと歳が離れた人に頼むよ。それよりフウちゃん、休憩行っていいよ」

「あ! そうっすね! どれくらいサボってていいっすか?!」

「……一刻ね」

「了解っす!」

 

 今まで散々とやる気なく受付カウンターで項垂れていたのに、休憩に行く時は異様に足が速かったのには、呆れてため息が出てしまう。いつもあれぐらい頑張ってくれたら、アンコの気分も良くなるかもしれないのに。

 

 イロミは次の参加者が来るまでに、サスケとナルトの夕ご飯の献立を考えることにした。自分が休憩する頃には、二人とも、昼食は勝手に済ませているのだろう。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 蛇口を捻った時に、泥の混じった水が出てきたら、人はどうするだろうか。おそらく、大半の人は別の蛇口を探すか、水道管に詳しい人に事情を説明するだけのはず。どうして水が出るはずの蛇口から泥水が出てきたのか、そこに興味関心を抱く者はいない。

 

 そこには妥協がある。諦観、と言ってもいいかもしれない。

 

 他の誰かが解明するだろう。他の誰かが、智栄に富んだ者に知らせるだろうという、諦めだ。もし近くに蛇口が無かったり、誰も水道管に詳しい人がいなくて、どうしても喉が渇いていた時には、意地でも地面を掘り起こして原因を追究する。そういった、切羽詰まった状況にならなければ、人は動かない。必要は発明の母とは言うが、それは、自分じゃない誰かがやるなどという、確固たる自分を持っていない者だけが、正義の旗印かのように呟くだけだ。

 

 必要こそが、偉大な発明を生み出すのではない。

 

 偉大な発明こそが、必要に当て嵌められるのだ。妥協すること、諦観することは、つまりは、将来の見据えることができない者。平和だと口笛のように口ずさむ者ほど、将来を見ずに、突如として目の前に姿を現した必要―――あるいは、危機―――に、涙し、泥を啜り、そしてまた妥協を繰り返しては、愚かにも必要は発明の母などと言うのだ。

 

 偉大な発明は、いつだって、禁を恐れない先駆者が、真っ暗闇の不条理に恐れることなく足を踏み入れて生まれる。

 

 凡人共は彼ら彼女らを危険人物などと嘯く。変化を怖がり、皆が集う明るく怠惰で妥協の末に作り上げられた唯一の場所で、声高に叫ぶのだ。

 

 妥協することこそが、愚かではないのか。

 諦観することこそが、恥なのではないのか。

 人は、成長し、知を追求することこそが、最上の力ではないのか。

 

 知を追求していけば、あらゆる必要は消え失せる。

 知識を蓄えていけば、あらゆる危機は未然に回避されていく。

 それこそが、正しい平和というものではないのだろうか。

 

 月夜の下に隠れ、長閑な町灯りに身を包んだ木ノ葉隠れの里は平和などではなく、ただ戦争という必要の合間に生まれただけの、成長も進歩も無い妥協の産物にしか見えなかった。

 

「バカみたいな里になったものね」

 

 大蛇丸は、一人そう呟いた。長い年月ぶりの帰郷だったが、その呟きには哀愁も懐郷も無く、ただただ呆れしかなかった。背の高い建物の屋上。そこに設けられた屋根付きの休憩所に、大蛇丸は立っていた。音隠れの里の上忍として里に入る際に被っていた人皮を脱いだ彼は、衣服はそのままだが、黒い髪の毛は下ろし、白化粧をあしらった顔になっている。

 

 辺りには誰もいないことは確認している。蛇のように辺りの熱源を探知することができる彼にとって、誰にも見つからずに平然と故郷の中に立つことは難しいことではなかった。いや、たとえ探知しなくても、平和ボケした木の葉隠れの里の忍では見つからない自信があった。

 

 中忍選抜試験で入っている忍にも、生温いほどの対応しかしていない。同盟国だからというくだらない思想が蔓延しているのがはっきりと分かった。

 

「もし私が試験官だったら、こんな里で六回も試験に落ちた忍は、邪魔だから殺してしまっているわね。貴方もそう思うでしょ? カブト」

 

 屋根を支える柱に背を預けていた大蛇丸は、視線だけを後ろに向けた。月が雲に隠れ、さらには屋根の影になっている暗い部分から、木の葉隠れの里の額当てを付けた薬師カブトが、困ったような作り笑いを浮かべながら姿を現した。

 

「そう言わないでください、大蛇丸様。わざと試験に落ちる演技をするのは、意外と難しいんですよ」

 

 大蛇丸は鼻で笑ってみせる。その難しい演技を六回も行いながらも、未だ木ノ葉の連中から怪しいと思われていないのだから、皮肉以外の何物でもないからだ。昔から、この少年の皮肉と笑みは、面白いと思ってしまうほどの不気味さがあった。

 

 本心を決して見せない行動の機微。相手をその気にさせる話術。どれもこれも、幼少からスパイとして叩き上げられ、さらにその才能を開花させた彼だからこそできる一級品だ。長い間、右腕として使ってきたものの、本当に忠誠を誓っているのか疑問なところはある。

 

 もちろん、疑問と言っても、些細なものだ。戦々恐々とするわけでもなく、自分とカブトの実力は雲泥の差であるため、たとえ不意を突かれても殺すのは容易だ。

 

 カブトは暗闇から少しだけ身体を出し、ようやく雲から出てきた月の光に、そののっぺりとした笑みを見せた。

 

「いかがでしたか? 久方ぶりの、我が子(、、、)との対面は」

「相変わらず、嫌なこと言う子ね、貴方」

「ふふっ、いえいえ。ボクはてっきり、貴方がその気になっているのではと思っていただけですよ」

 

 我が子。

 

 昼間、音隠れの里の忍として受付に行った時に立っていた、特徴的な髪の毛をした少女―――イロミ。間抜けで平和ボケした雰囲気を丸出ししたあの失敗作―――いや、あるいは成功例―――を思い出し、再び鼻で笑う。

 

 彼女のことは、既にカブトに調べさせて、大まかなことは知っている。

 

 木の葉隠れの里の特別上忍。あらゆる忍具を使いこなし、あらゆる知識にある程度精通し、忍術幻術は碌に使えないながらも、数多の【仕込み】によって実績を重ねてきた忍。

 うちはフウコの親友であり、うちはイタチの友人、そして猿飛ヒルゼンの養子。

 他にも彼女の情報は知っているものの、実物を見たのは今日が初めてだった。

 

 自分の研究成果の一つが、多くの物と繋がって目の前に姿を現し、自身を猿飛イロミと名乗った時は、少なからず興奮してしまったものの、今思えば、感想は一つ。

 

「アレは利用できそうね」

 

 ただ、それだけだった。

 

「猿飛先生には感謝しなくちゃねえ。アレを拾って、生き永らえさせてくれたのだから。元々はゴミ山の一つに過ぎないのに、とんだ掘り出し物を見つけた気分ね。できれば、今すぐにでも攫って解剖したいところだけど、流石にまだ早いわね」

「うちはイタチですね?」

 

 鋭い子ね、と思いながら大蛇丸は呟く。

 

「まだ試験が始まる前。もし今、アレを攫ってしまえば、木ノ葉隠れの里は中忍選抜試験を中止する名目が出来てしまう。そうなれば全ての矛は私たちに向けられるわ。ただでさえあの老いぼれがいる上に、神童のうちはイタチを相手にするのは、荷が重い。攫うなら、試験が始まってしばらくしてからね」

 

 しかし内心では、すぐにでもイロミを解剖したい衝動が暴れていた。

 

 浄土回生の術。それを応用したオリジナルの術の、一応の成功例。生まれ落ちてすぐに身体中が溶けて死ぬと思っていたのだけれど、今は何事も無く細胞は安定している。細胞に大きな変化があったのは明白だった。

 

 また、カブトが集めてきた情報にも、気になる点があった。

 

 それは、彼女が【うちは一族抹殺事件】によって負傷し、治療を受けた際に書かれたカルテの内容である。

 

 薬物やチャクラなど、外部からの影響が常人の遥かに少ないということである。カルテには、薬物やチャクラを細胞が吸収し無力化しているようだ、という担当医の意見が書かれていたが……裏を返せば、疫病や細菌すらも飲み込むということ。

 

 どれほどの範囲まで、彼女の細胞はカバーできるのか分からないが、もし……。

 

 もし、彼女の細胞が、森羅万象の疫病や細菌を飲み込み無力化するのであるならば。

 

 それは、万能薬に等しい希少なものなのではないか。

 全ての疫病や細菌を暴食する、悪食な万能薬に。

 自身が研究している、不老不死の道の礎になるのではないかと。

 

 もちろん、イロミの利用価値は他にもある。

 

 例えば、うちはイタチ。彼ともし対峙することになったら、彼女をカードに牽制することができるかもしれない。これから行う計画には、彼の存在が最も邪魔になってくることだろう。木の葉隠れの里の神童と謳われる彼を抑え込むためのカード。

 あるいは―――同盟相手のうちはフウコを牽制するための、カード。

 

 しかしいずれも、決定打ではない。牽制することはできるかもしれないが、あくまで主導権は向こうにある状況に変わりはない。イロミを切り捨てるという判断がなされてしまった時点で、負けなのだ。

 

 念の為に、うちはイタチを抑え込むカードは他にも用意はしている。故にイロミの利用価値はどちらかと言うと、その万能薬の方が比重は大きい。

 

 もし彼女の細胞を手に入れることが出来たのならば、それは有益に使わなければ。

 

 そう、たとえば。

 

 今はまだ、アジトで治療中の―――君麻呂(、、、)に投与する、など。

 

 うちはイタチの牽制役として今回の計画に彼を使い捨てるつもりではあったが、もしその後も使い続けることが出来るのならば、彼の評価も変えなければいけなくなる。

 

 他にも、イロミの細胞を使ってどのようなことが出来るのかと考えを巡らせていくと、妥協と諦観に満ちた里への呆れもすっかりと姿を消してしまった。

 

「……あまり、彼女に執着してはいけないのでは?」

 

 珍しく、カブトの声に小さな硬さを感じ取った。

 視線を向けると、彼は眼鏡の位置を直しながら、その奥にある瞳が怪しく光っている。

 

「あら? 貴方が嫉妬するなんて、珍しいじゃない」

「嫉妬だなんて……。ボクは事実を言ったまでですよ。貴方の目的は、あくまで、木の葉隠れの里を滅ぼすことと、そして―――うちはフウコへの対抗手段を持ち帰るためだったのでは?」

「ククッ……。それもそうね。アレが本当に利用できるからは、やってみないと分からないものね」

 

 一度、我が子のことを思考の外に置き、大蛇丸は続ける。

 

()は今もまだ?」

「ええ。健気にも信用していますよ。うちはフウコ(、、、、、、)のことをね」

「あら、そう。ククッ。じゃあ、彼に教えてあげないとね。うちはフウコが何をしようとして、木ノ葉が何をしたのか」

 

 同盟関係である、うちはフウコ。しかし、大蛇丸にとっては、それは同盟でも何でもない、主従のような関係でしかなかった。

 

『大蛇丸。貴方と同盟を組みたい』

 

 今でも思い出すと寒気がする、あの視線。

 

 人形よりも仄暗く、零度よりも冷たい眼。

 

 目的の為ならば、何千何万の命をも殺すのに躊躇しないという、絶対の死を無機質に淡々と提供する彼女と、大蛇丸は同盟を結んだ。

 

『もし貴方が私の為に動いてくれるなら、貴方に渡してあげる―――輪廻眼を』

 

 彼女から聞かされた、【暁】を裏で動かしている者の情報と、輪廻眼という伝承の存在。

 輪廻眼を手にすれば、あらゆる忍術を追い求めることが出来る。

 

 それは、たとえば―――死者を蘇らせるような、夢のような忍術も。

 

 同盟を組んだものの大蛇丸は、フウコがその契約を果たしてくれるとは露にも思っていなかった。

 

 彼女は余りにも強大過ぎる。かつて滝隠れの里で戦った時よりも、さらに強大となって、正に化物のような力を手にしていた。

 

 実力では、到底太刀打ちできない。

 契約を果たしても、彼女が掌を返してしまえば、輪廻眼は手に入らないだろう。

 この世で最も手にしたい輪廻眼は、今のままでは、手に入らない。

 

 だが決して、妥協や諦観など、大蛇丸はしなかった。

 輪廻眼を獲得したいという確固たる自分を、揺るがせはしなかったのだ。

 

 実力で勝てないのであるならば、別の力で彼女をコントロールすればいい。

 

 親友という力では足りない。

 彼女のかつての家族である、うちはイタチでも、うちはサスケでも、まだ足りない。

 

 そして、たった一つにしか利かないカードではなく、たとえば、自分が所属していた【暁】さえもコントロールし、うちはフウコにぶつけることが出来るようなカード。

 さらには、うちはフウコが自分の人生を犠牲にして守った木ノ葉隠れの里に、強い憎しみを抱き、うちはフウコがどれほど制止をしようがお構いなしに木の葉隠れの里を滅ぼそうと願う愚鈍で素直な、そんな夢のようなカードだ。

 

 そう。

 

 つまり。

 

 大蛇丸が今、うちは一族という希少で有能な肉体よりも確実に、手元に置いておきたいと考える存在。

 

 それは、

 

「ナルトくんも、厄介な子を好きになったものね」

 

 

 

 九尾の人柱力にして【暁】が一番最後に獲得すると決めている、少年。

 

 うずまきナルトだった。

 




 次話の投稿は、十日以内に行いたいと思います。

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