いつか見た理想郷へ(改訂版)   作:道道中道

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 投稿が遅れてしまい、申し訳ございません。


後日談・表

【うちは一族抹殺事件・最終報告書】

 

 ―――調査班の報告によれば、北北東の森の一部が、何かによって薙ぎ倒された形跡が確認されている。南東に向けて形跡は伸びており、長さは百メートルに及ぶ。形跡には、うちはフウコが所持していた黒刀の刀身部分が折られた状態で発見されており、周囲には大量の血痕も発見されている。戦闘の跡だと考えられるが、うちはフウコ及び相手の遺体は確認されていない。

 また、事件当夜を境に、うちはフウコの消息は途絶えている。一ヶ月に及ぶ綿密な調査の結果、うちはフウコは火の国国内にいる可能性は非常に低いと判断される。しかし、事件発覚一週間後より同盟国ならびに同盟里へ、うちはフウコの逃走の経緯と捜査協力を申し出たが、有益な情報はもたらされていない。継続してうちはフウコの捜索にあたるものの、うちは一族抹殺事件における調査は、調査本部解体を以て終了するものとし、以下の項目は調査本部における最終決定とする。

 

1):うちは一族抹殺事件の実行犯、うちはフウコを抜け忍とする。生存死亡問わず、うちはフウコの身柄拘束は、木の葉隠れの里より懸賞金を支払うものとする。

 

2):事件当夜、うちはフウコに協力したとされる人物は確認されていない。別件である【うちはシスイ殺害】以降より、うちはフウコの身柄は暗部が完全に隔離していたため、事件当夜に警務部隊の拘留施設に身柄を搬送されるまでの間にコンタクトをとった者は―――(斜線で消されている)―――確認されていない。綿密な調査の結果、うちはフウコに協力したと思われる人物はいないと判断され、本案件では単独による実行という決定がなされた。

 

3):うちはフウコの犯行理由は未だ不明。事件の生存者の一人であるうちはイタチからの証言では、自身の実力を測るためという発言がうちはフウコの口から語られたようだが、暗部における普段の言動から顧みるに整合性の取れない発言であるため、参考程度に纏める。うちはイタチの実弟であるうちはサスケにも事情聴取を行ったが、夢の世界へ行く、などという発言をしていた、と彼は語った。両者は共にうちはフウコへの強い憎悪を抱いている様子があり客観性に欠ける。両者の発言から、うちはフウコの犯行動機へと結びつけるには困難であると判断される。

 

4):先述した形跡と木の葉隠れの里の中間地点で発見された猿飛イロミだが、調査の結果、うちはフウコと戦闘をしたと思われる。しかし、現時点で猿飛イロミは意識を回復しておらず、事情聴取は行えない。意識回復をした後に事情聴取を行う予定だが、担当医の診断によれば声帯に多大な損傷が見られ、事情聴取の際には感知忍術を得意とする者の介する必要性が考えられる。また同担当医によれば、本来なら意識を回復しても不思議ではないとのこと。どうやら精神的な要因によって、意識回復が妨げられているとの見解が示された。うちはイタチ、うちはサスケと同様に、客観性に欠ける可能性が十分に予想されるが、意識を回復次第、事情聴取を行う。

 

5):本案件の発覚から二週間後、暗部を統括していた志村ダンゾウが辞職を申し出た。暗部の副忍であったうちはフウコの管理責任は、事件発覚から提唱されていた。火影がこれを了承し、以後の暗部管理は全て火影に属するものとなった。また、志村ダンゾウの辞職と共に、戦争孤児を対象とした【根】は解体となった。

 

 また、事件とは直接関係は無いものの、うちはフウコの逃走により、九尾の人柱力の様子に変化があったという報告がある。九尾の人柱力とうちはフウコには以前より密接な関係があると暗部内で囁かれていた。以後、九尾の人柱力への監視が強くなるという決定がなされ、加えて七尾の人柱力をコントロールするべきだという声が挙がっている。

 

 以上を以て、うちは一族抹殺事件の最終報告とする。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

『待て……、フウコ……』

 

 朦朧とする意識の彼方には、満月を背景とした彼女の姿が。

 血に塗れ、生臭さと鉄臭さを纏った彼女の姿は、激痛と疲れでぼやけてしまっていた。しかし、睨むように彼女の見つめ続ける。

 

『まだやるの? 私は、やだな。イタチは弱い、弱すぎる』

『どうして……、姉さん。どうしてだよッ!』

『……姉さん? そんな呼び方、止めてよ。虫唾が走る……、気持ち悪い』

 

 後ろに立つ弟を傷つける冷酷な声。だが、激痛が支配する重い身体は、うつ伏せ以上の姿勢に移すことは出来なかった。

 彼女はため息を漏らして、呆れきった声で彼女は呟く。

 

『私は……ずっと、我慢してきたの。ずっとずっと……。分かる? 新しい術を思いついても試せるくらいに強い相手がいない、少し本気を出せば何でも出来てしまう、挙句にうちははその身に宿る才能を平和の中でのうのうと腐らせる。嫌になる。こんな事になるなら……平和なんて、望むんじゃなかった』

『……嘘だ…………、なら…………なぜ、今になって………………』

『何となく。ああ、でも、イタチとの勝負は少し、楽しかったかな。でも、シスイ程じゃない。シスイの時は、もっと、楽しかった』

『…………ふざ、けるな…………』

『ふざけてない。ふざけてるのは、イタチだよ。結局、イタチは一度も私に勝てなかったね。本当に、本気だったの?』

 

 嘲笑いと呆れ、見下すような声のトーンに、薄れていた怒りと殺意が蘇る。だがそれでも、つい先ほどまで焦げるような黒い感情にコーティングされていた思考は外側からボロボロと感情が剥がれ、その中にある小さな疑問を露呈させた。

 

 だがその疑問を、言葉にすることが出来なかった。

 

『もういいや。せっかく、イタチと遊ぶのを楽しみにしてたのに。二度と、私の前に姿を現さないで。気持ち悪いから。弱い人は弱い人らしく、平和に生きた方がいいよ。寝て、起きて、ご飯食べて、お風呂入って……きっと二人とも、明日になればそうなるから。じゃあね、バイバイ』

 

 ノイズが入る。壊れたテレビのように、砂嵐が入り、それらは彼女の周りの暗闇や万言を呑み込んでいく。

 まるで世界が、彼女を孤独へと追い立てるようだ。

 

 フウコの、左右非対称の万華鏡写輪眼と視線が重なる。ノイズは彼女を蝕む。足を、膝を、手を、腕を、肩を、胴体を、最後に残ったのは彼女の顔だった。

 

『イタチ……』

 

 彼女の顔がノイズに呑み込まれる、その瞬間。

 刹那の時間だけ、声が耳に届く。

 泣きそうな、苦しそうな、辛そうな、湿った声だった。

 

 けれど―――あの夜。

 

 左右非対称の万華鏡写輪眼を浮かべた彼女は何も言わなかった。

 つまりこれは夢の中で、

 耳に届く彼女の声は嘘で、

 そもそも彼女が泣いている姿を見た事は一度もなかった。

 

 それでもどうしてか。

 

 ノイズに呑み込まれようとする彼女の顔は、はっきりと見えてしまうくらいに、泣いていた。

 

『イタチ、助けて……』

『私を、一人にしないで……』

『助けて……』

 

 全てが、ノイズに呑み込まれる。

 彼女の姿も声も消えてなくなり、意識は、真っ暗な奈落へ落ちていく。

 落ちていけばいくほど、意識は圧力を感じて重くなる。

 現実というしがらみ。

 思い通りにならないことが平然と起きて、知らない所で重大なことが起きて、無くしたものが決して取り戻すことが出来ない、不自由で重い現実が、意識に纏わりついてきたのだ。

 つまり、意識は、身体へ。

 

 イタチは目を覚ました。

 視界一面には、天井が。薄暗さと、眠る前の時間帯を思い出して、今が夜明け前なのだとすぐに分かった。しかし、開けた瞼にはまるで重さを感じない。眠気は尾を引くこともなかった。

 

 ただ、身体が熱かった。黒い前髪が額に貼りついている。頭の中に残留する血みどろな夢の跡に、心臓の鼓動が頭の天辺まで届いてうるさかった。

 

「………………」

 

 大きく息を一度吐いて、イタチは上体を起こした。身体に被せていた薄い掛け布団が弛むと、ちょうど腰辺りに、まとまった掛け布団の部分の重さが感じ取れた。夢の中とは違う、確かな重み。

 

 吸う空気も、窓の外から聞こえてくる虫たちの声も、見下ろす手も。

 

 全て、現実だ。

 

 あの事件から、二ヶ月を経た、間違いのない現実。

 血生臭いあの夢が現実ではないということへの安心感。と同時に、あの夢が、かつて起こった過去なのだという事実への空虚感が、夜明け前の薄暗い部屋全体から圧迫するようにやってくる。

 

 八畳一間の、狭い部屋だった。自分の部屋ではない。そもそも、自分が住んでいた、うちはの家ではなかった。木の葉隠れの里から無償で与えられた、安アパート。それが今のイタチ、そしてサスケの、家だった。

 

 サスケは今、隣の布団で眠っている。静かな寝息はスムーズで、こちらに背を向けて横になる姿勢を作っていた。何度か寝返りを打ったのだろう、同じ薄い掛け布団がぐちゃぐちゃになっていて、イタチは器用に掛け布団だけを元に戻してやると、立ち上がり、居間に直接接している台所の蛇口を捻って水を流した。両手で冷たい水を掬い、顔の汗を洗い落とすと、身体の熱が一度ほど下がったような気がする。それでも、夢の跡は、深く抉られた傷のように残り続けた。

 

「……フウコ」

 

 寄りかかるように台所の底を見下ろす。薄い鋼で作られた台所は、薄暗闇の中のイタチの顔をぼんやりと反射させているが、イタチ自身の目には、そこには彼女の顔が浮かび上がっているように見えていた。

 

 怒りが、込み上げてくる。

 

 事件から月日は経ったというのに、怒りのエネルギーはフウコと対峙した時と遜色はなく、震える右手が台所を殴ろうとする衝動を必死に抑えた。こんな夜中に物音を出すと、サスケが起きてしまう。あまりサスケを不安にさせたくない、という、唯一の肉親となってしまった自分の立ち位置が、ちょうど良く抑止力になってくれていた。

 

 大きく息を吸い込む。肺に詰まった熱い空気を吐きだすと、体温が下がったような気がする。ついでに、怒りも収まりつつあった。

 

 怒りが沈静化すると、代わるようにやってきたのは、疑問だった。

 

 もうどれくらい、記憶を遡っただろうか。

 フウコと出会った頃から、シスイを殺害した容疑で暗部に拘留された日までを。

 温かく、楽しい時期。

 辛く、苦しい時間。

 それらをイタチは、明晰な記憶力で遡り、場面を注視し、言葉を拾い。

 

 だけど、その記憶の中には、不自然なものはなかった。

 

 フウコが、うちは一族に対して不満を持っていたようにも。

 力を求めていたようにも。

 サスケが語った【夢の世界】というものを求めていたようにも。

 

 それらの欠片すら、見当たらなかった。

 

 当然だ。もしそんなものが見えたのなら、事件が起きる前に自覚できていたのだから。

 

「どうしてだ……フウコ…………」

 

 どうして、全てを壊した。

 家族も、

 恋人も、

 友達も、

 思い出も、

 日常も、

 未来も。

 全て叩き壊し、嘲笑って。

 

 だが、イタチの記憶の中には、その原因が分からなかった。

 

 どうして彼女が、あの夜を作り上げたのか。

 

【うちは一族抹殺事件】から二ヶ月。

 

 イタチは、迷っていた。

 

 心の奥底に眠り、容易く起きてしまう、激情と。

 フウコと共に過ごした普遍的な記憶が告げる、疑問と―――そして、それを彼女に尋ねたいという願望。

 

 つまりは。

 一族を滅ぼした彼女への復讐か。

 一族を滅ぼした彼女への期待か。

 

 どの感情に従えばいいのか、分からなかった。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 夜明けはすぐにやってきて、瞬く間に朝の日差しは里全てを照らした。カーテンを開けた窓からの光は、狭い部屋を照らすのには十分で、イタチとサスケは、布団を片付けてできたスペースに折り畳み式の小さなちゃぶ台を挟んで朝食を食べていた。

 朝食の献立は非常にシンプルだった。味噌汁とサラダ、白米に、ベーコンと漬物である。サラダは多めだが、単に野菜を食べやすいサイズにしただけで、味付けもマヨネーズと少量の塩だけだ。

 

 全体的に淡泊な味付けだと、イタチは思う。ミコトが作ってくれていた朝食を思い出しながら、サスケの健康を考えたメニューたっだが、味付けが上手くいかなかった。

 

「……兄さん。今日は、任務あるのか?」

 

 サスケの声は、低かった。

 朝だからということでも、朝食の味に不満があるというわけでも、無い。

 かつてのように、素直で明るい表情はそこにはなく、刃物のように冷たく、鋭く、固い表情で、イタチを見上げていた。

 

「もし無いんだったら、修行、付けてくれよ」

 

 イタチは柔らかく微笑む。

 

「悪いな、サスケ。任務はないが、今日は用事がある。修行はまた今度だ」

「……分かった。…………ご馳走様、美味しかった」

 

 無感動な声で呟くと、サスケは綺麗に平らげた食器らを丁寧に重ねて、台所に持っていった。蛇口から水が流れる音がし、洗剤の匂いが微かに届いてきた。

 

「……また、あいつのとこに行くのか?」

 

 カチャカチャと食器を洗う音を出しながら、サスケは呟いた。

 

「今日でギブスが取れるそうだ。退院はまだみたいだが、必要なものがあるかもしれない。サスケ、お前も久々に来たらどうだ?」

「俺は……いいよ。修行してる」

「そうか。あまり遅くならないようにするんだぞ」

「分かってるよ。じゃあ、いってきます」

 

 洗い終わった食器を慣れた手つきで食器立てに置くと、前日に用意していたアカデミーの鞄を肩にかけ、イタチが用意した昼ご飯の弁当を持って出掛けていった。部屋に中途半端な静寂が訪れると、イタチは浮かべた笑みを閉まって、本当に小さく、息を吐いた。

 

 イタチが退院したのは、今から、およそ一ヶ月半前のことだ。つまり、事件から一週間後ということになる。両手、肋骨のヒビ、腹部内臓の治療による入院。いずれにしても、命に関わる怪我ではなく、今では普段と変わらず任務を行えるほどにまで回復していた。

 しかし、イタチが任務を行う回数は、実のところ、事件以前よりも少なくなっている。彼が持っていた下忍の子たちも、他の上忍に引き継がせていた。

 

 一夜にして一族が滅亡という例を見ない大事件の被害者であるイタチを慮っての処置、という風に表向きはなっている。うちは一族が滅んだという事実は、他国、他里に知られてはいるものの、幸いなことに大きな動きはなく、平穏な日々が続いているため、イタチの処置について異論を唱える者は誰一人としていなかった。

 

 しかし、本当の理由は―――サスケのケアのためである。

 

 イタチが入院して三日目の時に、サスケは退院した。大きな怪我もなく、精密検査の結果身体に何も問題は無いと判断されたからだ。だが、心に強いストレスが掛かっているということを、唯一の肉親となってしまったイタチに、医師は報告した。まだアカデミーに通っているサスケにはあまりあるストレスで、今後の成長過程に大きな問題が発生するかもしれない、と。

 

『傍にいてあげるだけで構いません。無理に距離を縮めようとする必要もありません。ただ話し、一緒にご飯を食べる。同じ空間で生活するだけでいいのです。とにかくゆっくりと、長いスパンで、あの子と接してあげてください』

 

 それが、医師の助言だった。

 

「……ご馳走様」

 

 一人になったイタチは、両手を揃えて呟く。返事は、もちろん、ない。食器を台所まで運び、洗う。ちゃぶ台も吹いて、簡単に部屋の掃除をした。機械的な作業。けれど、不思議なことに、何も考えないで身体を動かすというのが、今では何よりも落ち着ける時間だった。

 

 空っぽな時間。

 たった一人になることが、どうして落ち着けるのだろうか。

 きっとそれは、サスケのケアを、上手くできているのだろうかという不安があったからかもしれない。

 

 ゆっくりと、長いスパンで、接していく。

 

 おそらく医師のその助言は適正な手段なのだろう。専門的な知識と経験に基づく判断からの助言なのだから。イタチから見ても、過度に声をかけたり、無理に優しくしたら、サスケが強く反発するだろうことは容易に想像ができた。

 

 だが、サスケと二人で生活している内に、脳裏にちらつく将来の予測に不安を抱いてもいた。

 

 このままでは、サスケは遠くに行ってしまうのではないかという、不安だ。

 何故、そんな不安が生まれるのか。

 それは、サスケが今、フウコに強い復讐心を燃やしていることに起因している。

 

 一度だけ―――そう、一度だけ。

 サスケははっきりと言ったことがある。

 

 殺すと。

 

 フウコを必ず殺すと。

 

 彼女(、、)の前で、言ったのだ。

 

 そしてサスケは退院してからずっと、憑りつかれたように修行に没頭している。

 毎日、毎日。

 夜になるまで。時には、夜遅くまで。

 

 本当にこのまま、サスケの傍にいるだけで、いいのだろうか?

 このままでは、復讐心に囚われた弟が、フウコの後を追って孤独になってしまうのではないか?

 

 だが、じゃあ、復讐をするなと言うべきか。

 まだ自分がどうしたいのか、どうするべきなのか、迷っているというのに。

 下手に言葉をぶつけてしまえば、サスケとの距離は絶望的になる。どれほど歩み寄っても、近づくことができなくなる距離を作ってしまう。

 

 大切な弟の為に、どんな答えを持てばいいのか。そしてその答えを持つための時間は、どれほど許されているのか。

 

 そんな不安が、いつも胸の中にある。

 空っぽな時間は、その不安から逃避させてくれたのだ。

 しかしやがて、部屋の掃除も終わってしまう。

 

 時計を見ると、まだ午前の真ん中だった。仕方なくイタチは買い物袋を持って部屋を出た。今夜の夕食と明日の朝ご飯と、サスケの弁当に入れる食材を買う為である。と言っても、イタチの料理のレパートリーは絶望的に少なかった。どうにかレパートリーを増やそうと、店先の食材を眺めながら、頭の中に入れた料理本の知識と照らし合わせ、上忍として貯蓄している金銭と相談するため、それなりの時間が掛かってしまう。

 

 仮宿舎に戻ってくる頃には、昼時から一刻ほど前の時間くらいまでになっていた。

 

「……ちょうどいい時間だな」

 

 買ってきた食材を冷蔵庫の中に入れてから、再び、家を出た。道の途中で花屋に寄り、三輪ほどの短い花を買った。お見舞用の花である。事件から二ヶ月が経過し、すっかり平穏となってしまった里の中は、昼時ということもあるせいなのか、先ほど買い物に出かけたよりも人通りが多くなっていた。

 

 誰もが、笑顔を浮かべながら、横を通り抜けていく。イタチはうちはの家紋が入ったシャツを着ていたが、その上に上忍のジャケットを羽織っていたため、うちは一族の人間なのだとはすぐに分からない。顔見知りではない限り、気付かないだろう。主に、主婦の方しかおらず、イタチのことに気付く者はいなかった。

 

 辿り着いたのは、病院だった。

 

 事件から二週間入院していた病院であり、そして―――イロミが入院している病院だった。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

「…………あ、イタチくん」

 

 狭い個室に、イロミの濁った声が小さく木霊した。イタチは後ろ手にドアを閉めながら小さく笑みを浮かべ、呟いた。

 

「無理に声を出す必要はない、イロミちゃん。安静にしててくれ」

「…………ううん、今日は、喉の調子が良いから。それに、医者の人も、少し声を出して喉を動かした方が良いって言ってるし。無理をしなければ、いいんだって。だから、気にしないで」

「いや、それでも……」

「…………大丈夫、だから。それに、イタチくんだって、花はいらないって言ってるのに、いつも持ってくるでしょ?」

「分かった。だが、無理はしないでくれ。喋りたくないなら、簡単でいいから教えてほしい」

 

 病室の中央のベットで横になっているイロミは微かに頷いた。とても弱々しい動作。二ヶ月にも及ぶ入院生活のせいですっかり長くなってしまった彼女の髪の毛は、彼女の顔のほとんどを覆い隠していた。包帯が巻かれた細い鼻が長い前髪を分断し、本当に僅かに覗かせる口元の笑みだけが、彼女の感情の機微を伝えさせる唯一のものだった。

 

 ベットの脇に置かれている背の低い棚。その上に、花瓶が乗せられている。花瓶には二輪の花が挿されており、幾分か元気を無くしてはいるものの、まだ捨てるには早いくらいではあった。

 三日前に見舞に来た時、イタチが持って来た花である。今日持って来た花と全く同一だったことに、今更ながらイタチは思い出した。

 

 表情に出てしまったのか、イロミはそれを指摘する。

 

「…………珍しいね、イタチくんが困った顔するなんて。もしかして、見るのは初めてかも」

「すまない、別の花を選ぶべきだったな」

「…………気にしなくていいよ」

「水だけを取り換えよう」

 

 花瓶を手に取り、病室に備え付けられている洗面台で水を取り替え、新しい花も一緒に挿した。同じセットの花が二つ、一つの花瓶に入ると、流石に落ち着いた花達であっても、少しだけ煩わしいように思えた。しかし、他に選択肢は無く、イタチは渋々と壁に立て掛けてあったパイプ椅子をベットの横に付けて腰を落ち着かせた。

 

 すると、イロミが上体を起こそうと、腹筋の力だけで起き上がろうとした。イタチは素早く彼女の背中に腕を回し、あっさりと起き上がらせる。

 長くなった彼女の髪の毛は、肩にかかる程までに伸びていたが、腕に振れる彼女の背中はやせ細り、骨の感触が生々しく伝わってきた。

 

 あはは、とイロミは乾いた自虐的な笑い声を小さく出した。

 

「…………やっぱり、まだ一人じゃ起き上がれないみたい。喉の調子が良かったから、もしかしたら、起き上がれるんじゃないかなって思ったけど、まだ、無理みたい」

「肋骨を傷めたんだ、仕方ない。俺は気にしてないんだ。無理に起き上がる必要はない」

「…………もう肋骨は痛くないし、」

 

 そこで一度、イロミは言葉を止めた。口先が震え、一瞬だけ下唇を噛んだのを、イタチは見逃さなかった。

 まるで、何かを怖がるような動作だった。

 

「…………友達……が、お見舞に来てくれてるから、横になったままだと、悪いかなって、思って」

 

 友達。

 

 その言葉は、あまりにも小さい声量だった。

 イタチは彼女に不安を与えないように、腕を離しながら笑ってみせた。

 

「安心してくれ。身体を起こすか起こさないかで、何かが変わる訳じゃない。でも、そうだな、確か、明日からリハビリをするんだよね? だったら、身体を動かしても、いいかもしれない」

「…………ありがとう」

 

 あはは、とイロミは顔を上げて、再び笑って見せた。

 

 さっきよりも声量は大きかったが、必死に明るく振る舞おうとしているのが分かってしまった。笑顔を浮かべる口元の下、喉周りには、包帯が巻かれているのが視界に入るが、イタチは必死に平静を装った。

 

「…………うん、そうだね」

 

 と、イロミは呟く。

 

「明日からリハビリかもしれないから、身体を動かすのは大事だよね」

「ギブスは予定通り、今日外れるのか?」

「…………一応はね。ギブスは外れるみたい。でも、もしかしたら、リハビリはすぐに出来ないかも」

「まだ完治じゃない、ということか?」

「…………ううん、もう、筋肉も骨も繋がってるのは間違いないみたい。だけど、上手く動くか分からないかもしれないんだって。ほら、腕とか手とか、ぐちゃぐちゃになっちゃったから、神経が繋がってないかもしれないみたい。だから、精密検査次第ってことになるらしいけど……」

 

 上体を起こしたイロミの両腕には、分厚いギブスと包帯が巻かれている。二の腕と、両手にである。半袖の白い病人服だが、一瞬だけ長袖なのではないかと見紛うかもしれないほど、彼女の両腕は白い包帯で覆われているのだ。

 

 彼女が同じ病院で入院しているということを聞いたのは、イタチが入院して一週間ほどのこと。フウコが起こした事件について、暗部から事情聴取を受けた時に偶々、彼女の事態を耳にしたのだ。

 

 意識不明の重体で、里の外で発見された、と。

 

 すぐに彼女の病室に赴いたが、その時の彼女の姿は、幾つもの機器と大量の薬品に命を繋がされているような、悲惨なものだったというのは、イタチは今でもはっきりと思い出すことができる。

 

 あと一歩、発見されるのが遅れていれば、命は無かったと医者から聞いていた。

 

 フウコが犯した凶行に、夜明け前の時のように怒りが蠢こうと唸りをあげるのを必死に抑えた。イロミは続ける。

 

「…………まあ、感覚ははっきりとあるから、大丈夫だと思うよ。手なんて、凄い痒いんだ」

 

 それでも、もし、上手く神経が機能しなかったら………。イタチはその言葉を喉元で堰き止めた。代わりに口から零れたのは、希望的なものだった。

 

「きっと、大丈夫だ」

「…………イタチくんがそう言うなら、そうなんだろうね」

 

 そう呟いてから、イロミは顔をあげてイタチを見た。

 

「…………そういえばイタチくん、今日は、どうしてお見舞に来てくれたの? 三日前にも、来てくれたのに」

「ああ。ギブスが外れるなら、何か、例えば本とか持って来た方がいいかな? って思ったんだ。リハビリで忙しくなるかもしれないが、無いよりはマシかと思って、聞きに来たんだ」

 

 三日前に来た時、聞くべきことだったが、やはり事件が終わってから、どこかぼんやりとしてしまっている部分があった。

 

「午後にギブスが外れるようなら、今日中に持ってこよう。何かあるかな?」

「…………それなら、本がいいかな。手のリハビリにも、いいかもしれないし」

「どんな本がいい? やっぱり、忍術書とか?」

「…………何でもいいよ。小説でもいいし、マンガでもいいかな。でも、うん、忍術書だったら嬉しいけど、高いと思うから、大丈夫だよ」

 

 その時、部屋のドアがノックされた。ドアの向こう側から、女性の明るい声が届く。

 

「イロミちゃーん? お昼御飯の時間でーす。入ってもいいかしら?」

 

 どうやら医療忍者の女性が昼食を運んできたようだ。

 イロミは静かにイタチを見る。

 

「…………ごめんね、イタチくん。これから、お昼御飯だから」

「いや、気にしないでくれ。今回は何を持って来ればいいのか聞きに来ただけだ。また、午後に来るよ」

 

 頭の中で買ってくるべき本の種類を選定しながら立ち上がり、パイプ椅子を元の位置に戻した。一度、病院を出るのだ。未だ、喉が完治していない彼女は、流動食しか食べれない。そして、流動食と言っても、スムーズに食べることができないようで、イロミから「あまり、見られたくないから」という理由で、食事時は席を外すようにしているのだ。

 

 別段、そんなことは気にしないが、仕方ない。そう思いながら、ドアに手を―――。

 

「…………ねえ、イタチくん」

 

 その時、イロミが声をかける。

 震えたその声は、振り向かなくてもイロミの様子が想像できてしまい、ドアに手をかけた手がピタリと止めてしまった。

 

「…………前にも、私、言ったかもしれないけど……、フウコちゃんのこと……」

 

 体温が、上がったのか、下がったのか。

 曖昧な感覚に、部屋ごと支配されたような眩暈がやってくる。呼び起されるのは、一度、サスケと共に彼女の見舞いに来た時の光景だった。

 

 意識を取り戻したばかりで、まだまともに声も出せなかった彼女だが、しかし、掠れた声で言ったのだ。

 

『…………わだじ……、ぶうごぢゃんのごど…………、じんじでる……』

 

 きっと、理由があるのだと。

 うちは一族を滅ぼさなければならない理由が、あったのだと。

 

 その言葉に、サスケは声を張り上げた。

 

『ふざけるなッ! あいつは、父さんも母さんも、シスイさんも……殺したんだッ! 信じるもないだろッ!』

『…………ざずげ、ぐん……』

『俺は、あいつを―――フウコを必ず殺す。邪魔するなら……お前も殺すぞ、イロミ』

 

 イタチは、振り返ることができなかった。振り返り、フウコを信じている彼女の顔を見ることが、できなかった。

 

「…………私は、まだ信じてる。だから、フウコちゃんを、探そうって、思うの。退院したら」

 

 震える声。その中には、幾分かの弱さが混じっていた。

 アカデミーの頃に、聞いたことのある声だった。

 上級生に虐められ、泣きながら、だけど、平気だと呟いたあの頃の彼女の声と、同じ弱さ。

 

 助けを求めるような、弱さだったのだ。

 

「…………イタチくんは―――フウコちゃんのこと……どう、思って……」

「はーいイロミちゃん。ご飯の時間よー」

 

 イロミの言葉は入ってきた医療忍者の女性に遮られた。目の前に姿を現した医療忍者の女性は、イタチの姿を見て口に手を当てて大袈裟な瞬きをした。

 

「あら、もしかしてお取込み中だったかしら?」

 

 医療忍者の女性に応えたのはイロミだった。

 

「…………いえ、今、話しが終わった所です。すみません、返事をしなくて」

「いいのよ。そ、じゃあ、失礼するわね」

 

 銀色の台車を押してイタチの横を通った。台車の上には、深く大きな一つの器が乗せられている。台車をベットの横に付けると、女性は優しく笑った。

 

「じゃあイロミちゃん。今日は頑張って、全部食べてみましょうね。あ、もちろん難しかったら、すぐに言うのよ?」

「…………はい、頑張ってみます。じゃあ、イタチくん、またね」

「ああ、また」

 

 イタチは、病院を出た。

 

 病院のすぐ近くには、幾つかの食事処があった。退院したばかりの人であったり、病院に勤めている人であったりが利用するのだろうけれど、あまり混雑はしていないようだった。しかし、空腹を感じることはなく、イタチはそれらの食事処に寄ることはなかった。ぐしゃぐしゃに丸めた紙を広げたような乱雑な思考を整えながら歩いていると、到着したのは、小さな公園だった。

 

 ベンチに腰掛け、空を見上げる。公園には子供の姿も、大人の姿もないけれど、外からは微かな喧騒が耳に届いた。薄い雲が真上を通り過ぎて、ちょうど、太陽の姿が見えなかった。

 

『俺は、あいつを……フウコを殺す。邪魔するなら……お前も殺すぞ、イロミ』

『…………イタチくんは―――どう、思って……』

 

 二人の言葉と表情、そして感情が無意識に思い出される。

 復讐に身を焦がしている最愛の弟と、信頼を繋ぎ止めている友人。

 どちらが間違っているのか、という問題では、きっとない。

 

 いつかは、やってくる選択だった。

 既に二人は、自分の感情に従って選択している。

 このまま、自分が何も選択しなかったら、二人はフウコの元に行ってしまうかもしれない。

 サスケはフウコを殺す為に。

 イロミはフウコを信じる為に。

 

 けれど、二人は、力が足りない。

 殺すにしても、対話をするにしても。

 フウコの前に立ち続ける為の、力が足りない。

 殺される。

 それを止めたいという感情が頭を圧迫するが、じゃあ、自分はどの選択をすればいいのか、分からなかった。

 

 怒りに従って、復讐を望むべきか。

 理性に追随して、信頼を繋ぎ止めるべきか。

 

 そして、その選択をしなければならない時期は、もうすぐなのだろう。いつだって現実は、最良の選択を考慮する時間を許してはくれない。

 焦りが込みあげると同時に、太陽が顔を出した。

 日差しの暑さのせいなのか、じんわりと、首筋に汗が滲み出はじめる。それが益々、焦りを駆り立てた。

 

「……おたく、ここで何してるの?」

 

 日差しの向こう側―――いや正確には、イタチの身体から見て真正面からなのだが―――から、呆れたような声が入ってくる。顔を下げると、そこには一人の男が立っていた。

 

 鼻まで隠すマスクと、左眼を隠すように付けた額当て。そのせいで大きく偏った髪の毛。死んだ魚のような目をした男を見て、イタチは微かに驚いた。

 

「……カカシさん」

「よ、久しぶり」

 

 はたけカカシは気怠そうに右手をあげた。

 

 

 

 ☆ ☆ ☆

 

 

 

 イロミは、泣きたくなる衝動を必死に抑えていた。

 

 ようやくギブスが取れる。

 取れれば、リハビリをする事ができる。つまり、努力することができるのだ。

 リハビリをしたところで、事件前の自分までの実力に戻るのに、長い時間が掛かるだろう。けれど、何もしないよりはマシだ。

 

 大切な友達が、犯罪者と定められてしまった。

 高額の賞金を里側から、抜け忍として付けられてしまった彼女は、賞金首を狙う一部の忍から他里の忍に至るまで、命を狙われてしまう。

 

 友達だから。

 

 今では、その言葉を呟くだけで心が恐怖に怯えてしまうが、それでも、どれほど悩み、どれほど泣いても、その言葉はいつも自分の心の中央にあった。

 

 だから、助けたい。

 遠くへ行ってしまった友達に追い付くために、努力をしたい。

 そう思っていた。

 そしてその思いが、ようやく、達成できると思っていた。

 ギブスが取れれば、努力が取れるのだと、思っていた。

 

「……イロミさん。落ち着いて、聞いてください」

 

 ギブスを外し、チャクラで精密検査をしてくれた担当医が、真剣な表情を浮かべている。彼の下唇は微かに震えているのが、怖かった。

 

 ―――……どうして…………。

 

 イロミは自分の両手を見る。

 骨を折られ、きっと骨片が皮膚を突き破っていたのだろう。無残な跡が大量に残った、ほっそりとした手が、上体を起こした自分の太ももの上で横になっていた。

 

 空気が触れる感覚。

 掛け布団に乗っている感覚。

 それらは、確かに伝わってくる。

 なのに……。

 

 ―――指が……手が…………動いて、くれない……。

 

 指を動かすイメージと、現実の指の動きに、大きな齟齬があった。

 ピクリとも、指は、手は、動かない。

 

 恐ろしい現実が頭の上からのしかかってくるのを、イロミは必死に否定した。

 そうだ。

 きっと、ギブスを取ったばかりだから。

 これからリハビリしていけば、動いてくれるはず。

 心の中で言い訳する。

 だが、目の前にいる担当医の表情と、落ち着いてほしいという言葉に、心が怯える。

 泣きたくなる衝動を必死に抑え込むが、現実は、それを許してくれなかった。

 

「貴方の手は、既に完治しています」

 

 嘘だ。

 だって、指が、手が、動かないのに。

 完治なんて。

 え? そんなことって……。

 

「落ち着いてください、イロミさん。深呼吸をしてください」

 

 落ち着け?

 自分は落ち着いている。

 

 だが、視界が揺れる。

 視界が滲んでいるのだ。

 喉が震え始める。

 現実に心が押しつぶされて、心の内臓が、喉を伝って、悲鳴をあげようとしていた。

 未だ治療中の喉を引き裂くような、絶叫を、イロミは―――。

 

「イロミさん、大きく、深呼吸してくださいっ! 呼吸を―――」

 

 喉が、裂けた。

 視界に赤い血が広がっていく。

 

 どれほど、フウコを信じても、心は爆弾を抱えていた。

 

 大切な友達が遠くへ行ってしまったこと。

 大切な友達が自分との関係を否定したこと。

 それらのストレスは、サスケがフウコを恨んでいるという現実、そしてもしかしたら、イタチもフウコを殺そうと思っているのではないかという不安がさらに重くのしかかっていたのだ。

 

 その心を支えていたのが、努力をすれば―――、という希望的な未来だけだった。

 

 その未来が、今、取り除かれた。

 これまで積み上げてきた物が、音を立てずに崩れ落ちていく。

 

 心を破裂させ、悲鳴を出させた。

 

 視界が真っ白になる。

 遠くて人の声。慌てた声が聞こえてくる。

 

 両手が動かない。両手の感覚が、もう、どこかへ行ってしまった。

 

 どれほど努力をしても。

 印をまともに結べない、クナイも握れないような者が。

 忍として、あっていいのだろうか。

 




 色々と悩んだ結果、一度、後日談を書こうと判断しました。次話も、後日談となります。その後に、フウコ視点の話を一、二話ほど投稿し、灰色編は終わりにしようと思います。

 既に、改訂は済んでいるのですが、投稿ペースは基本的に十日としたいと思います。ですが、これまでと違い、原文などはないため、十日ペースを破ってしまうことがこれまで以上に増える危険性があると、今回痛感いたしました。ですので、もし十日以内に投稿されなかった場合、十日目に必ず活動報告にて報告をしたいと思います。

 次話も十日以内に投稿したいと思います。

 誤字脱字、ご指摘などがございましたら、ご容赦なく、お申し付けください。

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