真・恋姫†無双 ご都合主義で萌将伝!   作:AUOジョンソン

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「・・・」「真面目な顔して何書いてるんだ、一刀?」「お、ギル。・・・いや、前にさ、サーヴァントのスキルとか色々教えてもらったろ?」「ああ、ステータスと一緒にな」「それで、ちょっと面白いこと思いついて。ま、こんなのきっと実現しないだろうけどさ」「へえ。見せてもらえるか?」「おう。まぁ草案なんだけどさ」「・・・ゲームの企画書?」


それでは、どうぞ。


第五十八話 色んな姉に

「・・・弟がうるさいのよ」

 

「今度はなんだ、卑弥呼」

 

蓮華たちに別れを告げ、政務室にて政務をしている最中。卑弥呼がぐったりした様子で俺の隣に座り込んだ。

なんだなんだ、本当にぐったりしてるな。

 

「弟がね。・・・年なんだから、相応の落ち着きをって・・・」

 

「まぁ、正論だな。ぐぅの音も出ない正論だ」

 

「・・・その、月が妊娠したじゃない? その話をした後だったから、「姉さんも母親になるんだったら、それなりに年相応の振る舞いをしないとね」って。・・・わらわより年下なのにぃ・・・!」

 

時として正論は人を傷つける、と言うが・・・まぁ、卑弥呼の場合は自業自得と言うかなんというか・・・。

そういえばいつもよりスカート丈が若干長いように感じるし、装飾品も減っている。・・・んー、それでもまだ派手なように見えるが、まぁ下品に見えないだけましだろう。・・・いや、前も下品とは言えないけどさ。

女王なんだし、それなりの威厳と言うのが必要なのだろう。後は魔術礼装でもあるんだろうし。

 

「うぅ、一番キツかったのは、弟の奥さん・・・義理の妹に説教喰らったことね。壱与も弟も見てる前で、懇々と『母親とは』みたいな説教正座で聞かされたわ」

 

だから今日は部屋の隅に転移してきて、さらにこんなぐったりしながら俺のところに来たのか。

 

「・・・あんたのところ来たら来たであんたは新しい女増やしてるしぃ・・・! 厄日だわぁ・・・!」

 

「それ関係ないとは思うが。・・・どこか出かけるか? 気分転換にもなるだろ?」

 

「そうね・・・ここに来るまでは閨で頭おかしくなるまで抱いてもらって今日のこと忘れようとか思ってたけど、あんたの顔見たらなんか毒気抜かれたわ」

 

「そりゃ良かった。じゃあ、早速行こうか。化粧とか大丈夫か?」

 

「問題ないわ。・・・女王の化粧のままで来ちゃったけど、また別の化粧するのも面倒だし」

 

今まで詳しくは説明していなかったが、卑弥呼と壱与の化粧にはバリエーションがある。

女王や王女として政をしたり国の未来を占うときの化粧や、寝るとき、戦うときなどなど。

・・・初めてのとき、「ちょっと時間を頂戴」と言って戦いの化粧をし始めたときはちょっと驚いたが、まぁ兎に角、二人は俺の知ってる女性の中でも化粧にかける時間が長いツートップである。

その話をされたとき、豪華なアイリンさんのことを思い出したのは俺だけじゃないはず。

 

「いいのか、それで・・・」

 

「いいのよ。別にどうしてもって訳じゃないもの。化粧変えなきゃ死ぬって訳じゃないしさ」

 

「それでも、意味があってしてるんだろ?」

 

「まぁね。わらわは『(まつりごと)(いくさ)(いこい)』のときに化粧を変えるんだけど・・・まぁ、ぶっちゃけプラシーボよね。上手くいきますようにって思い込んでるに過ぎないわ」

 

「そういうもんなのか。・・・あれ、じゃあ壱与は壱与で別の意味の化粧を持ってるのか?」

 

「んー・・・ま、それは本人から聞いて頂戴。わらわと一緒にいるんだから、壱与とか他の女の話はしないの。不貞腐れるわよ、わらわ」

 

「自分で言うか。・・・でもまぁ、それもそうか。ごめんな、無神経だった」

 

俺がそう言って卑弥呼の頭を撫でると、嬉しそうに微笑んで、いいのよ、と呟く。

そんな卑弥呼を連れ立って部屋を出る。何処にいこうかな。

 

「あ、ねえねえ、月に会いたいわ」

 

「何でまた急に」

 

「子が出来たって聞いてから、会ってないもの。祝いの言葉をかけないと」

 

それなら・・・ええと、今月は何処で仕事してたっけ。

 

「この時間なら洗濯してるんじゃない?」

 

「ああ、そういえばそうだな。・・・流石経験者」

 

「ちょっと手伝っただけだけどね。それでもま、時間くらいは覚えられるってもんよ」

 

以前少しだけ侍女隊でお手伝いをしていた卑弥呼だから時間も分かったのだろう。

だが、あんなちょっとだけの手伝いで良く仕事内容とか覚えたな。凄まじい記憶力である。

 

「ふふ。これでもわらわ、国を治めてるのよ?」

 

「ああ、そうだったな。たまに忘れそうになるよ」

 

くく、と苦笑しながら卑弥呼の頭をぽんぽんと叩く。

軽くあしらわれたのが気に食わないのか、卑弥呼は子供のようにぷくりと頬を膨らませた。

 

「・・・ふんだ」

 

そのまま俺の手を掴んでずんずん歩き始める。

・・・しばらく口を利いてくれなかったので、それなりに怒っていたらしい。

 

「卑弥呼、ごめんな」

 

「・・・いいわよ。許すっ。わらわの心の広さに感謝なさい」

 

そんな会話を道中しながら、月のもとへと向かった。

 

・・・

 

「・・・見た目では分からないわね」

 

「そりゃ、まだ二ヶ月目らしいからな」

 

四ヶ月から五ヶ月目くらいでわかりやすく大きくなってくるらしいし、長い目で見るしかないだろう。

少なくとも半年くらいはまだ仕事が出来るだろうと判断している。・・・まぁ、また何かあったら臨機応変に対応するとしよう。

 

「ふーん・・・」

 

「へぅ・・・なんだかくすぐったいです」

 

片手は顎に当てながら、もう片方の手でさわさわと月の腹を触る卑弥呼の目は真剣である。

だが、服の中に手を突っ込まれて触られているほうの月はくすぐったくて仕方ないようだ。先ほどから目の端に少しだけ涙を浮かべて肩を震わせている。

ちょっと口の端が上がっているのを見るに、どうやら笑いをこらえているらしい。・・・くすぐりに弱いからなぁ、月は。

 

「こんなかにもう一個人間がいるのねー。・・・神秘だわー」

 

「ふふ。ギルさんとの愛の結晶、です」

 

「・・・壱与の前でその発言はしないほうが良いわね。少なくとも、あいつが同じように妊娠するまでは」

 

「・・・へぅ」

 

今の発言に何かお互い通じるものがあったのか、卑弥呼と月は目を合わせて頷きあった。・・・何を納得したんだ、今。

それはそれとして、そろそろ月の仕事の邪魔になりそうである。今のやり取りの中でももぞもぞと服の中で手を動かしていた卑弥呼に声をかける。

 

「そろそろ行こうか。月の仕事にも差し障るだろうし」

 

「ん。・・・あ、そうそう。言い忘れてたわ。・・・おめでとう。邪馬台国の女王として、月の友人として、同じ男を愛する女として、祝福するわ」

 

「あ・・・はいっ・・・! ありがとうございます、卑弥呼さんっ」

 

「ま、後でうちの方から祝いの品を用意するわ。そのときに改めて詳しい話を聞かせてちょうだいな」

 

なんだか良い空気になったところで、卑弥呼を連れてその場を後にする。

・・・なんだかんだ言って、女王なんだなぁ。

 

・・・

 

「・・・さて、どうしようかしら。完全にやることなくなったわね」

 

東屋にて、椅子に座ったまま足をぷらぷらと振る卑弥呼。

月の腹を撫でて満足したらしく、先ほどまでの暗い雰囲気はなくなっていた。

 

「だな。・・・飯にしてもちょっと中途半端だな」

 

「そうねぇ・・・でもまぁ、たまには悪くないわね。市場の屋台でもはしごしましょうよ。ちょっとずつ食べてけば、良い暇つぶしにもなるでしょう?」

 

「いいな。よし、じゃあ早速出撃だ」

 

「おーっ」

 

元気に手を挙げる卑弥呼と共に、大通りの市場、その中でも一際活気のある屋台通りにやってきた。

この辺りは道の両脇を様々な屋台が埋め尽くしている。

屋台だけではなく、居酒屋のようなところもあるので、夜になっても騒がしい一角でもある。

「夜になるとちょっと寂しい」と言う一刀の意見を取り入れ、この辺りは試験的に営業時間を夜遅くまで食い込ませている。

警備隊も出動させ、『交番』を置くことによって揉め事の早期解決を徹底しているからか、この辺りは深夜まで営業する店が多いのに意外と治安が良い。

 

「・・・饅頭は最後でしょ。そしたら・・・んー、お、焼き鳥じゃない」

 

「ああ。こういう炭で焼いた肉の匂いって満腹でも食欲わくよなー。おじさん、二本頂戴」

 

「あいよ!」

 

料金を支払い、二本串を取る。

一本を卑弥呼に渡すと、短くお礼を言った後、早速食べ始めていた。

 

「んー・・・! いいわねぇ。単純なものほど美味しいわぁ」

 

「なんというか・・・酒が欲しいな」

 

「昼間からはやめておきなさい。どこぞの戦闘狂みたいになるわよ」

 

「・・・雪蓮のことを言ってるんだな。そのくらいは分かるぞ」

 

昼から酒を飲むのが悪いとは言えないが・・・仕事を投げて飲むのはちょっとな。

それさえなければ、酒は百薬の長と言われるほどのものだ。自制して飲む分には全く問題ない。

 

「こうなると、アレだな。ビールとか飲んでみたくなるな。・・・いつごろのドイツに行けば良いんだろうか」

 

「・・・ギル?」

 

「ん、ああ、なんだ?」

 

「・・・なんでもないわ」

 

次の店をロックオンしたらしい卑弥呼は、それ以上の追及を許さない、とでも言うようにとたとたと先を歩く。

 

「お、おい・・・? ・・・なんだあいつ」

 

奇妙な女王である。卑弥呼が良く分からないのはいつものことだが・・・。

 

「ギル、これ見なさいよ! 豚の丸焼きだって! 丸焼きにして美味いもんなのかしら」

 

「・・・まぁ、料理として成立してる以上、普通に人が食えるものなんだろうさ」

 

「それもそうね。・・・あ、鳥の中に野菜とか詰めるのと同じなのねー」

 

じっくり焼かれている豚の丸焼きを前にして色々喋っていると、店主が睨みを聞かせてくる。

・・・おっと、買いもしないのにずっと前を陣取るのは迷惑だな。

 

「・・・ほら、次の店行くぞー」

 

「はいはい。全くもう、仕方ないわね」

 

もう、わがままなんだから、とでも言うような顔で俺に続く卑弥呼。

・・・卑弥呼が「美味しいもんなのかしら」とか言うから立ち去る羽目になったのだが・・・。

 

「なんかこー、この大陸ならではの料理が食べたいわよねぇ」

 

「ならではと言うと・・・中華料理か?」

 

それだったらここじゃなくて別の通りに言ってどこか飯店に入ったほうがいいと思うが・・・。

 

「んー・・・刺身食べたいわ」

 

「中華関係ないな。邪馬台国帰らないとないだろ」

 

「・・・察しなさいよ。海まで二人で行きたいのっ。分かった!?」

 

「・・・ああ!」

 

そういうことか、と手をぽんと打つ。

全く、遠まわしだなぁ。

 

「よっし、じゃあいつものように黄金と宝石の飛行船(ヴィマーナ)を用意するぞ。のりこめー」

 

「カカッと乗ってやるわ!」

 

・・・

 

卑弥呼を膝に乗せて海へ出発。黄金と宝石の飛行船(ヴィマーナ)は俺の思考どおりに海を目指して高速飛行する。

 

「やー、この大陸の川も海みたいに広いけど、やっぱり海自体も良いわよねー」

 

「だなー。何を獲る?」

 

「アキアジ。・・・と言いたいけれど、マグロでいいわ」

 

「・・・お前、本当に邪馬台国の人間か? 蝦夷から来ましたとか言わないよな・・・?」

 

鮭の言い方が完全に北の国からのものである。

 

「どうやって獲るのよ」

 

「え? 俺が何かするときは宝具しかないだろ?」

 

「・・・ん、そうよね。そうだったわね・・・」

 

深いため息を吐く卑弥呼を尻目に、空中から網を広げて投げる。

これは『狙った獲物のみを引き寄せる』という魚網である。まぁ、その周辺に『狙った獲物』がきちんといることが条件だが。

ちなみに、魚じゃなくても引き寄せられる。意外と汎用性が高いのだ。

 

「よっと」

 

「・・・うわぁ。びっちびちね。こんなにいらないわ。九匹で良いわよ」

 

「謙虚だな。・・・キャッチしたらリリース。一匹でいいな。二人分だし」

 

「ええ。・・・? なんで宝物庫にいれんのよ」

 

「中に自動人形がいるからな。調理してくれる」

 

前に『スパイスを入れたらカレールーになる』という話をしたと思うが、アレは自動人形たちが頑張ってくれていたらしい。

時間の流れの違う宝物庫の中で煮込んだり固めたりしてくれていたらしい。

 

「・・・なんでもありか」

 

数秒後、俺らの前には綺麗に盛り付けられた刺身が。

きちんとわさびと醤油までついている。彼女達の仕事っぷりには頭が下がるばかりだ。

 

「・・・んまいわね。とれたてフレッシュって感じ」

 

「酢飯もそのうち作らないとなー。・・・酢と米入れれば炊いてくれるだろうか」

 

「何でもやらせるのは良くないわよ。・・・でもま、そっちのほうが王っぽいか」

 

もぐもぐと刺身を咀嚼しながら、卑弥呼が呟く。

小声で、しかも物を口に含みながらだったので聞き取れなかったが・・・。

 

「・・・夕日が落ちるの見たら、帰りましょ」

 

「それ後何時間待たなきゃ・・・ああ、そういうことか」

 

「ん、そういうこと。・・・激しくしなさいよね」

 

・・・

 

海から帰ってきた。・・・え? 飛びすぎ?

いやだってほら、ねえ?

 

「・・・ああいうさ、その・・・アレのときにわらわがたまにする変な言葉遣い、あるじゃない?」

 

「変な? ・・・『らめぇ』、とか?」

 

急に変な話を降ってきた卑弥呼は、そうそれ、と俺の言葉に答える。

 

「ああいうのってさ、後になって恥ずかしくなるけど・・・最中はすっごい興奮すんのよね。自分で言ってて自分の言葉に興奮するって言うか・・・」

 

「そ、そうか・・・」

 

・・・どう反応しろと? というか、何を言ってんだこいつは。

俺の視線に気付いたのか、卑弥呼が恥ずかしそうに視線を落としながら口を開く。

 

「・・・下ネタを振る気はなかったのよ。まだ興奮してんのかしら、わらわ」

 

「じゃないのか? 風呂にも入ったんだし、落ち着けよ」

 

「ん。取り合えず今日は早めに寝るわ。明日には邪馬台国に一度戻るわね」

 

「おう。そろそろ肌寒いからなー。寝巻きもそろそろ長いのにしないと」

 

「そうねぇ。あ、そういえば寝巻き新調したのよ。えへへ、ギルに一番最初に見せようって思ってたのよっ」

 

こちらを見上げてはにかむ卑弥呼。・・・うぅむ、たまに見せる無邪気さが良いな。

そんなことを思いながら部屋に入り、二人して着替える。

俺の着替えは一瞬なので、終わった後は卑弥呼の着替えを見て待っていると、部屋の外に人の反応が。

・・・なんだろう、すげー早足だ。

 

「・・・卑弥呼、なんか変な反応が近づいてきてる」

 

「は? ・・・んー、わらわにはわかんないけど・・・あんたが言うならそうなのね。ちょっと後ろに逃げてるわ」

 

卑弥呼がそう言って俺の背後に隠れようとした瞬間、扉が吹っ飛ばされたように開く。

 

「ギルッ!」

 

「雪蓮・・・?」

 

血走った目で俺の部屋に入ってきたのは雪蓮。

・・・なにやら様子がおかしいな。正気を失っているような・・・。

 

「はっ、はっ・・・ギル、ぅ・・・!」

 

異常な速度で俺に迫った雪蓮は、呆けている俺に飛び掛ると、そのまま背後の寝台に押し倒した。

ちょ、ちょっと待て! 何で俺は押し倒されてるんだ・・・!

 

「ちょ、戦闘狂!? あんたいきなり何を・・・って、脱ぎ始めてる!?」

 

「あんたも脱ぎなさい、ギルぅ・・・!」

 

「・・・あ、分かった! 雪蓮、戦闘して血を見ると性的に興奮するんだった・・・!」

 

前回それで襲われて、何とか撃退した過去を急に思い出した。

・・・あの時はどうしたんだったかな。

 

「はぁ!? ・・・本を見たら興奮したり戦ったら興奮したり・・・呉には変態しかいないの!?」

 

「それを言うな・・・!」

 

邪馬台国にも一人、三国全てを合わせても敵わないような変態いるだろ・・・!

 

「ああもー、離れなさいよーっ。・・・きーっ、何このバカ力!」

 

「あ、そうだ。前のときは冥琳が近くにいたんだった」

 

「・・・うん、分かったわ。手伝ったげるからぱっぱとしちゃいなさい」

 

急に手の平を返した卑弥呼の所為で、雪蓮を押さえていた手から力が抜ける。

俺がこんな急に弱体化するって事は・・・何かの魔術をかけられたらしい。俺の低すぎる対魔力がこんなところで響くとは・・・!

 

「ふふ、中々大きいじゃない・・・私が上で動いてあげる・・・!」

 

「ちょ、流石に手は離せ・・・卑弥呼、お前何笑って・・・」

 

「んー? いやほら、中々ない体験でしょ? 存分に乗られなさい」

 

「後で覚えてろよ・・・あ、おい、雪蓮、気にせず始めようとするな・・・聞いてるか!?」

 

・・・

 

「あ゙~・・・酷い目にあった。・・・いや、どちらかと言うと役得・・・でもやっぱり酷い目に・・・」

 

この倦怠感。痛くないのに腰が痛むような妙な気分。これはアレだ。紫苑たち三人を相手した次の日に似ている。

一人でこの状態にさせるとは・・・流石雪蓮だ。若さもあるんだろうが・・・。

 

「・・・流石に心は読めないか」

 

口に出すと鋭い一発が飛んで来るが、考えるくらいならノーカンなのだろう。

・・・ああ、ちなみに雪蓮と卑弥呼は『女王殺し』を飲ませてる。アレはしばらく起き上がれないだろう。

え? やることが酷い? 良い思いしたのに? ・・・良い言葉を教えてやろう。『ヨソはヨソ。ウチはウチ』と言う魔法の言葉がある。

しばらく頭痛に苦しんでもらったあと、エリクサーで完全回復させてやるからそれでお相子だ。

 

「さぁて、蓮華に怒られに行くかな!」

 

一周回ってハイテンションである。今なら凄い良い笑顔で蓮華と愛紗と桂花からの説教を聴けるような気がする。

さらにその後麗羽と美羽と華雄の相手をしてもいいくらいだ。・・・いや、ごめん。盛った。全力で盛ってしまった。麗羽は無理だ。

そんなことを一人でつらつら考えていると、蓮華の部屋の前にたどり着いた。

こんこん、とノックをする。朝早いからいないだろうか・・・?

 

「・・・はい?」

 

お、返事が聞こえた。少しテンポが遅いように聞こえるのは寝起きだからだろうか。

 

「すまんな。休んでたか? 俺だ。ギルだよ」

 

「っ、ぎ、ギル? ちょ、ちょっと待って!?」

 

「ん、おう。ゆっくりで構わないからな。時間掛かるだろ?」

 

「あ、ありがと。・・・出来るだけ急ぐわね」

 

ぱたぱた、と急がしそうに動き回る音が聞こえる。

着替えたり髪を整えたりと忙しいのだろう。しばらく本でも読んで待つとしようか。

そう思って宝物庫から椅子と本を取り出す。

座ってぺらり、とページを捲ると同時に、声を掛けられた。

 

「あら? ギルじゃないっ。おはよっ」

 

「お、シャオか。おはよう。早起きだな」

 

「うんっ。昨日早く寝たのよ。・・・お姉ちゃんに何か用なの?」

 

「んー・・・まぁ、そんなところだ」

 

歯切れの悪い俺の返答に訝しげな視線を向けてくるシャオ。

まさか「孫家の長女に手を出しました」という報告をしに来たとは言えない。

 

「あっ、分かった!」

 

「おうっ!?」

 

ち、孫家は勘が鋭い節があるからな。シャオもその例に漏れないか・・・?

俺が戦々恐々と次の言葉を待っていると、頬を膨らませたシャオがびし、と俺を指差す。

 

「お姉ちゃんと朝からする気なのね! シャオも混ぜなさいっ!」

 

「・・・シャオはほんと、良い子だなぁ。妹キャラの見本みたいな子だよ」

 

「・・・むぅ。なんとなくだけど、子供扱いされてるのは分かったわ」

 

シャオを撫でながら微笑むと、さらに不機嫌そうに頬を膨らませる。

しかし良かった。これなら言いくるめることも可能だろう。

そう思って口を開こうとした瞬間・・・。

 

「い、いいわよ、ギルっ」

 

「・・・マジか」

 

「? ・・・お姉ちゃんとお話するのね? シャオも仲間に入れて!」

 

「い、いや、ほら・・・な?」

 

「どうしたの、ギル? ・・・って、シャオ?」

 

中々部屋に入らない俺に痺れを切らしたのか、蓮華が扉から顔を覗かせた。

当然俺とシャオが目に入り、疑問符を頭に浮かべながら首をかしげている。

 

「おはよ、お姉ちゃん」

 

「ええ、おはよう。・・・早起きね」

 

「えへへっ。あ、それよりっ! お姉ちゃん、ギルと一緒にお話するんでしょ!? シャオも仲間に入れてよ!」

 

「はぁ!? ・・・そ、そんなの、だ、駄目よっ。大切な話をするんだから!」

 

「えー!? 何でシャオを仲間はずれにするのよー!」

 

言い争いの声はだんだんとヒートアップしていく。・・・シャオには悪いが、蓮華をこっそりと応援してしまう。

流石に妹二人の前で姉とのことなど話せないしなぁ。

だが、俺の祈りもむなしく、蓮華がため息をついて仕方ないわね、と呟く。

 

「分かったわ。ただし、騒いだりしないこと。いいわね?」

 

「ホントっ!? わーい、お姉ちゃんさっすがー!」

 

「ホントにもう、調子良いんだから」

 

・・・覚悟を決めるか。もう、逃げられない!

 

・・・

 

「・・・はぁ!?」

 

「えぇー・・・!?」

 

妹二人の驚愕の視線を、気まずく思いながら受ける。

まぁ、取り合えず蓮華には話しておくつもりだったので覚悟してなかったわけではないが・・・。

 

「ふぅん。そう。・・・月が妊娠したから足りなくなったの? 確か明命もよね?」

 

「いや、それはない・・・と思うけど」

 

「あっ、でもさ、お姉ちゃん」

 

手をぽんと打って何かをひらめいた顔をするシャオの言葉に、蓮華が呆れ顔をして答える。

 

「何よ?」

 

「これで三人一緒に出来るね! しすたぁずにも桃香たちにも負けないわよ!」

 

「競わなくて良いの!」

 

「・・・なるほど、それは考えてなかったな」

 

「ギルっ!」

 

「おおっと、いやいや、ほら、可能性があるなーって思っただけで・・・」

 

別に実践しようとかは・・・いやでも、蓮華を押し切ればいけるか。

うん、また今度誘ってみよう。

 

「じゃあ、今日はその予習って事で・・・お姉ちゃんとシャオと、しよ?」

 

「・・・いや、ほら、俺にも仕事とか威厳とか・・・好色皇とはまだ呼ばれたくないんだけど・・・」

 

「え? 好色どころかぜつり・・・んもがっ」

 

「そ、それ以上いけないわシャオ。世の中には知らないほうが良い事って絶対にあるの。ね、ギル?」

 

「・・・いや、九割何が言いたいか分かったからいいよ・・・」

 

シャオの口を押さえる蓮華にため息をつく。

・・・まぁいい。そんなこと言われてるのであれば・・・もっと言わせてやる!

 

「ひゃ、ギル・・・?」

 

「ふふっ。ヤる気になったのね!」

 

二人をそれぞれの手で引き寄せ、そのまま寝台へ。朝っぱらからであろうが、やることは変わらないのである。

 

・・・

 

「・・・不味いぞ。何が不味いって全てが不味い」

 

あの後驚異的な回復力で部屋に突撃してきた雪蓮を混ぜて本当に姉妹でしてしまった。

・・・まぁ、そこまではいいんだけど・・・ここ二日くらい、まともに政務をしていない。

朱里たちがいるからそこまで致命的ではないだろうが・・・それでも、愛紗の怒りは想像に難くない。

 

「・・・こんにちわー・・・」

 

今の時間は昼を少し過ぎたくらいだろうか。中に人の気配は無く、しんとしている。

だから小声で挨拶をしながら半ば安心して扉を開けたのだが・・・。

 

「お久しぶりですね。ギル殿?」

 

「おじゃまし」

 

「いえ、歓迎いたしますよ?」

 

しまった! 気配を消して・・・いや、気配を周囲に『溶け込ませて』いたのか! 

これが中国拳法の奥義、『圏境』か・・・!

扉を開くために出していた手を、愛紗にがっちりと掴まれながら思考は一瞬で様々な逃げ道を探る。

しかし、そのどれもが『実行不可能』と言う結論に至る。

くそ、黒月に続く第二の『黒武将』、愛紗のことを失念していたとは・・・目先の欲望に流されすぎたな。

 

「お話したいことはたくさんありますが・・・取り敢えずは仕事をしていただきましょうか」

 

そう言って、愛紗は俺の手を引いて机まで無理矢理引っ張る。

うおお、やっぱり愛紗はサーヴァントを生身で引っ張るような恐ろしい力の持ち主だった・・・ッ!

 

「ご着席ください。・・・ご安心を。今日はそのお仕事が終わるまで、私が付きっ切りで監督いたします」

 

ち、仕方ない・・・こうなったら、また愛紗を恥ずかしがらせて話をうやむやに・・・。

そう思って愛紗に手を伸ばすと、その手を掴まれてすごく良い笑顔を向けられた。

 

「今日は・・・今日だけは、ギル殿のお言葉でも私の心が乱されることはありません。・・・不思議と、心が落ち着いているのです」

 

・・・それは『明鏡止水』というのではなかろうか。

この状態なら、その言葉通りだと頷ける。

 

「・・・ギル殿は星のように『仕事をサボりたい』と思うような不真面目な方ではないでしょう? ・・・いつものギル殿であれば、すぐに終わる量です」

 

「・・・ふぅ。分かったよ、素直にやるって。・・・で、仕事はここに積んであるのだけ?」

 

それなら、まぁ少し頑張れば三時間程度で終わるかな。

座っている俺の視線よりだいぶ高い位置にまで書簡が詰まれているけど、まぁ問題は無いな。

そんなことを考えながら筆を用意していると、愛紗が首を振る。

 

「いいえ。・・・月が妊娠してから、そこかしこで祭りやら特売やら騒ぎになっているのです。その間の陳情やら何やらで・・・少しお待ちください」

 

そう言って愛紗が開けたのは、政務室から直接繋がっている空き部屋だ。

資料室はその反対側にあるのだが、こちらはまぁ、ちょっとした食事をするときや仮眠を取るときに使われている。

簡素な寝台と折りたたみの机と椅子だけの殺風景な部屋・・・だったはずなのだが、今俺の前に見えているのはその部屋が書簡で埋まっている光景だ。

それを手で示しながら、愛紗は一言。

 

「こちらのものも、処理していただきます」

 

「愛紗、俺はまだ人間をやめてないんだぞ?」

 

「? それは・・・ちょっと私には難しすぎて理解できないですが、何かの冗談でしょうか?」

 

本気で首をかしげているらしい愛紗にそうか、と顔を引きつらせつつ返すと、諦めて筆を持つ。

・・・仕方ない。久しぶりに徹夜覚悟かな。

 

「・・・もし他に仕事あるんなら、そっち回ってもいいぞ。多分徹夜になると思うし・・・。あ、心配しなくても逃げないからさ」

 

「いえ。それは分かっていますが・・・実を言うと今日は急な休みで時間を持て余しておりまして。ギル殿と一緒にいられるならば、それはそれで有効な時間の使い方だと思いましたので」

 

だから、お気になさらずに。と締めた愛紗は、自分も筆を用意して手伝ってくれるようだ。

 

「そっか。ありがと。・・・そういえば桃香とか朱里は? 別の仕事?」

 

「はい。桃香様は鈴々と共に近くの邑を視察に。朱里は雛里と共に軍事訓練にいきました」

 

「そっか。じゃあ、久しぶりに二人っきりだな。・・・最初の仕事慣れてないときとか、愛紗にずっとサポートしてもらったよなー」

 

「さぽ・・・?」

 

「ああ、補助って意味。あの頃は随分助けられたよ。今更だけど、感謝してる」

 

「・・・ふふ。今更ですが、受け取らせていただきます。ギル殿に何かを教えられるだなんて、今からすると考えられませんね」

 

「そうか? ・・・まぁ、流石にあの頃よりは成長していると思うが・・・」

 

微笑みながら仕事を始める愛紗に後れを取らぬよう、俺も仕事を開始する。

さて、さくさく行きますか!

 

・・・

 

「・・・終わった、な・・・」

 

「ええ。・・・結構疲れましたね」

 

時刻は深夜。もう相当遅いだろう。一切の物音が外から聞こえない。

人間だけではなく、他の動物達も活動をしない時間帯だからだろうか。

それにしても木々が風に揺れる音すら聞こえないと言うことは、今は無風の状態だろうな。

 

「・・・どうする? 俺は無性に腹が減ったから夜食を食べようかと思うんだが・・・」

 

「あ・・・ええと、ご迷惑でなければ・・・その、ご一緒しても・・・?」

 

「もちろん。愛紗、前からちょくちょく言ってるけど、あんまり遠慮しなくていいからな? 俺が愛紗に迷惑かけることはあっても、愛紗が迷惑だって思ったことは無いから」

 

「は。ええ・・・その、意識はしてるのですが・・・まだ、抜けきっていないのでしょうか」

 

「じゃないかな。・・・そうだ。今日の夜食、愛紗が作ってくれよ。久しぶりにどのくらい上達したのか見たいからさ」

 

「ええっ!? ・・・だ、大丈夫、ですか・・・?」

 

俺の言葉に、『正気かこいつ』と言う目線を向ける愛紗。自分の料理の腕が壊滅的なのは自覚しているらしい。

・・・だけどまぁ、成長してないわけではないので、問題ないだろう。

これで最初のままダークマターを量産するようであれば正直厨房には近づかないように厳命するけど、ダークマターからゲテモノ料理、ゲテモノ料理から失敗料理と着実にランクアップしているので問題なし、だ。

 

「そうと決まれば早速行こうか」

 

「は、はいっ・・・!」

 

愛紗の手を引いて厨房へと向かう。

城内は完全に静まっている。俺達の靴の音以外、何も聞こえない。

 

「静かだなぁ・・・」

 

「そうですね。・・・番をしている兵士の姿は見えますが、距離があるからか足音も話し声も聞こえませんね」

 

愛紗の視線を辿ると、確かに兵士が数人立っているのが見える。

声も歩いている足音も聞こえないが、まぁ寝てる兵士はいないだろう。流石にその辺の規律はしっかりしている。

 

「そういえば厨房に食材はあるのでしょうか?」

 

「まぁ恋とか季衣とかの大食いが襲撃してなきゃ、二人分くらい何か材料あるだろ。なければ宝物庫から出すし」

 

「・・・宝物庫から出てくるような最高級食材を無駄にはしたくないのですが・・・」

 

「無駄じゃないさ。ちゃんと食べるからな」

 

「いつも思うのですが・・・ギル殿は、とても変わっていますね」

 

・・・なんだと? おいおい、俺ほどの常識人はいないだろ。

この世界中を探しても、俺みたいに常識を持っていて空気の読めるナイスな英雄王もいないだろうに。

と言うことを少し長めに説明してみると、愛紗はため息をついた。

 

「・・・ギル殿がそうおっしゃるのなら」

 

「何だその含みのある言い方。『貴方がそう思うならそうなんでしょうね。貴方の中では』みたいな顔してるぞ」

 

「・・・」

 

愛紗が、珍しくジトリとした目を向けてくる。

そして何も言わずに再び前を向いたと言うことは、この話はここで終わりだということだろう。

・・・仕方ないな。ここは俺が引いてやろう。俺は大人だからな! どやぁ。

 

「着きましたね。・・・食材は・・・うぅむ、これだとあんまり・・・」

 

厨房についてすぐ、愛紗は食材を確認する。顎に手を当てて険しい顔をしていると言うことは、食材が思ったより無かったのだろう。

それか、愛紗の作れる料理が、今ある材料では出来ないとか。

 

「ギル殿、先ほどああ言っておいてなんですが・・・食材を提供していただいてよろしいですか?」

 

「ああ、構わんよ。どんなのがいる?」

 

「ええと、では――」

 

「ふむふむ・・・こんなもんか」

 

愛紗に言われた食材を調理台の上に出す。

いつ見ても、食材がキラキラ光っているようにしか見えない。・・・仙人の桃とかそういう人体に急激な影響を与えるようなものは出していないはずなのだが・・・。

それでも、やはり宝物庫の中身だ。いつの間に補充されているのか分からないがいくつ出しても無くならないし・・・。

そのお陰でこうして大盤振る舞いできるのだが。

 

「それでは、腕を振るいますね。ギル殿は座ってお寛ぎください」

 

「ん。楽しみにしてるよ、愛紗」

 

「あ・・・は、はっ! 必ずや、至高にして究極の一品を!」

 

・・・それはちょっと志が高すぎるかなー・・・?

 

・・・

 

「お、お待たせいたしました。・・・どうぞ」

 

「お・・・黒くは無いな」

 

出された皿の上には、まぁ、ぐちゃっとしているけど食べ物であることは最低限分かる物体が乗っていた。

これは味が分かりそうだ。

 

「いただきます。・・・もぐ」

 

「ど、どうでしょうか・・・?」

 

「うん、いいと思うよ。・・・流石においしい、とまでは言えないけどさ」

 

前ほどではないとは言え、もぐがりと言う音は俺の口の中で聞こえるし、妙な苦味やえぐみも感じる。

材料は鶏肉とか魚介とか香辛料とかで、苦味やえぐみを出すような食材は無かったはずだが・・・。

 

「偉そうに言わせて貰うけど、上達してるよ。もうすぐ、他の人にも食べさせられそうなものが作れると思うよ」

 

「ほ、本当ですかっ!?」

 

「嘘なんてつかないって。愛紗も食べてみなよ。こっちの側はわりかし食べれるから」

 

「はい・・・い、いただきます」

 

愛紗も箸を取り、俺の言った場所の鶏肉を掴んで口に運ぶ。

あの辺りは俺の眼で見ても特に異常が感じられなかった場所なので、愛紗も問題なく食べられるだろう。

 

「・・・む。・・・まぁ、その・・・以前よりは、食べられますね」

 

「だろ? 次はもうちょっと手順の簡単な料理とかに挑戦してみたらいいんじゃないかな」

 

「そうしてみます。・・・そうなると、また別の料理を教えてもらわないといけませんね」

 

二人で料理の感想を話しながら食べ続けると、料理は綺麗に無くなった。

並んで皿を洗い終えると、愛紗がお茶をいれてくれた。

 

「どうぞ」

 

「ありがと」

 

俺の前に湯飲みを置いた愛紗は、自分の分も用意して俺の対面に座る。

お茶を飲んで一息ついた後、沈黙がお互いの間に流れる。

・・・雰囲気を察知するに、何か話したいことがあるんだろうが・・・。

まぁ、言い出すまで待つか。

 

「・・・ずず」

 

お茶を飲んで背もたれに背中を預けると、ぎ、と軽い音がする。

・・・この辺の椅子や机も、そろそろ買い替えの時期かな。

 

「あの・・・」

 

「ん?」

 

両手で湯飲みを持ちながら、愛紗は俯き加減に口を開く。

 

「ええと・・・後で直接月には言いますが・・・その、おめでとうございます」

 

「・・・なんで皆俺に言うかな・・・?」

 

「ふふ。すみません。ですが、おめでたいことですので」

 

「はは。・・・でも、その気があるなら愛紗との間にもって考えてるけど」

 

「あっ、は、はひっ! そ、その、是非・・・と言いますか、ええと、その、今から、と言うことでしょうか!?」

 

慌てた様子で背筋を伸ばす愛紗に、苦笑を返す。

 

「いやいや、そんなに焦ってのことじゃないって。子供は授かり物って言うだろ? ゆっくりでいいさ。・・・それに今からしてたら、明日の仕事に確実に差し障るぞ」

 

「・・・そ、それもそうですね。・・・焦りすぎていたみたいです」

 

恥ずかしそうに頬を染め再び俯く愛紗に、出来る限り優しい表情になるように微笑む。

・・・そう思っていてくれるだけで嬉しいな。その想いに答えられるよう、頑張らないとな。

そして俺達は、太陽が後少しで昇る、と言うところで部屋に戻り、二人一緒に寝た。

・・・元々次の日は午後から仕事だったし、一人で寝るのもどうかと思ったから誘っただけだ。

それに、ただ寝るだけだったしな。この季節は少々寒く感じるからな。・・・このおっぱ・・・じゃない。綺麗な体を抱き締めながら眠れると言うのは、かなりの幸せだと言えるだろう。

 

「ふみゅ・・・う・・・」

 

俺の腕の中で眠る愛紗を見ながら、うとうとと眠気がやってくるのが分かる。

・・・こういう風に、寝る前に考え事をするというのは、なんだか今までを思うとフラグのような気が・・・。

そんな考えを塗りつぶすように、睡魔が俺の意識を闇に落としていった。

 

・・・




「へえ。なんかアレだな。格闘ゲームみたいなもんか」「最初にマスターを選んで、次にサーヴァントを選ぶ。マスターはそれぞれ特徴があって、サーヴァントとの組み合わせで色んな戦法が取れる! みたいな」「・・・なんかアレだな。月以外と組むのは想像つかないが・・・多喜と組んでみたり孔雀と組んでみたりすると面白いかもな」「だろ? ・・・いやー、でもこういうの考えてるとテレビゲームとかしたくなってくるなー」

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