※VOICEROIDキャラや独自設定、世界観が含まれるため苦手な方はご注意ください。
――朝だ。
カーテンの隙間から射し込む陽の光に今が朝なのだと寝惚けながらに理解した。とても心地いい。季節がまだ冬なのもあって毛布を二重にしてくるまっている私だが、陽光の暖かさが合わさってとても程好い温もりを提供してくれている。うっすらと開いた
だけどそうも言ってられないのが無情か。何せ今日は木曜日、平日である。特別休学の日なんて都合があるわけもないので、学生の身である私は当然ながらこのままお昼まで二度寝など贅沢な事は出来ない。
「ん……んー」
潜っていた毛布から顔を出し、ベッドの棚にある電波時計を確認する。
07時50分。
私の住む家から学校(因みに高校)までは徒歩で20分程度。始業時間は8時半だがホームルームが十分から始まる。そして私は朝風呂が日課な為普段は6時半とやや早めに起床――――
「ッ! し、しちじごじゅ――うッ!?」
何を呑気に考えているのかと。完全に遅刻だと理解した私は、文字通り飛び起き――た拍子に慌てすぎてベッドから転げ落ちてしまった。ベッドに顎、床に頭ときつい二打を受けてしまう。
痛い。特に床はカーペットこそ敷いてるが下は普通にフローリングと固いので、視界がチカチカ明滅する位には痛い。
だけどお陰で完全に目は覚めた。
「ち、遅刻! は、早く着替え、の前に朝御飯…なんて食べてる時間ないよ! それよりお、お風呂…も入ってる暇なんて……! いや、でも――」
少し訂正、目は覚めたけどちっとも冷静じゃいられない。起きてからやるべき事が次から次へと頭に浮んではそれを却下しては諦めきれずに悩んだり……。
そんなこんなで数秒くらい考え、結局日課のお風呂を泣く泣く諦める事にした私は、ふと最後の日課――と言うか日常化したもの?――を思い出した。
「――そうだお姉ちゃんは!」
唐突だけど、私には双子の姉がいる。とっても優しくてとっても頼りになって、だけどとってもマイペースでとっても変わった姉が一人。
姉はいつも私が部屋に行くまで大抵自室で行き倒れているか、私には理解の及ばない〝何か〟をしている(本人曰く「世界の究明や」との事らしいがさっぱり解らない)。で、そんな感じに時間にルーズなものだから私が身支度を手伝う必要があるのだ。
因みに、私達の両親は父が単身赴任で普段は居なくて、母も朝早くから仕事に出てしまうので身の回りの事はある程度自分達でやる必要があったりする。
姉を起こす為に急いで隣の部屋に駆け込む(こんな時でもノックを挟んでしまう辺り我ながら律儀だと思えた)。
「お姉ちゃん起きてる!? 早くしないと学校に遅れちゃ…う……?」
切羽詰まっているというのに呆けてしまった私は悪くないと思う。部屋の中は相変わらず年頃の女の子の部屋とは思えないようなよく解らない機械やら本やら籠やらが整然としていた。
だけど、そこにいつも死んだように寝ているか、目元に隈を作って謎の作業をしている姉の姿は無かった。
「え、あれ……お姉ちゃん?」
まさか自力で起きて(または最初から起きてて)身支度を整えているのだろうか? そんな考えが過った私だったが、ふと部屋の隅のハンガーラックに掛かっている姉の制服が目に付いた。と言うことはまだ家に居るのだろう。
とするとこれまた落ち着いていられない。部屋に居ないならと私は居間、洗面所……一応トイレと、姉が居そうな場所を探し回った。
――でも、何処にも姉の姿はない。
「ああああもうっ。お姉ちゃん何処に行っちゃったの……!」
一旦姉を探すのを止め、最低限人前に出てもいいように顔を洗い、髪を梳かし、学校指定の制服に袖を通す。朝食は……昨日買ったはいいけど手を着けてなかった菓子パンを取り敢えず鞄に突っ込んだ。お昼はお弁当を作ってる時間など無いので食堂を利用するしかないだろう。
ふと時計を確認してみればもう8時9分。全力で走ってもホームルームには間に合わない時間だった。
「もう、もうっ、お姉ちゃんのばかっ。自力で起きたなら起こしてくれてもいいのにっ――――あれ?」
最後にもう一度家中を探し回ったが結局姉は見付からず。もう諦めて玄関で靴を穿こうとした丁度その時だった。
違和感を覚えた。私達は普段学校の皮靴を左下に、左が私で右が姉という風に並べている。姉もその辺は丁寧でちゃんと揃えてくれていたりする。
で、私の靴の隣を見てみればそこには何もなくて……そう言えばお姉ちゃんの部屋に制服はあったけど通学鞄は見掛けなかったような。
「……も、もしかしてっ」
出来れば想像したくもない状況が頭を過った。
やりかねない。お姉ちゃんならやりかねない……。
最早居ても立っても居られず、慌てて姉の部屋までUターン。制服や
「――ぜぇ…ぜぇ……っ、はぁ…はぁ……!」
運動神経が人並みな私に荷物付きの全力疾走はだいぶ堪えた。学校の門前に着く頃には息も絶え絶えで、ここでへたり込めたらどれだけ楽になれるかと思ってしまう。まあ、時間を見たら既に8時20分とホームルームには間に合わなかったのでそんな悠長な事言ってられないけど。
私と同じ遅刻組を窘める先生に謝り倒しつつ、自分と姉の教室――2年C組を目指す。
(お願いだから外れてて……!)
最悪の想像がどうか想像で終わりますようにと。そう願いつつやがて見えてきた教室の戸を開け――
「す、すみませんっ! 寝坊してしまって遅れまし……た…………」
「……え、えーっと。おはようございます、葵さん」
担任の
「……はい。おはよう、ございます……」
クラス中から集まる視線が痛い。もっと言うと温かみのある視線が辛い。更に言うと小声でも聞こえてくる「大変だな琴葉も」とか「葵ちゃんいつも苦労してますね」とか、同情の呟きが余計に辛い。
そんな何ともいたたまれない空気の中、事の張本人と言うべき〝姉〟は窓際最前列という絶好の日当たりポジションで
「くー…くー…」
「」
「……その、葵さん? 今回はちょっと事情もあったみたいだし、遅刻じゃなくて普通に出席にしておきますね?」
「……ありがとうございます」
先生のあまりもの優しさに涙が出そうだ。
時間的にホームルームは終わっていたようで、「お姉さんをよろしくね?」と言い残して先生は教室を出ていった。廊下には束の間の喧騒が戻ってくる。しかしこの教室だけは変わらず何とも言い難い沈黙が支配していた。
みんなの注意の先には当然ながら我が姉――
私は隣の自分の席に鞄を置きつつ姉の前に立った。
「くー…すー…すー…」
「……。すぅ――――、」
「(あーまずい)皆急いで耳塞いでー」
後ろから金髪が特徴的な友人のそんな呼び掛けが聞こえた気がしたそれよりも。今は取り敢えず――
「今すぐ起きろこの
――
一人称の練習も兼ねてみたけどもどきになってる感が否めない
なるべく公式設定を基本にした描写をしていきたいが難しいな…