幼いころに一回しか会っていなかったら紫の事なんて覚えていないだろうという私の考えでこうなりました。
なのははこれ以降もよく博麗神社に訪れますけども、紫の能力で移動させてもらうだけで、霊夢と紫が一緒に博麗神社に行くことはありませんので。
翌日、異変のさなかではあったが、珍しく快晴の天気であった。
異変のために快晴ということほとんどなく、あったとしても真夏並みに暑かったりしていたくらいだ。
しかし今日は快晴でも暑いということでもなく、気温は二十度後半と丁度いい気温だった。
「藍、留守番お願いね」
「はい。紫様、なのは、行ってらっしゃいませ」
紫となのはは昨日約束した通り、博麗神社へと紫の能力を使って向かうことにした。
なのはには会わせたい人がいると言い、なのはは紫の言葉に従い、一体誰なんだろうと思っていた。この幻想郷で会わせたい人なんて一体誰なんだろうかとなのはは幼いながらも思い、気になっていたのだ。
あっという間に博麗神社へと付くと、そこには昨日紫と話していた博麗御零と、なのはと同い年くらいの巫女服姿の女の子が神社の外廊下に座っていた。
紫が能力を使って現れたのにすぐに気付いた御零は立ち上がり、なのはを立ち上がらせてから女の子と共に紫の方へと歩いて行った。
「昨日言った通り、なのはを連れてきたわよ」
「へぇ……この子が……ん?」
御零はなのはの顔を見た時に、誰かに面影があるように思えた。それが一体誰なのかということは分からないが、初めて会ったというのにもかかわらずなにか懐かしいという気持ちになっていた。
紫はそんな御零の様子に何か気になったけども、とりあえず今はそのことを後にして先に話を進めることにする。なのはと御零の隣に居る女の子を話した後に、御零から何を思ったのか聴こうと思い、今はなのはの自己紹介をするようにとなのはに言うことにした。
「なのは、とりあえず名前を」
「た、高町なのはです」
「高町……ね……私は博麗御零。それで、こちらが博麗霊夢っていうんだ」
「は、博麗霊夢です。よろしくね」
どうやらなのはも巫女服を着た女の子――博麗霊夢も初めて会う人物であったために、お互いに緊張しているような感じだった。そんな二人の様子を見て、紫と御零は少し微笑ましく思えていた。
初めて会ったばかりだということもあって、二人で話した方が話しやすいだろうと思い、紫はなのは達にあることを話しかけることにした。
「それじゃあ、なのはは霊夢と二人っきりで話してきなさい。私たちがいるよりも話しやすいでしょ?」
「確かにその方がいいかもな、霊夢もそれでいいか?」
「わ、分かりました」
「う、うん」
未だに緊張をしている二人ではあったが、なのはと霊夢の二人は紫と御零に言われた通り、紫たちから離れて二人っきりでおはなしをすることになった。
そして、なのは達が紫たちから距離が離れたのを見て、紫は御零に先ほどから聞きたかったことについて問うことにした。
「御零、なのはを見てなにか思ったのかしら? なんか、気になっているように思えたけど」
「……あぁ、なんかあの子。誰かと面影が似ているような気がするんだよな。博麗の歴史書にでも載っていたとかそんな感じなんだが……」
「歴史書……ということは、私にもかかわりがあったかもしれないと?」
「多分先祖がな。だから私も紫に聞いてみたかったのだが、あの高町なのはっていう子、顔を見て何か気にならなかったか?」
「特になかったわ」
「そうか。なら気のせいなのかもしれないな……」
紫にとっては特に気にしてもいなかったが、御零に言われてなのはと何か関係があったのかもしれないと思い、思い出そうとするけども何も出てこなかった。
その辺のことについては後で考えるとして、紫は昨日と同じように現在進行形で起こっている異変について御零と話し合うことにした。
「ところで御零、さすがに進展はないと思うけども、異変について何か分かったかしら?」
「あぁ、そのことなんだが、歴史書を見る限りあまりにも三代目博麗の巫女の能力に似ているように思えた」
「やっぱり、私と思うことは一緒だったようね」
「ということは紫も?」
「えぇ。帰った後に一人で考えたのだけど、天候を操れる能力なんてそんなにいないわ。多分、この異変は三代目博麗の巫女が起こしたのでしょうね。まったく、異変の事に関してもそうだけども、死して尚も面倒な人間だと思わなかったわ」
「本でしか知らないが、紫がそのように言うということは生きているときにかなり大変だったということだろうな……」
と、御零はそこまで言ったが、ふと先ほどの紫の言葉に違和感を覚えた。
先ほど紫は『死して尚』と言っていた。異変を起こしているというのにもかかわらず、『死して尚』と言っていたのだ。その言葉の意味が何を指しているのか、御零には分からないが、生きてはいないということを紫から言われたということだった。
「……紫、一つ聞いていいか?」
「なにかしら?」
「……三代目博麗の巫女は、死後どうなった?」
「……それは歴史書に書いてあるはずよ。地獄へ逝ったって」
「それは本当なのか? 地獄へ逝ったのならば、こんな異変は起こせないはずだ」
「…………」
紫は御零が何を言いたいのかすぐに理解できた。三代目博麗の巫女がこの異変を起こしたのならば、地獄になんているはずない。多分、紫はそのことを知っており、そこに居るのかも知っているのだろう。
これ以上隠しきれないと感じた紫は、正直に三代目博麗の巫女が死後どうなったのかということを一つも隠さず本当の事を言うことにした。
「……三代目博麗の巫女は冥界に居るわ」
「冥界? どうしてあんなことをしたというのに冥界に居るんだ?」
「冥界の奥底にある社に幽霊の状態で封印されているわ。もちろん、そう簡単に解放されるわけがないように厳重に封印はされているはず」
「はず……ということは、まだ確認してないのか?」
「明日あたり確認しようと思っていたのよ。封印は解かれてはいないと思うけども、その封印が緩くなっている可能性があると思ってね」
「ということは、封印を強化すればこの異変は終わるのか?」
「それは分からないわ。三代目博麗の巫女は私に対する復讐心は強いと思うし、たとえ本体がまだ封印されている社の中に居るとしても、自分の霊体の一部をどこかに移動させている可能性があるわ」
「封印を強化したとしても、すでに遅しというわけか……」
異変の原因に近づいたかと思ったが、さほど変わっていなかった。その霊体を見つけなければ、異変が終わらないということであり、手がかりなしで見つけることはあまりにも難しいため、手詰まりなことは変わりがなかった。
「でも、あの社は冥界を管理している西行寺幽々子が確認している。あの幽々子が怠ることなんてしないと思うけども、とにかく明日でも確認しておくわ」
「冥界の方は頼む。私はまた何か情報を集めておくよ」
「はぁ……結局手伝うことになるとは思ってなかったわ」
「……昨日言っていた他人事は本当に私一人で任せるつもりだったのか」
「そうだけど?」
何かおかしかったかしら――というような顔で紫は首を傾げ、それを見た御零はため息を吐いていた。
と、そんな話をしていたらなのはと霊夢が紫たちのところまで戻ってくる姿が見え、丁度一区切りついた感じでもあったために、異変についての話はここで中断することにした。
「どうやら、打ち解けたそうね。なのはも同い年の子がいれば安心できると思ったのでしょうね」
「霊夢もそのようだな。霊夢もあまり同い年の子に会えることは少なかったからな」
笑顔でなのはと霊夢が話し合っている姿をみて、紫と御零はそれぞれ安心するのであった――
地味に今回張った伏線、序章中に回収しますw(このおかげで序章が多少長くなったけども)