魔法少女リリカルなのは東方参異伝   作:アリヤ

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待たせてしまって申し訳ございませんっ!!

投稿する暇がなかなか見つけられず、なんとか投稿できるようになりました……


第二十六話

「それで、なのはさんからいろいろ聴きたいことがあるのだけど……」

 

 アースラに戻ったなのは達は、一旦アースラの中にあった一室に集められていた。

 この場に居るのは、なのは、ユーノ、リンディ、クロノ、そして久遠の五人だけだった。フェイトとアルフは別室で待機させ、ブレシアも牢屋で出られないようにされている。

 そしてリンディが代表して、久遠への質問が始まった――

 

「まずなのはさん、久遠さんのことについて教えて貰えますか?」

「あ、やっぱり最初にくーちゃんのこと聴きます?」

「当然だ。突然見知らない人物が手伝っていたら、気になるからな」

 

 久遠のことを知らない人からすれば、クロノが言ったとおり気になるだろう。

 しかしなのはは久遠のことをどのように説明しようか余り考えていなかったので、少し考えていた。

 

「うーん……なんて説明すればいいかな……」

「なのは、自分のことは自分で説明するよ」

 

 なのはが久遠の説明をどうしようかと悩んでいると、久遠自ら説明するから、なのはに説明する必要はないと伝えた。

 

「え……でも説明できるの? 久遠って単なる妖怪でないし」

「自分で言うのもおかしいですけど、私って特殊だからね。でも、私自身の自己紹介くらいできますよ」

「……まぁ、言いにくそうだったら手伝うから」

「ありがとう」

 

 久遠が自分で自己紹介すると決まると、久遠はユーノ達三人の方向へ顔を向けて自己紹介を始めた。

 

「名前は知っての通り、久遠です。名字とかないから久遠と呼べばいいよ」

「では久遠さん。あなたはどういう存在なのですか?」

「正直説明するのは難しいのだけど、種族的には狐の妖怪で、仕事としては神社で巫女をしています。なのはの使い魔とかそういう存在ではないので」

「妖怪……本当に存在しているとは……」

 

 クロノは妖怪という存在に驚いていた。妖怪という言葉は管理局でもあるが、架空の存在と思っていることが当たり前なので、久遠という存在は管理局に衝撃を与えるほどのことだった。

 一方、ユーノは妖怪という存在に興味を持ち、手書きでメモを取っているくらいに久遠の話を細かく聴いていた。

 リンディも久遠から答えを貰うと、次の質問に入っていった――

 

「妖怪ということは解りましたが、どうして神社の巫女という仕事をしているのかしら」

「妖怪も仕事している――というわけではないけど、巫女の仕事をしているのは神社で祀られている神様に気に入られたからとしか答えようがなくてね。その後も成り行きで巫女なんてしているから」

「神まで存在するのか……」

 

 クロノが思わず口にだしていたが、管理局が管理している世界にも宗教概念は存在するので、神という言葉も知っていたが、実在するとまでは思っていなかった。

 ちなみに、久遠が巫女をしている理由を隣で聴いていたなのはは、成り行きで巫女をしていたということは知らなかった。久遠のことだから特に気にせずに了承した気がして、その光景が簡単に想像できたので、苦笑いをしていた。

 

「久遠さんの質問は次で最後です」

「あれ、もっと質問してくると思ったけど……」

「久遠さんのことよりも、今回の一件でなのはさんに沢山話す必要がありますから、重要性のことを考えてです。後でユーノさんやクロノ執務官が個人的に質問してくるかもしれませんけど」

「まぁ、それでいいなら私は気にしないよ」

「それでは最後の質問です。久遠さんの能力について教えてもらいますか?」

「……なるほど。今後手伝う可能性を考えてのことね」

「まぁ、そういうことですね。もし敵対する場合になったとしても、能力について知っていればある程度対策や作戦内容も変わってきますから」

「敵対前提で話されるのは釈然としないけど、教えない理由はないから教えるよ」

 

 そう言うと、久遠は右腕を前に出すと、突如右手から電気が帯び始めた。

 

「まぁ、これは見せていたから解るけど、私は電気を操れる。そのせいで動物に嫌われるけどね」

「……それ以外はありますか?」

「あるけど、なんて説明すればいいのかな?」

 

 久遠は自身が持つ霊力について、どのように説明すれば解りやすいのか考えていた。

 妖怪や神は別世界でもありそうだと思ったから伝えやすいと思ったが、霊力については地球――しかも日本固有の力に近い存在だから、説明しにくいものだった。

 しかし、悩んでいる様子に見かねたなのはは、ため息を吐きながら、久遠の変わりに説明する事にした。

 

「くーちゃん、御札出して」

「え、解ったけど……」

 

 久遠はなのはに従うように、持っていた御札を巫女服の袖から取り出した。取り出したことを確認したなのはは、なのはの能力で鉄の板を取り出すと、立ち上がって久遠から見て左側の壁に、鉄の板を押さえつけて、魔法で動かないように固定させた。

 

「これに御札を当てて貰えるかな? 言葉で伝えるより、実際に見せた方が早そうだから」

「なるほど。それじゃあいくよ!!」

 

 久遠は御札に霊力を込めると、手裏剣を投げるような要領で的である鉄の板に投げた。御札は直線に進んでいき、鉄の板に衝突すると、鉄の板が御札が衝突した簡単に割れていった。割れたことを確認した後、なのはは割れた鉄の板を回収して、テーブルの上に並べた。

 

「まぁ、簡単に言えば霊力というのは物に力を込めて威力を出したりすることができるの。魔力よりも汎用性に欠けるけど、似たようなものだと思えば……」

「なるほど。他に出来ることはありますか?」

「この場で出来ることは結界くらいかな? 封印も出来るけど、封印対象が居ないから。そうだよね、くーちゃん」

「なのはの言うとおりだね」

 

 なのはの説明に納得したリンディだが、結界というものがどのようなものなのかなのはに質問した。

 

「結界というのと、魔法と似たような物と考えていいのかしら」

「リンディさんの言うとおり、似たような物で大丈夫です。まぁ、霊力を持っていない私の感覚ですけど」

「いや、霊力を持っていないなのはから見た視線だから、解りやすかったくらいだ」

「そう言ってくれると嬉しいよ、クロノ君」

 

 リンディとなのはの話をリンディの横で聴いていたクロノは、なのはの例え方は魔法を使えるクロノたちからして解りやすいと誉めた。それを聴いたなのはは解りやすいと言われて、少し嬉しい表情をしていた。

 とりあえずこれで久遠の説明はある程度説明し終えた。というより、簡潔に伝えて次の話をしないといけなかったという理由もあり、質問してくることは誰も居なかった。

 

「さて、次の話ですけど。なのはさん、時の庭園で起こった出来事を纏めて貰ってよろしいのですか?」

 

 久遠の話が終えると、リンディはなのはに対して、時の庭園で起こったことを話すようになのはに言った。そのときなのはは先にそっちの話をするのかと首を傾げつつも、思わず口に出してリンディに質問した。

 

「……あれ、てっきり独断行動したことについて怒られると思ったのだけど」

「それは後で怒ります」

「やっぱり怒られるの……」

 

 後で怒られると解っていながら、説明しなければならないことは、なのはとしても気分的に良くなるわけがない。とはいえ、自業自得であるから仕方がないことなので、なのはは切り替えて時の庭園であった出来事を話し始めた――

 

「まず、時の庭園に侵入した際、プレシアが傀儡兵で妨害してきたの」

「まぁ、その辺は当たり前か」

 

 クロノはプレシアからしてみれば当然の反応だと思いつつも、なのはから続きの話を待った。

 

「その後、私はフェイトちゃんとアルフさんに遭遇して、私はフェイトちゃんと二人でお話したい事があったから、くーちゃんを呼んで、アルフさんを任せた」

「勝ち目がないから――ではなく、二人でお話したいからって……」

 

 クロノは思わずため息を吐いた。なのはの言い方からして、フェイトとアルフを二人同時に戦っても、勝てると言っているようなものだった。しかし、今は戦力について話しているわけではないので、クロノはこれ以上の事は何も言わず、話を脱線させずになのはの話を待った。

 なのはもクロノが言った内容には触れずに、話を続け始めた。

 

「それから私は、フェイトちゃんにお話している間に、プレシアが様子を見ていると思って、プレシアをおびき寄せた」

「おびき寄せたというのは、どういうことかしら?」

 

 リンディはどのようにプレシアをおびき寄せたのか気になり、なのはに問いかけた。

 

「プレシアが私とフェイトちゃんに通信してくるのを待っていたの。案の定、引っ掛かってくれて、そらから私は自分の能力でプレシアの居場所を特定させた」

「要するに、なのはの能力は空間を歪ませるようなものだから、その歪みがプレシアの画面から見えるまで、手当たり次第調べたということ?」

「ユーノ君が言ったことで間違ってないよ。特定出来なかったらどうしようか迷ったけどね」

 

 簡単になのはは言っているが、プレシアの居場所を特定させる方法が時の庭園で一番苦労したことだ。プレシアに気づかれないように侵入したかったが、通信時間は短いという問題があった。しかもプレシアと普通に会話していながら調べていたから、正直特定できたことは運が良かったと言えた。

 そんな無謀なことをしていたというのは、リンディやクロノもなのはの説明をしただけで理解できたので、思わず苦笑いをしていた。

 

「その後はプレシアの所へ移動して、プレシアと戦っていたのだけど、途中でこれを見つけてね……」

 

 なのはは能力で、一旦隠していた物をこの場に出した。それは、プレシアと戦っている際に、プレシアの目的で絶対に必要なものだった物であり、それを見たリンディとクロノ、そしてユーノは思わず驚いた。

 

「なっ、これは!?」

「既に解っていると思いますけど、これはクローンとして生み出されたフェイトちゃんの母体――アリシア・テスタロッサです」

「ど、どうしてなのはさんが?」

 

 リンディの質問はなのは以外のこの場に居た誰もが気になったことだ。プレシアの事情聴取はしていないから、プレシアが何をしようとしていたのか管理局側はそこまで詳しく知らなかった。しかし、なのはが時の庭園から持ち出したものだと考えれば、プレシアが何をしようとしていたのか、なんとなく想像できた。

 

「プレシアを捕まえた場所に、アリシアが入っていたこの容器がありました。プレシアの目的を失敗させるために、私は目的たった根本的な物を能力で奪った」

「それで、プレシアは素直に逮捕されたのかしら」

 

 リンディの問いに、なのはは首を横に振って否定した。

 

「それは違います。あの吸血鬼が現れるまで、私を殺そうとしていましたし……」

「……あの吸血鬼か」

「……うん、あの吸血鬼」

 

 なのはと吸血鬼の彼女がキスをしていふところを見てしまったクロノは、その時の光景を思い出して、顔を真っ赤にしてなのはから視線をずらした。久遠も真っ赤というほどではないが、顔を少し赤くして、キスされた本人であるなのはも余計なことを思い出してしまったと思ってしまい、恥ずかしく感じた。

 

「……何があったのか知らない方が私は良さそうね」

「リンディさんそれでお願いします。ユーノ君もお願い」

「う、うん。解った」

 

 リンディとユーノは苦笑するしかなかったが、とりあえずクロノと久遠のことは気にせずに話を続けた。

 

「プレシアが素直に逮捕されるようになった理由は、多分あの吸血鬼が原因だと思うの。私に聞こえないように、あの吸血鬼はプレシアに何かを伝え、それからプレシアは驚いたあと、周りを気にせずに何かを考えていた。そのあとは、クロノ君が逮捕したときの光景にそのまま繋がるから……」

「確かに、それでしたらあの吸血鬼がプレシアに何かを吹き込んだのかもしれませんね。その辺はプレシアの事情聴取の際に聴いてみましょうか?」

「多分、答えてくれないと思いますけどね。あの吸血鬼がプレシアのみに話したあたりからして」

「無駄だと思っても、一応聴いてみます。それに、相手の心を読める存在が居なければ、全て知ることなんて不可能ですよ」

「心が読める存在……」

 

 その言葉を聴いたなのはは、思わず紫が嫌っていた妖怪を思い出した。覚妖怪と言われ、幻想郷に居る妖怪らしいが、地底という地上である紫たちと不可侵条約を結んでいる場所であるため、会うことは不可能だった。

 なのはの能力で手当たり次第調べれば見つけられるかもしれないが、手当たり次第調べる方法はプレシアを見つける際に懲りたので、覚妖怪を探す事はないだろうとなのはは思った。

 

「とにかく、ある程度のことは解りましたので、このあたりで終わらせましょうか」

「解りました。くーちゃん行くよ」

「…………」

「……くーちゃん?」

「はっ、え、もう終わったの?」

「くーちゃんが吸血鬼のことを思い出してぼけーっとしている間にね」

「あ、そうなんだ……」

 

 吸血鬼の話をされてから話が全く入ってきていなかった久遠だが、なのはに言われるまで話が終わったことに気づいていなかった。

 その後、席から立ち上がったなのはを見て、久遠は慌てて席から立ち上がった。そんな久遠になのはは苦笑していたが、それからリンディに一言告げて部屋を後にしようとした。

 

「それではリンディさんにユーノ君、私たちは先に失礼します。多分フェイトちゃんの所に居ると思いますので」

「解りました」

 

 なのはがクロノの名前を言わなかったかと言えば、先ほどの久遠と同様に吸血鬼の彼女についての行動を思い出して話を聴いてなさそうだったからだ。案の定クロノから突っ込みがなかったので、なのはは気にしないことにして、そのまま部屋を後にした――

 


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