魔法少女リリカルなのは東方参異伝   作:アリヤ

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第二十話

「あいつ、また私たちの邪魔をっ!?」

 

 なのはの姿を見たアルフは、今すぐにでもなのはを攻撃したいところだったが、今はそれどころの問題に対処している場合でなく、早くフェイトを救わなければジュエルシードによって出来た竜巻に巻き込まれてしまうと考えていた。

 現在、フェイトはジュエルシードを一つ封印しようと努力しているため、移動すれば確実に竜巻に巻き込まれてしまう。しかし、背後からフェイトに迫っている竜巻も対処しなければ危ない事に変わりがなく、どうすればよいものかとアルフは考えていた。

 たがアルフの不安は一瞬にして無くなった。何故なら先ほどなのはを見かけたところから、桃色の光が輝きはじめ、そしてそれは砲撃としてフェイトに迫っている竜巻を吹き飛ばしたからだ。

 なのはが新たな魔法を会得してからというもの、もはやなのはの真骨頂と言える、ディバインバスターだった――

 

「よし、とりあえずこれでフェイトちゃんは大丈夫と」

 

 なのははそのままジュエルシードが封印されたか確認を行い、回収してからフェイトへ近づいた。フェイトはなのはが背後に迫ってきていたジュエルシードを封印してくれたおかげで、集中して封印しようとしていたジュエルシードを封印することができ、回収した後になのはの方へ振り向いた。

 

「フェイトちゃん!! 一緒に手伝うよ!!」

「いきなり何言ってるのっ!?」

「だって、このまま一人でジュエルシードを回収しようとしていたら、フェイトちゃんは絶対にジュエルシードを封印出来ず、ジュエルシードが暴走したままの状態が続いていたよ!! 報酬はジュエルシードの半分頂くけどね」

「おい、何約束しているんだ」

 

 なのはとフェイトの会話に割り込んでくるかのように、クロノは突然現れた。その隣にはユーノの姿もあり、ユーノは相変わらずのなのはに思わず苦笑していた。

 

「いやだって、こうでも言わない協力してくれないでしょ。ほら、自分勝手に行動するよりは協力しようって言うじゃない」

「しかしだな……」

「それと、ジュエルシードの数は幾ら持っていようと、結局は全部を賭けて戦う事になるって、さっき言ったでしょ? 多く回収したところで意味ないのは前に話して解ったでしょ?」

「だがそれは確証が……」

「ならここで聴けばいいじゃない!! ってなわけでフェイトちゃんとアルフさん、一つだけ確認したいことが――」

 

 今は完全にジュエルシードを全て回収していないというのに、なのはの自由奔放なやり方は何だろうかとクロノは手のひらを頭に近づけ、ユーノは今も尚苦笑し続けていた。

 一方、フェイトとアルフはなのはの会話からして何を聴いてくるのか容易に想像出来たので、なのはか質問してくる前に、なのはの言葉を遮って答えた――

 

「ジュエルシードは、全て集めないといけない。だから、最終的に全てのジュエルシードを賭けて勝負しなければならない」

「そういうことよ。しかしなるほどねぇ、確かにお互いがジュエルシードを全て必要としているのであれば、今は幾つ集めても意味がないっていうわけか。たが、その言葉を鵜呑みにするという理由も解らないけどね」

「やはりそうですか……」

「でも、今はジュエルシードを封印するのに協力しようじゃないか。このまま二人でやっていたら、確実に封印出来ずに終わってしまうところだったのでね。フェイトもそれでいいよね?」

「うん、助けてくれなければ、私はやられていただろうから……」

 

 ジュエルシードの件はとりあえず保留となったが、とにかく今は全てのジュエルシードを封印させることを最優先だと、みんなの意志を固めた。

 

「それじゃあ!! さくっと封印しよう!!」

 

 なのはの言葉がきっかけなのかは解らないが、その言葉を最後に、ジュエルシードを封印しようとみんながそれぞれ散って行くのだった――

 

「ユーノ君!! 今私が向かっている方向にある竜巻の動きを止めて貰えるかな!! 一発ぶっ放すから!!」

「了解!!」

「アルフも私が向かっている方向にある竜巻をお願い」

「あいよ!!」

 

 残りのジュエルシードは四つ――なのはとフェイトはそれぞれユーノとアルフのチェーンバインドでジュエルシードの動きを止めるように指示し、狙いを固定させるようにしてもらうことにした。

 そしてなのはとフェイトの二人はそれぞれが得意とする攻撃で、固定させたジュエルシードへ砲撃を放った――

 

「ディバイン――バスターっ!!!!」

「サンダー――スマッシャーっ!!!!」

 

 二つの砲撃はそれぞれジュエルシードがある竜巻へ放たれ、竜巻を吹き飛ばすかのように竜巻が一瞬にして消し飛んだ。そして残ったジュエルシードは近くにいたユーノとアルフがそれぞれ回収し、残り二つのジュエルシードを封印しようと四人は移動した。

 その二つの内一つはクロノが一人で対処していて、既に封印をして後は回収するだけになっていた。そのため、残るジュエルシードは一つとなっていた。なのはとフェイトは残り一つのジュエルシードがある方向へ向かっていたが、なのはは途中でその場に立ち止まり、砲撃を放つ構えをしていた。

 

「レイジングハート、続けてだけど問題ないよね!!」

〈はい、まだ放たれるだけの魔力はあります〉

「了解!! さっさと封印するよ!!」

 

 なのはは先ほどと同じように魔力を一点に集中させ、ディバインバスターをもう一度放つ準備を始めた。

 

「バルディッシュ、準備はいい?」

〈問題ありません〉

 

 一方のフェイトも先ほどと同じように、魔力を一点に集中させ、サンダースマッシャーを放つ準備をしていた。

 そして、なのはとフェイトはほぼ同時に、それぞれの砲撃魔法を放ったっ――!!

 

「ディバインバスター――っ!!!!」

「サンダースマッシャー――っ!!!!」

 

 二つの砲撃はジュエルシードがある中心へ放たれ、ほぼ同時に直下した。その攻撃はジュエルシード一つを封印するのにあまりにも無駄遣いのような威力な気がするし、確実に封印すると考えても威力が強すぎるような気がする。

 とはいえ、威力過多であろうと、ジュエルシードを封印することが最優先ではあるので、問題があったという事でもないからきにする必要はないが。

 とにかく言うまででもないが、なのはとフェイトの砲撃で、最後のジュエルシードを封印する事に成功していて、先ほどまで荒れていた竜巻はこれで全て消滅していた。

 

「よし、これで問題はとりあえず解決したでいいのかな?」

「……っ!!」

「って、フェイトちゃん!?」

「っ、しまったっ!?」

 

 全てのジュエルシードを封印し終えたことになのはやクロノは安堵していたが、フェイトがまだ回収していない、残り一つのジュエルシードを回収しようと急行していた。安堵していたことによって出遅れてしまったなのはとクロノだが、なのははとりあえずフェイトの後を追いかけるような形でジュエルシードがある方向へ進んでいった。

 本当であれば能力を使って回収したいところだが、正直能力に関するものがデータに残るような行為はなるべく避けたかった。管理局は戦闘履歴を残すために、毎回データとして撮っていることを、なのはは管理局と協力してから知ることになったので、なるべく能力を使うことを避けたかった。既に一回だけデータに残ってしまっているが、管理局本部に伝えないと言っているので大丈夫だろうとなのはは考えていた。

 とにかく、今は他の手段でどうにかしてフェイトに追いつかないといけないとなのはは思っていた。結局、ジュエルシードは回収した数だけ自分の物になるような形になっているが、なのははこの時何も疑問に思っていなかった。

 そしてフェイトがそろそろ回収できる範囲に近づく少し前で、なのははフェイトに向けてスフィア弾を投げ、フェイトに攻撃しようとした――そのときだった。

 刹那、ジュエルシードを目掛けて黒ずんだ紫電が上空から直撃し、突然のことでなのはやフェイト――そしてその場にいたユーノ、クロノ、アルフが思わず驚いてしまった。

 

「なっ、何!? 突然雷なんてっ!?」

「……母さん」

「っ!?」

 

 フェイトが呟いた内容が聞こえてしまったなのはは、即座に上空を見上げてしまい、そして同時に嫌な想像ができてしまった。

 

「なっ!? ジュエルシードが無くなっているだとっ!!」

 

 クロノはジュエルシードがあった場所を見て、先ほどの雷によって何者かに回収されてしまったことに驚いていたが、正直今のなのはにとってジュエルシードよりも、フェイトが呟いた内容の方が重要だった。

 なのはは嫌な予想ができてしまうが、その予想は全てが辻褄あってしまった。その予想であれば、フェイトは絶対に命令を聴くだろうし、もしなのはだとしても命令に従ってしまうだろう。何故ならば、命令している人物が母親だとすれば――

 そう考えると、この前のフェイトに傷があった原因も、フェイトの母親だと理解してしまう。その場合だとあまりにもフェイトが可哀想で、どうしてフェイトの母親は娘にこのようなことをさせるのだろうかとなのはは思ってしまった。

 しかし、そんななのはの考えは次に起こることによって、一瞬で考えるのを止めてしまった。何故ならば先ほどの黒ずんだ紫電が、今度はフェイトに目掛けて落雷してきたのだから――

 

「がっ!?」

「っ、フェイトちゃん!!」

 

 なのはがフェイトを助けようと動くが、既にフェイトの姿は無くなっていた。その様子を見ていたアルフはすぐさまその場から居なくなり、気づいたらなのは、ユーノ、クロノの三人となっていた。

 結果的に、ジュエルシードの回収は半分ずつというような形になっていたがジュエルシードの数なんて今は気にしてられなかった。

 

「艦長、とりあえずこれから帰還を……」

 

 クロノはフェイトにも逃げられた形になってしまったので、とりあえず報告するためにアースラへ連絡しようとした。しかし、何故か連絡が繋がらなかったのだ。クロノは嫌な予感が一瞬によぎってしまい、思わず叫び続けた。

 

「艦長っ!! 返事してください!!」

「クロノ? どうかしたの」

「さっきからアースラに連絡しようとしているのだが、繋がらないんだ」

 

 クロノが慌てている様子を見ていたユーノが質問したが、クロノから返ってきた内容に、なのはとユーノは驚いた。突然繋がらなくなったことからして、多分先ほど落雷してきたものが、アースラでも攻撃されたのだろうとなのはたちは想像がついた。

 そしてそれがきっかけで、なのは完全にぶち切れた。まだフェイトの母親だと断言したわけではないが、自分の目的の為には子供であろうと利用する人間がなのはは許せなかったのだ。なのははユーノやクロノが知らない魔法陣を展開させ、突然なのはの周りに散らばった魔力が、集束されていった――

 

「なのは、一体何をしようとしているの」

「なにって簡単よ、ユーノ君。さっきの犯人をぶち殺しにいくだけ」

「……もしやその魔法はまさかっ!?」

「その通り、クロノ君が思っている通りよ」

 

 クロノは自分が知らない魔法陣を見て、ある魔法を思い出した。ユーノは前になのはから聴かされたので知っているが、本来であれば二種類の魔法を両方使いこなせないわけで、その二種類の魔法を使いこなせるなのはを初めて見たら、魔法を知っている者であれば誰だって驚くだろう。

 

「……よし、逆探知できたわね」

「……なのはが使った魔法ってまさか――」

「多分、ユーノ君が想像している通りよ。魔力の残骸を調べて、魔法の使用者の居場所を探る初歩的な魔法よ」

「って、なのは口調が――」

「……なるほどね。さて、行きましょうか」

 

 ユーノがなのはの口調が変わっていることに気づいたが、クロノの時よりは冷静に判断をしていた。

 当の被害者であったクロノだが、なのはの言葉からして、なのはがこれから何をしようとしているのか、何故か想像することが出来てしまった。

 

「おい、まさか一人で行くつもりなのかっ!?」

「もちろんそのつもりよ。まぁ、座標データはクロノのデバイスに送ったから、アースラが復旧したら来なさい」

「ちょっと勝手に決め――」

 

 クロノが最後まで言う前に、なのはは自身の能力で姿を消してしまった。

 

「……言うこと聴かずに言ってしまったか」

「でも、座標データは送られているのだよね」

「……どうやらそのようだな。とにかく、アースラと通信が回復したら、一度アースラに帰還し、対策を練ってからなのはの後を追おう」

 

 残されたユーノとクロノは、なのはがクロノに送った座標データを確認し、アースラからの連絡がくるまで待機する事になった。

 それから数分後、アースラと通信が回復し、ユーノとクロノは一度アースラに帰還し、なのはから貰った座標データを伝えたのだった――

 




なのはとフェイトの勝負?

ちゃんとやりますので心配しないでください。場所が変わるだけです。

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