彼女が登場するのは多分序章のみかと、名前くらいで本編に関わってくるかもしれないかな?
なのはが幻想郷に来てから数日後、八雲紫は自分の式神――八雲藍になのはを任せることにして、紫の能力でどこかへと向かい、その場から姿を消した。
理由は現在の博麗の巫女に異変となのはの事についての話をしておくために、博麗神社へと向かうことにしたためだ。なのはについて話すことにしたのは、今回の異変に巻き込まれてしまった外の人間がいることを伝えておくためで、その対応についても話し合っておこうと考えたからだ。
そして紫は鳥居の門を潜ったほんの少し歩いた先で、突然と姿を現した。紫からの視線では博麗の巫女の姿が見えなかったため、紫は博麗の巫女の名前を呼ぶことにする。
「
「ん? この声は紫か?」
紫の声が聞こえたのか、突然と紫の前に巫女服をきた女性の姿が現れる。
「いきなりどうした? 異変の原因を見つけたらお前の家に伝えに行くと言ってあったはずだが?」
「まぁ、いつもならばあっという間に異変を終わらせる御零が異変を早く終わらせないせいで問題が起こったのよ」
「悪かったな。それで、その問題とは?」
御零は基本的に異変解決を数時間で終わらせてしまうほどであり、おかげで幻想郷の住民から感謝をされることが多いのだが、今回の異変については一ヶ月も続いていており、異変の張本人が現在も幻想郷をそこらじゅう探し回ったとしても、見当たらないがために時間がかかっていた。
天変異変――夏だというのに季節外れの雪が降ったり、一週間大雨が降り続けたりという異変が現在起きている。当初天界の宝――緋想の剣を天人が使ったのではないかと疑いもしたが、緋想の剣を使われた形跡はなく、振り出しに戻ったような状態だった。
ちなみに現在は夏だというのに冬並みの気温の寒さになっており、体感気温としては寒く感じるほどの気温となっている。
「外の人間が、幻想郷に来てしまったわ」
「は? 今は外の世界と行き来できないではなかったか?」
「確かにそのはずよ。外の世界に行こうとしてもどうしてか私の能力が使えない。考えられる点としたら……」
「幻想郷から外の世界へは行き来できないが、外の世界から幻想郷へ来ることは可能ということか。これまた厄介だな」
もしなのは以外に外の世界から幻想郷へと入ってきたとしたら大変な事となる。外の世界では行方不明事件としてニュースになるし、幻想郷としても異変解決するまでは元の世界へと帰せず、人が増えていく一方となってしまう。何としてでも阻止したいが、阻止するには異変を解決するしか方法がなかった。
「一応、現在は私の家で居候させる形で何とかしているけど、これ以上増えたら私の家でも不可能よ」
「だろうな。博麗神社に居候させるわけにもならんし、何より霊夢がいる。個人的に異変を終わらせて霊夢に次代の博麗の巫女に継がせるために教えることに専念した――」
「……御零? どうかしたの?」
突然と言葉が止まり、そこ都に気になった紫はすぐに聞き返す。この時御零はあることを思い出し、すぐさま紫にあることを聞くことにする。
「……紫。一つ聞くが、三代目巫女の能力ってなんだったか?」
「え? そんなの歴代の博麗の巫女が記されている本にでも記されているはずなんでしょ? どうして私なんかに聞いてくるのかしら?」
「良いから教えろ。三代目博麗の巫女に会ったことがある紫なら、どんな能力だったか正確に覚えているはずだろう?」
「……天候を操る程度の能力っ!?」
紫はその能力を思い出し、なんという失念をしていたのだろうかとすぐに気付かされた。
三代目博麗の巫女――歴代博麗の巫女の中でも最悪の巫女と言われ、そして彼女の最後は自ら異変を起こし、その結果八雲紫によって殺された。
しかし、三代目博麗の巫女がこの異変を起こしているのはありえない話だ。とっくに彼女は亡くなっているし異変を起こさせるようなことはできないはずだからだ。だけど三代目博麗の巫女が異変の犯人であるのならば、異変を起こした人物が見つからないのも何となく察しがついていた。
だからこそ紫は、三代目博麗の巫女が亡くなっているのにもかかわらず、そのように思う理由を聞きたかった。
「しかし御零、三代目博麗の巫女はとっくに亡くなっているのよ?」
「まだ確証がないが、彼女が異変を起こす理由は私よりも紫がわかっているのだろう? それに天候を操る能力なんて、幻想郷でも数多く居ないだろ?」
「確かにそうだけど……」
紫はもし三代目博麗の巫女が異変を起こした割に行動に移している気配がないことには違和感を覚えた。
異変の犯人が三代目博麗の巫女であるとしたら、何も行動を起こしていないことに関してはあまりにもおかしいことになる。異変を起こすからには必ず理由というものが付いてくるだろうが、にもかかわず天変地異……しかも天候を変えることにしかしていないことに気になるところだった。
もしかしたらもう何か行動を起こしているのかもしれないが、三代目博麗の巫女の目的が絶対に紫に関わることであることだ。過去の出来事からして、三代目博麗の巫女が紫に関わらない異変を起こすことはないと紫は知っていた。紫としても、三代目博麗の巫女の存在自体を消し去りたいほどであった。それほどなことを彼女は生前の時にして、紫自らが殺すことになったのだから――
「とにかく、これで一つ可能性が出てきたというわけだ。まさか博麗の巫女が異変を起こしているという考えが出てくるとは、さすがの私でもさっきまで出てこなかったがな」
「頭の中に入れておく必要はあるかもしれないわね。正直言えば、あの子が異変を起こしているとは思いたくないのだけど」
「紫にとっては、忘れたい記憶でもあるわけか。まぁ、博麗の巫女としても忘れたい歴史でもあるのだが」
実際、三代目博麗の巫女は紫としては忘れたい記憶であり、博麗の巫女としては忘れたい歴史ではあった。それは、お互いに三代目博麗の巫女という言葉すら使いたくないほどにだ。
今まで三代目博麗の巫女の本名をお互いに言わないのもその理由であり、名前を言うよりかは三代目博麗の巫女という言い方の方がまだましという理由で、お互いにその呼び名で言っていた。
「そうね。とにかく一日でも早く異変を解決することを祈っておくわ」
「他人事みたいだな」
「貴方と共に異変解決するとあまり私の意味がないのだもの。さて、藍にあの子の事を任せているのもどうかと思うしそろそろ戻らないと……あ」
「ん? どうしたんだ?」
自分の能力で家に帰ろうとした紫ではあったが、突如何かを思いつき、御零の方へと顔を戻した。
言葉からして帰ろうとしていたと御零は思っていたが、紫が突然振り返ってまだ自分に話があるような感じをさせていたため、どうしたのかと咄嗟に言っていた。
「言い忘れていたのだけど、私そろそろ冬眠に入るのよ」
「……なんか、ものすごく嫌な予感がするのだが」
「それほど嫌な事でもないと思うわよ。単に冬眠する間だけ外の世界から来た子――高町なのはっていうのだけど、その子を昼間だけ博麗神社に預かって欲しいと思ってね」
「なんで昼間……あぁ、霊夢がいるからか」
紫が急に昼間だけなのはを預かって欲しいと言った理由について一瞬わからなかったが、すぐに理解した。
昼間だけ預からせる理由は御零の中ではあまりなく、紫の式神に任せればいいものだと思ってはいたけども、外の世界から来た子の年齢が霊夢と同じくらいの年齢だと仮定すれば納得がいくことができた。
わざわざ任せる理由として、同年代の霊夢が居るからという理由からかもしれないと、御零はすぐに思い至ったのだ。
「そうよ。霊夢とほぼ同じくらいの同年代の子でもあるし、しかも女の子がいたらなのはも落ち着くかなと思ってね。それに、居候させるわけじゃないのだから、別にいいでしょ?」
「それなら問題ない。居候させてとか言ったら断っていたがな」
「明日連れてくるつもりだから、もちろん御零にも居てもらうわよ」
「それくらい分かってるわ。というか、それ冬眠に関係なく昼間だけ博麗神社に預けようとしていただろ」
「さて、なんのことかしら」
と、最後にその言葉を残して、紫は今度こそ自分の能力を使って家へと帰って行った。
紫の姿がなくなった後、御零は一度ため息を吐く。
「さて、異変の情報収集する前に、とりあえず霊夢の様子でも一度見ておくか」
御零は異変解決のために出かけようと考えるが、その前に霊夢の様子を確認しようと一度霊夢のところへと向かうのだった――
次回、なのはと霊夢の初対面。それだけで内容が短ければ、なのはに能力が目覚めます。