魔法少女リリカルなのは東方参異伝   作:アリヤ

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遅くなってしまいまして、本当にすみません!!


第十七話

 なのはが紫と遭遇して別れた後、なのははユーノに紫との関係を話した。しかし、幻想郷については詳しい事を話さず、幻想郷のことをどこかにある別世界と説明した。幻想郷について知られることは良くないと判断し、幼い頃になのははその世界に跳ばされたことを話した。そこで、自分に能力があることを知り、能力的に紫と似ていた事からして、紫の弟子になったことを話した。

 とりあえずユーノはそれで納得したが、なのはがいう別世界について詳しく話されなかったことからして、話してはいけない事があるのだろうと思ったが、何かしらの理由があると思い、問いただそうとはしなかった。なのはの能力がどのようなものであるかは、ある程度把握する事ができたし、ジュエルシードを回収するにあたって重要ではないことから問わなかった。

 ……否、それよりもなのはの使用する魔法や能力を総合的に見た恐ろしさの方が強かったからという理由の方が正しいのかもしれない。元々なのはから能力について説明してくれる以前に、二つの魔法を使用できることからして異常で、魔力総量に関しても他の魔導師に比べてかなり多い。もう一つの魔法についてユーノは詳しい訳ではないし、そちらの魔力は仮想的に魔力を増やすようなもので、元々魔力がある魔導師がその魔法を使えば死んでしまうため、実際になのはで調べなければどのような魔法まで使えるか把握する事ができない。普通に考えれば、元々魔力があることして大規模な魔法を使えそうだが、前になのはから魔法環境について聴いてみたところ、教える人が居なくてかなり悪いらしく、調べたところで確証を得られる結果は出せないだろうとユーノは思っていた。それこそ、もう一つの魔法で詳しそうな人間、例えばパチュリー・ノーレッジなどが管理局に居ない限りは――

 

「なかなか見つからないね……」

「そうだね。でも、こうやって地道に探さないと見つけられないし……」

 

 あれから数日後、なのははいつも通りフェレット状態のユーノと共にジュエルシードを探していた。

 いつものように学校帰りにユーノを連れてジュエルシードを探してしたが、やはり反応する前に見つけることが難しかった。前のフェイトみたいに強制発動させて見つけるような行為は、なのはとユーノの性格からしてやりたくない方法で、最悪でもジュエルシードを自然に発動させる方法で回収したいと考えていた。

 

「そういえば、能力使って探そうとしないのね」

「移動するときに誰かに見られていたら大変だからね。魔法使う時だってなるべく結界内の時に、使うよう気にしているし」

「……認識阻害のような魔法使って能力を使う方法はあるような気がするけど」

「確かに出来ない訳ではないけど、あんまり能力を多用することは避けたいから。ユーノ君が言う管理局が来たときに説明とか面倒だし、隠し通したいから」

「なんだ、しっかり考えていたわけか…… いつものうっかりで忘れていると思ってた」

「ユーノ君、それはどういう事かな」

「い、痛い痛い!! 謝るから、摘ままないで!!」

 

 自分がどこか抜けていると認めたくないなのはにとって、ユーノに言われた言葉は流石に怒り、フェレット状態のユーノの体に力を強く入れて摘まみ、宙に浮かせた。

 とはいえ、ユーノのどこか抜けているという点は間違えではないだろう。ユーノも忘れているが、なのはとユーノは極普通のように会話をしていて、念話で話すことをすっかり忘れているのだから。幸いにも近くに人が居たわけではなかったが……

 

「っ!? この反応は!?」

《ジュエルシード!! 急いで……あっ》

 

 そんな会話をしていると、ジュエルシードが発動した反応に気づき、ユーノはなのはに急ぐように伝えようとしたが、無意識に念話で話したことによって、今まで普通に会話していたことに気づいた。これでは自分もどこか抜けていたことになり、なのはに言ったところで説得力が無かった。

 

《ユーノ君? どうかした……あっ》

《やっぱり気づいたよね…… まぁ、今はジュエルシードを最優先にしないといけないから急ごうか》

 

 なのはも自分が念話でユーノと会話してようやく気づいたようで、今まで気づかなかったのだろうかと思い、ユーノに言われたことに反論できなかったと、気づいてしまった。今回はユーノも忘れていたことなので、ユーノも強く言える立場では無かったが。

 とにかく今は、ユーノに言われたとおりジュエルシードを回収することが最優先なため、ジュエルシードの反応があった方向へと急行した。

 こういう時に認識阻害などの魔法を使って能力を使えば良いと思うが、そのことに気づいていないなのははやはりどこか抜けているだろう。多用することを避けたいだけで、このくらいの移動は問題ないとなのはは思っているはずなのに、能力を使うことをすっかり忘れていた――

 それからなのはとユーノが向かった先は、コンテナを一時的に保管するところで、その近くにある木がジュエルシードによって化け物と変化していた。

 

「ユーノ君、結界はっ!?」

「今すぐ展開する!!」

 

 その直後、木の化け物がなのはとユーノに向かって触手が突き進むように攻撃してきた。

 なのはの反射神経からして避けられる攻撃で、横に飛び跳ねるような形で避けた。そしてなのはが地面に着地するとほぼ同時に、ユーノは結界を展開して、魔導師以外からの認識できないようにした。

 

「なのは!! これで大丈夫!!」

「うん!! レイジングハート、お願い!!」

 

 結界が展開できたことをユーノはなのはに伝え、それを聴いたなのははすぐさまレイジングハートに起動させ、バリアジャケットを羽織った姿へと変身し、杖のように変化したレイジングハートを構えた。

 そして、なのはが砲撃の準備をしようとしたところ、突如何者かの魔法が化け物に攻撃を仕掛けた。しかしその攻撃は化け物が持つバリアによって、防がれてしまう。

 しかしなのははそれよりも、攻撃してきた人物の方へと顔を向けた。先ほどの魔法はなのはでも見覚えがあり、誰によるものか確認すると、なのはが予想通りしていた人物――フェイトがそこには居た。

 

「なのはっ!! どうやらあの魔物、バリアを使えるらしいっ!!」

「……どうやらそのようだね。さて、どうやって封印しようかな?」

 

 ユーノから声によって、なのははすぐに意識を目の前の木の化け物に向けた。

 正直なところ、なのはには目の前にいる木の化け物を封印する方法は幾らでもあった。その中でも一番手っ取り早い方法は、前回なのはが後先考えずに使用した、結界内に閉じ込めて自分の攻撃で自爆を狙う方法だ。前回のように対象が壊れにくい訳でもないし、封印まではいかないとしても結界を解けばすぐにジュエルシードを封印するまでにはいけるだろう。

 しかし、その手段はなのはにとって好まなかった。前回は焦っていて使用したようなもので、なるべくユーノやフェイトが使う魔法以外の方法で戦うことは避けたかった。特に自分の能力のことを知られることは、幻想郷に危険が及ぶかもしれないことから、能力については尚更使用を控えたかった。

 

「……ユーノ君、確かユーノ君達が使う魔法は何か物に対して魔力を付与する事は可能だよね?」

「確かに言ってみたけど、なかなか上手くいくことは難しい……まさかなのは?」

「そこはぶっつけ本番ということで!!」

「一体なにを――ってなのは、その左手に持ってる小太刀はどこから……」

「あ、これ。そういえばユーノに見せるのは初めてだっけ? 詳しい事は後でいい?」

 

 ジュエルシードを集める時はいつも持ち歩いていたから、ユーノに説明しているものだとなのは思っていた。知らないのであれば説明する必要があるが、現在説明している時間が惜しいので、後回しでいいかユーノに確認した。

 

「確かにそうだね。後で説明をお願い」

「了解!! さて、負担掛けるかもしれないけどいくよっ!!」

 

 刹那、なのはが居た場所になのはの姿はなく、木の化け物を守っていたバリアの前になのはの姿があった。その姿をユーノが見かけた直後、なのはが居る所からバリアが崩壊し始めた。突然の事に何が起こったのか解らないでいたユーノだったが、よく見るとなのはが持っていた小太刀を突き刺していて、それを見たことでようやく把握する事ができた。なのはは先ほどの小太刀に自分の魔力を込め、更にバリア貫通能力を付与させたのだろう。ぶっつけ本番となのはは言っていたけど、いとも簡単に成功させてしまうなのはを見て、才能の持ち主だとユーノは思ってしまった。

 しかし、バリアが破壊したことによるチャンスを逃さない人物がここには一人いた。なのはがバリアを壊すまで攻撃し続けていたフェイトだ。フェイトはなのはがバリアを破壊したことを確認すると、直ぐに砲撃準備に入り、そしてすぐさま放った。

 

「サンダー……スマッシャー――――っ!!!!」

 

 フェイトが放った一撃は木の化け物を封印するほどの威力があったようで、木の化け物を消し飛ばすほどだった。

 そしてその場にジュエルシードが現れ、なのはとフェイトはそれを挟む形で並んだ。

 

「さて、ここからはジュエルシードの取り合いだけど……」

「? 私に何か付いてる?」

「……この前まで無かった筈だけど、体のあらゆるところにある傷は何?」

「っ!?」

 

 フェイトはまさか体中にある傷に他人から気づかれるとは思いもしなかった。この傷は午前中に付いたものだが、既にある程度は回復して遠目から見えないほどの傷になっていた。しかしなのははその傷に気づき、気になって思わずフェイトに聴いてしまった。思わぬ質問にフェイトはどのように答えていいのか、解らなかった。正直に答えられるような内容でもないし、体中に傷があることに気づいていることからして転んだなどのような、嘘でなのはを誤魔化せるとは思えなかった。

 

「それに、どうしてジュエルシードを集めているの? どう考えても、フェイトちゃんが自分の意志で集めているとは――」

「そこまでだっ!!」

「…………」

 

 突如現れた人物によって、なのはの話を妨害された。せっかく大事な話をしている最中に妨害されたものだから、あまり怒ることが少ないなのはでも、突然現れた第三者に怒りを覚えた。

 

「時空管理局執務官、クロノ・ハラオウンだ!! ジュエルシードの件について同行を――」

 

 第三者――クロノ・ハラオウンの声はそこで途切れた。その代わり、何らかの衝撃による音が響き渡り、コンテナに何らかがぶつかる音が聞こえてきた。その何らかは先ほど割り込んできたクロノに関わっていて、ようするに何者がによって蹴飛ばされてコンテナにぶつかったわけだ。その蹴飛ばした人物――なのははそのクロノに体を向けて笑みを浮かべていた。

 

「うふふ、突然話に割り込んできましたら、面白いことを言いますわね」

 

 誰が見てもなのはの口調が変わっていることに気づいた。丁寧な口調で、笑みを浮かべつつ話すなのはをみて、多少でも性格や口調を知っている人から見れば違和感しかなかった。

 その中でもユーノは、なのはの口調に聞き覚えがあった。しかもつい最近、正確に言えば数日前で、ユーノがその間に会った人間といえばかなり絞られた。なのはの家族や友達や友達の家族でもなく、ここにいる人間でもない。数日前、初めて会った人物――いや妖怪は一人しかいない。

 八雲紫――なのはの口調は紫の口調とほぼ一緒なのだ。紫と違って胡散臭さはないが、なのはから放たれる雰囲気は怒っているようにしか見えなかった。

 

「い、いきなり何をする!!」

「何をする……ですって。それはこちらの台詞ですわ。折角大事な話をしているところに、あなたが割り込んできたのはどちらですか? そのせいで、逃げられてしまいましたわよ」

「何っ!?」

 

 なのはに言われてクロノは周囲を見渡した。なのはの言うとおり、フェイトの姿はなく、なのはとユーノ、そしてジュエルシードがあるだけだった。なぜジュエルシードをフェイトが回収して逃げなかったかというと、単純になのはから放たれる怒りの雰囲気で一時的に状況判断が遅れてしまい、管理局が来たことをとりあえず把握でき、逃げることを専念してジュエルシードのことまで頭が回っていなかったからだ。

 

「さて、どのようにいたぶりましょうか」

『それは止めて貰えるかしら。これでも執務官ですので』

 

 なのはがクロノをどうしようかと考えていると、突如なのは近くの空間に画面のような物が現れ、緑髪をした女性が画面に映っていた。

 何時もならここで興味を持って目が輝かしくなるなのはだが、今はそんなことすらどうでもよく感じていた。それほどまでに邪魔されたことに苛立っていた。

 余談だが、緑髪をした女性に『これでも執務官』と言われたクロノは密かに心のダメージを受けていたという。

 

「……それはあなた次第によって考えるわ」

『ありがとうございます。私は時空管理局艦長、リンディ・ハラオウンです。私達はロストロギア、ジュエルシードを回収するために来まして、ジュエルシードを集めているあなた方に同行をお願いしました』

「……まぁ、そういうことでしたら、文句はありません。そこの執務官を除いて」

『ではクロノ、ジュエルシードを回収して二人をアースラに』

「……分かりました」

 

 クロノは落ち込みつつも、ジュエルシードを回収してなのはとユーノを連れてリンディがある次元航行艦――アースラへと帰還するのだった――


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