魔法少女リリカルなのは東方参異伝   作:アリヤ

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第十話

「こっちこっち、ここから行くと塾へと近道なんだ」

「へぇ、そうなんだ」

「…………」

 

 学校が終わり、アリサとすずかと共に塾へと向かっていたなのはは、アリサに言われた近道を使って公園から塾へと行こうとしていた。

 しかし、今ここに居る場所になのはは見覚えがあった。今日の夢で見ていた場所と全く一緒で、その夢というのが、誰だかわからない少年が魔物に襲われるという光景だった。その少年は何とか魔物を封印しようとするが、魔物に逃げられてしまい、そのままその場に倒れた。

 夢にしてはかなり細かい内容ではあったが、幻想郷ではないこの場所ではそんなことが起こるとは考えられないと思い、なのはは夢の事だろうと決めつけた。このあと、自分が巻き込まれていくことを知らずに――

 なのは達はアリサを先導にして公園の大通りから離れていく。その道の横が木々で覆われ、途中から横にあった柵もなくなり、何事も起こらないように祈りながらもなのははアリサの後を歩いていた。

 

《……たすけてっ》

「っ!?」

 

 聞き覚えのある声がなのはの脳内を直接響き渡り、すぐさま周りを見渡した。

 幻想郷みたいに能力がある人間がこの世界に居るとは思っていないが、テレパシーみたいに脳内に直接伝えるなんていう事をされ、さらに幻想郷を知っている人ならば何者かの能力と考えてしまうだろう。現になのははそのように考えていた。

 気のせいだという考えも浮かぶけども、なのははそのように考えなかった。夢でも同じ声を聞いている時点で、夢で見たこの場所で聞こえた事からして、偶然とは思えなかった。そう思ったなのはは次に脳内に直接声が聞こえた時に、どちらから聞こえてきたかという事を確認するために目を瞑った。

 

「……なのは? どうしたの?」

「ちょっと待ってて。確認したいことがあるの」

「確認したいこと? 一体どんな――」

 

 二人には聞こえていないため、なのはが確認したいことについて何か分からず、なのはにそのことについて聞こうとした。

 しかし途中ですずかが言っていた言葉を、なのはは聞いていなかった。なぜなら、先ほどと同じように助けを求めている少年の声が、またしても脳内に直接伝えてきたから――

 

《たすけてっ!!》

「っ!?」

「ちょ、ちょっとまってよなのは!!」

 

 聞こえてきた方向が解ったなのはは、すぐさま先にある道を走り出した。あまりにもなのはの行動に理解できていないアリサとすずかは何が起こっているのかすら理解できておらず、とにかくなのはの後を追うように走った。

 そしてある程度走ると、道の真ん中付近でフェレットのような動物が怪我をして倒れている姿をなのはは見つけた。なのははそのフェレットの近くにより、しゃがんでフェレットを手の上に乗せ、その時に後から追ってきていたアリサとすずかがなのはに追いつき、なのはが持っていた怪我をしているフェレットを見て二人は驚いた。

 

「ふぇ、フェレット? かなり怪我をしているじゃない!!」

「と、とにかく病院――動物病院に連れて行こう!! どこか近くに動物病院があるのかわかる?」

「分からない!! とにかく家に連絡して聞いてみる!!」

 

 アリサとすずかは怪我をしているフェレットを見て慌て始めるが、なのはは冷静に別の事を考えていた。

 直接脳内に伝えかける様に聞こえてきた方向へ走った先に怪我をしていたフェレットを見かけ、何かが気になっていた。フェレットが怪我をして倒れているなんていうのも、偶然にしてはおかしいし、しかもここは夢で見た場所と全く同じところだった。

 そのことから考えるに、なのははこのフェレットがただ怪我をしたのではないと推測した。夢の一件と関わっているような気がするため、念のため警戒をしておく必要があると思った。

 それからなのははフェレットを持ちながら立ち上がり、アリサとすずかの方に顔を向けると、丁度アリサが誰かと連絡を終えたところのようで、なのはとすずかの二人の方へと向けていた。

 

「ちかくに、動物病院があるらしいから、そこでフェレットの怪我を診てもらいましょ」

 

 別の事を考えていたなのはは、アリサが動物病院のために連絡をしていたことを知らず、誰かに連絡していた理由が動物病院の場所が近くにあるのかという事を聞くためだと、なのはは理解した。

 それからなのは達は、塾へと向かう前に、動物病院がある方へ先に向かう事となった――

 

 

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「それでね、フェレットを飼いたいのだけど……」

 

 動物病院でフェレットを預け、塾で怪我をしていたフェレットをどうするかなのは達三人で考えた結果、なのはの家で飼うこととなった。

 正直厄介ごとは控えたいと思っていたのだけど、もしここでなのはが飼わず、アリサとすずかに何か巻き込まれてしまう事を考えると、自分が厄介ごとに巻き込まれた方がまだ良いと思い、さらにアリサとすずかの家はすでに別の動物を飼っていることもあり、フェレットのことについてはなのはの家で飼うと簡単に決まった。

 しかし、家族に相談せずにフェレットを飼うことはさすがになのはでもできないため、夕食である今の時間にフェレットを飼っていいのかという事を家族で話し合おうと思ったのだ。

 

「フェレットか……フェレットってなんだ?」

「さ、最近人気の動物だよ」

「なるほど……まぁ、飼う事については別に賛成なんだが、なのはが面倒を見れるというのなら別にいいぞ」

「本当にいいの!?」

「あぁ。もちろん、剣術の事も怠ることはせずにな」

「うん!! ありがとうお父さん!!」

 

 意外と簡単にフェレットを飼う事を了承してくれたことに、なのはは安心することができた。ここで駄目だと言われたら、アリサかすずかの家で飼うことになる可能性もあり得たため、なのはは一息つけることができた。

 それに、なのはは剣術を怠ることをするつもりはなかった。これから先、幻想郷へ行くことも何度かあるだろうし、幻想郷で妖怪に襲われた時に何もできないままでは意味がない。そのため、こちらでもできる剣術を怠ろうとする気なんて、なのはには元からなかった。

 それからは家族と共に他愛無い話をしてから、夕食を食べ終わり、なのはは自分の部屋へと戻っていった。

 

「……さて、とりあえずフェレットを私の家で飼うことになったことをアリサちゃんとすずかちゃんに伝えなきゃ」

 

 自分の携帯を取り出てベッドの上に座ると、アリサとすずかにメールでフェレットをなのはの家で飼うことになったという事を伝えた。数分して二人から返信がきて、「よかったね」などの安心する文面が返ってきた。

 それからなのはは形態を充電器の台に置き、両手を頭の上に伸ばした。それから後ろに倒れ、フェレットの事について考え始めた。

 

「何事もなければいいけど、なんかそうなりそうじゃないんだよな……」

 

 夢の一件もフェレットが倒れていたことも、ただの偶然で関係ないことだという事をなのはは多少ながらも祈った。しかしその祈りは届かず、まるでその言葉を聞いていたかのように、なのはの脳内に直接響き渡った――

 

《……たすけてっ!!》

「っ!?」

 

 ベッドから起き上がり、すぐに立ち上がった。何か胸騒ぎがしていたが、とにかくフェレットがどうなっているのか気になったなのはは、自分の部屋になぜかある靴を取り出して、自分の能力で先ほどの動物病院へと飛ぶのだった――


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