魔法でも、撃ちたいじゃん!   作:扶桑畝傍

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オネスト
「なぁ、確認したい事が幾つかあるんだ。」

???
「なにを?」

オネスト
「ヴァゥヴァイネン帝国の現状だ。」

???
「わかった、言う。」



ヴァゥヴァイネン帝国の遺構

 

 

かの救助出来た女性一人から聞いた情報は

“ヴァゥヴァイネン帝国の遺構”と言う

事実に少なからず動揺が広がっていた。

 

(酷い、か、

 そんな言葉で言い表せるモノか?コレは)

 

そんな事を思いながら

“黒雷”で街道だった物を進む

 

オネスト

「探索一班、

 みんな“死んでいる”」

 

《こちら探索ニ班、

 団長、どの探索班からも同じ報告だ》

 

コンクォ

《こちら探索拠点、

 オネスト、どう?》

 

オネスト

「駄目だ、誰一人として生きていない。」

 

コンクォ

《そぅ、なんだ、

 生産施設とかは?》

 

オネスト

「丁度目の前だ、探索に入る。」

 

コンクォ

《気よ付けてね?》

 

オネスト

「あぁ、わかってる。」

 

 

屋根は焼け落ち、

上から覗けば見える程に崩れていた

 

(人間に作用するカースドベイトに

 関する資料でもと思ったが、

 特にそれらしい物が無い)

 

ズームを使い、

極力機体から降りない様に探索を続ける

“空気感染”なのか“接触感染”なのか

“目で見られただけで感染”するのか

感染する糸口が掴めていなかった

 

オネスト

「こちら探索一班、

 生産施設に生存者無し、

 このまま都市中心部へ向かう。」

 

コンクォ

《探索拠点了解、気よ付けて》

 

 

幾度も施設を覗き込み

 

互いに刺し合い抱きしめて死んでいる者

 

自ら飛び降り変形した者

 

凄惨な死体しか見つけられなかった

 

オネスト

「ヴァゥヴァイネン帝国は、

 “死んだのか”」

 

僅かに音が聞こえる

 

(動力音?生存者か敵か・・・)

 

黒雷の制動リミッターを解除し、

何時でも全開に出来るようにする

 

オネスト

「誰か、生存者がいるのかっ!!」

 

外部音声で叫ぶ

 

コンコン

 

(いる)

 

オネスト

「動くなよ、そちらに機体をさらけ出す、

 撃つなよ?」

 

ゆっくり黒雷を建物の脇に進めた

 

「みた、こと、ない、機体、だね。」

 

あぁ、魔獣にも襲われていたのか

 

オネスト

「ファゼンディラ公国軍の者だ、

 貴殿は?」

 

「ファゼンディラ?

 半島国家が、なぜ?」

 

オネスト

「ズメェイ砦で戦闘があったが、

 そこの生存者の女性から、

 ヴァゥヴァイネン帝国の現状を聞いて、

 “救援と探索”に来たんだ。」

 

「・・・そうかぁ、

 家のおバカが迷惑カケタねぇ。」

 

オネスト

「メサフニタ・ゼルエラ、

 その親族か?」

 

「あぁ、私の息子だ、

 だが、うまく育てられなくてね、

 我儘に育ってしまったよ。」

 

話している間にも

機体を操作し、

コクピット部分の歪んだ基部を剥がして行く

 

オネスト

「これで、外れそうです。」

 

「すまないねぇ、

 魔獣にてこずってこのざまだ。」

 

ギシギシ軋みながらハッチを開け、

半壊したコクピットから人影が出て来る

 

アンジェラ・ゼルエラ

「アンジェラ・ゼルエラ、

 家の貴族は、

 苗字が後ろだよ。」

 

オネスト

「っ、オネスト・ディシュリオン、

 ファゼンディラは、

 基本、苗字が後ろだ、

 そこは、平民、貴族の隔たりは無い。」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・あぁ、ヴァゥヴァイネン帝国は

 滅んだんだねぇ。」

 

ふわっと広がる長い髪の女性は

“若い”

 

オネスト

「確認します、

 人間に作用する

 カースドベイトをご存知でしょうか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「あぁ、アレかぁ、

 “私が原型を造ったんだよ”」

 

オネスト

「・・・どのような理由で?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「ヴァゥヴァイネン帝国を恨んでいたからさぁ。」

 

オネスト

「マギアハジャルの絡みでしょうか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「そうさねぇ、

 理由の一つでもあるねぇ。」

 

オネスト

「どの様に感染するのでしょうか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「“接触”・“空気”・“傷口”

 “接種”かねぇ、

 その反面、効果時間が3~4日程度、

 もう、感染者が居ない限り、

 絶滅している筈さぁ。」

 

オネスト

「目を見ても感染するのでしょう?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「そうそう、それもあったねぇ、

 って事は国境まで

 一気に広がっちまったのかい?

 そいつはぁ悪かったよ、

 だが安心しな?

 ヴァゥヴァイネン帝国の

 環境に合ってても3~4日で死に絶える、

 ファゼンディラの四季には

 適応出来ないさ。」

 

オネスト

「貴女も“転生者”でしたか。」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「おや、アンタもかい?」

 

オネスト

「ですが、

 ここで見逃す訳にも行かないので、

 捕らえられて貰えますか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「いや、

 もぅ、無理さね、

 アンタには、

 “私が幾つに見えるんだい?”」

 

先ほどの若い女性は何処へ行ったのだろう

姿をそのままに“年老いた老婆”が

機体の手に横たわって居た

 

オネスト

「・・・満足の行く

 二回目の人生でしたか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・まぁ、それなりに。」

 

オネスト

「もう一度確認します、

 人間に作用するカースドベイトは、

 もう“死滅”したんですね?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・私の命をもって証明しよう、

 私が“女王感染者”なのさ

 だから、

 これ以上、広がる事ないよ、

 アンタが見ていても、

 その症状が出ないだろう?

 それが証拠さ。」

 

オネスト

「・・・せめて埋葬する場所を

 決めて欲しいのですが?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・“帰りたいね、元居た世界に”」

 

オネスト

「・・・墓石を、日本式にしますか?」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・キリスト様式で。」

 

オネスト

「・・・汝に神からの祝福と、

 救済が施される様に、

 祈りを捧げましょう。」

 

アンジェラ・ゼルエラ

「・・・アリガトウ、日本人の子よ。」

 

 

ヴァゥヴァイネン帝国

 

生存者なし

 

カースドベイトによる国家規模の感染により

ヴァゥヴァイネン帝国は

その歴史に終止符をここに打った。

 

 


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