魔法でも、撃ちたいじゃん!   作:扶桑畝傍

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ソイレ・トレル
「ぅ~・・・。」

レパルド・フォーゲル
「うゅ~・・・。」

アポストロ
「シャサール、
 まだ水上に出れないのかい?
 流石に参っちまうよ。」

シャサール
「後2時間で浮上出来る海域になります、
 我慢して下さい、
 “黒狼騎士団”でも、
 この潜水艦を嫌う者もおりますが、
 それに耐え、任務を遂行しているのです。」




手紙

 

フレデュリック・グランツ

「・・・確かに、シャサールを怒るのは、

 お門違いだったな。」

 

 

 親友へ

 

 間違いなく、この手紙が読まれている頃には、

 

 私は死んでいる事でしょう。

 

 この計画を思いついた、

 

 いえ、決心したのは、

 

 ほんの3日前ですから。

 

 我々のアルヴの民の里、シャルルアに赴き、

 

 “ファゼンディラ公国で使用されている”

 

 通信に関する情報と交換に、

 

 “現存する400個の

  エーテルリアクタの崩壊スクリプト”を、

 

 教えて貰ったのです、

 

 そして、

 

 私は、起爆用エーテルリアクタを受領し、

 

 トクソリン峠に戻って来たのです、

 

 そして、黒狼騎士団と協力し、

 

 “ナイトスミス”

 

 “ナイトランナー”

 

 “アルヴの民からの勇士達”で、

 

 約200個のエーテルリアクタに、

 

 “起爆用エーテルリアクタ連動スクリプトを構成”

 

 グランツ達が離れ、“箱舟”に乗る直前、

 

 起爆、ファナティクア諸共

 

 トクソリン峠を消し去るつもりでした。

 

 トラヴァエル陛下は焦って、源素供給器を大量に発注、

 

 エーテルリアクタを“数”で数えるようになっていました。

 

 止められなかった、

 

 南のメリダァエス国が、

 

 “ナーゲルタイラントの群れに喰い尽くされた”

 

 その一報が入り、メリダァエス国が、

 

 “ジャロウデク王国から強奪したティラントー”を、

 

 回収、その後直ぐに、

 

 “新生クシェペルカの反撃が飛び込んで来たのです”

 

 ますます、トラヴァエル陛下を止められず、

 

 ファナティクアの“ストランドタイプの量産成功”の、

 

 拍車が掛かり、

 

 この様な事態になってしまった。

 

 っと、箇条書きですね、これでは。

 

 もっと沢山あった筈なのに、

 

 いざ書くとなると、

 

 何も浮かばなくなります。

 

 でも、

 

 グランツ、貴方から一緒に行こうと言われても、

 

 ここに残り、

 

 陛下への忠誠を果たします、

 

 陛下へは、“暗殺を目論む用に情報を流して下さい”と、

 

 事前に言ってあります、

 

 大司教様は、“殺されたのです”

 

 その事実を“陛下”から直接聞きました、

 

 でも、変ですよね?

 

 なんで、陛下は大司教様が、

 

 ナーゲルタイラントの群れに襲われる前に、

 

 “殺されたのを知っていたのか”

 

 それは、ファナティクアが関わっていただろうと、

 

 陛下の推測でした、

 

 陛下自身も、

 

 奥方と、ご子息を、

 

 “ファナティクア・バガーチェ”の家に、

 

 匿わせていましたので、

 

 “表向きは”要人保護、

 

 “裏では”陛下を使って、

 

 戦争を商売にしていたのです、

 

 私個人では、この様な断片しか、

 

 調べられませんでした、

 

 もし、

 

 ファナティクア・バガーチェを殺せなかったら、

 

 グランツ、貴方に託します、

 

 陛下を、陛下の家族を、助けて下さい、

 

 国民に苦しい生活を強いている自責の念で、

 

 壊れてしまう前に。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 追伸、いえ、

 

 これは、叶わない願いです、

 

 兄さん、どうして、

 

 黙っていたんですか?

 

 父親が違うだけで、

 

 どうして大司教様の孤児院に居たのですか?

 

 お母様は、教えてくれないまま、

 

 病によって息を引き取りました、

 

 どうして?

 

 兄さん、俺も、

 

 “一緒に進みたかった”

 

 ・・・でも、

 

 理由は何となくわかっています、

 

 お母様は、貴族の娘であり、

 

 その婿が俺の父、

 

 その父の友人、それが、兄さんの父、

 

 3人は、学生の時から、

 

 仲が良かったと、陛下から聞きました、

 

 陛下は、お母様達の後輩でした。

 

 ある日を境に、3人が行方不明になり、

 

 突然の退学届けと、

 

 父の友人の死が、学校に告げられたそうです。

 

 兄さん、

 

 最後まで呼ぶ事が怖くて、

 

 兄さんと言えなかった弟の我儘と、

 

 “その最初で最後の大博打”

 

 見ていて下さい、

 

 そして、“先に行って待ってます”

 

 お母様、二人の父上と、俺で、

 

 待っています、

 

 あ、ちゃんとアポストロさんと、

 

 ケッコン、子供を作ってから、

 

 こっちに来て下さいよ?

 

 おじさん呼びされるの、

 

 楽しみだったんですから!

 

 絶対ですよ?

 

 では、兄さん、

 

 フレデュリック・グランツへ充てる、

 

 リッカルド・ミゲルの手紙を、ここで終わります、

 

 “今日が新月”なのですから。

 

 





フレデュリック・グランツ
「知ってたよ、ミゲル、
 だから、友人として、
 お前と接しようと決めていたんだ、
 俺こそ・・・、
 ふらふらした兄で、
 済まなかったな、
 お前と兄弟だと、
 公言出来ずに、済まなかったな、
 俺の父は、
 “ジャロウデク王国の貴族”だったからな、
 わざわざ身分を隠してまで、
 ディダットーラ帝国に来ていたんだ、
 “嫁を探しに来てた”アホな親父だったよ、
 だからかな、
 お前の父、エリュブシン家の次男と、
 気があったそうだ、
 二人して、同じ人を愛した、
 そして、母さんはそれに応えようとした、
 それがばれて、
 学校から一時だけ、ジャロウデク王国へ、
 俺が生まれて、
 帰って来た矢先に、
 “魔獣に襲われ”
 親父は囮となって、
 母さんと、お前の親父を逃がして、
 そこで死んだんだ、
 そして、俺は大司教の親父へ、
 母さんと、お前の親父は、
 母さんにお前を宿して、
 リッカルド家へ戻った、
 ったく、
 陛下のヤツ、
 大司教親父から、
 黙ってろって、言われてたのにな、
 馬鹿野郎、
 ばかやろうだよ、お前は・・・、
 ばかやろう・・・、ミゲル、
 ばかやろう・・・。」

アポストロ
「そっか、
 色々あったんだね。」

フレデュリック
「・・・聞かれちまったのか。」

アポストロ
「あぁ、だけど、
 アンタがしっかりしなきゃ、
 アタシは、嫁に行かないからね?」

フレデュリック
「おぃおぃ、そこは慰めて、
 その勢いで、だろうに。」

アポストロ
「やなこったい、
 ウチは、アポストロ・オラーコロ、
 山賊と海賊の先祖を持つ、
 代々賊を率いて来たんだ、
 ふらふらグランツじゃ、
 誰も着いてこないよ。」

フレデュリック
「ははっ、確かに、な。」

アポストロ
「・・・そんな強い眼差し、
 出来たんだねぇ?」

フレデュリック
「・・・なぁ、これだけは聞いてくれ、
 “俺より、先に死ぬな”」

アポストロ
「なら、守ってくれよ?
 旦那候補様。」

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