トクソリン峠
「静かだな?」
「あぁ、首都から新型機、
ディストリオーネって言う、
やべぇ新型機がここに配備されるから、
到着の明日を待つんだとよ。」
「ん?誰だ、こんな夜中に、
偵察の交代にしちゃぁ、
シルエットナイトを使わないだろ?」
「あれじゃねぇか?
例のナーゲルタイラントの
生き残りでも出たんじゃねぇの?」
「しゃれになんねぇよ、それ。」
フレデュリック・グランツ
「シャサール、
どうなってんだ?こりゃぁ?」
シャサール
《余分な通信は控えて下さい、
各機は、
この“足跡”を、踏んで来て下さい、
これが一番大事なのです》
レパルド・フォーゲル
《はぁ~ぃ》
ソイレ・トレル
《うぅ、眠たいです、姉さん》
アポストロ
《ソイレ、頑張んな》
フレデュリック・グランツ
「・・・シャサール、巡回のメィディウム隊だ、
このままだと、進路が被るぞ?」
シャサール
《安心して下さい、
“アレがこの隠密行動の要ですから”》
▽
「あれ?
フレデュリックの機体だ、
お~い、フレデュリック、
夜間偵察かなんかか~?」
シャサール
《普通に接して下さい、
魔獣目撃の情報の元、夜間偵察だと》
フレデュリック・グランツ
「おぅ、
どっかの馬鹿が、野ションしてたら、
魔獣を見たとかほざきやがってよ、
仕方ねぇから、
俺らが出向いてんだよ。」
シャサール
《同行を求めて下さい》
フレデュリック・グランツ
「どうだ?肩慣らしに一緒に魔獣討伐いくか?」
「そうだな、小遣い稼ぎにはなるだろうし、
分隊の必要はあるのか?」
シャサール
《全員で行きましょう》
フレデュリック・グランツ
「いや、全員で行こう、
一人でおっ死ぬのだけはごめんだからな。」
「ははっ!ちげぇねえな!おっしゃ、
お前ら着いて来い!」
▽
フレデュリック・グランツ
《どうするんだ?》
シャサール
《このまま彼らと真っすぐ進んで海へ》
フレデュリック・グランツ
「なんでも、海から上がって来た魔獣らしくてよ、
そいつ、
したまんまシルエットナイトに乗りやがって、
今、操縦席を洗ってるんだとよww」
「ぶはっ!?
マジかよそれww」
フレデュリック・グランツ
「あぁ、
おっと、海が見えて来たな。」
シャサール
《総員、合図と同時にしゃがんで下さい》
▽
「それらしい痕跡は・・・おっと、
確かに何かが引きずった跡があるな、
おい、
この引きずった跡」ごふっ!?
姿が見えない機体が、
メィディウム改の操縦席のみを、
“沸騰させ”ナイトランナーを絶命させた。
フレデュリック・グランツ
「・・・殺したのか。」
シャサール
《・・・彼らは“帝国兵士”です、
戦場、魔獣討伐で、戦死は当たり前です》
アポストロ
《・・・随分酷いやり方だね》
シャサール
《ディサフィアンテ騎士団、団長曰く、
“戦争に卑怯も正義も在ったもんじゃない”と、
言っていましたよ》
レパルド・フォーゲル
《え?》
ソイレ・トレル
《それって、
オネストさんの事ですか?》
シャサール
《まもなく、我々の母艦が浮上します、
速やかに機体を乗せて下さい、
後ろには、貴方達に賛同し、着いて来た同志が、
控えているのですから》
リッカルド
「グランツ、
お前には色々言ったけど、
俺も、一緒に行きたかった、
だがな、
“持ちすぎる力は”
国を亡ぼすんだ、
だから、
“先に行って待っているぞ”」
▽
「トクソリン峠に巨大な火の手が上がっています!!」
フレデュリック・グランツ
「なにっ!?」
シャサール
「リッカルド氏からの手紙です、
トクソリン峠に火の手が上がってから、
グランツさんに渡してくれと、
言われておりましたので。」
フレデュリック・グランツ
「シャサールっ!!」
シャサール
「怒るなら、
黙っていたリッカルドさんを、
怒りに行って下さい、
我々黒狼騎士団は、
“リッカルド・ミゲル”から、
依頼を受け、あなた方を、
帝国から脱出の手助けと、
その後の人権保障、
生活の補助を頼まれています、
時間です、
水密扉を閉めます、
出発です。」