(略)のはAce -或る名無しの風-   作:Hydrangea

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これで番外3も漸く完結。いやはや長かった……


番外3-3:【全力で】神話のはじまり【未完成】

『Ist es OK bei solcher Ausrüstung?』

「大丈夫……よ、問題無いわ。少し掠めただけだから」

 

 依然として続く、長閑な公園を舞台としたあまりにも似つかわしくない死闘。しかし、その戦局はやはりと言うべきか、魔導巨兵(ゴーレム)側が一歩先を行くものであった。

 確かに、当初の目的たる「足止め」自体は成功している。巨兵は未だ現れた地点より移動しておらず、またそれが齎した被害に関しても、ヴィヴィオ以外へとは広がっていない。「足止め」としてみれば、十分に果たせていると言えるだろう。

 が、言ってしまえば得られた戦果は「それだけ」であり、またその戦果自体、いつ崩れても可笑しくない程の危うい均衡の上に成り立つものでしかない。

 

 無論、混じり気無しの正統なる「聖王」の力を以てしても劣勢であるのは、相応の理由がある。

 言わずもがな、そもそも「守る戦い」というものそれ自体が、ただ敵地にて破壊と殺戮をばらまくだけのそれと比べ格段に高い難度であり、かつ唯一の盾たるヴィヴィオの体は、未だ発展途上の少女――それも、一切の「手」が加わっていない天然自然のそれ――。“製品”として完成され、かつ疲労や調子といった生身特有の弊害をものともしない魔導巨兵(きかい)との間には、誤魔化しきれないだけの性能差が確かに存在しているのだ。

 

 が、それら難攻不落に思える壁も、彼女にしてみれば「その程度」の障害(もの)であり、それだけであればどうとでもなるものでしかなかった。

 戦争とは、戦いとは、何時でも十全の備えを以て臨めるものでもなければ、必ずしも勝利が保証されている訳でも無い。むしろ、そんなものは稀であり、またそれらを覆してこその「王」でさえある程。こと古代ベルカの末期においては文字通りの「何でもあり」が半ば暗黙の了解(ルール)となっており、その中を聖王オリヴィエは生来のハンディを負って尚勝ち残ってきたのだ。「非戦闘地域に現れた魔導巨兵一体」程度、茶を啜りながら とまではいかずとも、さして手を焼く様な条件ではない“筈”であった。

 

「まさか、この時代になって“ホンモノ”を目にする事になるとはね……」

 

 そんな彼女がここまで苦戦する理由。それは、目の前の魔導巨兵(CX-612M)へ搭載された“あるシステム”に依るものが大きい。

 指向性粒子分断力場放出システム その通称を『告死蝶』。

 現代においては「魔導師殺し」とまで言われる魔力結合分断術式(Anti Magilink-Field)や、その上位互換とも目される失伝技術(ゼロエフェクト)を応用したとも、或いはそれら対魔導師兵装の原典とも言われる超兵器。強力かつ明確なる意志を以て、魔力結合はおろかあらゆる物理的エネルギー・現象の存在そのものさえ“否定”し、世界を灰色に染める悪魔の息吹。

 その名の由来でもある蝶の羽ばたきにも似た美しさを有するそれはしかし、一度秘められた力を完全開放すれば、立ちどころに万象を土くれへと堕しうるだけの危うさを秘めており、前述の通り「何でもあり」であった古代でさえ、その使用はベルカ・ミッド両陣営で憚られていた程の代物。

 如何にベルカ最強と謳われた聖王とて、物質文明の理へ立つ以上、彼のシステムが齎す影響からは逃れようがない。生半可な攻撃では本体へ届く前に霧散してしまい、あまつさえ愚図ついていてはヒトとしての肉体そのものまでもが壊れてしまう。有効打といえば、専ら「聖王のゆりかご」等を用いた飽和同然の爆撃か、ヴィヴィオの持てる技術の全てを賭した「奥義」くらいのもの。

 物理的に喪失し、或いは未成熟故に対応しきれず攻め手を欠く現状にあっては、例え相手がその性能(ちから)を十全に発揮せず、装甲表面といった局所的な展開へ留めていようとも、戦局を「均衡」で押し留めるのが精一杯でしかない。

 

(それに、仮に攻撃が通ったとしても、あの状態じゃあ……)

 

 そして、ヴィヴィオの攻勢(あし)を鈍らせている最大の要因は、魔導巨兵の内部へと今尚蓄積され続けている、あまりにも大きすぎるそのエネルギー量にあった。

 その様相は、さながら破裂寸前の風船が如く。

 魔導巨兵へ内蔵されている高性能ジェネレーター。そこより生み出される膨大なエネルギーは、しかし何の所以か搭載された種々の兵器によって消費される事はなく、ヴィヴィオと戦い始めてより、その内部へ只管に溜めこまれ続けていた。

 現在こそ高い気密性・堅牢な装甲が「蓋」となって押し留めているものの、もしそこへ孔を、巨兵の機能を停止させられるだけの一撃を通し、「蓋」をこじ開けようものならば、捌け口を見つけたエネルギーはたちまち激流と化し、辺り一帯を焦土に変えてしまうだろう。例え四肢をもぎ取り物理的に身動きを封じた所で、そうであるが為に自爆などされてしまえば元も子もない。

 

 確かに、今戦場となっているのはそれなりの敷地を有する自然公園の一角であり、かつ周辺の避難は既に終わってはいる。だが。想定されるエネルギー量は、そんな距離の壁など容易く乗り越えてゆく程までに膨大。

 もし、もし仮に、ヴィヴィオがその命を賭して敵の破壊に成功したとしても、後に残るは束縛より解き放たれたエネルギーの暴風雨のみであり、それが甚大な被害を齎す事が日を見るよりも明らか。その選択肢は美談でも何でもない、単なる無責任な行いでしかない。だからこそ、或いはそれが幸いとなってか、この瞬間に至るまでヴィヴィオは「思いきった手段」へ出る事は無く……それ故に、解決の糸口すら見つからない苦境にあえぎ続けているのである。

 当然、現状を維持し続ける事は次善であっても最善ではない。

 そも、この膠着状態とて何時までも続けられるものでもない。傾いた局面を一手でひっくり返せる、そんな都合の良いものなどある筈も無く、過ぎゆく時間と共に、ヴィヴィオもまた追い詰められているのである。彼女が一人で戦い続けている限り。

 

 

 だが、例え「希望」そのものが転がり込んでくる事はなくとも、その「種」と成り得るものならば、手が届く程近くへある。むしろ、「希望」とは大抵がそういったものであろう。

 世界を照らす光とて、その始まりは小さな種火に過ぎない。それが「希望」足り得るのは、偏にそれを育む存在あっての事。――無論、彼女が、彼女達がその資格を有しているのは改めて問うまでもない。

 

「ヴィヴィオっ!!」

「えっ!?」

『Warum wird sie hier gebraucht?』

 

 唯一人だけであった戦場(ぶたい)へ舞い降りたのは、主役たるヴィヴィオも良く知る級友の一人。しかし、その姿は教室(にちじょう)での可憐な女学生ではなく、翠と白の闘衣へ黒金の具足を纏いし戦装束。

 「覇王」としてのアインハルト・ストラトスが、其処には立っていた。

 

「アインハルト……どうして此処に?」

「え? えっと……それは、その……」

 

 立っていた のだが、正しく「王」と形容するに相応しい佇まいに反し、ヴィヴィオを前にしたその様子は、何とも情けないものであった。

 元より内へ秘める感情を表出させる事へ積極的ではない性格に加え、時間の経過と共に半ば暴走気味であった(かんじょう)が落ち着いてきた事もあるのだろう。今の彼女には、“壁”を越える為の一歩を、最後の一歩を踏み出させるものが、あと少しだけ足りていなかった。

 

「その……も、もう一人では、背負いこんで欲しくなかった……から……」

 

 数瞬前までの威容は何処へやら。目線をフラフラ、手をもじもじさせる少女が辛うじて絞りだしたのは、今にも消え入りそうなその一言のみ。

 

「そっか……うん、ありがとう」

 

 それでも、アインハルトが駆け付けてくれた というただそれだけであっても、深淵へ沈みかけていたヴィヴィオを引き上げるには十分過ぎる力がある。そして、返された感謝の言葉は、先の失態で気落ちしていたアインハルトにとっても救いとなり、その表情へ明るさを取り戻させる。

 そんな二人の雰囲気は、「今世」における彼女達のそれにおいて最も穏やかなるものであった。戦場にも関わらず、或いは戦場だからこそ生まれるのか。何れにせよ、そこに今尚続く危機的状況はまるで感じられない。

 

 とはいえ、例え仲睦まじき少女二人の装いであっても、その中身は古の戦場を掛けぬけた王そのものたる二人。

 意図せずか、或いは狙っての行いか。結果的に不意を突くような形で振るわれた巨人の腕はしかし、一瞥すらせず難なく躱された事で空を切った。

 先程までの和やかな空気は一瞬で切り替わり、二対四の瞳へ灯る光は、紛れもなく戦う者のそれ。加えて、その焔の熱量と色彩は先程(ひとり)のそれよりも遥かに熱く、鮮やかに燃え上がっていた。そこに、絶望の二文字は欠片たりとも見えない。

 

 そうして、燃え尽きる程に熱き血潮を糧とし、「種」は目覚める。今は見えない地面の下で、少しずつ、しかし確実に根を張り、歩みを進めてゆく。

 芽吹きを迎える、その瞬間(とき)を目指して。

 

 

 ▽ ▽

  ▽

 

 

「……見事なものですね。それとも、“流石”と言うべきなのでしょうか。

 特別な訓練など重ねていないにも関わらず、あれ程までに息が合うとは」

 

 遠くも無ければ近くも無いその場所より、少女達の戦場を見守る二つの影。

 局所的大災害が間近にまで余波を轟かせているにも拘わらず、その髪や服には波風一つ立っていない という点においては共通する二人ではあったが、それ以外……例えば容姿や雰囲気などに関して言えば、極端なまでに両者はいっそ対称的であった。

 絹織物の様に滑らかなる真白の肌へ羽毛にも似た長髪を湛えた嫋なる人物と、力強い浅黒の肌に黒髪を持つ男性……St.ヒルデが教師にしてヴィヴィオ達クラスの担任ミカゼ=アクエリアと、先程アインハルトに教えを諭したジン・フドウ校長その人である。

 

 そしてミカゼが驚嘆するは、少々遠方……彼らにとっては「眼下」で繰り広げられるその光景(たたかい)。織りなされるは、“とある事情”故常人より遥かに戦争(たたかい)を知り、またそれに精通しているミカゼ達をして「見事」と言わしめる程のそれ。互いがその能力を生かし合う、正しく「模範的」なる連携。

 

 確かに、未だ戦局は拮抗より傾いてはいない。だが、本来維持すら困難なそれを支えているのは、十分な装備と訓練(じゅんび)を重ねた管理局の大部隊などではなく、たった二人の少女。それも、未だ成長途中の身に加え、学び舎で行える程度の……本物の戦いを知る者にとっては、あまりにも温過ぎる程度の訓練(もの)しか重ねていない/重ねられていない女学生であるのだ。

 如何にSt.ヒルデがその道の名門とはいえ、職業とする者(プロフェッショナル)とその卵との間では、大きな隔たりが存在している。

 こと彼女達二人には“中身”に特段の事情があれども、その器は紛れもなく「今世」の常識に根差したもの。本来、純古代製の戦闘兵器を相手取るには遥かに役不足であり、またそんな事情を差し引いたとしても、生身の魔導師二人で渡りあっているという事実それ自体が、此度の相手を良く知るミカゼにとっては驚くに値する事であるのだ。

 

 

「だが、それだけでは足りないのもまた事実」

 

 されども、今のままでは未だ足りず

 それは単に、膠着状態のままではいずれ追い詰められてしまう という事だけではない。確かに彼女達は優秀ではあるが、現状のそれはあくまでも「模範的」どまり。悪く言ってしまえば「常識」の枠へ小さく収まってしまっている、或いはその枠を脱するまで振り切れていない状態。

 それでは足りない。彼ら導き手が真に欲している「力」を引き出せているとは言えない。

 だからこそ、敢えて二人は突き放し、こうして均衡状態――防戦一方の状態であっても静観し続けているのである。

 

「……随分と不満そうだな。

 それほどまでに、あの二人だけに相手をさせるのは心配かな?」

 

 とはいえ、獅子にも親心はある。まして、その過去が何であれ、彼ら二人は此処まで人間の理の中で生きてきたのだ。人間の持つ不合理さにも理解があり、或いは彼ら自身もその一端を図らずとも有するまでに至っている。

 フドウが横目で見やるは、“共犯者”たるミカゼ=アクエリア。

 だが、そのミカゼ当人はと言えば、常日頃決して崩す事の無いその端整な顔へと、あからさまなる「不機嫌」の色を浮かべていた。おそらくはフドウでなくとも、今のミカゼの機嫌がよろしくない事は容易に察せる事だろう。

 

「別に、その様な事はありません。

 私とて、今回の件は仔細まで把握し、また理解した上で承知もしています。

 ただ、「教師として」可愛い生徒を危険へと晒す事に抵抗を抱いているだけの事です」

 

 果たして、その言葉のどちらが本心へ近きものであるのか。

 ()の表情を見れば一目瞭然。問いにもならぬ返答に、思わずフドウの口元が釣り上がる。

 

「随分、仮初の役割へと引きずられているようだな。

 今の姿を昔の君が見たら、一体どんな反応を見せてくれるのだろな」

「……私はただ、今の自分に正直であるだけです」

 

 痛い所を突かれたのであろう。態度を一変、朱が浮かんだ頬を隠すように顔を逸らすミカゼ。

 そんな感情の起伏そのものが「前」と比べれば大層珍しい事ではあるのだが、流石に戯れが過ぎる自覚もあったフドウは、言葉遊びも程々に続けてゆく。

 

「私とて、それは同じ事だ。

 ――そう、我らはただ、己が使命を全うするのみ。

 最早、そうするより他に救世の……懺悔の術など残されてはいない」

 

 

 ざわり 鋭い風が一陣、二人の間を翔け抜ける。

 彼の言葉に先程までの軽さはなく、含まれるは何時ものそれとはまた趣の異なる――あたかも、フドウがその背へ負う十字架が如き重さのみ。

 

「では、貴方の……ジン・フドウの使命とは何ですか?」

 

 それは「共犯者」たるミカゼにもまた同じ。そして、だからこそミカゼは問う。共に歩む者として、その「月」として。太陽が太陽たるその由縁を示す為にも。

 

「教え、導き、そして信じる事だ」

 

 淀みなく 迷いなく 躊躇い無く言い切るフドウ。

 その内容が、他ならぬ彼自身が先程「仮初」と称した役割(きょうし)にも通じているのは、決して偶然などではないだろう。

 

「「信じる」ですか。随分と、彼女達を高く評価しているようで。

  ……それは、あの二人が聖王(ゼーゲブレヒト)覇王(イングヴァルト)の系譜を有しているからですか?

 それとも、かのエース・オブ・エースの実娘と、次期覇王流正統継承者だからですか?」

 

 試みるかのようなミカゼの言葉。しかし、聞く者が聞けば、そこに非難の色が含まれていない事へ気付けるだろう。

 そも、その問いかけは疑うが故のものではない。ある返答を、言葉を聞きたいが為のものであり、ある種の「信頼」の形が一つ。

 そして、その「信頼」は確かに通じ合っている。だからこそ、彼は応える。その期待に、自らが積み重ねてきた“願い”に。

 

 

「否。彼女達がヴィヴィオであり、アインハルトであるが故に。

 ――そして、二人の王が決して二人きりではないが為に」

 

 

 ▽ ▽

  ▽

 

 

 ヴィヴィオが退けばアインハルトが押し、アインハルトが守ればヴィヴィオが攻める。魔導巨兵(ゴーレム)が下がれば深追いはせず、しかし大技を放たんと身構えれば、すかさず二人でその芽を潰す。

 撃波にこそ至ってはいないものの、圧倒的・絶望的戦力差を前に一人として膝を屈する事なく、しかし被害を拡大させる事もなく、二人は鉄の魔物相手に大立ち回りを演じ続けていた。

 

 未熟なる少女の身体と、「製品」として既に完成された機械の軀。生物故の不安定さと、無機物故の完全さ。

 一見して明らかなる戦力(スペック)差がそこにはあり、また本来「無限」の前では、如何に「有限」が数を揃えようとも比較にすらならない筈。だがそれでも、二人は立ち続けていた。彼女達の戦場へと。

 

 

 ベルカに数ある小噺の一つに、『勇者と魔王の問答』なるものが存在する。

 たかが小噺 と軽んずる事なかれ。ベルカ原産のそれが様々な形・角度を以て真理を突いてきたように、彼の作品もまたヒトの世の在る姿を、在るべき姿を描き出している と、その筋の専門家をして言わしめる程のもの。

 

 戦いの終局、赤き魔王――幾度となく人類全体の救済を望み、しかしその人類そのものが持つ「愚かしさ」へ絶望し、その果てに極端な選民思想へと走ってしまった在りし日の勇者――は、未だ人類全ての救いを求め奔走し、それ故に自らの前へと立ち塞がった白き勇者へ問い掛けた。

 

――自らの事しか考えず、弱りゆく世界へ寄生し続けるノミ同然の今の人類に救いなどあるのか

――今こそ人類は覚悟を決め、自分達の様に知恵ある一部の選ばれし者のみが天へ立ち、世界そのものへ償いをするべきではないのか と

 

 世界の“闇”を、決して隠し通せはしないその汚点を容赦なく、嘘偽りなく問い掛ける魔王。

 しかし、勇者は迷うことなく答えた。自らが信じ続ける、人間の持つ“力”を。

 

――確かに、人類の全てが利口な訳ではない 今の人類は、物言えぬ世界へおんぶに抱っこの赤子同然 成程、「寄生」という言い回しも尤もなのかもしれない

――だが、ヒトの叡智は自らの足で立つ術を生みだし、やがてはその壁すら乗り越えられる 今すぐには無理であっても、意志が受け継がれた先にある未来であれば、きっと叶える事ができる

――何より、どれ程愚かしくとも、お前一人に「見限られる」程人間(ヒト)は弱い存在ではない と

 

 それが真実 それが真理

 罪を生むのが人間であるのなら、それを贖うのもまた人間。許しを乞うのも、その心を慈しむのも、人間を置いて他に無し。人間の世界を変えるのは、何時だってヒト自身であるのだ。

 そして、それを成すのは決して満たされることの無い、余白を残した不完全さ。支えなくしては一人立ちすらできず、しかしそんな自身もまた誰かの支えとなり得る、「断片」という在り方。

 

 何より、「断片」は引きあう。引かれ合う。引き寄せる。

 今日この日、彼女達が試練と出会った様に。転生を果たした二人の王が、同じ学び舎の下で再会したように。そして、「太陽」たる聖王の少女(ゼーゲブレヒト)と、「月」たる覇王の少年(イングヴァルト)。双極に位置する二人の王が、古のベルカにおいて巡り合えたように。

 運命の引力は、確かに存在する。この世の全ては必然であり、必ず意味の有る事象(コトガラ)。今日立ちはだかる壁にも、乗り越えた先には未来がある。

 

 それが個々人の紡いできた縁に依るものなのか、超越者が敷いた脚本であるのかは判らない。

 だが、その由縁が何であれ、少女達は引き寄せる。王としての、人としての引力を以て集めるのである。絶望へ染まる運命すらを覆す「絆」を。

 

 

「一筆入魂!」

『Kugelschreiber!』

 

 惹き合う波紋の第一陣、横合いより放たれた第三者による一撃。 それ自体の威力はネオ・ベルカニュウム合金製装甲の前では無いにも等しく、鉄の肌へ擦り傷一つ付けられない程度のもの。

 けれども、突如として現れた新しい敵性反応に、そして「居る筈の無い人物」の存在により、一時であっても戦いの手は止まる。

 論ずるまでも無く、戦いの最中に足を止めるなど愚策中の愚策。偶々今回は敵もまた動きを止めたとはいえ、彼女達程の実力者同士の戦いであれば、その一時(いっしゅん)で容易に勝敗など決してしまう。「一時」には、本来それだけの重みがあるのだ。

 

 尤も、今回のそれは“そうなるだけの理由”があったと言えなくもない。繰り返しにはなるが、現れたのは正しく「居る筈の無い人物」であったのだから。

 

 

「い、委員長!? どうしてこんな所に……」

「この期に及んで「どうして?」とは……全く、やれやれですわね」

 

 果たして、そう零したのはどちらであったのか。思わず、少女の口より驚きの台詞が漏れた。

 ()め付けるかのように値踏みをする巨兵の視線にも物怖じする事なく、排煙をたなびかせながら愛槍のカートリッジ・マガジンを取り換えるは、ヴィヴィオ達の属するクラスの委員長。旅行の日程においては別の班であり、それ故に本来であれば今日この時間この場所にはいない筈の人物。ベルカ系の家柄でこそあるものの、しかし古代の因縁とは一切関係の無い、極々普通の「一般人」である筈の少女。

 

 「戦うべき理由」「守るべき存在」

 二人にとって、彼女は、彼女達の存在とはそういった認識であり、またそうであるが為に、この場には……血と暴力で満たされた戦場にはいる筈の無い存在。だからこその驚き。

 しかし、委員長と呼ばれたその少女は、そんな「常識」を――古代の王達にあってはコーラを飲んだ後のゲップよりも当たり前である――事を、さもつまらない事であるかのように一蹴する。

 

「確かに、先程の“ご挨拶”は聊か品性に欠けるものであったかもしれませんわね。

 ですが、これでも(わたくし)、友の窮地を捨て置く程に冷血ではありませんの」

「で、でも!

 だからってそんな無謀な事を、態々委員長自身がしなくても……」

 

 ともすれば侮辱とも取られかねない発言ではあるが、勿論そのつもりは毛頭なく、唯「傷ついてほしくない」という真心故の言葉。その本心が、相応の付き合いある間柄で伝わらない筈も無し。

 

「……確かに、貴女達お二人の力と比べれば、私のそれなど所詮は豆鉄砲。

 そんな私がアレに盾突くなど、「無謀」と称されて然るべき愚行なのでしょうね。

 実際、少なからずこの状況に恐怖心を抱いてはいます」

「だったら……」

「ですが」

 

「ですが、それは断じて足を止める理由にはなりませんわ。

 今この胸にある“恐怖”は、言わば「人間の証」。

 乗り越えるべき感情(しれん)にして、誇るべき“勇気”を成す一端。

 確かに見目は悪いかもしれませんけれども、決して卑下するようなモノではありませんわ。

 このフランチェスカ・A・ツェペリ、(ノミ)風情とは訳が違くってよ!」

 

 されども、退かず

 ヴィヴィオとアインハルトが魔導巨兵(ゴーレム)を相手に退かなかった様に、委員長――フランチェスカもまた、二人の王を前に一歩たりとも謙りはしない。その迫力たるや、聖王と覇王をして沈黙させる程のもの。

 が、流石にフランチェスカも熱くなりすぎていた自覚はあったらしい。誤魔化す様に咳払いを一つ置き、何時も通りの落ち着いた微笑みと共に、穏やかなる調子で「友人」へと言葉を足した。

 

「……コホン。

 それに、不甲斐ない“お節介焼き”は、何も私だけではありませんのよ」

 

 その言葉で、二人は漸く気付いた。そこに立っていたのが。委員長(フランチェスカ)一人では無い事を。

 

 

「全く。二人ばかりで盛り上がっちゃって、ずるいっしょ!」

「ホント、二人とも水臭いにゃ~」

「あらあら、それとももしかして、かえってお邪魔だったかしら?」

「何でフローレンス姉貴の台詞から仄かに「お花の香り」がするんですかねぇ……」

「聞かれなくったって名乗ってやる! (アタシ)はお節介焼きのスピードワゴン!

 S・W財団現当主の養女(ひとりむすめ)にして、次代の「スピードワゴン」たる

 レベッカ・F・O・スピードワゴンだ!」

「マジで!? レベッカって“あの”スピードワゴン家の人間だったの?

 どおりで喧し……解説が上手い筈だ」

 

 並び立つその人影の正体は、こんな場においても尚賑やかなる、愛すべきクラスメイト(おせっかい)達。平時と違うのは、和気藹々としつつも、その身形が「完全武装」である点のみ。

 「何故」「どうして」

 言葉にせずとも顔に浮かぶ二人の疑問へ答えたのは、同じく級友にして、その黒縁眼鏡が示す通りのインドア派――およそ「こういう事」とは縁遠そうな人物(キャラ)

 人差し指で眼鏡を押し上げる という何とも絵になる所作と共に、それ自体さえ当然の事であるかのように、サラリと言ってのけた。

 

「委員長の焼き増しにはなりますが、友人の為に立つ事に、何か特別な理屈(りゆう)が必要ですか?」

 

「恐らく、他の面々ならまだしも、私までもが居る事に少なからず疑問を持っている事でしょう。

 ですが、前衛(ガードウィング)に前衛の仕事があるように、後衛(フルバック)にも後衛の務めがあります。

 こんな私にもできる事があり、成すべき事があります。

 ……少なくとも、私の目の黒い間には、重症者など一人たりとも出すつもりはありません。

 そう、世界一たるベルカの医学薬学の名に掛けて」

 

 ()の瞳の奥で燃えるは、確かなる「戦士」としての意志。そこに、前衛・後衛といった区別など存在しない。それは、他の面々にしても同じ事。一見して緊張感に欠けるように思えても、その胸には確りと「自らの出来る事/すべき事」が刻み込まれている。そして、そのできる事が何であろうと、少女達が抱く「目的」は只の一つのみ。

 

「納得して戴けたかしら?

 例え私一人では弱くとも、こんなにも心強い味方(とも)がいるのですわ」

 

 カートリッジの装填を終えたフランチェスカは、何処か誇らしげに――事実、誇って然るべきもの――そう言葉を繋げた。

 

「……とはいえ、流石に私達だけでアレを降せるとは思ってはいませんわ。

 如何に私とて、そこまで自惚れるつもりはありませんし、

 どれ程高揚しようと、その程度の冷静さは持ち合わせているつもりです」

 

「ですが、「勝つ」為の道筋であれば幾らでもありますわ。二度目にはなりますが、

 私達は決して私達だけではありませんもの。

 尤も、それは貴女方も同じ事ではありますけれどもね。

 

 ……ですから、一足先にお待ちしておりますわよ」

 

 

 その言葉を合図とし、少女達は自らの戦場へと駆けだした。

 ある者は魔導技術の象徴たる杖を、またある者は槍や剣といった直接的な形を持つ各々の武器を手に、ベルカ―ミッドチルダの枠組みに囚われず、しかし唯一つ同じ志の下に集う小さな戦士達。

 

「本当に……こんなにも強かったんだね、皆は」

 

 そんな光景を見て、王である/王であった少女は、思わずそう呟いた。

 決して優勢という訳ではない。戦況だけをみれば、むしろ二人だけで戦っていた時よりその旗色は遥かに悪くなっているだろう。今はただ、その奇跡的な綱渡りの連続を、分母の多さで何とか繋いでいるだけに過ぎない。

 しかし同時に、それは「王」たる二人が有さなかったものでもあった。

 自らの「弱さ」を知り、認め、その上で誰かの助けを求める。そして、自身が誰かに支えられているように、自らもまた他者の弱さを理解し、受け入れ、支える。

 誰よりも強く、それ故誰よりも孤独であった王には最期まで成しえなかった事を、度胸も、力も、覚悟の一つも抱いていない少女達が――否、“だからこそ”成している。成し得ているのだ。

 

 本当の強さとは、世界を穿つ光の槍でも、雷を追い越す翼でも、天地を支配する理でもない。

 自らの欠落(よわさ)を認め、しかし決してそれから目を背けず、そんな背中を他者へと預けられる事。他者を「信じる」事。それこそが真の強さ。それこそが、人間の持つ最も尊い輝きたる「勇気」。

 

「…………」

 

 誰よりも強かった――そう在らねばと願い続けていた少女は、ふと過去(うしろ)を振り返ってみた。

 確かに、彼女は強かったのかもしれない。事実、その拳の前に打ち砕けないものは存在せず、迷いと躊躇い、そして一つの感情故に膝を屈した最後の戦いの他、黒星は一つと刻まれてはいない。

 

 けれども、その“強さ”とは、本当に彼女一人だけのものであったのだろうか。

 あった筈だ。悔しさと不甲斐なさに涙し、顔を腫らしてまで教えを乞うた時が。厳しい修練の全てが苦痛に思え、誰かの胸へ泣きついた時が。そして、その(ちから)によって守りたいと思えたモノが。

 その力も、思いも、決して一人のみで生み出されたのではなく、また彼女が持つ力とは、そうでなければ生まれ得ぬものでもある。当然だろう。ヒトが人である限り、王でも民でも、己一人だけでこの世へ生まれ出でる事など無いのだから。

 

「………………」

 

 以前の彼女であれば、自然の道理を否定こそせずとも、絶対の自信を持っていた「力」が、他者の支えを要するものである事など、頑なに認めようとはしなかったかもしれない。愚かしい程までに「強さ」のみを求めていた覇王は、そんな「弱さ」など、歯牙にもかけなかった事だろう。

 しかし、もう心配も不要。今やその心は、驚く程までに澄み切った、まさしく明鏡止水の如し。如何なるしがらみも迷いをも超越し、ただ只管に、どこまでも純粋に、その心を曝け出せる。

 

「……どうかしたの?」

 

 嗚呼、そして何よりも。黙り込む彼女(アインハルト)を心配してであろう覗きこまれた視線と絡み合えば、少女を束縛していた鎖など藁にも同然。小難しい理屈など一纏めに吹き飛び、その思考は一色へ染まってゆく。

 

 

 

 気付けば、衝動的にその手を取っていた。

 アインハルト自身ですら、自らの大胆な行いに内心驚いていたのだ。常日頃の彼女を客観的に見てきた(しっている)級友達の驚き(それ)は一入のものであろう。

 味方も、そして敵でさえも。戦いの渦中である事さえ忘れ、唯一人の少女へと視線を集める。

 各々の抱く思惑思考が何であれ、不特定多数の注目を一身に浴びている事に変わりは無い。平時のアインハルトであれば、ただそれだけで委縮し、口を閉ざしてしまっていたのかもしれない。

 そう、()()()()()であれば。

 

 もう迷わない 迷いはしない

 自らの(よわさ)と向き合う時間はもうお終い。それ()を数えるだけであれば、亡霊にでもできる。しかし、彼女は決して魂なき亡者などではなく、輝ける「翼」を携えし人間。生命(いのち)あるモノ。

 友より受け取った「勇気」を纏い、アインハルト・ストラトスは今、羽ばたく。

 今度は、彼女から手を伸ばす為に。もう二度と、その手を離さない為に。

 

「……憶えてる? ずっと昔、初めて私達が出会った時のこと」

 

 それは 現代(いま)古代(むかし)で起きた一つの出会い

 戦いしか知らず、右も左も判らなかった獣に、白黒(モノクロ)などではない、七色に輝く世界を教えてくれた人がいた。固く握りしめていた拳を解きほぐし、優しい温もりで包み込んでくれた女性(ひと)がいた。

 誰よりも優しく、しかし如何なる苦境においても決して挫けぬ“不屈の心”。

 終わりなき戦乱へ誰もが疲れ果てても尚、平和を、人々の安息と幸福を求めてやまぬその姿が、(かのじょ)には何よりも眩しく、輝いて見えた。そう、荒れ果てた戦場へと咲く、一輪の花の様に。

 

「でも、貴女は何時だって、自分一人で全てを抱え込もうとしてた。

 ……まぁ、それは私も同じかもしれないけどね」

 

 しかし、例えどれ程深く根を張り、逆風に耐え、逞しく咲き誇ろうと、一輪だけでは叶わぬ事もある。限界がある。

 世界の全てを一人で受け止めようとすれば、その重責に耐えられなくなった茎が折れてしまうのは自明の理。元より、独りきりで支えられる程、世界とは軽くはないのだから。

 そして、一度折れてしまったその花は、無慈悲な行進に踏み荒らされ、砲火と爆撃へ晒され、やがて欠片一つ残す事無く消えてしまう。忘れ去られてしまう。そうなってからでは、全てが遅い。

 

 ――ならば、自分が支えれば良い。彼女が皆を守るのなら、自分が彼女を守ればよい――

 

 それでも、或いはそれ故に。守りたいと感じた。愛おしいと思った。

 王の責務でも、戦友としての矜持でも無い。クラウス・イングヴァルトとして、アインハルト・ストラトスとして、心の底から彼女を「守りたい」と欲したのだ。その笑顔を、心を、全てを。

 

 けれども、ただ「守られる」だけの存在など、彼女は受け入れはしなかっただろう。受け入れなどしないだろう。

 アインハルト同様「王」であり、また誰よりも強者であった彼女は、自身の為に誰かが傷つく事を決して好しとはしない。他ならぬアインハルト自身がそうであるのだ。言葉足らずとも思いを通わせ合えていた彼女が、そう考えぬ筈もなし。

 

 だからこそ 守りたい

 正面(まえ)でも背中(うしろ)でも、上でも下でも無い。その隣へと立ち、そんな自らさえ守らんとする彼女を守り抜く。王たる彼女に支えられ、そんな彼女を支える王となる。

 

 剣を持たねば、お前を守れない と王は言った

 剣を持てば、お前を抱きしめられない と戦士は言った

 ならば自分は(かたわら)に立とう。剣を持つ()の右手へ、()の左手を重ねよう。

 それが、王であり戦士であり、一人の人間であるアインハルト(クラウス)の得た、唯一無二なる解答(こたえ)

 

「ヴィヴィオ、あのね……」

 

 そこで深呼吸と共に一区切り。如何に気合を入れて臨んでいるとはいえ、(諸々の要因が重なった事もあるが)“前世”において終ぞ果たせなかった「大事」を成さんとしているのだ。肩に力が入るのも当然。

 また、彼女を取り巻く静寂も、その緊張をより一層加速させている要因でもあった。

 ヴィヴィオの手をとって語り始めてより、それまでの爆音鳴りやまぬ喧騒がまるで幻であったかのように、辺り一帯は静まり返っていた。一言一句を余すことなく響かせるその環境は、友人や魔導巨兵はおろか、天地自然の全てまでもがその一挙一動へ注目しているようにも感じられたのだ。

 唯でさえそういった事には(うぶ)で奥手な二人。不得手なる好奇の視線を十重二十重と浴びせかけられれば、茹で上がった挙句機能不全を起こしてしまう事さえあり得ない話では無い。

 

 稚拙な恥じらいと侮る事なかれ。仔細こそ異なりはするが、前世(むかし)において二人の関係が有耶無耶となってしまったのは、そんな「つまらない」理由に依るものであり、またそれが世代をも越えて悔恨を残す原因となったのだ。

 戦うことしか知らなかった者達が抱いた淡い感情が、戦いしか知らなかった故に臆病となってしまったその想いが、拒絶される事を恐れ、その心を覆う蓋となってしまった。

 戦乱の世が生み出せし、細やかなるも大きな悲劇。どうして侮れよう。

 

「――私は……」

 

 しかし、集まる視線も、臆病なる自身(こころ)も、覚悟を決めたアインハルトにあっては何ら障害ではない。今の彼女にとって、最早恐怖足り得ない。

 なればこそ、その胸へ抱く原初の衝動を、真実の誓いを果たす時。

 もう二度と後悔を生まない為にも、今度こそ、世界で一番大切なヒトと向き合う為にも。

 

 

 

 

「私は、アインハルト・ストラトスは……貴女の事が、好きです。

 何度生まれ変わろうと、どれ程の時間を、世界を越えようと、

 この気持ちだけは絶対に変わらないって誓える、本当のものです。

 ()()()()()()()()()、貴女の事を……ずっとずっと、愛しています。

 大好きです!!」

 

 紡がれるその言葉に、世界さえ震える。

 成されたのは、一世一代の告白(プロポーズ)。放たれるは、世界を越えて届く愛の囁き。

 今この場では彼女が、彼女達だけが主役。二人のの前にあっては、如何なる神秘も奇跡も、一介の舞台演出へと成り下がる。それだけの価値があるのだ。

 

 そよぐ風も、揺れる草木も。その全てが息を呑み、ヒトも機械も分け隔てなく聴衆と化す。その成り行きを見守る。

 さりとて聴衆もまた人間であり、舞台を構成する歯車(ピース)が一つ。最高の演目へ自然と万感の喝采が贈られる様に、元来聴衆とは沈黙を貫くだけの存在に非ず。

 まして、今のこの場におけるその大半は恋に恋する乙女達。眼前にて成されたその一大事を前に、ある者は頬を紅潮させ、またある者は何処からともなくカメラを取り出す等々、さながら化学反応の様に、ざわめきは瞬く間に広がってゆく。

 

「静粛に」

 

 しかし、破裂寸前にまで膨れ上がったそれを、やんわりと押し留めた人物がいた。最早驚きも湧かないであろうが、勿論それは、何時の間にやら現れたフドウ校長その人である。

 

「湧き上がる気持ちは判るが……早まるな、若人よ。

 人は、万物は。決して一つのみで成り立つものに非ず。

 それは、我々の身体を織り成す遺伝子にまで刻み込まれし世界の真理だ。

 一つと交わらず、しかし同方向を向く二つの線が重なり、二重(ふたえ)の螺旋を描きだす。

 そうして初めて、人はヒトとなる。二本の足で大地に立てる。

 ……故に、今暫くは御静聴願おう。彼女の“お返事”を聞く為にも、な」

 

 未だ手に持つ一輪の白い花――しかし先程とは異なり満開の花を付けたそれ――を玩びつつ、年頃真っ盛りな少女達へ諭すかのように言葉を掛けてゆく。

 相も変わらず小難しい言い回しながらも不思議と説得力のある教えを受け、聴衆は再び耳を傾ける。次に注目が集まるのは、言わずもがな一世一代の告白を受けたる聖王の少女。

 

 

「…………よ……」

 

 その「もう一人の主役」ヴィヴィオは、告白を受けてより今の今まで沈黙を貫き続けてきた。が、ここにきて始めて何かを呟いた。

 例えそれ自体が聞き取れずとも、「返事」が来たという事それだけで、期待と怯えとが綯い交ぜとなっているアインハルトの背筋には、自ずと緊張が走る。

 俯き続けるヴィヴィオ()の表情は窺えない。

 唯でさえ、溜まっていたものを吐き出し敏感となっている身。アインハルト自身もまた思春期真っ只中にある以上、どれ程些細な反応であっても、否応無しに大きな刺激と受け止めてしまう。

 

 と、その頬を一筋の光が伝い落ちた。これにはアインハルトの心臓も破裂寸前、ショックによる停止待ったなし。見守る周囲にも、思わず緊張が走る。

 

 

「……遅すぎるよ、もう。

 その言葉を、私がどれだけ待っていたと……」

 

 しかしその心配は、結果的には落差分の加算となり喜びへと彩りを添える事となった。

 顔を上げたヴィヴィオの表情に憂いはなく、零れ落ちた涙が湛えるは、唯只管に喜び一色。それを見れば、如何に鈍感であっても「お返事」の内容がどの様なものであるかは容易に察せよう。

 

「えっと、それはその……ご、ごめん」

「ふふ。でも、そういう所もあなたらしいよね」

 

 最大の懸念が払拭された為か、思わずその雰囲気が和らぐ。アインハルトの緊張も解れ、忘れていた羞恥心に頬を染める程の余裕さえ生まれた。そんな二人の姿からは、嘗てあった「壁」の存在など微塵も感じられないだろう。

 

 無論、だからとてこのまま本懐をなぁなぁに済ませてしまう事など以ての外であるし、そんなつもりも毛頭ない。そも、アインハルト同様、ヴィヴィオにもまた押し殺していた感情がある。埋めるべき欠落があるのだ。二人の違いはただ、先陣を切るか、命一杯のお返しをするのかのみ。

 聖王としてでも、ベルカの母としてでもない、一人の乙女(にんげん)として、ヴィヴィオ(オリヴィエ)もまた、己が衝動を解き放つ。その想いをカタチとし、差し出された手を確りと握り締める。すれ違い続けていた二人の縁を固く結びつける。

 どこまでもどこまでも。羽()かす灼熱の下まで昇ろうとも、決して(ほど)けぬように。

 

 

「私も、あなたの事が好きです。愛しています。

 一万と二千年前から。そして、一億と二千年経っても。」

 

 

 ▽ ▽

  ▽

 

 

 瞬間、待っていたとばかりに湧き上がる歓声。ここぞと咲き乱れる白百合の花。その全てはただ、今この時この瞬間を、一万と二千年の歳月が果てに実を結んだ果実を祝福する為に。

 

 それは、愛の囁きであると同時に一人では何もできない「不完全さ」を認めた証でもある。

 その生を共にする相手を、補ってくれる存在(もの)を欲するとは、即ち一人では「完全」となれないが為に生まれる欲求。全てをただの一人で賄いきれる「究極(アルティミット)」であれば、そもそもそんな欲求(もの)が生じ得ない。必要とせず、また必要でないのだから、生まれようがない。

 伴侶を、次代への架け橋を求めるとは、紐解けば己一人では出来ない事を後へ遺す為であり、その「不完全さ」の何よりの証明でもあるのだ。

 

 しかし同時に、全てを独りでできてしまう「究極」では、そうであるが故に決して手の届かないものがある。

 それは、不完全で、未完成で、何処までも満たされないが故に得られる権利。狂おしい程までに欲し、醜くも懸命にもがき、前へ進み続ける事により始めて生まれる至宝。生命あるものの尊さ(かがやき)

 

「な、何じゃこりゃぁ!

 桃色空間……もとい、あの二人からとんでもない量の魔力が放出されとるがな!」

「それに、あの魔力光は間違いなく、聖王家の血筋のみが有していたという虹色……聖王の虹(カイゼル・ファルベ)

 

 手を取り合う二人から、輝ける者達から湧き上がる生命の奔流。

 純粋なるエネルギーでありながら、唯在るだけで物理的影響さえ及ぼすそれは、全ての「色」の原点にして、束ねられし(それら)が行き着く頂点。無色無貌なる世界へ「色」を映す、始まりの光。

 

「……まぁ細かい事はさておき、聖王と縁があるっぽいヴィヴィオはまだわかる。

 けど、何で“覇王”の縁者である筈のアインハルトまで!?

 というか、血縁がどうであれ二人共魔力光は違う色の筈っしょ!?」

「や、あれはなんつーかむしろ、二人の魔力(やつ)が混ざって発色してるようにも見えるにゃ」

「いやいやいや、絵具じゃあらへんし。

 魔力光が混ざったからゆーて、色そのものが変わりはせんでしょ。

 しかも、よりにもよって特別(スペシャル)中の特別(スペシャル)な虹色になるとかあり得へん」

 

「――いや待て。もしかしたら私達は、とんでもない思い違いをしていたのかもしれない。

 そう、『逆に考える』んだ。

 現実の虹に則するのなら、複数の魔力光が混ざった結果「七色」が出てるんじゃあない。

 そもそも今ある魔力光の色それぞれが、“大元の一つ”から別れた結果なのでは……」

 

 嘗ては「王」の、選ばれし者の血筋(あかし)とされたその色は、しかし真実として限られた存在のみが有するものではなく、誰しもが辿り着き得る権利を有するもの。

 

「――その通りだ、聡明なる生徒諸君」

「げぇ、校長!

 ……って、それ本当(マジ)ですか!?」

 

 それも必然。何故ならそれは老若男女貴賎強弱、およそあらゆる要素の全てによって成り立つものであり、その全てへと成り得る種。“無限”を秘めし概念――「可能性」の化身。

 

 

「嘗て、ベルカもミッドチルダも無い時代……そう、魔導文明の欠片も存在せず、それ故に

 天地全てに神秘が宿っていた時代において、その「神秘」を手にした者が現れた」

 

 何時何処で、何故その「1」が生じたのか。それらは何一つ明らかとなってはいない。

 けれども、そこから始まった足跡は確かにある。姿を変え形を変え、細切れに別たれようとも、その遺伝子の奥深くへ根付き、決して絶える事なく、その「灯」は現在まで受け継がれてきた。

 

「森羅万象と心を通わせ、神秘の力を行使し、超常なる“奇跡”を具現化させる存在

 ――始まりの魔導師。

 人々はその姿に、圧倒的なる力に。怖れと畏れ、恐怖と畏怖を抱き……

 ……同時に、世界を覆っていた蓋へ孔を開けうる“希望”を見出した」

 

 確かに、持つ者/持たざる者の差はあるだろう。

 だが、極論それらは些細なる差異でしかない。前に立つか後より追うかの違いだけで、目指す場所に、行き着く地に変わりなど無い。

 それは、一番初めの“奇跡”が「砲」でも「結界」でも無かった事が何よりの証だろう。そして、そうであるが故に彼の名は生まれたのだから。

 

 全ての「色」の源にして、降り注ぐ原初の光そのものたる姿(いろ)

 世界を、命を、未来を照らす標。ヒトが地に生まれ落ちた時より以来、求めてやまなかった夢を――果て無き大空への飛翔を現実とする存在(もの)

 

 

「大いなる世界へ羽ばたく一対の希望(ひかり)可能性(むげんだい)の力。

 ヒトは彼の存在を、自然とこう呼んだという。

 

 ――そう、『太陽の翼』と!」

 

 

 

『■■■■■■■■■■■――――!!!!』

 

 まるで顕現した“虹”に触発されたかのように、突如として沈黙を保ち続けていた魔導巨兵(ゴーレム)が雄叫びを一声。再び暴れ始めた。

 それまでの、ある意味では統制された戦闘行動とは正反対のがむしゃらさ――さながら、忌避するものを眼前へ突き付けられた子どもの癇癪が如く、周囲一辺へと破壊をばらまいてゆく。

 

「うわっふ! ……って、ミカゼ先生!」

「危ない所でしたね。

 皆さんお怪我は……いえ、多少のものは“勲章”としておきましょうか」

 

 とはいえ、その性質が癇癪と同程度のものであったとしても、秘められた力は幼子のそれとは(レベル)が違う。さながらスーパーセルの様に、土も草木も、更には複雑に絡み合っていたバインドでさえも、取りついていた生徒達諸共力任せに吹き飛ばしてゆく。

 幸いにして、生徒達は皆駆け付けたミカゼにより全員救助されはした。が、それさえ刹那の差によるもの。現状はそれだけ危機的な状況下にあった。

 

 が、溢れ出た力が彷徨っていたのも数瞬。その「暴走」は、直に明確な指向性を有した「暴力」となり、その矛先を最も危険度の高い存在――虹色の魔力迸らせる二人の少女へと向けた。

 両の足に加え収められていた補脚をも大地へ突き刺し、あたかも腕を砲身(レール)へと見立てるかの様にして、その身そのものを一つの砲台と化す。

 人型の強みにして彼の武器でもあった運動性・汎用性を犠牲にし(すて)てまで魔導巨兵が取ったその選択肢が、生半可である筈も無し。瞬く間に圧縮・充填されてゆくエネルギーの量は最新鋭次元航行艦へ搭載される兵器もかくやのものであり、また単なる量のみならず、「告死蝶」の特性さえ受け継ぐそれはまさしく終末の光(ラグナロク)。如何に「王」とて、受けてしまえば只では済まされないだろう。

 まして、今の二人は未成熟である上、一方はその代名詞でもある「鎧」すらない状態であるのだ。その戦力差など態々比べるまでもなく、また歴戦の勇士の記憶を有する二人がそれを解せぬ筈もなし。

 

 しかし、少女達は一歩たりとも退く事は無く、剩その“滅び”へと真正面から向き合った。

 それは、彼女がベルカの太陽たる聖王だからでも、それを影より見守る月――覇王だからでも無い。二人を突き動かしているのは、「王」である以前の、人としての衝動。生まれたままの姿より備える、決して押し留める事などできない想い。

 

 確かに、唯独り躯の山で嘆く王(勝  利  者)では不可能かもしれない。だが、二人なら。一人では不完全なるケモノにして、しかし他者の欠落を補える者達が寄りそい合ったのであれば、その壁を乗り越えられる。運命という名の闇夜を払い、希望を照らしだす朝日(あした)を導く事ができる。

 

 

「過去は過去。現実(いま)は現実。神話は神話。

 なればこそ、その先にある未来(ページ)を綴ってゆくのは、()()()()()人間達。

 ――さぁ、少女達よ。今こそ、無限にして雄大なるこの世界(キャンパス)へと刻み込め。

 君達の、君達による、君達だけの、新たなる神話(マイソロジー)を!!」

 

 放たれる砲撃。迫りくる絶対なる(おわり)。如何なる計算に基づいても逃れられぬ敗北を刻まんとする一差し。

 それでも、二人の手は離れない。否、例え何人たりとも、その縁を離せはしない。

 彼女達は誓ったから。何時如何なる時であっても傍らにあると。立ちはだかる苦難へ共に向き合い、共に闘うと。

 

 

「二人のこの()が!」

「光って唸る!」

 

 ――それは、終焉(おわり)にして開闢(はじまり)。創世にして創星。天地自然、森羅万象の息吹を束ねし不敗の拳

 

未来を(しあわせ)掴めと!」

「轟き叫ぶ!」

 

 月と太陽。覇王流(カイザーアーツ)聖王流(マスターベルカ)

 決して一つと交わらず、しかしどこまでも互いを追い求め合わずにはいられない無限(らせん)が描き出す愛のキセキ。永遠なる集大成神話。

 

 

「石破!」「天驚!」

「無限拳ぇぇぇぇぇぇぇぇん!!」

 

 

 愛の法陣より放たれし光条。重なりあい一つの「拳」と化したそれは、攻略不能である筈の破滅(ほうげき)を真正面からかき消し、魔導巨兵を捉え、しかしそのまま高く高く……空を越え、成層圏を貫き、重力さえも振り切って、遂には遥か上空、惑星ミッドチルダを周回している衛星の一つへその巨体を叩きつけた。

 その身へ蓄えられてきた破壊も怨嵯も、絶望を吐き出す間すら与えず、しかし幻などではなく確かに世界へ焼きつけられたその刹那。後に残るは、地表からでも見て取れる程に明確なる月面の笑窪と、夕暮れ刻の天を立ち上る虹の残光のみ。

 

 

 

 

「……ゑ、何今の。いや確かに凄い事は凄いんだけど……

 ……レベッカ、解説プリーズ!」

「スマン。この解説王たる私にも、何が起きたのかさっぱり判らん。

 古今東西の格闘技へ精通している自負のある私にも、あんなデタラメなのは……」

「むぅ、まさか今のが噂に聞く、新たなるベルカ奥義誕生の瞬間なのでは?」

「そ、それは本当か、ライデン!?」

 

 絶景と言う他無い空模様に、その“奇跡”を目の前に、未だ興奮冷めやらぬ姦しき少女達。

 払われた暗雲の合間を埋めるかのように、幾分か趣の変わってしまった公園へと賑やかさが戻ってゆく。先程まで戦場であった事が嘘のような「日常」が、其処にはあった。

 

 けれども、そんな生徒たちの気質を以てしても、万人の心を捉えて離さない光景であっても、今の彼女達の世界へは割り込めはしない。遠き日の戒めより解き放たれた少女二人の瞳に映るのは、七色の軌跡ではなく出会えた奇跡。今目の前に在る、その胸の内に居る、最愛の君唯一人。

 

 やがて、降りる帳と煌めく流星の下、二つの影は一つと重なり合った。

 

 

『――Alle zwei von ihnen machen es froh』

 

 

 

  △

 △ △

 

 

 

【絶望的に】娘が連れてきた彼女が土下座を始めた件【それは綺麗さ】

 

 

2:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:21:06 ID:n-m1s0x3

   どういう……ことだ……

 

4:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:22:11 ID:r-gay-sl

   まるで意味が判らんぞ!

 

7:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:23:55 ID:J0gnJ0tk

   >>1は何か心当たりとか無いの?

 

10:1:93/9/18(水) 15:26:01 ID:T-8uk@ln

   昔一時期女友達と同棲(実質ルームシェアに近い)してた時があったけど

   結婚してからは普通に旦那と暮らしてたから悪影響を与えた覚えはない筈

   後強いて言うなら二人ともベルカ系資質持ってるぐらいかな?

 

12:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:28:13 ID:f1@g-o-d

   >>後強いて言うなら二人ともベルカ系資質持ってるぐらいかな?

   それだ!

 

13:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:28:55 ID:sy@-ty0-3

   ま た ベ ル カ か

 

14:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:30:05 ID:mzhs-k0r

   安定のベルカ

 

16:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:32:22 ID:b0n-ko2u

   どうせベルカなんだろうなぁと思ったらやっぱりベルカだったでござる

 

19:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水)15:33:45 ID:htrkneet

   遺伝子レベルでフリーダムさが刻み込まれてるとか流石である

 

20:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:34:47 ID:gr@c1@s

   なんでや! ベルカだってええ所あるんやで!

 

22:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:36:08 ID:/-0n/-0u

   平均胸囲はベルカ系の方が高いらしいしな

 

25:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:39:02 ID:8-r0li-8

   >>22

   そらまぁ「胸囲」ですから

 

27:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:40:40 ID:1n1k0-dg

   すまないがホモは(ry

 

30:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:42:08 ID:f1@g-o-d

   いやしかし実際乙ぱいデカイのも多いぞ

   航空隊のSさんとか医務局のSさんとか

 

32:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:42:58 ID:b0n-ko2u

   >>30

   どっちもSじゃねーか

 

35:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:44:02 ID:gr@c1@s

   航空隊の方は凛々しい性格とは裏腹に隠れMという専らの噂だが実際どうなのか

 

36:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:44:03 ID:1n1k0-dg

   いやNだろ

 

37:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:44:04 ID:/-0n/-0u

   N.E.E.Tの頭文字ですね判ります

 

38:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:45:14 ID:htrkneet

   あの人はデスクワークが少しばかり不得手なだけやし(震え声)

 

39:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:45:15 ID:8-r0li-8

   >>38

   本人乙

 

45:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:48:12 ID:mzhs-k0r

   で、結局>>1の娘さんの彼女さんがしでかしたのはなんだったの?

 

47:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:49:30 ID:r-gay-sl

   普通にDOGEZAじゃないの?

 

48:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:50:13 ID:J0gnJ0tk

   態々スレ立てるぐらいだし並々ならぬDOGEZAだったんだろ

 

51:1:93/9/18(水) 15:52:39 ID:T-8uk@ln

   何が普通の土下座なのかは判らないが、大まかに説明すると

   1.娘を伴い部屋へ入ってくる(何故か完全武装)

   2.よく判らん気迫と共に天井を突き破って飛翔(2階のマイルームをふっ飛ばしてった)

   3.空中でキャストオフ(装甲部分だけだけど)

   4.凄い勢いで落下(余波で屋根が崩壊した)

   5.土下座姿勢で着地 ←今ココ

 

   とりあえず後で諸々の修理代はきっちり請求しとくわ

   向こうさんはお嬢様らしいが公務員共働き一般家庭なめんな

 

52:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:54:07 ID:gr@c1@s

   酷ぇwwwwww

 

53:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:54:44 ID:mzhs-k0r

   とりあえず空回りしてる事は判った

 

55:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:56:41 ID:f1@g-o-d

   3.空中でキャストオフ(装甲部分だけだけど)

   何故装甲“だけ”なのか

 

56:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:56:50 ID:n-m1s0x3

   >>55通報した

 

58:55:93/9/18(水) 15:57:51 ID:f1@g-o-d

   残念だが俺が管理局員だ

 

59:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:58:00 ID:htrkneet

   >>58

   後でちょっと執務室まで面かせ

 

60:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:58:36 ID:gr@c1@s

   オイオイオイ

   クビだわアイツ

 

61:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 15:59:16 ID:sy@-ty0-3

   ロリコン死すべし 慈悲はない

 

62:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 16:01:01 ID:r-gay-sl

   こうしてまた一つ犯罪の芽が摘まれましたとさ

 

65:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 16:03:11 ID:b0n-ko2u

   それで結局嫁(婿?)候補がしでかしたのはなんなのか

 

66:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 16:04:04 ID:8-r0li-8

   >>51

   この技……まさか平身低頭覇か!?

 

67:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 16:04:16 ID:/-0n/-0u

   知っているのか>>66!!

 

68:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 16:04:31 ID:8-r0li-8

   うむ!

 

   平身低頭覇(へいしんていとうは)……古代ベルカ、戦乱の時代において、

   後に“覇王”と称されるシュトゥラの名門貴族・イングヴァルト家が時の長子

   アマデウス(Amadeus= Ingward)により編み出された秘奥の業。

 

   流された血により綴られてきたと言っても過言ではない古代ベルカの歴史を少しでも……

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69:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 16:05:00 ID:1n1k0-dg

   ※ここまで様式美

 

70:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 16:05:44 ID:sy@-ty0-3

   >>68

   クソ長いコピペ貼ってんじゃねぇよks

 

71:第774管理外世界駐在員:93/9/18(水) 16:06:18 ID:J0gnJ0tk

   つかこれコピペだったのかよ

 

 

 ==========

 

 

(本当に一体どういう事なの……)

 

 並列思考で構成される疑似回路を以てしてのインターネット接続という(無駄な)高等技術により、一線を退いて尚健在の実力を垣間見せる高町なのはさんじゅうななさい既婚(コレ重要)。

 だが、嘗てはエース・オブ・エースと呼ばれた実力者たる彼女を以てしても、目の前にあるその非現実的な現実――何処かで見たことのあるシチュエーション――には、当惑の中でそう呟くより他になかった。

 

 




とりあえずこれで本章も一区切り。いよいよ次章から本筋を進めてゆく予定です

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