幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 オリ人形(?)登場。
 この章最後のアリス視点。
 では本編どうぞ。


四話 『新しい人形』

『──上海ー、蓬莱ー。食事運んでくれるー?』

 

「シャンハーイ!」

 

「ホーラーイ!」

 

 とりあえず適当なものを作り、上海と蓬莱に配膳をさせる。静雅の好みは分からないけど、とりあえずはいいでしょう。

 

 私も配膳をし、静雅のいるテーブルに着くと……体のパーツ、手足や服が出来ていた。後で組み合わせるんでしょうね。

 

 現状を把握しながら一先ず声をかけることに。

 

「静雅。一先ず休憩を挟む意味で食事にしましょう。少しテーブルの上を片付けてくれる?」

 

「…………ん? そんな時間か? というより食って良いのか?」

 

「今からでも紅魔館に戻る? 私は別にそれでも構わないわよ?」

 

「……二人分あるじゃん。それならいただこうかな」

 

 静雅は裁縫道具関連を一先ず片付け、私から食事を受け取りテーブルの上に置く。相席をした後に挨拶をして静雅は私の作った食事を口の中に入れて咀嚼する。

 

 私は気になり、評価を求めてみる。

 

「……どう?」

 

「うまい。全然好みの範疇だ」

 

「あ……ありがとう」

 

 ストレートに褒めてくれて私は少し恥ずかしくなった。静雅は少し笑いながら評価して次々へと口に運ぶ。

 

 ……そういえば男の子に食事を振る舞ったのは初めてかも。ま、まぁ……気に入ってもらえたみたいで何よりだわ。

 

 食事をしながら人形について話し合う私達。

 

「そういえば人形のことなんだけど……どんな人形を作っているの?」

 

「内緒と言いたいところだが、アリスの上海や蓬莱に似た人形だと言っておこう」

 

「……内緒じゃなくてもろに言っているじゃない……」

 

「はっはっは。まぁそんな感じだ。完成まで少し待っててくれ」

 

「……楽しみにしてるわ」

 

 雑談をしていると静雅も私も食べ終わった。私は食器を洗おうとしたが──

 

「あ、ちょっと待ってくれ。晩飯を作ってくれた礼にオレがやる」

 

「え? でも人形制作にすぐに取りかかりたいでしょ? なら私が──」

 

「大丈夫だ。能力で綺麗にするから」

 

 そう言って静雅は指を鳴らすと──いつの間にか綺麗になった食器が重ねられていた。

 

「…………いつの間に?」

 

「オレの能力となればこんな事は余裕だ。これならお互いに時間が取れるだろ? オレは人形制作を再開するけどな」

 

 そう言いながら裁縫道具関連と人形のパーツを手元に戻し、制作を再開した。

 

 ……食事した後にすぐにやるの?

 

「あの〜……静雅? せめて歯磨きとかしたら? 汗をかいているならお風呂貸しても良いけど……?」

 

「歯磨きはともかく、風呂まで借りるわけにはいかない。能力でそういうことが出来るからお気になさらず」

 

「そ、そう……」

 

 ……自分の能力は万能じゃないといいながら万能よね?

 

 それに……真面目な人形制作をし始めて静雅は私を困らせるようなことはしていない。落ち着いて作業をしている。

 

 ……いつも静雅がこんな風だったら良いのに。何で普段からふざけているんだか……。

 

 私はとりあえず身支度を終えてから、静雅の人形制作の過程を見ることにした……。

 

 

 

 

 

 少年製作中……

 

 

 

 

 

 私が身支度を終えた後。静雅は集中力を切らさずに人形制作をしていた。私は人形制作を眺めて自分にない技術や縫い方の場合はメモをしたり、紅茶を出したりしてあげた。

 

 制作を続けて真夜中になった頃。人形は段々と完成していき、後は上着を縫い付けるだけらしい。同時に静雅は頭で船をこぎながら制作をしている。

 

 ……ほとんど集中していたから無理はないかもね。別の作業に入ったとしても紅茶を飲むくらいだったし。私は睡眠は必要ないから何ともないけど。

 

 そして──玉留めとして、静雅はようやく言葉を発した。

 

「──できたっ」

 

「……制作時間が早いわね? 数時間で作り上げるとは思わなかったけど」

 

「めんどくさいところは能力で飛ばしたからな……それでも、七割は一から作った。後は──」

 

 

 

 ──静雅は両手で人形を持ち──光が発生した。

 

 

 

 ……!? え!? 今のって……!?

 

「な、何今のっ!?」

 

「あ、あぁ……今のは──」

 

 言いかけている途中で静雅は──テーブルに伏せた。手から人形が転がり、どうしたのか顔を見てみると……寝ていた。

 

「Zzz……」

 

「……バカじゃないの? 寝たいなら帰って寝れば良いのに……休憩もまともに取らないからよ……」

 

 上海と蓬莱に掛け布団を持ってくるように指示し、私は受け取った後、静雅の肩にかけた。

 

「……まさか家に男の子を泊めるとは思わなかったけど……お母さんが知ったらどういう反応するんでしょうね……?」

 

 そう呟きながら静雅の作った人形を手にとって見てみる。

 

 外見は──ちょっと待って。静雅の親友に似ている気がする。上海人形達とほぼ同じぐらいの大きさで……静雅と同じような服を着ていて、ちゃんとした服装で赤ネクタイをしている。上海人形をモデルにしたデフォルメされた侠ね……。

 

「……でも、うまく出来たわね……上海と同じようで今にも動きそうな──」

 

『……(じーっ)』

 

 ……? あれ……? おかしいわね? 手に持った静雅の作った人形がこちらをずっと見ているような──

 

 

 

 

 

「──テンパーイ!」

 

 

 

 

 

「──えっ」

 

「テンパーイ!」

 

 ……喋っている。上海人形に似た静雅の作ったが喋っている。上海と同じような喋り方で。

 

「あ、あなた……何で喋れるの!?」

 

「テンパーイ?」

 

 静雅の作った侠人形(仮)は私の問いに不思議そうにしている。むしろ私の方が不思議に思っているわよっ!? まさかさっきの光が関係あるの!?

 

『シャンハーイ?』

 

『ホーラーイ?』

 

 上海達は私以外が作った人形で動いているのか気になったいるのか『その子は誰?』と聞いてきている。

 

 ……仮に私と作った同じ半自立型人形だとしても、静雅が作ったのかが原因で侠人形(仮)は何を言っているのか分からない。

 

「テンパーイ!」

 

 手元に持っていた人形は私から離れて上海人形達に向かって飛んでいく。そして何やら話し始める。

 

「テンパーイ!」

 

「シャンハーイ?」

 

「テンパーイ!」

 

「ホーラーイ!」

 

「シャンハーイ!」

 

 ……何か通じ合ったのか三体の人形は回り始めた。とりあえず上海達に話を聞こう。

 

「上海? 蓬莱? その子は一体──」

 

「──アリスサン、ボクハテンパイダヨー(アリスさん、ボクは天牌だよー)」

 

「…………会話が出来るのっ!? あなた!?」

 

 何なのこの人形!? 時折私の人形も何か話したりすることが出来るときもあるけど、悠長に喋らないわよ!?

 

「ボクノナマエハテンパイダヨー。カンジデカクトオテントサマノテントマージャンパイノパイデテンパイダヨー(ボクの名前は天牌だよー。漢字で書くとお天道様の天と麻雀牌の牌で天牌だよー)」

 

 丁寧に自己紹介してきた。何なのこの人形?

 

「え、えっと……天牌? あなたは自分でどんな存在か分かってるの?」

 

「ソコノネテルヤツカラウマレタヨー(そこの寝ている奴から生まれたよー)」

 

 制作者である静雅には酷い扱いね……。

 

 天牌と名乗る人形は話を続ける。

 

「イロイロキキタイコトガアルダロウケドカツアイスルヨー。ボクハソコニネテイルヤツカラアリスサンカラヘノプレゼントノタメニウマレタソンザイダヨー(色々聞きたいことがあるだろうけど割愛するよー。ボクはそこに寝ている奴からアリスさんからへのプレゼントの為に生まれた存在だよー)」

 

「……プレゼント?」

 

「シャンハイチャンタチノコトバヲツタエルタメニボクハツクラレタヨー(上海ちゃん達の言葉を伝えるためにボクは作られたよー)」

 

 ……静雅がそんなことを考えてあなたを作ったの? 

 

「天牌は上海達と同じ半自立型なの?」

 

「オナジシヨウダヨー」

 

「やっぱり力の供給は静雅から?」

 

「ソウナルヨー。デモ、ボクノコトバハショジジョウデツタワラナイトキモアルカラシャンハイチャンタチニキクトイイヨー。チナミニボクノドウリョクハハンエイキュウデ、ヘアピンヤロウガシナナイカギリダイジョウブダヨー(そうなるよー。でも、ボクの言葉は諸事情で伝わらない時もあるから上海ちゃん達に聞くと良いよー。ちなみにボクの動力は半永久で、ヘアピン野郎が死なない限り大丈夫だよー)」

 

 ……どうして制作者の静雅には言葉がきついのかしら?

 

「そ、そう……もう少し静雅のことを優しくしたら?」

 

「アリスサンガソウイウナラカンガエテオクヨー」

 

 優先順位が私の方が優先になっているのかしら、天牌は……?

 

 天牌は言葉を続ける。

 

「ソレトボクハヒセントウムキダカラダンマクゴッコニハアマリツカワナイデホシイヨー。デモ、アリスサンガボクヲツカイタイナラガンバルヨー(それとボクは非戦闘向きだから弾幕ごっこにはあまり使わないでほしいよー。でも、アリスさんがボクを使いたいなら頑張るよー)」

 

「う〜ん……もしもの時を含めてあなたのスペルカードも考えておくわ。その時は申し訳ないけどよろしく」

 

「リョウショウシタヨー。ジャアボクハシャンハイチャンタチトシンボクヲフカメテクルヨー」

 

 そう言いながら上海達に近づいて話そうとするけど……これからの上海達の行動を告げた。

 

「……時間が時間だからそろそろ上海達は寝るわよ?」

 

「……ザンネンダケドリョウショウシタヨー」

 

 天牌は残念そうな声を出したけど、静雅の作った妖怪の人形の隣に座り込み、寝始めた。それと同様に上海達も眠くなったのか、それぞれの定位置に座り寝始めた。

 

 上海達は眠ることで魔力を節約できるから。いざというときは魔力がなきゃ困るし。

 

 人形達も眠りにつき始めたので、私も寝室に向かい眠ることにした……。

 

 

 

 

 

 

 

 次の日の朝。この日は博麗神社で宴会の日だ。私は起き上がり、静雅がいるであろう部屋に行く。その部屋に行くと天牌が私の元にやってきた。

 

「オハヨウアリスサンー」

 

「おはよう。静雅はまだ寝てるのかしら?」

 

「ボクニメモヲワタシテデテイッタヨー」

 

「え? そうなの?」

 

 私は部屋を見渡してみると、テーブルの上に伏していた静雅はいなくなっており、掛け布団がたたまれている。

 

 そして天牌からメモを受け取り読んでみる。

 

『アリスは寝ているだろうからこの人形、天牌にメモを渡しておく。この人形は何なのかは天牌自身に聞いてくれ。時折ふざけるが、基本的には真面目な性格だ。アリスがツッコミに疲れたときは代わりにしてくれるだろう。オレがいなくなっていることに疑問に思うだろうが、博麗神社に行って霊夢と共に侠を奪還してくる。宴会の時にまた会おう──』

 

 ふーん……そういえばそんなことを言っていたわね。というより奪還しなくても帰ってくるんじゃないかと思うけど……?

 

 ……ん? メモにまだ続きが──

 

 

 

『──P,S 布団ありがとな。アリスはきっと良い嫁さんになれる(確信)By静雅』

 

 

 

「──お、お嫁!?」

 

 何最後に追伸でそんなことを書いているの!? ただ布団を掛けてあげただけじゃないっ!?

 

「か、風邪を引かないようにしてあげたんだから勘違いしないでよね!」

 

「アリスサンハツンデレー」

 

「天牌っ!?」

 

 私の言葉に天牌は言葉を発した!? 天牌は言葉を続ける。

 

「ソウイウハンノウヲトルカラミンナニアリスサンハイジラレルンダヨー」

 

「い、言い返せない……そもそも周りにまともな奴がいないからこうなるんじゃないの!? 誰かが間違いを正さないといけないのよ!」

 

「ソノフタンヲボクガヘラスヨー。コンカイノエンカイトナルトイジラレルノガカクテイテキダヨー」

 

「……一応聞くけど、何で?」

 

 天牌の言葉が気になり、私は問いかけたけど──

 

 

 

『ヒトリグラシノジョセイニダンセイガオトマリノコトヲキカレタラアウトダヨー』

 

 

 

「…………」

 

 人形に言われて気づいた。そういえばメモにはそのまま博麗神社に行くと。そもそも紅魔館に静雅は泊まるって事を伝えているのかしら……?

 

 ……うわぁ。宴会に行きたくない……。

 

 そんな私を見てか、天牌は私の周りを飛びながら回り始める。

 

「タブン、ダイジョウブダトオモウヨー」

 

「……え? 何で?」

 

「ボクハシズマサノキオクノバックアップダカラダヨー」

 

 ……ちょっと言っている意味が分からない。この人形には色々な秘密があるのかしら?

 

「シンパイナラボクヲツレテエンカイニイクトイイヨー。アリスサンノフタンハヘラセルトオモウヨー」

 

「……はぁ。疲れないことを祈るしかないわね……」

 

 私は今日の宴会のために身支度をし始めた……。

 

 

 




 人形の新キャラ、天牌。とある章ではこの存在が重要になる予定なので。

 次回はフラグ回。

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