幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 デジャブ? それは仕方ないことです。本当に。
 とある場面でのアリス視点。
 では本編どうぞ。


二話 『人里での話【裏の場合】』

「しっかしあれだよな? オレが作った人形に興味があるのか?」

 

「作った人形というよりもその過程が気になるのよ。私とどんな違いの作り方、技術が知りたいの」

 

 人形の布を選ぶためにお店の前で品定めをしている私達。その中で静雅が品定めをしながら話しかけてくるのに私は答えた。そして静雅は話を続ける。

 

「今回はフラン嬢の望み通りに布や綿で作った人形を作ったが……外界では違う呼び方でいろんな人形があるんだぞ?」

 

「……へぇ? 具体的にどのような人形があるわけ?」

 

「アリスの作った人形とは違って、代表的なのは変形する人形とかある。通称ロボット。複数のパーツという名の人形を組み合わせると完成するものもある」

 

「変形……? 外界では人形が違う形に変化するの?」

 

「それもあるな」

 

 静雅は私の言葉に頷き、話を続ける。

 

「外界の人形は中には変形したりするんだぞ? そういうのは男受けが良いんだ。ロボットにはロマンが詰まっているからな。でも、ここにはプラスチックとかブリキとか外界特有の素材がないからなぁ……」

 

「変形する人形……アイデアとしてはいいわね。でも、今までの人形の技術で出来るかしら……?」

 

「そこは人形使いとして頑張れ。オレは茶でも飲みながら応援するから」

 

「手先が器用なんだからそこは手伝いなさいよ……」

 

 そもそも私があなたを呼んだ理由は静雅自身が作る人形の過程を見るためなんだけど……。

 

 

 

『静雅、マーガトロイド。奇遇だね』

 

 

 

 急に私達に話しかけてくる声──振り返って確認してみると、白玉楼に居るはずの辰上侠が近くにいた。それと同時に白玉楼の半身半霊である魂魄妖夢もいる。二人は買い物袋を持っていて、少し中身が見えて食材があった。もしかすると主である西行寺幽々子の命令で一緒に人里に来たのかもしれない。

 

 それにいち早く気づいた静雅は侠に話しかける。

 

「おっ? その聞いた覚えがある声……侠じゃないか! 確かお前さんはオレとの戦いで冥界に召されたはず!」

 

「召されてないよ(怒)」

 

「何勝手に友人を殺しているのよ……? むしろ負けたのはあなたの方じゃない?」

 

 静雅のふざけにきちんとツッコミを入れる侠。

 

 ……彼には悪いけど私の負担が減ったわ。

 

 それに対して静雅は何ともないように答える。

 

「いや、実際に侠が死人が逝く冥界の白玉楼に行ったというから。言っておくべきと思ってな。他意はない」

 

「ま、いつも通りの運転で安心したよ。静雅」

 

「この静雅を舐めちゃいかんぞ?」

 

「ペロペロ飴みたいなことは絶対しないから安心すると良いよ」

 

「おっと、これは一本取られた」

 

 静雅と侠は会話を終えると……何故かハイタッチをした。やる理由は分からなかったが、何故か侠の表情は心なしか楽しそう。

 

 侠の隣で少し呆然としている妖夢に静雅は気づき、話しかける。

 

「お前さん……侠の彼女か?」

 

「かかか彼女っ!? いえその私は──」

 

「てっきりその荷物とか見ているとどこぞの新婚夫婦かと思ってな。で? どうなんだ?」

 

 ……初対面なのに弄り始めた。あなたには慎みや遠慮というものはないの?

 

 妖夢はこういうことに慣れていないのか焦り、それに対して侠は──

 

「いや、違うよ」

 

 真顔で否定した。まぁ、事実なら良いとは思うんだけど……迷いのない答えに妖夢は複雑そうにしているわよ?

 

 でも侠はそんな妖夢に気づかず、話を続ける。

 

「この娘は魂魄妖夢。種族は半身半霊で、白玉楼の庭師兼剣術指南だよ。静雅が思っているようなことはない」

 

「半身半霊……その人魂もどきは何だ?」

 

「魂魄曰く、自分の半霊。感覚を共有しているんだって」

 

「ふ〜ん……そうか。知っているかと思うがオレは本堂静雅だ。侠の事をよく知りたいならオレに聞くと良い」

 

「人の情報を売るな」

 

 静雅のふざけに侠は手刀でツッコミを入れる。

 

 一応妖夢も礼儀だと思ったのか、静雅に向き直り改めて挨拶をし始めた。

 

「侠さんが説明してくれた通りですが、魂魄妖夢です。以後よろしくお願いします」

 

「おう。いろいろお前さんのことを弄るだろうがよろしく」

 

 堂々と宣言したわよこいつ。妖夢はその言葉が嘘か本当か迷っているような顔をして苦笑いしているし……。

 

 でも、妖夢は切り替えて今度は私に話しかけてくる。

 

「アリスさんは静雅さんと一緒にどうしたんですか?」

 

「……ちょっとね。外界の人形のことを聞きつつ、他に材料がないか探しているのよ」

 

「え〜? アリス〜オレ達デートの真っ最中じゃん? デートって言おうぜデートって」

 

 この期に及んでデートと静雅は言い続ける。ふざけるメンツじゃないだけましだけど少ししつこい。

 

「……もうツッコムのに疲れたわ……」

 

「だが本来突っ込むのはオレのジャベリ──」

 

「はい、禁則事項ー」

 

 静雅は何か言おうとしたが──何かに察したであろう侠は静雅を殴り飛ばした……躊躇なさ過ぎない? 静雅が何か言おうとしたかはともかく。

 

 侠は私に振り返り、労るように話しかけてきた。

 

「とりあえず……お疲れ様。静雅の相手」

 

「……あなたじゃないと静雅は押さえられないのよ……何とかならない?」

 

「残念ですが、それは不可能だと。頑張ってツッコミ役か、静雅を上回るボケをしてください」

 

「せめてあの男の取扱説明書はないの?」

 

「作っても良いけど、面倒くさい。とりあえずこれで少しは落ち着くと思うから。頑張って」

 

「あなた達の力関係が気になるわ……」

 

 見た感じ侠の方が力関係は上よね。どうしてそうなったかは気になるけど。

 

 話をし終えた侠は声をかけながら静雅の手を引っ張り立たせる。

 

「静雅。羽目を外しすぎ。もう少し自重して」

 

「オレも言ってて思った。気をつける」

 

「よろしい」

 

 侠の言うことを素直に聞き入れる静雅……できればあの時の紅魔館にいて欲しかったわ……。

 

 彼の話が終わるのを確認した静雅は話題を変えて侠に話す。

 

「……一応、侠は人里にいるわけだが霊夢に会わなくて良いのか?」

 

「博麗に?」

 

「そ。何だかんだ霊夢はお前さんがいなくて寂しがっていたぞ?」

 

「う〜ん……自分がいないぐらいで寂しがるとは思わないんだけど……」

 

「某亀の大魔王にお前さんが攫われたとして、霊夢は某赤の配管工の様に侠を取り返そうとしてたんだぞ?」

 

「……自分、桃姫扱い?」

 

「そんぐらい心配かけているんだ。一言でも声をかけてやったらどうだ?」

 

 途中言っていることが分からなかったけど、静雅は侠に霊夢に会わすように促す……静雅が霊夢を煽ったせいで怒っていなかった? しかも霊夢は侠が帰ってきたらしばくって言っていたような気がするけど……?

 

 その事を知らない侠は静雅の考えに乗ろうとし、了承する。

 

「じゃあとりあえず博麗神社に行ってみようかな?」

 

「良いんじゃないか? オレの能力で送り迎えをしてやろう」

 

「ん。ども」

 

「侠は静雅の能力に疑問を思わないわけ?」

 

 侠は博麗神社に行くことを肯定し、能力で送ってくれるという。

 

 ……順応が早すぎない? 侠?

 

「気になるよ。本当に静雅の能力って何?」

 

「トップシークレット……と言いたいところだが、侠には特別に教えてあげよう。オレ達親友だしな! アリスは関係が発展したら教えると言うことでおけ?」

 

「これ以上関係が発展するとは思えないんだけど……?」

 

 関係の発展……うん、これ以上は絶対ないわね。

 

 そして耳打ちが終わったのか……侠は苦笑いをしながら反応を返した。

 

「……うん。使われたら絶対勝てないね」

 

「そうは言っても奇襲以外は常にチートオンじゃないけどな。じゃあ早速博麗神社に──」

 

 静雅が促そうとしたときだった。妖夢は突然侠の上着を掴み、引き留めた。それに当然私達は疑問に思って、侠は理由を尋ねた。

 

「? どうしたの?」

 

「(……いてください)」

 

「? 何て?」

 

「今日は……白玉楼で……ず、ずっと私と一緒にいてください……」

 

「え……? どうして?」

 

「だ、ダメ……ですか……?」

 

 上目遣いにして、必死に侠を引き留める妖夢。その顔は赤く、恥ずかしながらも意思を伝えている。

 

 ──まさかだとは思うけど──

 

「妖夢……あなたもしかして──」

 

「──いやはやこれは申し訳ない! 侠と妖夢はデート中だったな! それで他の女の話を出してしまうとはすまんな! 気が回らなかった!」

 

「いや、静雅……デートじゃないんだけど……」

 

 言葉を遮って謝罪する静雅。侠も一部の静雅の言葉を否定したけど……露骨に会話を反らしたわね。それで静雅の言葉で妖夢は顔を赤くしているし……。

 

 私の疑念の目を気にしないようにして静雅は言葉を続ける。

 

「よくよく考えてみれば白玉楼で過ごすのは実質今日で最後みたいなもんだろ? 霊夢とは明日会えるしな。まぁ、その際にオレと霊夢で白玉楼にお邪魔する予定だからそん時に会えるだろ。だから侠、最後に親睦に付き合うという意味合いでその娘のワガママに付き合ってあげとけ」

 

「…………それもそっか。じゃあ白玉楼に戻るよ」

 

 静雅の言葉に納得した侠。静雅は私に促すように歩き始めて私に話しかけてくる。

 

「それがいい。じゃ、アリス。オレ達もデートの続きだ!」

 

「はっきり言わして貰うわ。これはデートじゃない」

 

「おう、厳しい」

 

 お店から少し離れた後。静雅は思い出したように振り返ってこう言った。

 

「明日の宴会楽しもうなっ!」

 

 そう告げて私達は侠達と離れた……それと、宴会?

 

「明日宴会があるの?」

 

「らしいな。今日寺子屋でオレの仕事が終わってフラン嬢を能力で送り届けたときに、橙って子があると伝えてきた」

 

 橙っていうと間接的には紫の式神よね。直接だと藍の式神だけど。

 

「やっぱり場所は博麗神社で……やる理由はこの前の異変関係ね」

 

「察しがいいな、アリスは。同時にオレと侠の歓迎会もあるらしいな……ところでやっぱり宴会となると酒が出てくるのか?」

 

「そりゃあ出るわよ。お酒のない宴会なんてないわ」

 

「…………そうか」

 

 何か疲れているような表情を見せる静雅。もしかしてお酒が苦手とか? そうするとかなり意外ね。

 

「もしかしてあなたってお酒が苦手なの?」

 

「いや、オレは隠れて結構飲んでてそれなり強いんだが……侠がな、問題があるんだ」

 

「ふ〜ん……侠はお酒が弱いの? 飲むとすぐ寝たりするとか」

 

 普段常識人として過ごしている侠のイメージだとそんな感じよね。

 

 でも……静雅の表情が真面目そうになった。普段ふざけているのに何故かこの場面で。

 

「アリス……絶対侠に酒を飲ませるなよ? 振りじゃないからな」

 

「……何か侠に飲ませると酒乱になるの?」

 

「それより質が悪い。本人には酒を飲んだら二日間眠り続けると伝えているが……酒を飲んで眠るまでが、な……。だからアリス、お前さんには宴会に参加して欲しいんだ。侠のもしものストッパーとしてもな……」

 

 何かを悟っている風に表情を表している静雅。こんな疲れている表情を見た事がないわね。

 

 ……それほどお酒を飲ませると大変なことになるって事? 二日間眠り続けるのも凄いと思うけど……それと同時に気になるのも事実。でも、詮索は止めておきましょう。ふざけている静雅がこんな表情になるぐらいだもの。

 

「わかった。侠が何かの手違いで飲みそうになったときは止めるわ」

 

「ありがたい。その時は頼む」

 

「じゃあ他のお店を見てみましょうか。まだ私が持っていない材料があるかもしれないし」

 

 静雅との話は終えて、私達は他のお店を回った……。

 

 

 

 

 

『あやや♪ これはこれは中々興味深い組み合わせですね♪ それと宴会ですか……異変の発端者と解決者の宴会……ネタが盛りだくさんですね!』

 

 

 

 




 表の章でのアリス視点での話。たまに違う視点での話が書きたくなる。

 ではまた。

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