幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 多分最初で最後の推理パート……だと思う。前半ですが。
 アリス視点。
 では本編どうぞ。


三話 『表主人公考察記』①

「しっかし……こう見てみると男のオレって浮いていないか?」

 

 パチュリーの使い魔の淹れた紅茶を飲みながら静雅が言う。一応、私がその事について意見した。

 

「でしょうよ。紅魔館で雇っている男はあなただけというし、侠は白玉楼に居るんでしょ? 浮くのは当然じゃない」

 

「……何で男の実力者っていないんだろうな……?」

 

 静雅が呟くようにしていいながら紅茶を飲む。

 

 話を続けたのはパチュリー。

 

「辰上侠が神社に帰ってくるのは三日後……妖力の根源を調べたいわね」

 

「……え? 侠って妖力なの?」

 

 私のふとした疑問に魔理沙が答える。

 

「そういやアリスは知らなかったな。侠の力の根源は妖力らしいぜ?」

 

「侠はただの人間のはずでしょ!? 何で霊力じゃないのっ!?」

 

「そんなことを言われても私は知らないぜ」

 

「そうよねぇ……侠が妖力を持っているからといっても妖怪の気配も全然しないし……唯一感じるとしたら弾幕を出しているときだし」

 

 霊夢も会話に参加してくる。さすがの霊夢も侠が妖力を持っていることに疑問に思っているのね……。

 

 

 

『あら? 私は常に妖力を感じているけど?』

 

 

 

 図書館の扉の方から声が聞こえてくる。私達が囲っている机のそばに来たのはこの紅魔館の主、レミリア・スカーレット。両隣に十六夜咲夜、人形をたくさん持っている妹のフランドール・スカーレット。

 

 紅魔館の主でもある彼女も会話に参加してきた。

 

「話題はあの自称人間のこと? なら私も会話にいれてくれないかしら?」

 

「まぁ、レミリア嬢はここの主なんだし良いんじゃないか?」

 

 レミリアは近くにある椅子に座りながら聞き、答える静雅。

 

 主に向かって普通にタメ口で話すのね……。

 

「レミィははっきり感じ取れるのね。私は集中しないと感じ取れないけど」

 

 レミリアに話したのは親友らしいパチュリー。

 

「ふーん……私みたいな吸血鬼妖怪のみ感じられるのか……霊夢、あのスキマ妖怪は侠から妖力を感じているのかしら?」

 

「感じてるみたいね。おまけに萃香も感じてるみたい」

 

「……どの方も幻想郷の実力者。そういう方々は妖力を感じ取れるみたいですね……」

 

 レミリアの質問に霊夢は答え、咲夜が要約する。こんな時でも主のことを持ち上げることを忘れない。

 

 咲夜の言葉を聞いて静雅はこう発言した。

 

「幻想郷の実力者……そうなると大妖怪である幽香も感じることが出来るのか……?」

 

 ……今、知り合いの名前を呼んだ気がするのは気のせい? ……気のせいよね……?

 

 でも、現実は甘くなかった。魔理沙が静雅の発言に問う。

 

「……静雅、お前今『幽香』って言わなかったか? 四季のフラワーマスターの風見幽香か?」

 

「おー。やっぱ知ってんだな。何せオレとフラン嬢は幽香とお茶した仲だからな。そうだよなフラン嬢?」

 

「うん!」

 

 静雅の問いかけにフランドールは同調した。

 

 ……あの幽香と……お茶っ!?

 

 その事に驚いていると、レミリアは呆れたように言葉を返す。

 

「荒人神は大妖怪の心を荒らせるんだもの……聞いたときは呆れたわよ。わざわざ観光スポットの看板で書いてあったからという理由で太陽の畑に行くんだから……」

 

「でも向日葵は綺麗だったぞ?」

 

「綺麗だったよねーっ!」

 

 静雅の言葉にまた同調するフランドール。

 

 というより……フランドールのことなんだけどこんな無邪気な性格だったっけ? 聞いた話だと荒れているって聞いたことがあるんだけど……?

 

 それに……現人神?

 

「静雅って人間じゃないの? 外界から来たのに」

 

「何か送り込まれている途中で突然変異を起こしたみたいでなー。ちなみに荒人神の字は荒れる人の神様な。一応はオレも神様の分類なんだ」

 

「……ちなみにどんな神様?」

 

「神々を滅ぼす神。説明は察してくれ。同じ説明はめんどくさい。他の神を滅ぼすつもりはないからな」

 

「はっ!? そんな神いるのかよ!?」

 

 静雅の言葉に魔理沙も驚いた。どうやら魔理沙も知らなかったみたいね。霊夢は知っているのかどうか知らないけど気にしないで私のクッキーを食べてるし……。

 

 それを見かねたのかパチュリーは手を叩いて注目を集める。

 

「話を戻すわよ。一応、私なりに何故辰上侠が妖力を持っているのか調べてみたわ。そして、それっぽい文献を見つけたの。こぁ、アレを持ってきてくれる?」

 

「は、はい! ただいま!」

 

 パチュリーは使い魔に指示を出した後、少し経った後に本を持ってきた。パチュリーは本を受け取ってあるページを開いて机の中心に置く。

 

 その場にいた私達はのぞき込むように見る。そして私は無意識的にその見出しを読み上げた。

 

「……『先祖返り』?」

 

「そう。先祖返りよ。妖力を持っている理由はこれかもしれないわ」

 

 先祖返り……余り私はそういうのに詳しくないわね……。

 

 おそらくほとんどの人物は分からないかもしれない。その中で咲夜がパチュリーに尋ねる。

 

「あの、パチュリー様……先祖返りというのは一体何でしょうか?」

 

「先祖返りというのは表向きにいうなら、先祖にはあったが現在では現れない形質が、突然その子孫の個体に出現すること。帰先遺伝とも言うわ。でも、普通は祖先が人間同士ならこういうことは起きにくいわ」

 

「それはつまり……祖先が人間同士じゃないってことですか?」

 

「その通りだと思うわね。辰上侠の祖先は妖怪と交わったことがあるのよ。裏では妖怪と交わった家系が、突然その妖怪の特徴を引き継ぐ事がある。先祖返りとして生まれた子供は家系を繁栄にするという言い伝えがあると言われている。家にとっては重宝される存在よ」

 

 咲夜の問いにわかりやすく説明する。先祖返り、ねぇ……幻想郷にはそういう人物はいないような気がするわね。

 

 レミリアはそれを聞いて簡単に答えた。

 

「なら簡単じゃない。自称人間の能力である【体を龍化させる程度の能力】はその表れ。何故祖先がそれか分からないけど、【龍】として特徴が出ているわ。その先祖返りよ」

 

「……それは違うんじゃないか?」

 

 一見レミリアが納得するような説明をしてくれたけど、魔理沙がそれを否定した。

 

「……何でそう言えるのよ?」

 

「確かには……仮の侠の家系はそうだと静雅が言っていたんだが……何て言ったら良いのか……」

 

「……はっきり言いなさいよ。私の説明が何処が間違っていたのか」

 

 魔理沙は何か知っていそうだけど、何故か言いづらそう。そんな態度にレミリアは機嫌を悪くしている。

 

 ──そこに、さっきまでクッキーと紅茶を飲んでばかりしていたあいつが発言する。

 

 

 

 

 

「──侠の言っていた通りだと、自分の祖先は分からないらしいわよ?」

 

 

 

 

 




 後半へ続きます。

 フラグ回5の回収……どこかの月刊誌に、それを題材にした漫画があるんですよね。私は毎月購読していますが。

 最後に発言したのはもちろん、あの人。

 ではまた。

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