特別な会話が無い限りこの章、ずっとアリス視点です。注意。
では本編どうぞ。
一話 『集まる者達、紅魔館の男』
……上海のほつれを紅魔館のいる男が直して三日後のお昼、私は紅魔館の前に立っていた。一応、手土産にクッキーを作って持ってきたけど……紅魔館にどうやって入るか考えていた……目の前の寝ている門番を起こした方が良いのかしら……?
まぁ、正確には【達】、なんだけど。
『アリス〜やっぱりここは強行突破で良いだろ。責任はそこにいる中国にあるわけだし』
「だから却下って言っているでしょう。ていうか何であなたまで本当に着いてきているのよ?」
「静雅に喧嘩を売りに」
……追い返した方が良いような気がする。
喧嘩を売りに来たという目的で来た人間の魔法使いの霧雨魔理沙。色々と腐れ縁。後騒がしい。
魔理沙の対処を考えていると、誰かがこちらにやってくる気配がする。魔理沙も感じたみたいでその方角を見ると、見覚えのある姿が見えてきた。
『? あんた達こんなところで何しているのよ?』
意外に来たのは博麗霊夢だった。こんな所に来るだなんて正直意外ね……。
「あなたこそどうしたのよ?」
「静雅に会いに来たのよ。ちょっと野暮用で」
「何だ。霊夢も静雅に用があるのか。アリスも静雅に用があるんだぜ」
「ふーん、そ」
「……興味がなさ過ぎるだろ。お前」
「霊夢は大体そんな感じでしょ。今さら気にしてもしょうがないわよ」
魔理沙からの情報を興味がなさそうに適当に相槌をうつ霊夢。
霊夢は関心事が少ないせいか、余り興味事がないのよね……でも、静雅に用があるなんて珍しいわね……。
思い返していると霊夢は寝ている門番に近寄り何か呟くと……門番は飛び上がって起きた。
「えぇっ!? そこまで私の立場はないんですか!?」
「嘘よ。そんなこと私が知るはずないじゃない」
「……よかったぁ……心臓に悪いですよ……」
「寝てるあんたが悪いんじゃない」
「うっ……」
……何を言ったのかしら?
改めて霊夢は門番に話しかける。
「それで? 今日はどう?」
「あ、はい! 今日は静雅さんいますよ! それではどうぞ!」
「ん」
霊夢達は話していると門番は紅魔館への道を……譲った!?
その光景に魔理沙も疑問に思ったようで門番に話しかける。
「お、おい! 中国! 何で霊夢を紅魔館にいれているんだぜ!?」
「だから中国じゃないですよぉ……。霊夢さんは前々から静雅さんに用があるみたいなのでお嬢様から許可をいただいているんですよ。静雅さんがいるとき限定ですけど」
「前々からここに来てたんだけどその時に限って静雅は外出中だったのよ。それで後日って事で来たわけ」
……霊夢の言い分はわかったんだけど──
「普段のあなたなら強行突破しているんじゃないの?」
「だよなぁ……」
私の言葉に魔理沙は相槌を打つけど、霊夢は機嫌を悪くしたように言う。
「失礼ね! 目的の奴がいないと知ったらそんなことをしないわよ!」
……珍しくまともなことを言っている。居候の侠の真面目なところでも移ったのかしら……あ、そういえば今は白玉楼に居るんだったわね。
霊夢がこのまま通れるのなら便乗でもしてみようかしら。
「私もその男に用があるんだけど良い? 私の人形のほつれを直してくれたみたいだからお礼をしにきたの」
「あ、そうなんですか……まぁ、お嬢様に確認を取ってから──」
『──客人は通すよう、お嬢様は許可したわ』
急にそこに現れた人物……紅魔館のメイドが現れた。確か十六夜咲夜だったはず。現れたのに対応して、門番は話しかけた。
「あ、咲夜さん。いいんですか?」
「えぇ。お嬢様が言っていたから良いわ」
咲夜の「客人は通すよう」という言葉に、魔理沙は反応して咲夜に話し掛けた。
「じゃあ私も良いだろ? 静雅に弾幕ごっこを申し込みに来たぜ」
「……また負けるんじゃないの?」
「失礼な。私だってそれなりに作戦を考えたりしてるんだぜ」
メイドの咲夜の疑問に魔理沙は答えたが、咲夜から霊夢、美鈴の順番に――
「無理ね」
「無理よ」
「無理ですよねぇ……」
「……ひどい言われようね、魔理沙」
「……皆酷いぜ」
逆に気になるわね……どうやって魔理沙に勝つのか。
メイドの咲夜は話を戻す。
「まぁ、お嬢様はあなたも含めて良いと言っていたから良いわよ」
「……この怒りを静雅にぶつけておくか……」
私達は咲夜に着いていった……。
着いた場所は図書館。咲夜はいったん消えてどこかに行った。そこには管理している魔女のパチュリー・ノーレッジとその使い魔がいた。使い魔は本の整理をしている。
パチュリーは私がいるのかが不思議そうに話しかける。
「霊夢や魔理沙がいるのはともかく、あなたはどうしたの?」
「……私の人形のほつれを直してくれたみたいでね。それで一応お礼って事でこれを持ってきたのよ」
私は手から下げているバスケットを見せる。
あることに気づいたのか、パチュリーは相槌をしたように話してくる。
「あー……だから妹様は人形を欲しがってたのね。それで静雅は作っていると」
「は? あいつ人形作れるのか?」
「さぁ? 手先は器用だけどそこまでは知らないわ」
「で? 静雅はどこにいるの?」
魔理沙は疑問をぶつけた後、霊夢は静雅の所在を聞く。
「妹様の部屋で今作ってると──」
『パチュリーっ!』
説明しようとしたところで女の子の声が聞こえてくる。声のした方に視線を向けてみると、宝石を付けたような羽根に、少女がたくさんの人形を抱えてやってきた。
……人形?
その少女は持っている人形達をパチュリーに見せながら言う。
「見て見て! 静雅が私達の人形を作ってくれたんだよ!」
「……私の人形もあるの? それにレミィや咲夜、美鈴にこぁ……妹様もそうだけどちゃっかり自分の分も作ってるわね……」
「お姉様達にも見せてくるね!」
その少女は人形を抱えたまま図書館を出て行った。
……一瞬だけだったけど、結構精密に作られていた。上海人形に似た作りだったような気がするけど……私とは違った感じ。それでも独特な個性が感じられた。
『あー……疲れたー……』
さっきの少女が現れた方向に男の声が聞こえた。頭をかきながらだるそうに歩きながらこちらにやってくる。服装は多分執事服なのだろうけど……着崩して着ている。
……侠とは違った雰囲気を持つ男ね……。
おそらくその男──本堂静雅はパチュリーに声をかけられる。
「お疲れ様。よく短い時間であそこまで作ったわね?」
「一つ人形を作り終える度に笑顔でリクエストしてくるんだぞ? 一通り作ったと思ったら今度はオレの人形も作れって」
「手っ取り早く能力で作らなかったの?」
「いや、それは違うだろう? あれは一から作るからこそ愛着が湧くものだと思うぞ?」
そう言いながら近くにある椅子に座る静雅。欠伸をしながら背中を伸ばしながら辺りを見渡したところで、私に気づいたのか話しかけてくる。
「? お前さんは誰だ?」
「あ……アリス・マーガトロイドよ。私の人形のほつれを直してくれたのはあなたでしょ?」
「……あぁ。あの人形の持ち主か?」
「そうよ。そのお礼って事でこれ」
私は静雅にクッキーの入ったバスケットを渡す。そうすると静雅はだるそうな表情から変わる。
「おぉっ!? 疲れているときにクッキーの差し入れとはっ! 小悪魔ーっ! 悪いが紅茶入れてくれるかーっ! 小悪魔にも分けてやるーっ!」
『も、もう少しで整理が終わるので待っててください〜』
「よっしゃ!」
──欲しいものが手に入った子供のようにはしゃぎ始めた。
え……何? このギャップ? さっきまではめんどくさそうな態度の独特な雰囲気だったのに、魔理沙のようにテンションが高くなっている。
異様にテンションが高くなった静雅は私に話しかけてくる。
「クッキーありがとなっ! 一応、もう知っているとは思うがオレは本堂静雅だ! これからもよろしく頼む!」
「え、えぇ……よろしく」
「……異様にお前テンションが上がりすぎじゃないか? クッキーぐらいで」
私は戸惑いながら挨拶をするが、魔理沙は静雅の状態に疑問を持っている。普段はこんなにテンションは高くないみたいね。
「いやいやこれは嬉しくなるイベントだって! まさか人形を直すことがアリスの出現フラグだったとは……しかも別嬪さんだし、クッキーはうまそうだし、オレのアリスへの好感度は六ポイント以上は確定だな! まさかのアリスルートかっ」
「……何を言っているのか意味不明だぜ」
「まぁ、逆にオレの言ったことを理解できた幻想郷住民がいたらビックリするわ」
変な言葉を並べてた後、魔理沙のツッコミにツッコミ返す静雅。
でも……さっき『別嬪さん』って言わなかった……? 私の気のせい……?
そんな様子の静雅だったけど……霊夢は話しかけ始めた。
「あんたがさっき何を言っているかは意味不明だったけど、ちょっと頼みたいことがあるのだけど良いかしら?」
「……まぁ、とりあえず言ってみてみ?」
「侠をあんたの能力で白玉楼から連れ戻して欲しいのよ」
「あ、無理」
……霊夢の頼み事を一瞬で断った!? 霊夢もそれは予想外だったのか、少し焦りを含みながら彼に問いかける。
「ちょっ!? いきなり私も話したけど断るのが早すぎない!? せめてもう少し躊躇しなさいよ!? しかも何で無理なのよ!?」
「オレの能力を万能だと思っているんだろうが……移動させる関係はオレの行った場所に限定だ。わかりやすく言うなら、移動方法の過程をいれて行ったことのある博麗神社はできるが、行ったことのない白玉楼は無理なんだ」
「そ、そうなの……」
「まぁ、侠がいなくて落ち込む気持ちは分かるが元気出せ。小悪魔が紅茶を入れてくれるからな」
「……紅茶よりお茶の方が良いわ」
「アリスのクッキーを分けても良いか?」
一応なのか私に許可を求める。
「まぁ、いいんじゃない?」
「オレの無力さは小悪魔の入れた紅茶とアリスの作ってくれたクッキーで我慢してくれ」
「仕方ないわね。それで手打ちにしてあげる」
「さらっと静雅は何もしないのね……」
ある意味霊夢は騙されかけているところをパチュリーが指摘する。よくよく考えたらお詫びは全部人任せじゃない……。
そこを指摘された所為なのか、静雅は話を続ける。
「今ならサービスで三日後にオレも侠の奪還を手伝おう。オレも八雲紫から聞いたんだが、一週間の期限なんだろ? 白玉楼に乗り込むって事でどうだ?」
「絶対よ。その時にあんたを借りるわよ」
「了解した。午前中には博麗神社には行く」
「(……それ私のセリフなんだけどな……)」
霊夢の言葉に頷く静雅。案外、この二人仲が良いわね……?
それと……一週間で帰ってくるなら待てば良いのに何で早く取り戻そうとしているのかしら? そこまで侠の事が必要なのかしら……家事的な面で。
話し終わったのを確認したのか、魔理沙は少し興奮気味で静雅に話しかける。
「静雅っ! 私と弾幕ごっこだ! 今日こそは勝たせて貰うぜ!」
「おう? 弾幕ごっこか? いいだろう! 今のオレはテンションがハイだからな! 手加減はできんぞ!」
「望むところだぜ!」
魔理沙は箒に乗り飛翔。それに対して静雅は何かのケースを手元に出現──
「──ってちょっと待ちなさいよ!? さっきそのケース持ってなかったわよね!?」
「ん? これか? 部屋から持ってきた」
「持ってきたって一瞬でそれを出現させなかった!?」
「オレの能力の一部だと思ってくれても良い。あ、クッキーを机に置いておかないとな」
そう言うとケースとは逆の手で持っていたバスケットを──いつの間にか持っていなく、パチュリーの机に置かれていた。
「……訳が分からないわ」
「静雅は紫並みに訳が分からないわよ。理解しなくても良いと思うわ」
「……そういう考え方が出来る霊夢の頭が羨ましいわ……」
魔法使いとしてかせいか、今の現象がどのようしてなったのか凄く気になる。
……というより……。
「図書館で暴れてもいいワケ?」
「本来はダメよ。でも、静雅の能力で図書館に被害がないようにしていると思うわ」
「……霊夢達が勝てなかった理由、よく分かった気がするわ」
逆に何で侠は静雅に勝てたのだろうかものすごい疑問ね。
そして、魔理沙はスペルカードを掲げ宣言し始めた……。
次話は明らかに再戦。
裏主人公はギャルゲ脳疑惑ありだという。メタのような、メタじゃないような。
ではまた。