幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 今回は裏主人公のターン。ここからは話に合わせて三人称視点や他の人の視点を書くことがあります。
 この話は三人称視点です。
 では本編どうぞ。


裏・第一章
一話 『紅魔館、パーフェクトメイド』


 幻想郷には紅魔館という赤い洋館がある。その内部も赤く染められており、目も悪くなりそうな色で占めている。その赤い洋館の主──レミリア・スカーレットが住んでいる。

 

 彼女は過去に幻想郷を紅い霧で覆う異変を起こした。その理由は吸血鬼の弱点である【日光】を遮るため。しかしその異変は博麗霊夢をはじめとした異変解決者によって紅い霧は収まった。

 

 それからというもの、紅魔館に住んでいる吸血鬼姉妹、魔女、小悪魔、メイド、門番達は幻想郷の住民達と色々と触れ合っている。異変を起こしたとは関係ない。彼女たちは霊夢や魔理沙、ときには違う来訪者達と触れ合いながら今日の中を過ごしていた。

 

 そんなある日のことである。早朝から足りない備品があったので急ぎで買い物から紅魔館へ帰宅しているメイド服を着た少女──十六夜咲夜。

 

 彼女は優秀なレミリアの従者であり、紅魔館ではただ一人でしかいない種族での人間。紅魔館での家事はほぼ自分でこなすパーフェクトメイドでもある。下働きのメイドの妖精たちは彼女のことを敬愛を込めて【メイド長】と呼んでいる。

 

「(中国……また寝ていたらダーツにしてあげるから……)」

 

 実際に紅魔館には中国という名前の人物はいない。彼女のさしている人物は実際に中国っぽい服装を着ている紅美鈴(ほんめいりん)である。

 

 彼女は紅魔館の門番をしているのだが……寝ながら門番をしているのだ。立ちながら。普通に考えてみたら凄い特技なのであるが、寝ているおかげで侵入者……主に魔理沙に紅魔館に侵入されてしまっている。時には起きて魔理沙と戦うのだが、公平性のためスペルカードルール【弾幕ごっこ】に乗っといて勝負すると魔理沙のが上手。負ける可能性が高いのだ。仮にスペルカードではなかったら妖怪である美鈴が有利なのだ。しかし、むやみに命の危機になるような勝負事は禁止されている。だからスペルカードルールで戦っているのだ。

 

「(……お嬢様に相談して門番にもなれる人物を雇うべきでしょうか……)」

 

 今後の方針を考え、紅魔館に到着して美鈴の様子を確認しようとしたのだが、

 

 

 

 門番である美鈴がうつぶせで倒れていた。

 

 

 

「……また魔理沙にでも負けたのかしら……? これは本格的に考えなくてはいけない──」

 

 ナイフを取り出していつものように刺して美鈴を起こすつもりだったが、辺りを見渡して視界に入ったのは──

 

 

 

 黒い服を着て袖まくりをしている男がうつぶせで倒れていた。

 

 

 

「……? 何故男性がこの場に……? 何か紅魔館に用でもあったのでしょうか……?」

 

 咲夜はナイフをしまい、うつぶせになっている男の近くにより、声をかけてみる。

 

「すいません。意識はありますか?」

 

「………………」

 

 どうやら意識はないらしい。咲夜はうつぶせ状態から顔を見ることが出来るように男の体を半回転させてみる。

 

 その男の目は閉じられていたままだったが、人里の男達とは違い、ある意味無駄に整った顔つきをしていた。外見の歳も咲夜と同じように見える。髪は少し肩に掛かる程度で、左目の上の髪の部分は二本のヘアピンで留めてある。服装を見てみると黒い服をベースとしており、ワイシャツの襟元が出ており、ボタンは開いて、胸元が露出していて妙に色っぽい。咲夜はしばらく男を観察していたが……。

 

「(……っ!? 何意識がないからってじっくり私は見ているのよ!?)」

 

 咲夜は急に恥ずかしくなり、顔を一時的に背けた。幻想郷にも男はいるが、ほんの三十センチ近くの距離で寝ていてはだけている男の顔を見るのは初めてであった。

 

 そして彼の近くには私物であろうリュックサックが落ちている。

 

「……とりあえず、開いている部屋に寝かせてお嬢様に報告しましょう……」

 

 倒れている美鈴は無視し、男を担ぎ、リュックを持ってその場から消えた。

 

 

 

 

 

 

 

「お嬢様? 起きてなさいますか? 少々お話ししたいことがあるのですが……」

 

 男をベッドに寝かした後、レミリアのいる部屋の前に移動して、主人が起きているか確かめるためノックをする。この時間帯となると吸血鬼である彼女は寝ていることが多いのだが──

 

 

 

「えぇ。起きているわよ。用があるなら入りなさい」

 

 

 

「ありがとうございます」

 

 ──今回は起きていたみたいだ。咲夜は礼をしながらレミリアの私室へと入る。

 

 見た目が少女の子供が椅子にもたれかかっている。薄いピンク色の服を着て、帽子のような物を被っている。そして少し八重歯が長く、背中から出ている翼は悪魔の翼のよう。彼女が紅魔館の主、レミリア・スカーレットである。

 

「お嬢様。実は早朝、門の前に──」

 

「男が倒れ込んでいたのよね?」

 

 咲夜は説明しようとしたがすでにレミリアは知っていた。

 

「知っていたのですか……」

 

「えぇ。今日ちらっと美鈴の運命を見たときにね」

 

 レミリアの能力は【運命を操る程度の能力】。そのままの意味でその人物などのこれから予定されている運命を見ることも出来るし、運命を変えることができる反則的な能力でもある。今回の彼女場合は前者のようだ。

 

「美鈴、のですか……? それは何故でしょうか……?」

 

 咲夜は主に美鈴どのような運命であの男と関係があるのか気になったので聞いてみる。

 

 彼女の言い分はこうだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今日の美鈴の頭の上に、スキマ妖怪が落とした男の頭と美鈴の頭に当たるという運命をね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………はい?」

 

 咲夜はレミリアの言ったことに疑問を覚えたので、返事で聞き返してしまった。

 

 言った張本人はばつが悪そうに答える。

 

「…………仕方ないじゃない。そういう運命が見えたのだから…………」

 

 咲夜は今朝の状況を思い出す。そう考えれば美鈴は寝ていたのではなく、男と頭をぶつけて気絶したことを理解した。

 

 レミリアは顔の表情を元に戻し、咲夜に話を持ち出す。

 

「……そのことは置いておくとして咲夜。男が目覚めたらまず私に報告をしなさい。私が寝ているようなら起こしても構わないわ。彼の運命を見た後、今後どうするか決めるから」

 

「仰せのままに」

 

 レミリアの命令を受け、男が目覚めるまで咲夜はいつもこなしている業務に戻るため消えた……。

 




 裏主人公、一話で話さずに出ただけ(笑)。
 表主人公と比べると制服の着方が全然違います。制服はブレザータイプで、表主人公はちゃんとした服装で赤いネクタイをして、ブレザーのボタンを二つある内一つは留めています。裏主人公は袖まくりをしてブレザーのボタンは付けていない。ノーネクタイでワイシャツの襟や裾も出していてどこかチャラ男に見えないこともない。
 彼の名誉のために書いておきますが、心はチャラ男じゃありません。
 表主人公と体格を比べると、身長は175センチほどで体重は62キロほど。
 次回は裏主人公視点です。よろしくお願いします。

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