最初は表主人公視点。
では本編どうぞ。
唐突に言われた言葉。それが信じられなくて──
「…………ゑ?」
「…………は?」
「…………」←笑いをこらえている紫
「…………」←同じく笑いをこらえている幽々子
急な発言に自分とミスティアは呆然とするなか、紫さんとゆゆさんは顔を背けて笑いをこらえているように見える。
……何故魂魄の中でそうなった? どんな古風な責任感があったんだ。
とりあえず……魂魄の頭を冷やそう。
「魂魄、一応聞くけどそれはどのようにして責任を取るのかな?」
「…………っ」
「うん、今ので大体把握した」
どんな責任で取るか聞くと、魂魄の青白い肌がトマトみたく赤くなった。
とりあえずどんどんリラックスさせよう。
「そんな責任を取らなくても大丈夫だよ。でも、代わりにしてもらいたいことがある」
「ど、どんなことですかっ!? わ、私に出来る範囲なら……」
「そんな畏まらなくてもいい、簡単なことだよ。それは──気楽に接して欲しい。それで責任を取ってもらえれば良いよ」
「……気楽に接する、ですか?」
「そ。今まで結構距離を離れて関係を持っていたでしょ? 別にこれから魂魄が用事があるなら気楽に声をかけてもらいたい。何なら怪我が治った後、一緒に組み手をするとか。さっきも言った通り相談事があるときは気楽に接するとか。それでいいよ。魂魄も責任でそういう関係になるのは嫌でしょ? そういう関係については──ちゃんと、惹かれた自分の相手を見つけないとね」
「(…………別に私は侠さんなら…………)」
「言いたいことがあるならはっきり言う」
「い、いえ! 何でもありません! 迷惑をかけるかも知れませんが……改めてよろしくお願いします!」
「……よかったぁ」
魂魄が了承してくれた後、ミスティアは安堵した声を上げた。
…………。
話を終わったのを判断して、ゆゆさんは話しかけてくる。
「じゃあとりあえず白玉楼に戻りましょうか。私はもうお腹減っちゃったし。晩ご飯、妖夢おいしく作ってね!」
「努力はしますが……幽々子様、今夜は鶏肉を食べたいとおっしゃっていましたよね。それはどうしますか?」
「っ!?」
あ、ゆゆさんと魂魄の話でミスティアが怯えてる。とりあえずフォローしておこうか。
「ミスティアはダメですよゆゆさん」
「そうよね〜。そこの夜雀は侠がおいしくいただくものね〜」
「そういう意図で言った覚えはないんですけどねっ!?」
この人がそう言うと違う意味に聞こえるから不思議!
今の発言が気になって、ミスティアの方へと視線を向けてみると──
「…………あぅ」
「ミスティアも真に受けないようにね。冗談なんだから」
「(…………冗談じゃなくてもいいのに…………)」
「……ミスティア、無事に今日は帰って明日に備えておくように。寺子屋があるんだから」
危ないような感じがするので当たり障りのないことをいって帰宅を促した。
「う、うん……侠、早く戻ってきてね!」
ミスティアは羽ばたいて自分たちから離れていった。
自分は見送っていると、紫さん達は何やら小声で話している。
「(これからどうするつもり? 幽々子?)」
「(そうねぇ……妖夢、精一杯アピールしなくちゃダメよ!)」
「(あ、アピール……ですか?)」
「(そうよ〜。現時点だと夜雀のほうが好感度は高そうだからね〜。日々の積み重ねが大事よ〜)」
「(……そう、ですか……日々の積み重ねが……)」
「(まぁ、一番の障壁が霊夢だけど。本人は無自覚だけどね)」
「(あら? 霊夢も──)」
「紫さーん。そろそろ帰させてくれませんかーっ?」
自分だけ会話に省かれているので話しかけ、話題を戻した。
「じゃあ侠、残り三日間は白玉楼で仲良く過ごすのよ」
紫さんは白玉楼へのスキマを作り、それぞれ帰って行った。
〜side 妖夢〜
夕食を作って私と幽々子様、そして──侠さんで机を囲って食べた。幽々子様はいつも通りの食欲で食べていましたが、侠さんは……私の所為ですが右手で箸を使い食べづらそうにしていました。それでも……五分ほどで箸の扱いが問題なく扱えたことに少しビックリしました。
食事が終わり、洗い物を終えたところで自室へと戻り、今日のことを思い浮かべてみる私。
……今まで侠さんのことを知ろうとは思わなかった。私の早とちりでしたが……馬が合うとは思いませんでした。その時の私は侠さんのことを人として好きではありませんでした。
ですが……本日やった弾幕ごっこで侠さんの強さを思い知りました。頭が良く、行動が早い。それに今更ですが……口調も変わっていました。
『──俺に委ねろ』
…………っ!? 何を思いだしているのですか私は!? 戦いの中では意識をしないようにしていたのに……!
ま、まぁ……そして、今回のことで……たくさん教わった気がするのです。
自分で先に行動をしないで、きちんと確かめること。これが今回で学んだことだ。
そして……祖父の言っていた意味が──
『よう〜む〜っ!(もにゅ)』
「みょんっ!? ゆ、幽々子様!? ど、何処を触っているんですか!?」
幽々子様が急に背後から抱きつき、む、胸を揉んできました!? 人が今日のことを振り返っていたのに何をしているんですか!?
私の問いに幽々子様は当然のように答えました。
「みょんぱいよ」
「みょんぱいって何ですかっ!?」
「じゃあ妖夢のおっぱい」
「そ、そんなふうに言わないでください!」
「それより聞いてよよう〜む〜っ! 侠が一緒にお風呂に入ってくれないのよ〜っ!」
だだっ子のように私に助けを求めるように言う幽々子様。
……あなたは一体何をしたいんですか……?
「むしろきちんと断った侠さんに好感を覚えます。あまり異性と入るのは感心しませんよ?」
「じゃあ妖夢は旦那とお風呂に入らないわけ〜?」
「そ、それは話しが違います! お、夫とは将来を誓った中ですからそういうのは良いとは思いますけど……」
「せっかく左腕を使えない侠のために背中を流そうとしたのに〜!」
……その言葉に胸にトゲが触れているような罪悪感が襲ってくる。私が侠さんの左腕に傷を負わせてしまったせいで行動を不自由にさせてしまっている。それに侠さんの利き腕が左。申し訳ない気持ちでいっぱいです……。
幽々子様は私の表情を見かねてか私の胸から手を離し、座っている状態から私を立たせて、幽々子様も立ち上がり話しかけてくる。
「だから──私の代わりに背中を流してきなさい♪」
「……みょん!? そそそそれは無理ですってばっ!? 侠さん絶対断りますよ!?」
「大丈夫よ言質をとれば♪ ついでに一緒に入っていきなさいな」
「さっきも言いましたが絶対侠さん断りますよ!? そ、それに……私は……恥ずかしいです……」
侠さんと浴場とのことを思い出してしまうわけで……。
恥ずかしがっていると、幽々子様は何故か声のトーンを重くして話しかけてくる。
「妖夢。これは大事なことなの。あなたは男との耐性がないのよ。それを付けるために必要な第一歩でもあるの」
「そ、それにしては過激すぎませんか? それが浴場だなんて……」
「別に男なら誰でも良いってワケじゃないわよ? 私が認めない限りは妖夢の肌は見させないわ」
「…………えっ? それって侠さんなら良いってことですか?」
「紫が連れてきた子だからね。性格も全然良いし、妖夢の婿候補として考えているわ」
「…………婿ですかぁっ!?」
話しが飛躍しすぎていませんかっ!?
侠さんが……私の婿……。
『妖夢……ついにこの日を迎えることができたな。しかし……本当に俺なんかでよかったのか?』
『いえ……侠さんじゃなきゃダメなんです……』
『そうか……俺を婿として貰ってくれるか?』
『──はいっ! もちろんです!』
「妖夢……そんなににやけて満更でもなさそうね」
「──はっ!?」
侠さんが婿姿を思い浮かべていたら幽々子様に指摘されました!? い、いえいえ……まだそれを思い浮かべるのはお互いの想いが通じ合ってからですよね……。
それを見かねてか幽々子様はこう告げる。
「その分、外界で彼はそれなりにはモテていたみたいなのよね。この手紙によると」
幽々子様は懐から手紙を取り出し、私に渡して読ませる。
……こ、これは……!?
「恋文じゃないですかっ!? まさかこの方とお付き合いを!?」
「それは断ったみたいよ。紫からの情報によれば直接告白されたこともあるみたいだけど断っているみたい。今のところは彼女いない歴イコール年齢みたいね」
「……やっぱり、侠さんの好みに合わなかったからですか? そ、その……胸の大きい女性が好みなんですよね、侠さんは……」
私は胸元に手を置く。私は明らかに大きいとは言えない。むしろ小さい方だ。ほのかに膨らんでいるだけ。時間が来れば大きくはなると思うんですけど……正直大きい幽々子様や紫様が羨ましい。
……胸ってどうすれば大きくなるんでしょう?
落ち込んでいる私を見てか、幽々子様は私の背中を押し始める。
「それなら確かめに来ましょう〜♪ 半霊は妖夢の着替えを持ってきて〜♪」
「ちょっ!? 幽々子様!? 本当に行くのですが!?」
「〜♪」
「幽々子様ぁーっ!?」
私は意見を通してもらえないまま浴場へと連れて行かれた……。
表主人公のラブレター関係はおまけみたいなものです。裏主人公はモデルとして活躍、学校ではいつも裏主人公の傍には表主人公がいたので。モデル本人より、傍に居る人物に惹かれている的な。
次回。風呂場。
ではまた。