幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ただ会話をする。でも、次章と関係あるかもしれません。
 裏主人公視点。
 では本編どうぞ。


五話 『会話、人形』

「それで? 私は質問に答えたんだからこちらから質問して良いのよね?」

 

 紅魔館とは違う味がするなぁと紅茶を飲みつつ、幽香は話しかけてくる。

 

「どうぞどうぞ。現在彼女募集中なので」

 

「あなたを奴隷にしてあげても良いわよ?」

 

「ノット奴隷ってことで。質問どうぞ」

 

 冗談を躱しながら、幽香は質問してきた。

 

「それじゃあまずは、何故そこの吸血鬼──フランドールは日光を浴びても平気なのかしら? 紅魔館の主も日光は厳禁のはずよ」

 

「答えとしてはオレの能力で日光受け付けないようにしている」

 

「……本当かしら?」

 

「ほんとだよ。静雅の能力って強いんだよ!」

 

 フラン嬢からの助け船を出されるが、それでさらに幽香は興味を持ったみたいで口を動かす。

 

「具体的には静雅はどんな能力を持っているの?」

 

 ……オレは少し悩んだ。正直に答えるかどうか。でも目の前にいるのは大妖怪と恐れられている妖怪。嘘をついても見抜かれるかもしれない。

 

 ……正直に言っておくか。

 

「【事象を操る程度の能力】だ。この能力のおかげで大抵のことは出来るチート能力だと思っている」

 

「…………それって所謂無敵よね? その気になれば【攻撃を受けない】やら【存在そのものを消す】こともできるのかしら?」

 

「攻撃を受け付けないのはやったことはあるが……最低限は自重している。オレTUEEE! ってやってもつまらないしな。まぁ、この前能力の出来る範囲を確かめるのも含めて幻想郷自体が一時暗くなる異変が起きただろ? アレってオレの仕業なんだ」

 

「どこかの新聞屋が取り上げていたわね。どうせガセかと思ったけど……異変を解決させたのも新聞の通り?」

 

「あぁ。オレの親友だ」

 

「へぇ……その親友は能力が強いおかげで異変を解決できたの?」

 

「……そこについてのオレの見解だが……本人は【体を龍化する程度の能力】と思っているらしいが、実際には違うかもしれない」

 

 オレの疑問の言葉にフラン嬢が会話に入る。

 

「えっ……? 侠ってアレが能力じゃないの!? 何か氷を出してたよ!?」

 

「……そこはオレも疑問に思っているんだ。侠の能力が氷関係だとしたら紅魔館を突破するのに最初から使っているはずなんだ。でも聞いたところ……氷関係の能力は使ってないんだ。もしかすると最後のフラン嬢との弾幕ごっこで発現したのかも知れない」

 

「……それで何? あなたの親友は紅魔館の主やあなたをほぼ能力無しで突破したわけ?」

 

「そう言われると何とも怪しいが……仮定すると現時点では二つ持っているのか? 【龍化する】と【氷】の能力を」

 

「……なかなか面白い人間がいるものね」

 

 そこで幽香は質問を一度やめ、紅茶を喉に流した後、質問を続ける。

 

「あなたの種族は神らしいけど、何のご利益をもたらす神なのかしら?」

 

「……臭いでやっぱり分かるのか?」

 

「それもあるけど、気配とかで違うものなのよ。それで? どんな神様なの?」

 

「……ご利益は知らんが、神々を滅ぼす神」

 

「……ふふっ。何それ? ずいぶんと私好みに神ね。神を滅ぼす神だなんて」

 

 ……何故こんな神を好みなのかと言うことを聞くと。

 

「幻想郷の四季で秋を司る神がいるのよ。だから滅ぼしてくれる?」

 

「いや、だめだろう。秋も季節の内は大事だぞ」

 

「冗談よ。秋には秋にしか咲かない花もあるもの」

 

 花で思い出したのか、フラン嬢は幽香に尋ねる。

 

「ねぇ、静雅が言ってたんだけど……ここに咲いている向日葵って夏に咲くんだよね? でも、本来ならまだ早いって静雅が言ってたんだけど?」

 

「それは私の能力で咲かせているのよ。【花を操る程度の能力】でね。私は花の中で一番好きなの」

 

「ずいぶんと平和的な能力なんだな……」

 

「つまらない能力でしょう? 幻想郷の実力者は【境界を操る程度の能力】や【死を操る程度の能力】、【空を飛ぶ程度の能力】といった便利で強い能力があるのに、私の能力は実践向けじゃないもの。大妖怪と言われているのに滑稽よね」

 

 レミリア嬢は【運命を操る程度の能力】でフラン嬢は【ありとあらゆるもの破壊する程度の能力】だもんな。確かに地味かも知れない。

 

 そう思い返しているとフラン嬢は口を開けて幽香に話しかける。

 

「でも、その能力を使ってお花を育てているんでしょ? 私は素敵だと思うな。だってこんな綺麗なお花が見られるんだもん!」

 

「……単純ね」

 

 幽香は少しフラン嬢の言葉に意外と思っているのか、少し雑な言葉で返す。

 

 オレはフラン嬢に言葉に繋げて話しかける。

 

「でもお前さんはその能力を有効活用して花を育てているんだろ? 結局滑稽と言いながら能力を利用して花を大切に育てている。それには変わりはないだろ?」

 

「……はぁ。やっぱりあなたと会話をすると疲れるわ」

 

 ため息をしながら呆れたように答える幽香。

 

 ……ツンデ──

 

「今あなたに殺意が湧いたわ。表に出なさい」

 

「すいません。許してください」

 

「(あれ……? 静雅が素直に謝った……?)」

 

 一瞬怒り方が友人に似ていた気がしたせいか反射的に謝ってしまった。

 

 殺意をしまいながら幽香は話してくる。

 

「あなたもあなたよね。その能力があれば幻想郷中を思い通りに出来る能力なのに」

 

「別にオレは今の生活に満足しているだけさ。それ以上は望まないだけだ」

 

「……ま、いいけどね」

 

 幽香の質問に答えた後、窓から空を見ると夕日に染まっていた。

 

「おっと、そろそろお暇させてもらうか。フラン嬢、そろそろ帰るぞ」

 

「う、うん。お邪魔しました」

 

 オレの言葉に反応してフラン嬢は幽香に挨拶をする。少し意外だったが、幽香は引き留めるように話しかけてきた。

 

「あら? もう帰るの?」

 

「あぁ。そろそろ帰らないと妹思いな姉が心配するんでな」

 

 ドアを開けて、フラン嬢を肩車をして歩いて帰ろうとする前に、幽香にこう話しかける。

 

「……暇が出来たときにはここに遊びに来ても良いか?」

 

「……考えておきましょう」

 

 保留みたいな言い方だったが、ダメと言われていないので良いだろう。

 

 オレ達は歩きで紅魔館まで歩いて行った……。

 

 

 

 

 

『コンパロ〜、コンパロ〜。幽香さんこんにちは!』

 

『あら、メディスン。鈴蘭畑の調子はどう?』

 

『スーさんは今日も元気いっぱいだった! ……あれ? ティーカップが三つ? 誰か来ていたの?』

 

『えぇ。とある吸血鬼と──陽気な神様がね』

 

 

 

 

 

 ──とあるところでは当初違った獲物とは違うが、三人組は薬の試作品の投与をされていることを関わった人物達は知らない──

 

 

 

 

 

 

 

 幽香と別れ、魔法の森を歩いていた頃……オレ達はあるものに出会った。

 

『……シャンハーイ……』

 

「……静雅、これって何?」

 

「……人形だな。しかも浮いているし何か喋っている」

 

 目の前を少し傷だらけの人形っぽい何かが通っていった。人形の手には何かの袋を持っている。もしかして道中で襲撃を喰らったのか?

 

 オレはとりあえずフラン嬢を下ろして人形に話しかける。

 

「ちょっと待ったそこの人形」

 

「……シャンハーイ?」

 

 言葉はそれしか言わないが、動くのを止めてこちらに振り返った。

 

「お前さん、そのほつれとかどうしたんだ?」

 

「シャンハーイ!」

 

「うむ。さっぱりわからん。フラン嬢は何言っているか分かるか?」

 

「ううん。私も何て言ってるのか分からない」

 

 ……まぁ、できるだけの事はするか。

 

「ちょっと身を委ねてろ。応急処置はしてやる」

 

 オレはその人形を掴み、切り株の上に座って人形が持っていた荷物はフラン嬢に持たせる。中身は布やら綿やらいっぱい入っていた。

 

 ……持ち主は人形を作るのが仕事なんだろうか?

 

 オレは胸ポケットから常時に持っているコンパクトな裁縫セットを取り出す。芸能界にいた頃は服が急にほつれたり、ボタンが取れたりしたとき重宝していたオレの道具だ。

 

 ……学校では一部オレのことを妬んで服を破かれたときもあったが、オレは余り目立たないように縫うのが得意分野だったりする(そういう輩は侠に密告してコテンパンにしてもらった)。

 

 とりあえずどこら辺がほつれているのか確認する。頭部、体、足。そして念のため──スカートの中まで。

 

「──シャンハーイ!?(ジタバタ)」

 

「こらこら。暴れるな。普段は下心を持って覗いていたが、今回は真面目に心配しているんだから大人しくしてろ」

 

 スカートを覗かれて恥ずかしがる人形もある意味シュールだよな……。

 

 布の色に合わせて糸を通して、ほつれを修正していく。同じ色ならそんなには目立たないはずだ。

 

 後は纏り縫いをしてっと……。

 

「よし。修正完了。恥ずかしい中ご苦労だった。気をつけて帰るんだぞ」

 

「……シャンハイ」

 

 オレは裁縫セットをポケットにしまい、人形はフラン嬢から荷物を受け取ると、森の中で消えていった。

 

 その中、フラン嬢は人形を見てかこう言ってくる。

 

「ねぇ、静雅! 私もあーゆー人形欲しい!」

 

「あのデフォルメされた人形をか? オレが作るとなると多分動かないぞ?」

 

「動かなくても良いからあの人形みたいのが欲しいの!」

 

「じゃあ今度作ってみるか……どんな人形が良い?」

 

「えっとね──」

 

 フラン嬢を肩車して人形の話をしながら紅魔館へと帰って行った……。

 

 




 裏の章自体は終了。次回は『Ex side story』を投稿します。

 ……まぁ、誰かは予想付くかもしれませんが。

 ではまた。

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