幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 有名な問題については私が実際受けた授業でやったものです。
 最初は裏主人公視点。
 では本編どうぞ。


三話 『太陽の畑、ならず者』

 先生の代理といっても、オレは勉強方面は普通より少し良いぐらいだ。侠みたいな秀才でもない。だからオレの受け持つ授業の内容は独自の倫理学兼コミュニケーションの授業をやることにした。

 

 有名な問題として【トロッコ問題】を出して皆に考えさせた。具体的な内容はトロッコが暴走していて、そのままいくとトロッコに乗っていた五人はその先の壁ぶつかり、その人らは死ぬ。しかし自分視点で隣に人物が立っていたときに誰かが立っており、その人を線路に突き落とせばトロッコは止まり五人は助かるが、突き落とした人は死ぬというもの。突き落とした自分自身は責任問題は問われない。

 

 寺子屋の先生──上白沢慧音先生は『この問題は正解はあるのか?』と聞いた来たが、オレは首を横に振った。自分で答えを出すのが正解だ。

 

 とある生徒達はこう言う。

 

『アタイだったらその人を突き落として五人を助ける! 人が多い方が良いもん!』

 

『……私はそれはどうかなって思うの。この場合、そのままにしておくのが良いんじゃないのかな?』

 

『あ〜……それは何となく分かるかも。仮にそれで五人を助けたとしても、突き落としたという罪悪感があるもんね』

 

『でもそのままだと五人は死んじゃうし、だからといって死ぬはずのなかった人を突き落として五人を助ける……凄く悩む問題だね』

 

『そうなのかー』

 

『こういうとき、藍様はどう答えるんでしょう……?』

 

『お姉様なら運命を操って何とかしそう……』

 

「あ、そういう能力とか禁止な。元々は外界の人間設定の話しなんだ。周りには能力を持っていない、ただの人間として考えるように」

 

 フラン嬢もグループに入って意見交換をしている。たまたまそこのグループは最初はぎくしゃくしていたが、バカっぽい妖精が気軽にフラン嬢に話しかけてきたため問題はなかった。受け入れてもらったフラン嬢は笑顔を見せ、話し合いながら自分も考える。バカっぽい妖精の友達もフラン嬢と妖精の話しに加わり、それぞれの考えを話し合っていた。

 

 そして、オレの授業は終わり、先生さんの授業になる。なっていた内容は国語で、熟語の意味や四字熟語などを中心としていた。余り学に詳しくないフラン嬢のためにオレは付き添って意味を分かりやすく教えていた。

 

 そして自信のある生徒が意味について説明しようと立候補したバカっぽい妖精の答えは……まぁ置いておこう。

 

 午前中の授業が終わり、昼食の調達兼探索再開をすると先生さんに伝え、寺子屋からフラン嬢を連れて出ようとしたとき、とある生徒から話しかけられる。

 

 

 

『この先を通りたかったらアタイと弾幕ごっこよ!』

 

 

 

 と、バカっぽい生徒……チルノに遮られ弾幕ごっこを申し込まれたが能力でその場から消えた。一瞬戸惑いの声が聞こえたのは気のせいだろう。

 

 お昼のおにぎりを買ってフラン嬢と共に食べて、人里を探索。そこでいろんな事をフラン嬢に教え回った。

 

 人里から離れ、魔法の森で探索をしていたところ、とある看板を見つける。

 

「ねぇ、静雅。何て書いてあるの?」

 

 肩車をされているフラン嬢から聞かれたので看板を読んでみると──

 

「──何々……北側に太陽の畑。【お勧め!】と書いてあって……東に紅魔館でまた【お勧め!】。南は人里で【安全】。西に博麗神社で【危険!】……何故ゆえに博麗神社が危険なんだ?」

 

「霊夢が危険って伝えたいのかな? この看板?」

 

 むしろ面白い分類だと思うんだが……そもそもこんな看板あっただろうか?

 

 さて、紅魔館が何故か観光スポットになっているが……まだ帰るのは早いな。それで人里からここに来たわけだし、侠のいない神社には要がない。ここはやっぱり……。

 

「……太陽の畑にでも行くか」

 

「わかった! ……ところで静雅、太陽の畑って何? 太陽が育てられているの?」

 

「それは比喩表現でな。ここで言う太陽の畑っていうのは──」

 

 オレはフラン嬢に説明しながら太陽の畑へと進んでいった……。

 

 

 

 

 

 

 

  〜side out〜

 

『……ウササッ! 引っかかったウサね……!』

 

 静雅とフランを影から見送っていた──ピンクの服を着て、人参のような首飾りを付け、ウサ耳を生やした少女が妖しく笑う。

 

「ただの人間と妖怪みたいなのが太陽の畑に行くだなんて……自殺行為だウサよ……まぁ、人間が妖怪を肩車しているのは変な光景ウサけどね……」

 

 まぁ、きっと餌付けでもして懐かせたんだろうと考えるウサ耳少女。

 

 そして少女はこの先にいるであろう人物──大妖怪を思い出す。

 

 

 

 四季のフラワーマスター【風見幽香】

 

 

 

 能力は戦闘向けではないが、恐れるべきはその身体能力と妖力の量。能力無しでもそこらの妖怪では歯が立たない。そして性格はサディスティック。相手をいたぶり、屈服させたりするのが好きな妖怪でもある。機嫌の良いときはいたぶり、悪いときは喰う。そんな()の実力者なのだ。

 

「(まぁ、そこは運ウサけど……もしも傷つきながら帰ってきたら私が高額で薬を買わせ、足りないならししょーの実験材料に……てゐちゃんったらなんて優しい!)」

 

 看板の作ったのはこのウサ耳少女──因幡てゐである。彼女の魂胆は傷つきながら帰ってきた人を(普段より)高額な薬を買わすように促し、足りないなら体で払ってもらう。相手は風見幽香だ。帰ってきたとしても普通は重傷だろう。

 

「(でも……どこかであの人間の顔を見たような……気のせいウサね)」

 

 てゐは再び木陰に隠れて二人の帰還を待った。

 

 ──だが、当然無傷で帰ってくるのは後の話である──

 

 

 

 

 

 

 

  〜side 静雅〜

 

 歩いて数分後。そこで広がった光景にフラン嬢は感激の声を漏らした。

 

「すっごい……向日葵が綺麗……!」

 

 そこはまさに太陽の畑だった。数え切れないほどの向日葵が辺り一面に咲き誇っている。隙間なく埋められているような感じがして壮大だった。

 

「ここの管理はどうなってんだ……? これだけの向日葵を綺麗に育てるとは……!」

 

 オレはここの管理人に感心する。明らかに人の手が加わっているのには間違いない。よほど向日葵が好きなんだろう。

 

 だが、素朴な疑問が一つ。

 

「今はまだ夏でもないなのに、何で向日葵が咲いているんだ……?」

 

 そう。まだ向日葵の咲く季節じゃない。夏に入ってから向日葵は本番なんだが……?

 

 そこについて考えていたところ──近くから会話が聞こえてくる。

 

『おぉい、まだなのかあの妖怪はぁ……!』

 

『落ち着けでやんす。もうそろそろ出てくるはずでやんす!』

 

『そして俺達が打ち取ったら、逆らえる奴がいなくなるからな! そうなったら……イヒヒっ!』

 

 ……何か怪しい会話が聞こえるなぁと思いつつ。何となくそこへ向かって歩いて行き、オレには気づいていないようなので話しかけてみる。

 

「何しているんだ? お前さん達?」

 

『『『うぉおおおおっ!?』』』

 

 その怪しい三人組はオレの存在に気づくと、ものすごい後すざりをした。

 

 ……普通そこまで驚くことか?

 

「なぁ、フラン嬢。オレってそこまで驚かせるようなことをしていないよな?」

 

「う、うん。してないと思うけど……」

 

『何なんだお前は! いきなり話しかけてくるな!』

 

 その中で一番……何だろう? 小物臭がする弓を持ったがたいのでかいチンピラが話しかけてくる。おそらくこの三人組の中ではリーダー的な存在なんだろう。

 

「そんな怪しそうな会話をしている方が気になるって……弓なんか持ってどうしたんだ?」

 

『兄貴に何か用かコラァ!?』

 

 その中で小太りの舎弟みたいな奴が喧嘩腰で話しかけてくるが……別に怖くない。あら不思議。

 

「見た感じそんな物騒なものを持って向日葵畑に来ていることが不思議なんだが……?」

 

『なっ!? てめぇ、ここを仕切っている妖怪を知らないでやんすか!?』

 

 オレの言葉に信じられないのかもう一人のやせ気味の舎弟が驚愕の声を上げる。

 

 妖怪がここの向日葵を管理しているのか。ずいぶんと変わっているか?

 

 ……いや、よくよく考えれば美鈴も空いている時間に花壇で花を育てていたな。変わってはいないか。

 

 オレのここでの知識の無さを見てか、三人組は円陣をして何やら小声で話した後、声をかけてきた。

 

 ──一瞬、リーダーの口の口角をあげたのをオレは見逃さなかった。

 

『じゃあお前が知らないようだから教えといてやるが……ここは四季のフラワーマスター【風見幽香】が管理しているしているんだ!』

 

「ほうほう。それで? 何故お前さんは武器を持ってここに?」

 

 オレが尋ねると、小太りの舎弟が答える。

 

『兄貴はここにいる大妖怪ともいわれている風見幽香を討伐しにきたんだぁ! そいつはこの向日葵畑に近づいたのを見つけただけで半殺しにしてくるんだよぉっ!』

 

「近づいただけで半殺し……? それって今の状況も危なくないか?」

 

 言葉に疑問を覚えたので聞き返すと、やせ気味の舎弟が答えてきた。

 

『逆にそれを狙っているでやんすよ! 少し先に一軒家が見えるでやんすね? その家が大妖怪の住処でやんす! ちょうど家から出てくるところを兄貴が弓で狙い撃つ作戦でやんす!』

 

「……逆にそこまで悪の分類の妖怪なのか? こんな向日葵畑を作っているのに?」

 

『そうだ! 俺の舎弟が一本の向日葵を持ち出そうとしたとき、運悪く見つかったんだ! そういうのは軽い注意だけで良いと思うだろ!? ところがあいつは違う! 俺の舎弟を……生死の境までに追い込みやがったんだ!』

 

 ……向日葵を勝手に持ち出す方も悪いと思うが……それだけのことで生死の境までに?

 

 色々不可解なところに疑問に思っていると、リーダー格がこう話しかけてくる。

 

『そこでだ! その大妖怪討伐にお前も協力して欲しい! 奴を家の外におびき出して欲しいんだ!』

 

「……オレも?」

 

『もちろん、成功報酬はお前にも分けてやる! 肩車している嬢ちゃんにもな! どうだ!』

 

「え? 私もくれるの?」

 

『あぁ! 約束しよう!』

 

 舎弟達に目配せをするチンピラ。

 

 …………ふむ。

 

「……とりあえずは風見幽香と話してくる」

 

『おぉっ!? そりゃあありがてい!』

 

「静雅? 本当におびき出すの?」

 

「まぁ、フラン嬢はそういうことは気にしなくていいさ……行ってくる」

 

 オレはフラン嬢と共に向日葵に囲まれている一軒家に向かって歩き出した。

 

 

 

 

 

『……へへっ! 兄貴ぃっ! うまくやりましたねぇ!』

 

『さすが兄貴の演技力でやんす! 劇団の奴らもビックリする演技やんす!』

 

『あぁ! ちょろかったな! あんな餓鬼ごとき脅すまでもねぇ! 風見幽香を始末した後、あの男を始末するぞ!』

 

『? 肩車をされていた綺麗な羽を生やした女の子はどうするでやんす?』

 

『あんな餓鬼に慕っている妖怪だ。たいした脅威じゃないからな。それであの餓鬼を始末した後は……お楽しみだ』

 

『さすが兄貴そこに痺れる憧れるぅっ!』

 

 




 チンピラにやる名前などない。

 明らかに死亡フラグ(ならず者)がビンビンですね、はい。

―P,S―
 活動報告にて本編にかかわる重要事項が記載されています。詳しくは【本編に関する重要な質問】にて。

 ではまた。

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