幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 やはり裏主人公が原因。
 視点は静雅。
 ではどうぞ。


二話 『情報漏洩、親友の職場』

『静雅。辰上侠を連れてきてもらっても良いかしら?』

 

 図書館でフラン嬢の童話の読み聞かせをしていたら、唐突にパチュリーからそう言われた。

 

「侠を? この間連れてきたばかりだというのにどうしたんだ?」

 

「ちょっと気になることがあるのよ。彼の性質について」

 

 パチュリーは知識の探求が好きだ。もしかしてこの間に何か侠について気になることでもあったのか?

 

「何か侠について知りたいことがあるのか? だったらオレが教えてあげるのによ?」

 

「そういうことじゃないわ。私は何故辰上侠がグリモワールを読めたことが気になるの」

 

「……グリモワール? それって確か魔導書で魔法使い関連しか読めない本だよな──はっ? 侠がグリモワールを読めた?」

 

 おかしい。侠は力の根源は妖力だったはず。妖力の力の理由は大体見当が付いているが……魔導書を読めた?

 

「こぁと話していたときに読んでいた魔術概論がグリモワールだったのよ。こぁは多分普通に読めていたから気づかなかったんだけど、彼は読んでいたのよね。グリモワールを」

 

「……マジで?」

 

「そう。それで不思議に思ったのよ。辰上侠は妖力を持っているが、何故読めたのかが」

 

 ……そうなると思い当たる一般的な理由が一つ。

 

「それは侠に魔法使いの才能でもあったんじゃねぇの?」

 

「……妖力で魔法使いとか前代未聞よ? だから気になるから連れてきて欲しいの」

 

 ……【アレ】が関与しているとかあるのか?

 

 今は……気にしてもしょうがないか。

 

「まぁ、それはそれで構わない。それに──連れてくると喜ぶ奴もいるからな」

 

「えぇ。それはそうね」

 

『クシュンっ!』

 

 どこかの誰かを噂するとくしゃみが聞こえてきた。

 

 話に区切りが付いたと思ったのか、フラン嬢が話しかけてくる。

 

「静雅? お外に行くの?」

 

「ん? まぁそうなるな」

 

「だったら私もお外に行きたい! 着いていっても良い!?」

 

「はははっ。構わねぇよ。そうだな……昼飯はオレの金がまだ残っているからほぼ一日中外に回って社会勉強でもするか!」

 

「やったーっ!」

 

「……フフ。楽しそうね。妹様」

 

 フランの喜びようを見てパチュリーは珍しくほほえんでいた。

 

 ……そんな顔をするんだな。

 

「パチュリー、じゃあ身支度したらここに戻ってきてフラン嬢を連れて回るから、咲夜とか尋ねてきたら伝えてくれ」

 

「えぇ。わかったわ」

 

「じゃあフラン嬢。少し待っててな」

 

「うん! わかった!」

 

 とりあえずオレは準備のため自室に戻った……。

 

 

 

 

 

 

 

『とりあえずあなたに聞きたいことがあるのよ』

 

「…………とりあえず言ってみろ」

 

 自室に戻って準備をしようとしたところ──八雲紫が待ち構えていた。少しオレのテンションは下がったが、とりあえず言いたいことを聞くことにした。

 

「侠って異性の好みとかあるの?」

 

「……異性の好み? 何でそんなことを聞くんだ?」

 

「ちょっと一時的に彼を白玉楼に居させているのよ。それで私の友人の西行寺幽々子に教えてあげようかと思ってね」

 

 白玉楼って確か死人の行く場所だよな……? まぁ、今では生者も普通に行き来しているみたいだが……まぁ、侠の交友関係を広げるためだ。言っても良いだろう。

 

「時に八雲紫。お前さんは侠になんて呼ばれている?」

 

「? さん付けで呼ばれているわよ?」

 

 ……なるほど。

 

「侠の異性の好みは八割方は性格だ。もう一方の二割を占めているのは外見。まぁ、侠は好きになった異性は外見は気にしないと思うが──」

 

「思うが?」

 

「──例外は除いて年上とか関係なく、侠は無意識で外見的好みに入る奴はさん付けで呼んでいる。よかったな八雲紫。外見的好みに入っているぞ」

 

「あら? そうなの? でもそれってどういう基準でさん付けで呼ばれるのかしら?」

 

 当然の疑問を八雲紫は投げかけてくるが、オレは単純にこう答える。

 

 

 

 

 

「顔もそりゃあ入るかも知れないが、見かけは年上の女、そして──胸のでかく見える奴に対して呼ばれる」

 

 

 

 

 

「……………………ごめんなさい。何か聞いてはいけないようなことを聞いてしまった気分だわ」

 

「要に胸フェチなんだ。侠は」

 

 あいつ妹ポジションの陽花がスキンシップ(ボディタッチも含む)をしているおかげで侠は『お姉さんみたいな人が良かったなぁ……』と愚痴ってきたときがあった。妹みたいなのがいると姉みたいのが欲しいんだろう。

 

 ……オレは姉が怖くてたまらないが。

 

「あぁ、八雲紫。この情報源は伏せてくれよ? オレが侠に半殺しされかねない」

 

「……それまで怒ることなの? あの侠が?」

 

「ブチギレとはいかないが、『お仕置き』みたいなことはされるだろうな……」

 

「……力関係だと侠の方が上なのね……」

 

 そりゃそうだ。侠には頭が上がらない。

 

 八雲紫は空気を変えようとしたのか、話題を変えてくる。

 

「あぁ、侠の事なんだけど……一週間ほどは白玉楼に居させるから連れ出さないでちょうだい」

 

「そりゃまた何で?」

 

「しばらく侠を白玉楼の幽々子と──その従者との関係性を持たせるためにね。そうさせた方が都合が良いから」

 

「……まぁ、侠の交友関係が広がるならオレは賛成だ」

 

「そう。それともしかすると霊夢があなたに侠を連れ戻してということを頼むかもしれないけど、一週間は霊夢を白玉楼に連れてこないでちょうだい」

 

「へぇ。でもオレの能力は一度行った場所じゃないと能力で移動できないからどっちみち無理だけどな」

 

「なら安心ね。それじゃあ私は幽々子に伝えてくるわ」

 

 そう言いながらスキマを作って帰ろうとしたときに、振り向いてこう言った。

 

「異変お疲れ様。それと悪いんだけど人里の寺子屋に行ってくれる? 侠は一週間ほど来ないことを伝えて欲しいのよ」

 

「……その能力があればお前さんでも良いだろうよ……?」

 

「あなただからこそ意味があるの。親友の職場を知っておいても損はないわよ?」

 

 新しい情報を残して八雲紫は帰っていった。

 

 ……侠って寺子屋で働いていたのか……ある意味ぴったりだ。

 

「おっと、フラン嬢を連れて行かなきゃな」

 

 そう思いながら能力で移動する。

 

 ……寺子屋と言うことは見た目フラン嬢みたいな子供もいるのか……ちょうど良いかもな。

 

 

 

 

 

 

 

 フラン嬢を肩車して人目の付かない人里の場所に移動。そして大通りに出ると……人がたくさん歩いていた。中には妖怪っぽいのもちらほらいるが。

 

「おーっ! 人間がいっぱいいる……!」

 

 肩車しているフランが改めて人里を見渡している、まぁ、軟禁状態だったから人の多い場所は珍しく感じるのだろう。

 

「さて、フラン嬢。一先ずは寺子屋に行ってみたいと思う」

 

「てらこや? それってどんなところ?」

 

「世の中で知っておくと得をすることを学ぶ場所だ」

 

「すごーいっ!? そんなところがあるんだ!?」

 

 表現を大きくして説明したが、フラン嬢は興味のある言葉で返してきた。

 

 とりあえず勘で寺子屋を探す。歴史の教科書の図通りだと良いんだが──

 

『けーね先生ーっ! キョーは何で来てないのー!?』

 

『侠はいないのかー?』

 

『ふむ……おかしいな。侠は時間前にはきっちり来るのに……体調でも崩したか?』

 

 歩き回っていたら侠の名前を呼ぶ施設っぽい所から聞こえた。そうなると……ここが寺子屋か。

 

「静雅……ここが寺子屋?」

 

「みたいだな。ちょうど侠の事を話しているみたいだ」

 

 あらかじめ出かける前にパチュリーにざっと八雲紫のことで話した。パチュリーは『また八雲紫か……』と言っていたのに対し、小悪魔は頭の羽根がしおれてた。

 

 ……よし、入るか。

 

 フラン嬢を下ろしてからノックをして扉を開ける。

 

「ちわーす。三○屋でーす」

 

 某時間軸が進まないアニメの配達員の言葉を借りて寺子屋に入る。そうすると必然に先生と生徒から注目が集まる。

 

 先に言葉を開いたのは教壇にいた先生っぽい、小さな帽子を被った大人の女性だ。

 

「み、三河○? 一体この時間帯から何のよう──ん!? その容姿……紅魔館の執事か!?」

 

「おぉ、知っていて何よりだ。○河屋は全く関係ない、執事長の本堂静雅とはオレのことだ!」

 

「え……? 静雅……執事って静雅一人だけだよね……?」

 

「ノリだ、フラン嬢。そこは気にしてはいけないところだ」

 

 フラン嬢からの突っ込みが厳しかったが、生徒と思われる声が飛んでくる。

 

「! アンタがこないだの異変のゲンキョーね! アタイが退治してやるわ!」

 

「ち、チルノちゃん!? やめておいた方が良いよ!? あの人って新聞の通りだったら霊夢さんより強いんだよ!? あの人に勝てるのは侠さんだけだよ!?」

 

「な、なんでそんな人がここに……!?」

 

「まさか幻想郷の支配でここに来たんじゃ……っ!?」

 

「(じーっ)」

 

 生徒達はざわめいたり焦りが出ている。中にはオレに敵意を向けているのもいるみたいだが……どんだけ恐れられているんだ?

 

 ざわめいている中、教師が前に出てオレ達に話しかける。

 

「……何のようでここに来た? しかも隣にいる子は吸血鬼の妹……子供たちを巻き込むつもりなら容赦は──」

 

「別にオレは争うつもりなんて全然ないぞ? むしろ単純な興味があってここまで来たんだ」

 

「……何だと?」

 

 敵意のない発言をしたら疑問を投げかけられた。どうやらまだ完全に敵意は消えてはいないらしい。

 

「八雲紫の伝言でな。侠は一週間ほど来られないみたいなんだ」

 

「あの大賢者の言伝をもらって来たのか?」

 

「あぁ。そこで侠の親友でもあるオレが来た。それでオレが──侠の代理できた」

 

「代理……!?」

 

 本当は代理までしてくれとは頼まれてはいないが、オレの独断でもある。

 

 そしてオレは言葉を繋げる。

 

「それと同時に……あまり世間のことを知らないフラン嬢に色々教えて欲しいのもある」

 

「静雅? 私もここで勉強できるの?」

 

「まぁ、先生次第だが……この通り、頼む」

 

 オレは四五度近く腰を曲げた。不思議なせいか、時間が長く感じる。

 

 そして……声がかけられた。

 

「……実際に会うと印象が違うものだな。それで吸血鬼の妹のためにここに来るとは……君の言いたいことは分かった。ここで授業を受けると良い」

 

「……いいのか?」

 

「あぁ。君を侠としての代理、吸血鬼の妹を生徒として認めよう」

 

 何とか了承を得ることが出来た。どうなるかと思ったが……何とかなった。

 

 その言葉を聞いてか、フラン嬢が先生に話しかける。

 

「いいの!? 私もここで勉強してもいいの!?」

 

「あぁ。大歓迎さ。ただし、静かに勉学に励むこと。いいな」

 

「わかった!」

 

 ……フラン嬢も笑顔を見せてくれてよかったな。

 

 こうして、オレは侠の代理として、フラン嬢は生徒として寺子屋に参加した……。

 

 




 侠の職場のケアは裏主人公がしました。ちなみに紫もこの事は見通しています。

 そして静雅の言葉を聞いた小悪魔はこんな状態→(´・ω・`)

 ではまた。

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