幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 どうして阿求は『AQN』と呼ばれるようになったのだろうか?
 表主人公視点。
 では本編どうぞ。


二話 『稗田阿求、紅魔館の門番』

 のんびり歩いて人里に着いた。だけど自分が人里に入った瞬間……いろんな何だろう……好奇な目で見られているような気がする。

 

 不思議に思いながら寺子屋に着くと……慧音さんと──和服着て花の髪飾りを付けた小さな女の子が何やら話している。あの子寺子屋にいなかったような気がするけど……?

 

『──この記事が本当だとすると──ん? おぉ。噂をすれば影だな。来たぞ阿求。あれが侠だ』

 

『あの方が辰上侠さんですか? ……なかなか真面目そうな方ですね』

 

 何か呼ばれた気がするので駆け足で二人の所へ走って行った。

 

「二人とも、何かご用ですか? 何か呼ばれたような気がしたんですけど?」

 

「あぁ。この号外をな。その様子だとまだ読んではいないようだが……戦いたくないと言っていたわりには度胸のあることをしているじゃないか!」

 

 ご機嫌そうな笑顔で慧音さんは何故か褒めてくる。そして慧音さん曰く号外の紙を受け取ってみると──昨日異変の事が鮮明に書かれていた!?

 

 しかもこれ、射命丸の文々。の新聞だ……!? さては静雅に詳細を聞いたな!? だから人里の皆は自分のことを見ていたのか!?

 

「【新たなる異変解決者、辰上侠】って書いてありますからね。これは【幻想郷縁起】に書き記さなければなりませんね♪」

 

 自分の様子を見てか、小さな女の子も嬉しそうに言ってくる。

 

 ……というよりこの子は誰だろう……?

 

「ねぇ……君は誰?」

 

「あ、そういえば初対面でしたね。私、稗田阿求と申します。【幻想郷縁起】って知っていますか? アレは代々私の家系が執筆している書物なんです」

 

 幻想郷縁起……確か慧音さんが貸してくれた本の名前であったような……。

 

「慧音さんから幻想郷の歴史を知る目的で借りて暇な時間に読んでいるけど……確か幻想郷の確認できる歴史と人物をまとめたものだよね?」

 

「はい。私で九代目です。それで今回の記事に書いてあることが本当ならば書き記そうと思って、慧音さんと相談をしていたんです。それで慧音さんが侠さんのことを知っていたので、あなたのことを話していたときにちょうど来てくれたんですよ」

 

「それで侠……この号外で書いてあることは本当なのか? 本当はいつも通りに霊夢達が解決させたんじゃなくて?」

 

 稗田からの説明を受けた後、慧音さんに問われる。嘘は言えないなぁ……。

 

「間違ってはいませんよ。その記事。博麗からバトンタッチして自分が異変を解決させました」

 

「そうなのか! 侠もついに異変解決者の仲間入りか! 人里に頻繁に来るとなると、人里の住民にとっては心強いな!」

 

 そういえば博麗に関しては博麗神社の立地が最悪だし、霧雨は魔法の森の中だから幻覚の類が見える可能性があるから人里の普通の人は会いに行きたくても行けないんだ。

 

「心強いってそんな……自分はまだ幻想郷に来てそんな時間が経っていませんよ?」

 

「今回の異変は実際には害はなかったようだが、住民達は恐れ多かったんだぞ? 日光が出てる時間帯にも関わらず夜に近く、勘違いした夜行性の妖怪が動き出したり、日光が無い所為で作物が育ちにくくなってしまうんじゃ無いかといろいろな不安があったんだ。そこで解決したというこの記事。住民達は侠のことを軽く英雄視してるのもいるくらいだぞ?」

 

「……盲信にも程がありますね」

 

 何故今まで解決している博麗達が英雄視されていないのか不思議だ。

 

 ある意味自分は困っているようにしていると、稗田が言葉を引き継ぐ。

 

「それで、侠さんのことをこの異変と共に【幻想郷縁起】に書き記そうと思っているんですが……お時間はありますか?」

 

 ……それって歴史の教科書に載る的なことだよね?

 

「これから寺子屋で慧音さんの助手的なものをしなくちゃいけないんだけど──」

 

「何、私のことは気にしないでいいさ。侠は阿求に付き合ってくれ。話が終わった後は帰っても構わないぞ。異変解決した次の日だからそんなに疲れは取れていないだろう? 休みがてら阿求の仕事に付き合ってやれ」

 

「はぁ……わかりました」

 

「ありがとうございます、慧音さん、侠さん。では、私に着いてきてください」

 

 稗田は自分たちにお礼を言った後、歩き出したので自分は着いていった……。

 

 

 

 

 

 少女記録中……

 

 

 

 

 

 稗田の家は自分の実家に似たような……任侠の家だった。目つきの悪い門番みたいな人がいたが、稗田が通ると腰を四十五度曲げて丁寧に挨拶をしていた。中身はきっといい人達なのであろう。

 

 二人きりになってどういう異変かを説明したり、自分のことを説明したり。稗田は頭が良い方みたいなので疲れることは無かった。そもそも稗田には【見たものは忘れない程度の能力】を持っているため、大体聞き返すこと無く話を聞いてくれた。一種の完全記憶能力だね。そりゃ便利だ。

 

 数時間たって話は終わり、博麗神社に帰ってみると──

 

『I win!』

 

『くそう! どうしても静雅に勝てねぇ!?』

 

『私も勝てないからね〜……』

 

『……というより能力が反則じみているのよ。紫や咲夜みたいに瞬間移動してばっかりだし……」

 

 博麗がいるのはもちろんだけど……霧雨とフランドール、さらには静雅までいた。この二人がここにいる理由は分からないが、今分かることは多分静雅と霧雨が弾幕ごっこをして静雅が勝ったところだろう。

 

「ただいま博麗。そしていらっしゃい静雅、霧雨、フランドール」

 

「あ、おかえり。早かったのね」

 

 博麗が返事を返してくれると、周りにいた人達が話しかけてくる。最初に話しかけてきたのは静雅。

 

「お、待ってたぞ。侠」

 

「まぁ、君がいても何も問題は無いんだけど……射命丸の新聞に別に異変の事を載せなくても良かったんじゃないの?」

 

「文には失礼なことをしたからな。その詫びみたいなものだ」

 

 ……そういえば偽情報を流した挙げ句、フィルムを奪い取ったんだっけ。

 

 次に話しかけてきたのはフランドール。

 

「えっと……あの時はごめんなさい。静雅がいなかったらあなたのことを壊しちゃってたかも……」

 

「……逆に静雅がいたおかげなんだから君が謝ることは無いよ。気にしなくても良いから」

 

「……ありがとう……」

 

 フランドールと話し終えた後(何で日傘が無いのに平気なんだろうか?)、霧雨が話しかけてくる。

 

「ようやく来たな、侠!」

 

「……何か君に怒らせるようなことしたっけ?」

 

「いんや、してないぜ。だが──昨日のを見せつけられて、そして今回の記事を見て私はここに来たんだ! あの時は特別ルールだったが今回は違うぜ! 異変解決者、霧雨魔理沙として正真正銘の弾幕ごっこでお前に勝──」

 

「え? 嫌だよ」

 

「──つぜ──は? お前……今何て言った?」

 

 自分の言った言葉に唖然としたのか、もう一度聞いてきた。

 

「弾幕ごっこはしないよ。君と戦って多分負けるだろうし。それと自分は霧雨に勝つ目的も無いからしないよ」

 

「……はぁ? お前レミリア達にも勝ったし、あまつさえまだ私が勝てていない静雅に勝ったんだぜ? 始めからもう諦めているような感じが……」

 

「弾幕ごっこは得意じゃないし。異変時はそれでしか戦えないことになっていたから仕方なくそれで戦っていたに過ぎないから。それと弾幕ごっこをする気分じゃ無い」

 

「……本当に負けるのが嫌だから逃げる気か?」

 

「うん、そういうことにしておいて」

 

「なっ……!?」

 

「魔理沙、やめておけ。こういう状態の侠は挑発なんて効かないぞ。またの機会にしな」

 

 霧雨の挑発を静雅は抑えてくれる……持つべきものは親友だね。

 

「(こういう状態の侠ってことは……あの時の侠なら戦うって事かしら?)」

 

「ちぇ、わかったぜ……」

 

「それでさ、静雅。君は何のためにここに来たの?」

 

「おぉ、そうだった。侠、お前さんはレミリア嬢から直々に招待されているんだ。ちょっくら付き合ってくれ。プラスで小悪魔からもな」

 

「レミリアと……こぁさんから? まぁ特に予定は無いから良いけど」

 

 自分は了承すると、博麗は静雅に話しかけ始める。

 

「私も行っても構わないかしら?」

 

「? 別に構わんが……」

 

 それに便乗するかのように魔理沙も話しかけ始める。

 

「じゃあ私も行くぜ! ちょっくら図書館に──」

 

「『借りる』という目的ならどこかにお前さんを飛ばすぞ?」

 

「……読むことにするぜ」

 

「了解した。フラン嬢、帰るぞ」

 

「あ、うん」

 

 フランドールは静雅に肩車をしてもらい、静雅は肩に手を乗せてきて、博麗と霧雨には静雅自身の肩に触るように促した。そして──一瞬で景色が変わり、紅魔館の門に移動していた。

 

「……紫のスキマをなくしたような移動の仕方ね……」

 

「……一体何の能力だか見当が付かないぜ」

 

 二人は移動方法に軽く困惑しているみたいだ。

 

 その中、フランドールはある人物のことについて聞く。

 

「ねぇ……めーりん寝てるけど良いのかな?」

 

「Zzz……」

 

 そう。紅さんが仁王立ちで寝ている。立って寝られるものなのかな?

 

 それについて詳しく知る人物達はというと。

 

「いつも通りでしょ」

 

「いつも通りだぜ」

 

「いつも通りだろ」

 

 ……ある意味凄いな。この人は?

 

 そう思った矢先、何かが飛来し──ナイフが紅さんの後頭部に刺さった──えっ!?

 

『痛っ!? 違うんです咲夜さん! これは寝て気力を高める修行なんです!』

 

『……(ごごごごご……)』

 

 いつの間にか紅さんの背後には殺気を出しているメイドさんがいた。時を止めてここまで来たんだろう。

 

「あの……紅さんの頭にナイフが刺さっているけど……大丈夫なの?」

 

 誰もが疑問に思うことを聞いてみると、メイドさんが自分の存在に気づき話しかけてくる。

 

「──ん? あなたは……お嬢様に呼ばれた侠様ですね。大丈夫ですよ。中国はこれくらいでは死にませんから」

 

「いや、死なないから投げるのはどうかと思うけど……様? 別に付けなくても良いのに」

 

「ま、メイドなんだ。慣れない呼び方だろうが慣れてくれ」

 

「咲夜、ただいま!」

 

「おかえりなさいませ、妹様。静雅もおかえり」

 

 メイドさんの理論は気になったが、主の妹と執事が帰ってきたのに対し丁寧に対応する。

 

 その中……話に入っていなかった二人がメイドさんに不満げに話しかけた。

 

「私達には何も無いわけ?」

 

「そうだ! 私達も立派なお客様だぜ!」

 

「……何故このお二人が?」

 

 メイドさんから見てもこの二人がいたのは疑問だったんだろう。その質問に静雅が気楽に答えた。

 

「本人達が来たいって言っていたもんでな。霊夢はともかく、魔理沙は本を何か『借りたら』追い出すつもりでいるから」

 

「そう。ではお嬢様の所に侠様は案内したいのですが……生憎、お嬢様はふて寝されて眠っているようで……起床する間、図書館で待っていただけますか?」

 

「まぁ、別に構わないけど……何で寝てるの?」

 

 どうして招待した側が不貞寝をしているんだろうか……?

 

 その疑問に答えるように、静雅は答えた。

 

「レミリア嬢は寝たい気分なんだろ。本来いつ侠が来るのかわからなかったんだしよ」

 

「お嬢様の不貞寝については静雅が原因じゃない……。妹様はどうなされますか?」

 

「私? う〜ん……眠くなってきちゃったかも。だから寝る」

 

「わかりました。では妹様はこちらに」

 

 静雅の肩車から降りて咲夜のスカートの裾を掴むフランドール。

 

「静雅、では図書館に案内してちょうだい……中国、後でお仕置きですからね……?」

 

「ひぃい!?」

 

 不気味な言葉を残してメイドさんとフランドールはその場から消えた。不気味なことを言われた紅さんは顔を真っ青にして静雅に体を向ける。

 

「し、静雅さん!? な、何か、咲夜さんの機嫌を直す方法やお仕置きを回避する方法を〜!?」

 

「……美鈴──」

 

 それに対して静雅は──さわやかな笑顔でこう言った。

 

 

 

 

 

「──生きて帰ってこいよ!」

 

 

 

 

 

「静雅さぁんっ!?」

 

 紅さんを見捨てた静雅は自分たち手を重ね集めてその場から消えた……。

 




 多分、紅魔館では日常茶飯事でこういうことが行われている。さらに静雅も場を引っかき回すから大変。

 ではまた。

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