幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 スペルカード詳細、次章にいく前にリクエストされていた物語を書き終えました。なので投稿します。
 sygnuss018さんリクエスト、【完全で瀟洒な従者】十六夜咲夜メインの話です。前編、後編の二話構成です。
 お相手は裏主人公(またか)で、視点は三人称。作者なりに執筆した恋愛描写が少しあり。そこを踏まえてお願いします。
 では特別番外編どうぞ。

 ※この話は本編と関係ありません。もしもの世界のIFstoryです。しかし、本編を読んでいただけると内容が理解しやすいと思いますので、初めての方は読んでみることを推奨します。


特別番外編『メイドと執事の過ごし方』①

 紅魔館には働き者のメイドとぐうだら執事がいる。メイドは自分の能力を有効活用してせっせと働いているが、執事は能力を使えば一瞬で終わる。

 

 だが、それぞれ吸血鬼姉妹の従者をしている。紅魔館のメイド──十六夜咲夜は紅魔館の主であるレミリア・スカーレットの従者だ。時折我が儘だが、普通の常識と高貴な振る舞い(レミリア視点だと)を心がけており、さほど困らない。

 

 一方、紅魔館の執事──静雅はレミリアの妹であるフランドール・スカーレットの従者。以前までは精神状態がよろしくなく、狂気に取り憑かれていた時期があったが静雅が狂気を可能な限り、能力を使わず取り除いた。それ以来フランは暴走することがなくなった。

 

 そして極めつけは……静雅は姉妹仲を改善させたのだ。その事は紅魔館住民にとってプラスに働いた。

 

 その時だろうか──

 

 

 

 

 

 

 

 ──紅魔館の唯一の人間である咲夜が、静雅のこと時折知りたくなったのは──

 

 

 

 

 

 

 

『咲夜ー? そんなに働いて疲れないのか?』

 

 キッチンで静雅は淹れてもらったコーヒーを飲みながら咲夜に尋ねる。無論、淹れたのは咲夜だ。

 

 同じく自分で淹れたコーヒーを少し口に含んで飲んだ後、彼の質問に咲夜は答える。

 

「……少ししか疲れないし、そこまで苦じゃないわ」

 

「何かさぁ……オレから見ると咲夜はずっと働いているような気がすんだけどよ……休みはちゃんともらっているのか?」

 

「異変解決に向かうときは除いて、休暇をもらったことがないわね」

 

「おぉいっ!? それ外界じゃ大問題だぞ!? 裁判で訴えれば勝てるレベルだ!?」

 

「わざわざ三途の川まで向かって閻魔様に頼まないわよ……」

 

 当然のように答える咲夜。外界での咲夜の行動は労働基準法違反だ。でも咲夜本人としては【食事が出来て寝床がある】だけでも十分なのだ。

 

 しかし、咲夜は話を続ける。

 

「でも……静雅が来て以来、私の負担が減ったのは確実よ? おかげで少しこうしてゆっくり過ごす時間もあるしね」

 

「だがよ……たまには一日ぐらい休んだりどこかに出かけたいとか思わないのか? 青春時代を無駄に過ごしてはダメだぞ?」

 

「そんなことを言われてもねぇ……お嬢様が許すかどうか……」

 

「……じゃあさ、咲夜──」

 

 静雅は一度言葉を句切って咲夜の目を見ながらこう言う。

 

 

 

 

 

「──レミリア嬢の許しを得たら、デートしてみないか?」

 

 

 

 

 

「え……デート?」

 

「そうだ。男女一組で出かけることだな。気分転換には良いと思うんだが」

 

 咲夜は一度言葉を聞き返したが、静雅は詳細を付けながら肯定した。

 

 当然、急にそんなことを言われると困るのが当たり前。困惑しながらも咲夜は静雅に尋ねる。

 

「で、デートって……私達、別に異性的な意味でお付き合いはしていないわよ……?」

 

「一般的にはそうとらえられてはいるが、別にそういう関係じゃなくてもいいんだぞ? まぁ、オレの勝手な願望で『出かけに行こう』から『デートしに行こう』と変換しているだけだけどな」

 

「そ、そうなの……」

 

 少したじろぎながらも、咲夜は曖昧だが少しだけ納得はした。働き過ぎているとみられている咲夜への気遣いだろう。

 

 静雅はコーヒーを飲み終えた後、扉に手をかけながら話しかける。

 

「じゃあちょっくらレミリア嬢に許可を取ってくる。その後、咲夜も直接レミリア嬢に話しかけてみてくれ。じゃ」

 

 そう言って静雅はキッチンから出て行った。

 

 そして──静雅が出て行ったのを確認した咲夜はというと。

 

 

 

 

 

「……嘘……? で、デートなんて初めてなんですけど……!?」

 

 

 

 

 

 顔を少し顔を赤くしながら悶々とし始めた。

 

 何だかんだ……意外と男性とまともに触れ合ったことのない女の子。彼女も思春期なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

「……お嬢様が静雅の言い分を聞き入れてくれるのかしら……?」

 

 落ち着いた後、レミリアの自室前まで来た咲夜。耳を澄ませていると会話は聞こえない。おそらく静雅との会話を終えたのだろう。

 

 それを確認し、咲夜は扉をノックして話しかけてくる。

 

「お嬢様。少しよろしいですか?」

 

『! 咲夜!? 入ってきて!』

 

「(……どうして切羽詰っているような声をしているんでしょう?)」

 

 咲夜は了承を得たのでレミリアの自室へと入る。

 

 そして彼女はレミリアの顔を確認してみると……何故か涙目で──

 

「──うー☆ 咲夜ーっ!」

 

 ──危ない走り方で咲夜に抱き着いてきた。急な主の行動にもちろん咲夜は困惑した。

 

「お嬢様!? いったいどうなされたんですか!?」

 

「静雅から聞いたのよー! 外界で咲夜みたいに働いている人間は早く死んじゃうって! 今は大丈夫みたいなんだけど、日々の積み重ねで咲夜の体が壊れる原因になるって! 【かろうし】が原因で咲夜がいなくなっちゃうって静雅に言われたのよー! 私はてっきり寝る時間があればいいと思っていたのに……深く咲夜のことを考えていなかったわー! 咲夜は紅魔館で必要な存在だから無理しちゃダメよー!」

 

 涙を流しながら必死に伝えるレミリア。その様子はまるで子供みたいな振る舞いだ。

 

 咲夜はレミリアの言葉を聞いてあることを思い出す。

 

「(……そういえば彼の種族は【荒人神】だったわね……)」

 

 荒人神。彼は人の心を荒らす神様。彼はよく口が回り、話をするのが得意だ。そのおかげでフランと打ち解けあったり、目の前にいるレミリアの悩みの決心を促した。おそらくそういうことも含めて静雅はレミリアにトラウマを植え付けるとともに説得をしたのだろう。

 

 少し泣き止んだレミリアは話を続ける。

 

「それで……三日後、咲夜は静雅と一緒に出掛けてストレス発散してきなさい。その日の仕事は気にしないでもいいわ」

 

「仕事を気にしなくてもいいって……どういうことですか?」

 

「静雅が代理を立てると言っていたわ。静雅は能力で担当している場所をこなしているけど、咲夜の業務は静雅が頼んだ代理の奴がやってくれることになっているから気にしなくてもいいのよ」

 

 静雅の仕事は基本的には決められた場所の清掃なのだが……能力でもう終わっていることになっている。自分の分の洗濯も能力でこなしている。

 

 一方、咲夜は紅魔館の食事を作っていたりもしている。というよりはいつも彼女が作っている。他にも門番の美鈴、司書の小悪魔も作ることはできるが……レパートリーが少ない。むしろ美鈴は門番の業務があるし(たまに寝ていることに突っ込むことはNG)、小悪魔は本の整理で忙しい。この時の咲夜は思い当たる人物がいなかった。自分たちの勝手な都合で仕事を引き受けてくれる人がいるのかと。

 

「はぁ……お嬢様がそう言うなら私は従うまでですが……」

 

「それでいいわ。じゃあ帰ってもいいわよ」

 

 咲夜の返事を聞くとご機嫌な顔でうなずいたレミリア。咲夜は自室を出た後に呟く。

 

「……だんだん静雅に紅魔館が乗っ取られているような……」

 

 ……実際には静雅はそんなつもりはないのだが、少しレミリアの今の状態を心配になった咲夜であった。

 

 

 

 

 

 

 

 咲夜は人里の男達にかなりの人気がある。同じ人間であり、家事スキルもある。さらには一般的に見て外見など整えられている。中には本気で咲夜のことを異性として意識している男もいるのだ。

 

 しかし、現状は良くて挨拶ぐらいしか実行できない。どうしてかというと吸血鬼の従者であるためだ。咲夜に何かしたら吸血鬼に食糧にされるという噂が人里にある。そのため、運よく咲夜に話しかけられた男は幸運だと言っていいぐらいだ。

 

 だが……男達にとっての脅威の存在。それが静雅だ。人里の男達は唯一普通に話しては一緒に買い出しに行く仲と認識しており、うらやましいという感情がある。同時にも妬みもある。静雅の外見はだらしない。だが、彼の元々持っている容姿で何故か引き立てている。人里の女性達も静雅は人里に来たとき嬉しそうにしている人物もいるのだ。人里のいる女性達の注目を集めるだけではなくて、高嶺の花である十六夜咲夜と過ごして、ましては同じ紅魔館で過ごしているのだから、男たちは静雅に対して負の感情を持っている。

 

 ……実際彼の外界の様子と同じわけだが。

 

 閑話休題。

 

 そんなことを知らない咲夜は自室で考えていた。【デート】のことについて。咲夜は身近にいる異性が静雅だ。ともに生活を一緒にしている。しかし、【デート】という単語が頭の中を駆け回っている。

 

「(……本当にどうすればいいのよ……?)」

 

 幻想郷で有名なカップルなど聞いたことのない。参考になる人物がいないことに途方に暮れていた。

 

「(……とりあえず誰かに相談してみようかしら……)」

 

 咲夜はとりあえず参考になりそうな紅魔館住民に聞くことにした。【静雅と買い出し以外のことで一緒に行くことになったのですがどうしたらいいと思いますか?】というニュアンスでレミリア以外に聞いて回ることに。

 

 

 

 

 ~美鈴の場合~

『うーん……楽しめればいいんじゃないですかねぇ……』

 

「(……どういう風に楽しめばいいのよ……?)」

 

 

 

 

 

 ~小悪魔の場合~

『そうですねぇ……逆に紅魔館で一緒にゆっくり過ごしてはどうでしょうか? 本を読むなどをして』

 

「(……静雅は絶対行動はアグレッシブよね……)」

 

 

 

 

 

 ~パチュリーの場合~

『あんなことやこんなこと――』

 

「(私達そんな関係じゃないですからね!?)」

 

 

 

 

 

 ~フランドールの場合~

『弾幕ごっこをすればいいと思うよ!』

 

「すいません妹様。その案は断らせていただきます」

 

『えっ!?』

 

 

 

 

 

 結果:参考にならない

 

 

 

 

 

「(……まともな案が小悪魔しかいないのは何故かしら……?)」

 

 咲夜はさらに途方に暮れた。小悪魔の案はいい方だと思ったのだが、静雅の性格上じっとしていられないだろう。

 

「(紅魔館で静雅に詳しい人なんて──)」

 

 思い詰めていたとき、ある人物が頭によぎった。

 

「(……いたじゃない。幻想郷で一番静雅に詳しい親友が)」

 

 咲夜はレミリアに外出許可をもらい、ある場所へと向かって行った……。

 

 

 

 

 

 

 

『──で、静雅とどう過ごせばいいか自分に聞きに来たと』

 

「正直あなたぐらいしか頼れる人がいないのよ……」

 

 博麗神社の境内で何かを作っている――外界の本堂静雅の親友、辰上侠。

 

 縁側でゆっくりお茶を飲んでいる家主の博麗霊夢もいる。霊夢は咲夜に話しかける。

 

「珍しいわね。静雅関連とはいえ、侠に用があるなんて?」

 

「静雅のことをよく知っているのは侠だけなのよ……ところであなたは何を作っているの?」

 

 霊夢の言葉に答えると咲夜は、木材を使って何かを作っている侠に問いかける。

 

「これ? 博麗神社には守矢神社の分社があるでしょ? 博麗神社は道中が整備されていないし、人里に分社でも置こうかなって」

 

「……別にこの神社は信仰はいいんじゃない?」

 

「まぁ、少ない額でも賽銭が入ればラッキーって感じかな?」

 

「お金はいくらあっても困らないしね」

 

 侠の言葉に目を輝かせる霊夢。それを見た咲夜は呆れたが、侠は霊夢に向き直って話しかける。

 

「お金は自分が稼いでくるから別にいいと思うんだけど……?」

 

「侠は私が賽銭箱を覗いているのを見て作ってくれてるんじゃない」

 

「……さすがにね、うん。賽銭箱の類にお金が入っていれば嬉しいかなって」

 

「侠はよく働いてくれてるわよ。でも……たまに賽銭箱に賽銭が入っているときがあるのよね。誰だろ?」

 

「…………」

 

 霊夢は気づいていないようだが、侠が少し顔を反らしている。それに察した咲夜は小声で話しかける。

 

「(……まさかだとおもうけど……)」

 

「(……まぁ、喋らないでいてくれると嬉しいかな?)」

 

 咲夜は思った。こういうのをある意味カップルに似たものではないかと。

 

 侠と咲夜は小声で話すのをやめ、侠が会話を元に戻す。

 

「話を戻すけど、静雅との過ごし方について教えればいいんだよね?」

 

「えぇ。そうね」

 

「じゃ、とりあえず話しますか。まずは──」

 

 

 

 

 

 少年少女会話中……

 

 

 

 

 

「──ってことかな?」

 

「なるほど……一応、それぐらいなら出来そうね」

 

 咲夜は侠から話を聞いた後、霊夢が咲夜に話しかける。

 

「話はすんだの?」

 

「えぇ。じゃあ私はこれで失礼するわ」

 

 咲夜は侠に礼をすると、紅魔館の方へと飛んで行った……。

 

 

 

 

 

『……侠、静雅が話していたことを話さないで良かったの?』

 

『別に良かったと思うよ。静雅は機会があれば自分から言い出すと思うし』

 

『咲夜も思わないでしょうねぇ……静雅の下心で誘ったこと』

 

『いや、下心ではないと思うんだけど……?』

 

『……で? 侠はそういう相手はいないの?』

 

『……言わせるつもり?』

 

『……フフッ♪』

 

 

 

 

 

 そして当日。静雅曰くの【デート】の日がやって来た。そして咲夜の業務の代わりの人物が紅魔館にやってくる。

 

『自分が十六夜の代わりをすればいいんだよね? とりあえずやれることはするよ』

 

 ……咲夜も侠と話して以来、薄々予想はできていた。でも……何故か霊夢も着いて来ている。何故かと聞いてみると──

 

『侠が神社にいなかったら私がご飯食べれないじゃない。実際今日の当番は侠だし』

 

 こういう言い分らしい。それでもレミリアは霊夢のことを許可した。

 

 そして主達と侠達に見送られて静雅と歩く。

 

「──さて、デートに行こうぜ! 咲夜!」

 

「デート、ね……」

 

 静雅がテンションを上げて咲夜に話しかけてくる。同時に咲夜は侠に言われたことを思い出す。行動をとるのは少し恥ずかしいが……許容範囲だ。そう思い──静雅の手を取る。

 

 急な咲夜の行動に静雅は驚いたような様子が見える。

 

「おっ!? 咲夜……!?」

 

「だったら……しっかりリードするようにね? あなたが誘ったようなものだし、期待しているわよ?」

 

 少し微笑むように話しかけた咲夜。普段咲夜は笑顔を見せることはないのだ。希少なものを見れた反面、少し頬をかきながら顔をそむけながら言葉を返す静雅。

 

「ん~……こいつは予想外だった。オレからさりげなく手を繋ぐ計画が……」

 

「だろうと思ったわよ。どう? 先にこされた気持ちは?」

 

「……正直悔しい。こういうのは男がムード作ってやるものだろJK……」

 

「残念だったわね? まぁ、私を楽しませてくださいね?」

 

「むぅ……」

 

 咲夜は侠から静雅の扱いについてこう言われていた。

 

『静雅から基本アクションを起こすだろうから、それに飲まれないようにしたらいいよ。静雅のペースじゃなくて、十六夜のペースに持っていくことが大事。少し恥ずかしいことをすれば、変わった一面の静雅を見れるかもよ?』

 

 侠の言っていたことは主導権を手にすること。そうすれば静雅の扱いができるという。

 

 実際、ふて腐れている静雅の表情を初めて見た。

 

「(……案外、楽しく過ごせそうね)」

 

 人里までの間咲夜が主導を握り、手を繋いで人里へと向かった……。

 

 

 

 

 

 

 

 数十分後。人里に到着した咲夜と静雅。今はもう手を離している。とりあえず咲夜は静雅に話しかけることに。

 

「これからどうするの?」

 

「そうだなぁ……咲夜、とりあえず小物でも見て回ろうかと」

 

「何か買うものでも?」

 

「……日頃頑張っている咲夜へのプレゼント?」

 

 今度は静雅からアクションを起こし始めた。ストレートな話題で咲夜の動揺を誘っているのだろう。

 

 実際、咲夜は揺さぶられたが……侠の言うとおり、なるべく表情を隠して言葉を返す。

 

「そうなの? どんなものを考えているのかしら?」

 

「…………まだ未定だったり」

 

「まぁ、時間はまだあるし考えてくれると……嬉しいわ」

 

「……何故だ……予想外の反応だ……」

 

 咲夜の反応に逆に動揺する静雅。まさか侠からの入れ知恵だと思っていないだろう。

 

 内心楽しみ始めている咲夜は雑貨屋を見つけ、咲夜は会話を繋げる。

 

「考えていないで探してみるのがいいんじゃない? 私も探しているものがあるの」

 

「……そうすっか」

 

 静雅は咲夜の言葉に同意し、雑貨屋に入っていく。静雅は「じゃあちょっくら探してくる。その間咲夜も見て回ってくれ」と告げると、雑貨屋内で各自行動になった。

 

 咲夜も店内の商品を見て回る。そして──あるものを見つけた。少し考えた結果、レミリアから娯楽費として受け取っていたお金でそれを購入した。

 

 先に買い物を終えた咲夜はお店の外で静雅を待つことに。

 

 数分後……静雅が店から出てきたので話しかけてみる咲夜。

 

「どうだったの?」

 

「フフフ……そいつは後でのお楽しみってやつだ」

 

「あら、そうなの……じゃあ──」

 

 咲夜は雑貨屋で買ったものを静雅の手に乗せながら言う。

 

「──これは私からのプレゼント」

 

「…………はっ? マジ?」

 

 今日一番の戸惑いを見せた静雅。咲夜から受け取ったものを確認すると、こう呟く。

 

「…………ヘアピン?」

 

「そうよ? 今のあなたも白い二本のヘアピンを付けているし。あなたに似合いそうだと思って」

 

「色が赤いのは紅魔館カラーか?」

 

「……どうかしらね?」

 

「まぁ、その……ありがとな。まさかもらえるとは思っていなかった」

 

 また頬をかきながら咲夜の言葉に答える静雅。

 

 その様子を見た咲夜は……悪戯心が湧いてきて、静雅にこう尋ねた。

 

「……付け替えないのかしら?」

 

「えっ? この場でか?」

 

「せっかくだし、付け替えてみたらいいんじゃないかしら? 実際に付けているところを見たいし」

 

「そ、そうか……? じゃ、じゃあちょっと背を向けてくれないか? さすがに見られながらってのは恥ずい」

 

「嫌よ」

 

「何故!?」

 

「冗談よ。今日の静雅の反応が面白いんですもの。ついつい弄るのが面白くなってたのよ」

 

「……解せぬ……」

 

 弄られるのが納得いかない静雅を見てまた咲夜は笑みを浮かべる。一先ずは弄るのはそれくらいにして、咲夜は後ろを向いた。

 

 ……数十秒後。静雅に声をかけられたので咲夜は振り向くと、頬をかきながらも、白いヘアピンから赤いヘアピンへと変わった。

 

 それを見て咲夜は一言。

 

「似合ってるじゃない。格好いいわよ?」

 

「……褒められたが恥ずい感情が多くあるから不思議。くそう……倍返ししてやる……」

 

 新たな静雅の一面を見ながら、咲夜は【デート】を楽しみ続けた……。

 




 前編終了。信じられるか? これでもまだ前編なんだぜ……。

 本編と比べると珍しく弄られている裏主人公の静雅。咲夜さんも楽しそうで何よりです。

 後編はちょっとシリアスが入るかも。

 ─P,S─
 アレットさんの小説【東方幻影夢】においてコラボさせてもらっています! 今回は裏主人公が出ていますので興味のある方はどうぞ!

 ではまた。

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