幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 時間軸が進むのが遅いことにツッコミを入れてはいけない。
 では本編どうぞ。


四話 『雑談、宵闇の妖怪』

「「「ごちそうさまでした」」」

 

 模擬弾幕ごっこが終わり、博麗の作ってくれた朝食を食べ終わった。メニューはよくありそうな和食だった。

 

「……幻想郷でも、自分の元の世界の料理と余り変わりはないんだね?」

 

「外界でも私と同じような料理なの?」

 

「同じと言えば同じかな? 他にも色々な料理はあるけど……料理方法がレトロだとは思わなかったけど」

 

「? 外の世界ではどんな風に料理してんだ?」

 

「電化製品をフル活用して時間がかなり短縮できるんだ。下準備をすればお米は勝手に炊けるし、火だって簡単におこせる。中にはお湯だけで出来る簡単な食事も出来るんだよ」

 

「……外の世界は発展しているのね……」

 

 自分の世界について軽く雑談したりして過ごした。

 

 そしてしばらく三人で話した後。霧雨が次の行動に移し、自分にとある事を言いつける。

 

「次は──私が弾幕ごっこに勝ったから侠から何かをもらうぜっ!」

 

「あ〜……あったね。そういえばそうだったね……」

 

 ちらりと隅に置いてある自分のバッグを見る。八雲さんの配慮か知らないが、いつも使っている(登校にも使える)バッグは重みがあった。何が入っているか分からない。

 

「侠が持ってきてたあの黒い革の鞄ね……」

 

 博麗もバッグを見る。特に面白い物は入っていないと思うけど……。

 

 バッグを霧雨は見て、どこか気に入ったかのように自分に確認を取り始める。

 

「ほぉ〜……侠、あの鞄を私にくれないか? あれ気に入ったぜ」

 

「却下。それがないと色々持ち運びに不便だよ。第一、あれは結構高かったんだから……」

 

「いくらぐらいなの? あれ」

 

 博麗があのバッグについての値段を聞いてきたので、大雑把に自分は答える。

 

「野口さん六人分」

 

「……ありえない……たかが鞄ごときにそれだけ払うなんて……!」

 

 ……彼女が買うとしたら許容範囲ではないらしい。そんな博麗の事は置いておいて、霧雨は不満そうに言う。

 

「ちぇー。あのぐらいの適度の大きさなら本の持ち運びに便利なのによー」

 

「まぁ、中にはいっている物で勘弁してくれるとうれしいけど……」

 

 そう言いながらバッグを二人の近くに持ってきて、中身の確認。何が入っているのか取り出してみると……。

 

「……筆記用具にセンター試験過去問題集、暗記本(自作)、ルーズリーフ……最初は勉強道具ばっかりだ……」

 

「何だその本? 魔導書かなにかか?」

 

「読んでみると良いよ」

 

 霧雨に暗記本を渡す。自分はその間にバッグに中を整理を始めた。

 

「…………何を言いたいのかさっぱりだぜ。何でアルファベットを足したり引いたりとかしてるんだよ?」

 

「本当ね……この【亞硝酸】とか一体何よ……?」

 

「それは化学式だね。多分そのページはベンゼン環のジアゾ化辺りかな?」

 

 どうやら今読んでいるのは化学の範囲らしい。大体八回ぐらい繰り返し書いたので覚えている。

 

「お前、意味不明なこの本の内容覚えているのか……?」

 

「一応その本は自作したのは自分だし、それなりにわかりやすく書いているつもりなんだけど……ベンゼンとか知らない?」

 

「初めて聞いたわよ……っていうか、そんなの覚えなくちゃいけないの?」

 

「こっちの世界では社会人になるために必要な過程だから覚えなくちゃいけないんだ」

 

 そう言いながらバッグの中を整理する。次に出てきたのは携帯食料が出てきた。小腹が減ってきたときに休み時間に飲むタイプのゼリーだったり、ブロック状のビスケットの箱が出てくる。最後に出てきたのは空の水筒だ。

 

「いつもながら結構入っているな……それぞれ五個ずつか……」

 

 よし、これをあげよう。

 

「霧雨、この箱とこの袋をどう?」

 

「? 見たことない箱と袋……なのか? 何か袋の中に入っている?」

 

「それはこっちの世界の簡易的な食べ物なんだよ。箱の方はビスケットみたいな物で、袋の方はゼリーが入っている。博麗もこれらをあげよう」

 

「外の世界の食べ物ねぇ……ま、ありがたく受け取っておくわ」

 

 博麗にもワンセットをあげる。どのみちしばらくはお世話になるしちょうど良いだろう。

 

「なぁ侠……こいつらってどうやって開けるんだ?」

 

「知らないのか……? 箱の方は側面に爪を引っかけるところがあるからそこから開ける。その後袋にに包まれている物が出てきたらギザギザの所を裂けば良い。袋は上に付いている小さい円柱の物を反時計回りにひねれば開けられる。まぁ、小腹が空いたときにどうぞ」

 

「そっか……じゃあこれはありがたくもらっておくぜ」

 

 霧雨は服に付いているポケットにカロリ○メイトとウイ○ーインゼリーをそれぞれ閉まった。

 

「……それより気になってたんだけどさ?」

 

「? 何霧雨?」

 

「どうして私のことを霧雨じゃなくて【魔理沙】って名前で呼んでくれないんだ? んで、霊夢も【博麗】って呼んでるし……私は別に名前で呼んでくれても構わないぜ?」

 

 ……この幻想郷では初対面でも名前で呼ぶのが当たり前なんだろうか?

 

 答えようとしたとき、博麗が先に口を開いた。

 

「何か知らないけど外界では初対面の人は名字で呼ぶらしいわよ?」

 

「ふ〜ん……私は別に構わないけどなぁ……」

 

「まぁ、慣れたら名前で呼ぶよ」

 

「わかったぜ。じゃあ早く慣れろよな?」

 

 そう言いながら霧雨は玄関に向かい始めた。

 

「じゃあなー霊夢に侠。また来るぜー」

 

 そう言うと霧雨は神社の中から出て行った。博麗と二人きりになる。

 

「博麗と霧雨って結構仲は良いの?」

 

「別に。ただの腐れ縁よ」

 

「それだけでも結構な繋がりだと思うけどね……さて、これからどうするかな」

 

「なら早速、居候として家事を色々やってもらうわ。まずは皿洗いをお願いね」

 

「了解」

 

 ひとまずは家事を勧めていった……。

 

 

 

 

 

 

 自分が出来る家事をやった後、出来るだけ役割分担をしながら昼食を食べた。

 

 基本的には皿洗い、風呂掃除、居間の掃除、境内の掃き掃除など掃除全般は自分の役目となった。その他の家事は基本的に博麗。自分に暇があるときは手伝うこと。洗濯は個人。理由はプライベート。

 

 そして昼過ぎになった頃。

 

「侠の必要な物を買いに行くわよ」

 

「自分に必要な物? 歯ブラシとか?」

 

「まぁ、それもあるけど……あんた、服はそれ一着しかないでしょ? それを洗濯しているとき侠が困るでしょ?」

 

「うん。困る」

 

「幸いに侠が賽銭してくれた一万あるからそれを買いに行くわよ。ついでに他の物も買うから荷物持ちしてもらうけど」

 

「それは男子として当たり前だから良いけど……うん。行こうか」

 

 身支度をし、二人で神社の外に出る。

 

「そういえばこの近くに服とか買える場所とかあるの?」

 

「少し歩いたところに人里があるの。普段は飛んでいくけど、侠はまだ飛べないから歩いてそこに行くわよ」

 

 博麗の隣で歩きながら地理について聞く。人里までに行く経路を覚えなくてはいけない。(というより普段飛んでいくのか……)

 

 しばらく歩いていたら、草の茂みが動いている。そして──

 

「わは〜」

 

 ……頭に大きなリボンを付けたおっとりした小さな女子が倒れて出てきた。

 

「…………」

 

 博麗に関してはその女子を見て黙っている。初めて見る人だろうか?

 

 リボンの付いた女子はこちらに気づいたようで顔を向けて話しかけてきた。

 

「あ〜。霊夢だ〜」

 

「……はぁ。何で倒れながら話しかけてくるのよ?」

 

「お腹がすいてきてしまったのだ〜……」

 

 悲しそうな声で答える女子。何か見てて可哀想に思えてくる。

 

 その女子は今度は自分に顔を向けてきた。

 

「…………ねぇ? あなたは食べられる人類?」

 

「いや、食べられないけど……」

 

「そうなのかー……」

 

 何故か悲しげに呟く女子。

 

 ……最悪自分を食べて空腹を押さえようと考えたのだろうか……?

 

 そんな言葉を聞いたせいか、博麗はドスの利いた声で倒れている女子に話しかける。

 

「私が見ている前で食べようなんて良い度胸じゃない……?」

 

「う〜……だってお腹が減ってきて動けなくなっているからしょうがないー……」

 

 彼女の様子を見かねて……自分はとりあえず、持ってきたバッグを開けてカロリーメ○トを取り出し、中身を開けて口に持って行く。

 

「お腹が減っているならこれでも食べる? 少しはお腹の足しにはなると思うけど?」

 

「食べる〜……」

 

 とりあえず一箱に入っている四本を順番に食べさす。女子は口だけを開けて器用に食べていた。

 

「おいしいけど……口の中がぱさぱさしてきたのだー」

 

「じゃあ今度はこれだな」

 

 ウイダーインゼ○ーのキャップを開けてゆっくり飲ませていく。完璧に飲んだら、その女子は立ち上がった。

 

「最後のなんかにゅるにゅるしたものはおいしかったのだー。えっと……」

 

「辰上侠。辰上が名字で侠が名前」

 

「そうなのかー。侠ーありがとうなのだー」

 

 その女子は律儀にお礼を言うと茂みの森の中へ消えていった。

 

「……何なの? あの子?」

 

 普通に疑問に思っていたことを博麗に聞いてみる。

 

「妖怪のルーミアよ」

 

「…………ゑ? あの子妖怪なのっ!?」

 

「私と弾幕ごっこして勝ったときは丸くなったんだけど、ときどき人間を食べてたみたいね。今はなるべく食べないように守っているみたい」

 

「……人型の妖怪だったのか。見分けが全く付かないよ?」

 

「中には露骨にわかりやすい妖怪もいるけどね。まぁ、それはおいといて人里に向かいましょ」

 

 そう言って博麗は歩き出したので自分も着いていく。

 

 ……自分が食べられるかどうかは冗談ではなかったのか……。

 

 




 ルーミア登場。幻想入りでは高確率で最初に襲ってくる妖怪。でも表主人公をめぐらず弾幕ごっこにはならなかった。
 表主人公は基本的に頭が良いです。勉強を欠かさずやっていました。しかも先天的才能。このことについては本編か主人公設定で詳しく乗せる予定です、

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