幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ようやくサブタイの方々。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


二話 『命蓮寺』

 ある意味特異な四人組は人里についた。身なりからは珍しいのもあるのであろう。すれ違う人里の住民は振り返るように二度見などをしているが、四人は特に気にせず。四人達は足を進めていく。

 

 そして──人里では比較的に新しく出来たという、お寺──命連寺についた。彼が知っている情報だと、このお寺の名前は住職の弟の名前が使われているだとか。

 

 夏という事もあってだろう。お寺の前で柄杓を持っては打ち水をしている女性がいる。その人物は外界で例えられるのならば、白いセーラー服に近い。海軍が被るような白い帽子を被っている人物がいれば、その人物は四人の存在に気づくと声を掛けた。

 

「ん? 見たことのない格好の集団……? 命連寺でありがたい事を聞きに来たの?」

 

「似たような事ですね。自分達は最近出来たというこの【命連寺】の方々を差挨拶をしておこうかと思って」

 

「へ〜……男一人に女三人。しかも──って五徳!? アンタ五徳!? 何でこんな所にいるわけ!?」

 

「やっぱりか。命連寺という名前から大体のメンバーは察したが……」

 

 セーラー服の女性は四人の人物の中で、五徳の名前を呼びながら驚愕している。その事に疑問に思った陽花は彼女に情報を求めた。

 

「五徳? この女子高生みたいな人と知り合いなの?」

 

「地底にまだいた時にな。こいつの名前は村紗水蜜。しがない船幽霊だ。ちなみに外界でいうセーラー服はこちらの時代背景では水兵服として使われていたんだ」

 

「あぁー……歴史の授業で聞いた事があるような、ないような……」

 

「いやぁ〜久しぶり! 外界から帰ってきてたのは初耳だよ! 元気にしてた?」

 

「概ね」

 

「懐かしい知り合いに会った事に感激だわ〜……」

 

 懐かしそうに感傷に浸る水蜜だが、我に返っては男に概要を尋ねる。

 

「えっと、つまりはウチの住職である聖の話を聞きに来た。それで合ってる?」

 

「そうですね。知り合いの名前を告げればスムーズに進むと思うんですが──【本堂静雅】の友人です」

 

 彼が告げた固有の名前。水蜜もまたその名詞に反応してはどこか焦りの表情を浮かべて情報の再確認を。

 

「え!? 本堂静雅って、あの吸血鬼の館にいる、外界の異変解決者として名乗りを挙げた静雅!?」

 

「……本当に異変解決者になっていたんだな、静雅……。その静雅に間違い無いですね」

 

「こりゃ驚いた……もしかしてしょっちゅう静雅が言っていた外界の親友兼、幻想郷では凄い権力を持つ血が流れているって……。じゃあちょっと待って! 一輪に案内を頼んで、ウチは聖に話しておくから!」

 

 水蜜はすぐに命連寺へと駆け込んでいく。彼女が言った固有の名前の人物が来るまで、五徳は尻尾で縁の相手をして数分後。四人の目の前には尼さんのような顔以外の頭を隠すような被り物をしては、手には金色の輪のような物を持っている。彼女の近くには……厳つい顔をした、桃色の雲で出来た男の人物(?)もいる。

 

「……筋○雲?」

 

 呟くように言った陽花の呟きは誰にも聞こえることは無かった。

 

 遅れて、急いで駆けつけた目の前の女性は自己紹介を始める。

 

「遅れました。私は雲居一輪と申します。そしてこちらは雲山。私のパートナーのような人物です。……五徳、久しぶりね。外界はどうだった?」

 

「醜いところもあれば、優しい奴もいた」

 

「大雑把な感想ね……それで、そちらの三人は……人間? 五徳、どういう繋がりがあってこの三人の人間を連れてきたのよ?」

 

 どうやら一輪も五徳の知り合いらしい。彼女の疑問に答えるように、五徳は関係についての説明を。

 

「こちらの男に関してはアタシの主である。私は今は式神としているんだ。それで、アタシの主の妹達だ。まぁ、厳密には親戚と実の妹だが」

 

「式神に!? 群れなかったあなたが式神になるだなんて──ん? 雲山? えっと──」

 

 一輪が言いかけた所で、雲のような人物である雲山が一輪に何かを訴えている。雲山の言う事に一人はいつも通りに、二人の妹達は首をかしげていたが──男が口を開く。

 

「『此奴、只者でない気配がする。普通の人間にしてはどこかおかしい』か。雲山さんの言う事は間違っていませんね」

 

「!?」

 

「えっ!? あなた……雲山の言いたい事がわかるの!? 雲山の言いたい事は私か姐さんしかわからないはずなのに……!?」

 

 一輪に話していた雲山も驚きの表情を浮かべているが、彼女も同様である。彼の言葉で警戒心が生まれてきたのを察してなのか、五徳が彼女達を諭す。

 

「一輪、雲山。アタシの主はちょっと以上にハイスペック機能を持っているんだ。幻想郷で意思疎通が難しい相手でも理解出来るようになっている」

 

「……まぁ、あなたがそう言うのなら信じましょう。さらには、村紗から聞いた話では本堂静雅の友人だと聞いているし。確かに、あの人の人脈で色んな人物と繋がっていても不思議ではないわ……じゃあ、ついてきて」

 

 一輪の先導に案内して行こうとした時──背後からは誰かが飛翔から着地した音が響く。一輪を始め、五徳達もその音源へと体を向けてみると……そこには一人の妖怪の少女。身なりは全体的に灰色の服にストールを肩に掛けているが、種族的に表現するならば【鼠】。頭の上部には大きな丸い形をした耳に、彼女の後ろから見えている縞模様のついた細い尻尾だ。

 

「……夢の──」

 

「陽花、それ以上は言ってはいけない」

 

 ……マジマジと見ながら何かを発言しようとした陽花に、男の制止の声が掛かったが。

 空から現れた彼女に見覚えがあるような反応を見せたのは雲山を含め一輪と五徳。一輪は体を翻して現れた彼女の元に寄っていく。

 

「ナズーリン? どうしたの──って、言うまでもないわね……また星の落とし物捜し?」

 

「そうなんだが……探していた宝塔の反応が少し前に消えたんだ。何かに妨害されているような感じで、まだ見つけられていない……」

 

「捜し物が得意のあなたが見つけられない何て事があるの!?」

 

「私だっておかしいと思うさ。一先ずは御主人に報告をね。邪な人物が拾っていなければ良いが……」

 

 二人の会話に部外者組である四人が思い当たるような反応を見せ、視線が縁が持つポーチへと視線が集まった。彼女もすぐに行動を起こし、ポーチから【宝塔】を取り出し、無邪気にナズーリンと呼ばれた少女に彼女は見せながら話し掛ける。

 

「ねーねー? ほーとーってこれ?」

 

「ん? そうそう、そんな感じのが宝塔──って宝塔!? どうしてただの人間が宝塔を持っているんだ!?」

 

 あっさり目的のモノが見つかった事に、先ほどまでは焦燥を見せながら少し冷静に対応していたナズーリンの表情が崩れた。彼女の疑問に心当たりがあったのか、答えたのは笠を被った男だ。

 

「あー……多分、見つけられなかったのは自分の所為だと思う。自分は諸事情で負に掛かる力を無効にするから。縁が持った事で自分の傍にいた影響で、【追跡から逃れる】事になっていたのかも……」

 

「……逃れる? その所為で私は宝塔を見つけられなかったと……?」

 

「おそらくね。ざっと自分の事を話せば解決するかもしれないけど……それよりも。縁、その宝塔の持ち主が見つかったから返してあげようか」

 

「うんー!」

 

 笑顔を見せながらナズーリンに宝塔を手渡す縁。何も躊躇いもなく宝塔を手渡されたことに疑問を覚えたのか、戸惑いを含めた声でナズーリンは彼女に尋ねる。

 

「……君は私が嘘を付いているとは思わないのかい?」

 

「困っている人がいたら助ける、にぃにから教えて貰った事ー!」

 

「……久々にここまで無垢な善人を見たような気がするよ。それはともかく、宝塔を見つけてくれてありがとう」

 

「どうもいたしましてー!」

 

「あぁ、こちらこそ」

 

 縁から受け取った宝塔を懐にしまうナズーリン。一先ずの彼女の目的は達成した後、彼女は一輪に改めて現在の状況を聞く。

 

「一輪。五徳がいる事も気になるが、この人達はどうしたんだい?」

 

「あぁ、姐さんに挨拶に来たんだって。それで私が誘導している最中」

 

「そうか……なら、私が変わりに案内しても良いかい? 一応世話になったし、少しでも恩を返さないとね」

 

「あなたがそういうなら止めはしないわ。じゃあ、お願いね」

 

 ナズーリンが一輪の役目を引き継ぎ、雲山と共にこの場を去って行く。そして、そのまま四人を誘導していった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 広い空間の部屋に着き。畳で敷き詰められた部屋で正座をしながら対面している人物達。四人も正座して座っているが、目の前にナズーリンと──腰まで伸びた髪にグラデーションが掛かった、中に白い服に黒い上着を着ているこの命連寺の住職だ。その人物も同じく正座をしながら、笑みを浮かべながら挨拶を。

 

「本日は命連寺に来ていただきありがとうございます。さらには、星の落とし物まで拾って届けていただくとは……言葉に出ないです」

 

「いえ。こちらとしても偶然とはいえ力になれたのなら幸いです。そしてあなたがこの命連寺の主でもある──聖白蓮さんですか?」

 

 彼女の挨拶言葉に男が受け答えをし、彼女の名前である──聖白蓮についての確認をする。彼の言葉に白蓮は肯定。

 

「はい。私が聖白蓮です。貴方の事は御友人から良く聞いています。それに……五徳。久しぶりね。元気そうで何よりだわ」

 

 手を合わせながら彼の質問に答えた後、知り合いと思われる五徳にどこか上機嫌で話す白蓮。

 

「……望むような世界になったか?」

 

「えぇ。私が再びこの地に降りた頃と比べると、人妖の差別が少なくなっていますね。本当に、人と妖怪が共存出来る世界になっていると知った時は本当に嬉しいの気持ちばかりで……」

 

 白蓮は自身の胸に手を当てながら胸中を語る。そして、目の前の男に話を振った。

 

「これも、貴方がしてくださった事なんですよね? 人間を差別しない、妖怪を差別しない。ましてや、神様も差別しないという取り組み。静雅さんから話を伺っていましたが、貴方と会話をしたいと常々思っていました──」

 

 彼女の言葉に合わせて、男は被っていた笠を外した。そして白蓮は言葉を続けて、幻想郷に浸透していた彼の名前を呼ぶ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──辰上侠さん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 ようやく男の名前が判明したところで。

 ※多少誤字があったので修正しました。

 ではまた。

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