久々の霊夢視点。
では本編どうぞ。
スキマの中に侠と紫が何か大事な話をして。数分後にはスキマが現れて紫が出てきた後に、侠が戻ってきて。一先ず侠がやったことは──迷惑をかけた奴に謝りに行くことだった。
あれから解散し、気絶していた魔理沙達が目が覚めて。侠は魔理沙達に丁寧に謝った。素直な侠の謝罪に魔理沙とアリスは戸惑ったものの、受け入れてくれて。でも……早苗に関しては──
『──東風谷。あの時は本当にゴメンな。コート云々の事を聞いたときからわかっていたんだが……』
『……許しません。女の子の気持ちを踏みにじって、あまつさえは事実を黙っていて。怒らない理由が何処にあると言うんですか?』
『くっ……』
『ですが──私の事をギュッと抱きしめて、これから名前呼びをしてくれるのなら許してあげます。もしもしてくれない場合は──』
『してくれない場合は?』
『神奈子様と諏訪子様にこの事を相談します』
『……………………』
……とりあえず面倒くさいことはわかった。それと、侠が早苗がそういう事をしている姿を想像したら──物凄くイラついて、その時は私も会話に入り込んだ。
『何あんたは勝手な事を言っているのよ……? そんな事、しなくていいわよ侠。私が【話】をしておくから』
『……霊夢、別にそこまではしなくても──』
『──あぁーっ!? 侠君が霊夢さんの事を名前で呼んでいます!? 私達が気絶している間に侠君に何があったんですか!? 今までずっと名字で霊夢さんを呼んでいた侠君ですのに! これは怪しいにおいがプンプンしますよっ!!』
……早苗に言われて気づいた。二人きりの時は名前でずっと呼ばれていたけど──そういえば文からの質問で誰も触れていなかったけど、その時も呼ばれていたような気がする……。
同じ事を思ったのか、紫から話を受けていた妖夢もその事について侠に指摘する。
『……確かに、そうですね。おそらく侠さんは霊夢さんと何かあったのかと思いますが……』
『……魂魄? ちょっとその視線は辛いんだが……』
少しジト目で見ながら言う妖夢に侠はバツの悪そうな表情を。そして魔理沙はある事を思いだしたかのように言う。
『……そういや、侠が幻想郷に来た当初はすぐには名前呼びしないんだったな。霊夢との弾幕ごっこを終えたかは知らないが、もう侠は幻想郷に慣れたということだろ? だったら私の名前とか呼べるはずだよな』
『ゑ……それとは話が別──』
『侠、諦めろ。今のお前さんの立場はかなり悪いから従った方が良いぞ?』
『静雅まで……』
侠の肩に手置いて言う彼の親友に同調するかのように、咲夜とアリスも意見する。
『抱きしめる云々はおいてね。さすがにそれは、ねぇ……』
『今まで他人行儀だった分、せめて今回の異変……というのかしら? せめて私達ぐらいは名前呼びで良いんじゃない? それで私達は良いと思うわ』
『うぅ……抱きしめて貰うのはさすがにダメですか……』
他者の意見もあってか、早苗はそのことについては妥協することに。侠は私と静雅と他に、早苗に魔理沙と妖夢、咲夜とアリスに関しては名前で呼ぶ事になった。
……私だけ呼んで貰いたかったのに……。
そこからそれぞれの人物は帰る場所に帰って。侠が言うには明日の早朝で……外界に帰る事になっている。侠の目的の為に。それで──侠の幸せの為に。
適当に食事を作っている中、侠は度々私の顔を見ては勝手に反らして。その事について侠に問いかけると彼はこう言ってきた。
『……霊夢、本当に気づいていないの……?』
『? 何が?』
『あー、うん……何でもない……』
何かに気づいていないのかと聞いてきたけど、さっぱりわからない。何か顔に付いているのかと聞いても違うと言うし……。
でも……色々とまだ私は侠に聞きたい事がある。声に出して聞こうとしたけど──
「「あのっ」」
被った。何か私と侠は恥ずかしさを感じたのか、お互いを先に譲り合う。侠も私を優先にしてきたけど、私が【居候】と呟くと伝わったみたいで、溜息をしながらだけど話を振ってきた。
「……もしかしたらだけど、自分はある事が隠されているんじゃないかと思うんだ」
「……隠されている? 紫がまだ何か侠に隠し事をしているの?」
……話している最中の侠は【自分】口調だったけど、本人曰く普段この言い方で過ごしていた分出てきちゃうみたい。それでも侠はこの喋り方は直す気はないみたい。初対面の人や普段の生活ならこの言い方の方が丁寧だからという理由で。
……今となっては私は【素】も好きだけど、聞き慣れたこの言い方も好きなのよね。【素】はかっこよくて、【表】は優しくて。【裏】は……ワイルド?
閑話休題。
隠されている云々について紫が関与しているのか聞いてみたところ、侠は首を横に振った後答える。
「……自分自身について。まだ、推測だけど……大事なモノが隠されているような気がする。ご先祖様にその事を問いかけたんだけど、『いずれその事については主に伝える人物が現れる』とか言っていて」
「大事なモノ、ね……」
……さすがにそれだけじゃわからない。侠にとって大事なモノ。それってなんだろう……?
私なりに考えていたところ……侠は話を続けるようにして、私にある事を伝えてくる。
「もしも、その大事なモノがわかった場合は……君にその事を真っ先に伝えたいんだ」
「私に? そういうのはあんたの親友でもある静雅が優先じゃないの?」
「確かに静雅も大事な親友だけどね。でも──静雅よりも、霊夢に知ってもらいたいんだ。霊夢は静雅より、ね……」
どこか恥ずかしそうに侠は大事な親友よりも私に伝えるという。
これって……もしかして──
「侠……あんたって、もしかして私の事を──」
「あー、うん……ようやく察してくれたかな──」
「──静雅以上の【親友】として見てくれているの!?」
「……………………ゑっ」
「どうやら私は勘違いしていたみたいだわ。てっきり、侠は私の事を他人、良くて友人として見ているのかと思ってた。それで、その侠自身の大事な事を幼馴染みである静雅より優先に、私に伝えようとしてくれている。それってつまり──静雅より私の事が優先の【親友】として見てくれているんでしょっ!!」
侠の言った事。侠は暴走した時は静雅を何かと優先していた。多分、それは静雅は侠にとって大事な奴だから。でも──侠のこの発言は静雅より大事だからの発言にも聞こえる。それはつまり──侠の中では外界の親友よりも幻想郷の親友を優先、つまりは私の事を優先しているっていう事! そこまで心を開いてくれるとは思ってなかったけど……凄く嬉しい!
これで間違いなく侠は私の事を大事に思ってくれているって事よね! できれば、告白してくれたら私は万々歳だったけど……告白ってきっと勇気がいるものよね。それは仕方ないわ。私だって正面から言うの恥ずかしいもの……。
「(……本当の言葉の意味が伝わらない……!?)」
侠は何やら片手で顔を隠して、恥ずかしがっているようにも見える。やっぱり、この事を伝えるにしても侠にとっては恥ずかしかったみたいね。でも……あんたの気持ちは正直に嬉しいから。
私は機嫌を良くしながら、料理を侠に振る舞った……。
……今日でやることは終えて。それぞれの部屋で就寝……と、言いたいところだけど……私は眠れないでいた。
それはもちろん……辰上侠の事。明日の早朝には、彼は幻想郷からいなくなる。彼の親友の静雅と共に。
侠の騒動で、衣玖から言われた私の恋心。何時の間にか侠の事が好きになっていると指摘されたときは……どこか、嫌な気持ちはしなかった。そういうことはきっと、少なからずそういう兆候があったんだと思う。今から思えば……紫の【無自覚】という事がわかるような気がする。多分、紫のこの指摘は【霊夢は侠に想いを寄せている】という事が言いたかったのかもしれない。
……侠と新しく結んだ【約束】。それがあるとはいえ……侠とは離れたくないのが本音。もっと、侠といろんな事を過ごしたい。何時かは、想いを伝えて、恋人関係に──
「……恋人って何すれば良いのかしら?」
……きっと、なればわかるはずよね、うん……。
でも……そういう関係になるには自分の想いか侠から告白してようやくなることが出来る。
「……侠は起きているかしら?」
私は布団から出て、侠が寝ている部屋へと足を運ぶ。目の前に来ると緊張したけど……ゆっくりと、襖を開けて侠を確認してみると──
「──Zzz……」
……寝てた。そういえば侠って寝付きが凄く良かった気がする。前に侠と別件で話そうと思ったときは……数分も経っていないウチに寝ていた。だからその時の私は静かにその場を去ったけど。
でも……今回は違う。侠が寝ている近くまで寄っていき、寝ている彼の顔を見る。
「……侠」
多分、侠は心身とも疲れる一日だった。私も侠を止める為に疲れたけど……侠は一番疲れていると思う。【裏】の侠の時は必死さがあった。外界に帰るために。全ては外界で果たす目的の為に。
……寝ていても彼が恋しい。自分の想いに自覚してしまった今、侠の傍にいたい。誰にも渡したくない。もっと──彼が──
「……あれ? 私──」
私は無意識の内に、侠の顔を両手で触っていた。手から伝わるのは、人肌の熱。そして私は、侠のある一点に凝視する。
「…………」
そのまま、私の顔は動いていく。寝ている侠の顔の正面に私の顔があって。気づいたときは──
私は、寝ている侠の唇に自身の唇を重ねていた。
「…………」
私も瞳を閉じながら、一点が彼と繋がっている。そのような感覚が私にとって幸せに感じて。数秒間重ね合って。
私が侠と離れて瞳を開けたときは、寝ている侠の顔があって。そして私は数秒間動けないでいたけど──遅れて、自分のした行動について──恥ずかしく思う事になる。
────ッ!? 今、私何をしたの!? まさか……キスしてた!? 嘘、どうして……!? こういうことは恋人関係になってからって決めていたのに、何時の間にか体が動いてた!?
「……きょ、侠はっ」
私は急いで侠を確認するものの、彼は何も変わらず寝ているばかり。どうやら気づいていないみたいだけど……うわぁ、自分でも顔が赤くなっていくのがわかる……!?
「……い、急いで自室に戻らなきゃっ」
私は なるべく静かに急いで侠の部屋を出て行こうとする──が、近くにあった机に足の小指をぶつけてしまった。
「痛っ!?」
『──ん? 霊夢の声? どうして寝室に──』
私の声に気づいて、侠の声が聞こえてきた。まずい……どうしてこの場にいるのか聞かれたら、間違いなく怪しまれる!
……はっ!【幻想空想穴】を使えば一瞬にして移動出来るじゃない! 何でこんな土壇場で思い出すのよ!?
私はすぐに【幻想空想穴】を使って、侠の部屋から脱出した……。
『……ご先祖様。今明らかに霊夢の声が聞こえませんでした?』
『「……気のせいではないか?」』
『気のせいか。じゃあ寝よう』
『「(……霊夢の為に伝えんでおこう……)」』
きっと彼女は誰もいないところなら積極的になれると思う。
ではまた。