幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 複数の終わり方。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


共通・第二十一章 外界
一話 『望む終わり方』


 辰上侠の暴走が解決し。八雲紫もきちんと目が覚めて彼と話し、侠が彼女に頼んだ事。

 

 

 

 

 

 ──外界に帰させてください

 

 

 

 

 

 その彼の発言は霊夢と紫、侠と静雅以外の人物は驚きを隠せない発言。何しろこの発言が侠の目的でもあった事柄なのだ。

 

 彼の発言に疑問を思う人物の代表として、妖夢は焦りながら彼に問いかける。

 

「きょ、侠さん!? もう、外界に帰る云々の事は解決したんじゃないですか!? 霊夢さんが侠さんを止めたんですしっ!?」

 

「……魂魄。俺は外界でやり残している事があるんだ。その問題を解決しない限り──幻想郷には居られない。どれだけの時間が掛かったとしてもだ。この事については霊夢は肯定的だからな」

 

 彼の言う言葉の肯定として霊夢が挙げられる中、天子は彼女に確かめる。

 

「……あんたは侠の言葉を聞いてか知らないけど、侠を外界に帰させる事に賛成なの? だったらあんたが止めた意味は──」

 

「あるわ。侠はその【約束】としてくれた。だから、侠達が外界に帰る事は賛成するわ。そうじゃないと──侠が報われないから」

 

 外界に帰る人物として彼の親友でもある本堂静雅に気になる事があるのだろう。鈴仙は不安げに彼に話し掛けた。

 

「し、静雅はそれで良いの……?」

 

「……オレは侠と共に何時か外界に帰らなければならないという事は自覚していた。そして今の侠なら──【変える】事が出来るんだ。それこそ、オレも望んでいる事。だからオレは親友として、侠に着いていく」

 

「そんな風に言ったら……止められないじゃないの……」

 

 彼の決意の言葉に鈴仙は嫌々のようにも見えたが、渋々納得することにした。心配そうに彼を見る鈴仙を見てか、静雅は彼女の頭に手を乗せて撫でるようにして手を動かす。

 

「心配してくれてありがとな。出来れば鈴仙も、オレ達の幸運を祈ってくれ」

 

「……うん」

 

 そのような二人に──場違いなシャッター音と一瞬のフラッシュが二人を照らす。カメラを構えた烏天狗の射命丸文だ。彼女はどこか愉快そうにしながら静雅に言う。

 

「霊夢さんと侠さんはともかく、珍しい静雅さんと鈴仙さんの写真をゲットで──あやっ!? 写真をとったデータが消えている!?」

 

「……それはマジでシャレにならんから【消して】おいた。オレのパパラッチはそう簡単に撮れないと思え」

 

「ぐぬぬ……」

 

「(……写真、欲しかったのに……)」

 

 一人は悲しそうな表情を浮かべていたが、さとりは彼の行動をどこかわかっているかのように頷いていた。

 

 侠の紫への頼み事を確かめるかのように、彼女の式神である藍は問いかける。

 

「紫様……いかがなさいますか?」

 

 

 

 

 

 

 

「──えぇ。外界に帰させるわ」

 

 

 

 

 

 

 

 彼女の許可。その発言に驚愕する人物、慌てる人物もいて。しかし、言葉を続けるように彼女は説明を補足する。

 

「でも……今すぐではない。早ければ明日の早朝が良いタイミングなのよ。そうすれば──運命が変わった結末になれる」

 

「……変わる? まさか、あの運命が?」

 

「? どうした侠? 運命? レミリア嬢が何か関係しているのか?」

 

 侠だけは彼女の言葉は理解しているが、静雅の言葉を代表に疑問の声をあげた。さすがに彼の事情について無関係な人物が多いと判断した紫は──スキマの入り口を作り出し、侠に行動を促した。

 

「……ここからは侠だけの話。着いてきなさい」

 

「……わかりました」

 

 紫がスキマに入った後に続いて、侠も入って行く。彼が入った頃には──スキマの入り口が閉ざされていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 多数の監視するかのような目が存在する空間。紫は侠に本題を話し始めた。

 

「──無限ループで作っていた世界が……崩れつつあるわ。その世界が崩れたら──現実に引き戻されるでしょうね」

 

「……修学旅行でバスが転落したあの場所ですか……」

 

 侠の言った言葉。彼のいた外界では修学旅行でバスに乗って移動していたのだが──バスが崖から転落した事故が起こった。彼が入手した情報で、あのバス転落事故で生き残るのはクラス内の男女一人ずつの生徒だけが生き残り、他の生徒がバス爆発で死んでしまう。外界の侠は風前の灯火に近いじょうたいなのだ。

 

 しかし、紫は安心させるように情報を付け足す。

 

「幸い、犯人達はその生き残る二人を強くする事が出来た。彼らの行動次第だけど──生き残る可能性が上がったわ。それに──侠もこの幻想郷で強くなれた。例え重傷でも──初代龍神があなたの助けにもなり、肉体的にも先祖返りという事を自覚した侠にとっては問題無い。重傷だとしても──人間以上の体を持つあなたなら、問題無く体を動かせる。無茶は禁物だけどね……」

 

「……偶然だが、あのバスにはクラスが違うおかげで静雅はいない。何故か別クラスの問題児が紛れ込んでいたような気がするが……それは関係無いか。俺も【生き残る側】になれば──後は【本家】の問題を解決すれば良い」

 

「……その選択肢もあるでしょうね」

 

 どこか彼女の含む言い方に、彼はその事について聞き出す。

 

「……おかしな発言をしたか?」

 

「してないわ。ただ……それで生きれば侠にとっては【Good End】。あなたが死ぬような【Bad End】じゃないのは良いけど──誰もが救われる【Happy End】も存在するのよ。今のあなたは【本当】のあなたなんだから」

 

「…………」

 

「ま、それでもあなたは確実に助かるのは確かなのよね。彼からの【おまじない】があるおかげで。まさか私が与えた能力をそのように有効活用するとは思わなかったけどね……」

 

「……? おまじないというのは──」

 

「そろそろ皆が怪しむ頃ね。特に──霊夢に心配かけちゃダメよ」

 

 彼女がそう言葉を残した瞬間、彼女の背後に博麗神社の内部の空間が見えるスキマが出現。紫はスキマ空間から立ち去った後、彼もまた彼女に着いていくように走って行った……。

 

 

 

 




 残り少ない幻想郷での生活。

 ではまた。

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