幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 一先ずは博麗神社に。
 三人称視点。
 では本編どうぞ。


『手がかり』

 博麗神社。そこには布団が並べられては、横になっている人物が多数いる。まだ軽度なのは……侠達と戦った魔理沙達。妖夢は偶然にも場から離れていたのでそんな外傷は無いが……そして、永遠亭から呼ばれた人物は月の兎でもある──鈴仙・優曇華院・イナバだ。魔理沙達を診ては、応急処置をしていった。

 

「──事情を聞いたときは驚きしか無かったわよ……。まさか侠が、幻想郷に敵対する行動をとっているなんて……一応、弾幕ごっこという形なのが幸いね。明らかに弾幕ごっこにしてはやり過ぎとは感じるけど……私でも、対処が出来る。ただ……問題は──」

 

 鈴仙の注ぐ視線の先には──第三者視点で一見安らかにも見える表情で眠り続けている八雲紫だ。彼女の式神でもある八雲藍が鈴仙に情報を求める。

 

「……紫様は、どうなんだ?」

 

「……多分、師匠でもお手上げに近いと思うわ。ショック療法を使っても目覚める気配は無い。これはもう【能力】みたいなもので枷みたいのがある。それをやったのが侠だとすると……彼の手でしかきっと解けることはないわ」

 

「今の侠は紫様以上の能力を持っている……! それを超える能力の保持者は幻想郷では確認されていないか……!」

 

 悔しそうな藍の声が神社に広がる。現在、博麗神社にいるのはこの二人を除いては霊夢に妖夢、天子だけだ。

 

 慧音は人里に戻っては情報漏洩の阻止。守矢の二柱は博麗神社まで負傷者を運ぶのに手伝った後、妖怪の山に戻っては侠の被害に遭った天狗の処置へと戻った。二人とも早苗の事は心配だったが……一緒にいるからといって、早く回復するとは限らない。現状で出来る事をすることに決めた。

 

 その中で、霊夢は妖夢と天子に情報を聞き出していた。【今】の侠の戦い方や特徴。天子と話した時の内容を教えて貰っては整理をしていた。

 

「──今の侠は、原理に従っていれば相手のスペルカードを本人以上に扱う事が出来る。そして咲夜の能力を手に入れては、もしかすると魔理沙とアリスの能力も手に入れているかもしれない。それとは別に、天子と話した内容であんたまで敵に回る必要はない、ね……」

 

「正直……悔しいです。過去に侠さんと戦ったことがあるのですが……本気ではない力量で負けていたことが……!」

 

「それについては私も同感よ。追い詰めたと思ったらまだ実力を隠しているんだもの。でも……あの侠の言葉が気になるのよね……」

 

 霊夢は情報を確認して、侠と対面したときの対応を考えていく中──彼女の命令で紅魔館のレミリアの場所に行っていた烏天狗である射命丸文が戻ってきた。彼女の存在を確認した霊夢は話し掛ける。

 

「レミリアはどう言ってた?」

 

「はい……【最善の運命】に近づいていると仰っていました。しかし……レミリアさんに霊夢さんが頼るのは珍しい事だと思いますが……」

 

「状況が状況だからよ。本当なら手っ取り早くレミリアが侠の運命操作してくれれば楽なんだけど……ティアーの影響だかで、きっと操れないと思うのよね。だったら回り道でも侠を何とかしないといけないのよ」

 

「……霊夢さん、変わりましたよね」

 

 霊夢が説明している中で、どこか優しい言い方で文は言う。そこの事に霊夢は反応しては問いかける。

 

「……急に何よ? 私が変わったって」

 

「以前の霊夢さんはそんな他人に執着していなかったと思います。どこか最低限の距離を置いては適当に話す事が多かった気がします。でも──侠さんの事になると、人が変わったように彼に執着したり。侠さんを通してか、他の方々にも感情的になりましたよね。正直……侠さんの事をどう思っているんですか?」

 

「……あんたに言う事じゃないわ」

 

「あやや……そこはお使い通りにしてきたのですから答えてくださいよ……」

 

「…………」

 

 二人の会話を聞いていた藍は、どこか複雑そうな表情を浮かべていた。そこ事に気づいた妖夢は彼女に言葉を。

 

「? どうかしたんですか藍さん?」

 

「あ、いや……何でもない」

 

「そうですか? まぁ、今の侠さんの事を考えれば複雑には思いますよね……。侠さん、大丈夫でしょうか……」

 

「……どうだろうな……」

 

 そうこう話していた頃──誰かが襖を開ける。神社内で意識のあった者は振り返って確認すると──侠の式神である五徳に、彼女の近くで浮いている天牌。五徳は誰かを背負っているように見えるが……彼女の存在を初めて見た鈴仙は五徳に話し掛けた。

 

「……あなた、誰?」

 

「……対面すら初めてだったな。アタシは侠の式神の五徳だ」

 

「式神がいたの!? それで、何で侠の式神が……!?」

 

「(……今更ですが、最初の紅魔館でいたような……)」

 

「まぁ、侠はこのアタシを知らないけどな。それで……そこの寝ている主の式神。よく侠を【裏】にしてくれたな。お前の事だから──思い当たる事があるんじゃないか?」

 

 文は心の中で五徳について振り返っているが、五徳は話す対象を変えてはどこか喧嘩腰で藍に言葉を飛ばす。だが……藍は黙ったままだ。

 

 その中……五徳の姿を見ては何かを思い出したかのように天子は言う。

 

「侠の式神で、五徳──思い出したわ! 何か本で【五徳】って妖怪が載っていたのよ! 猫の頭に五徳を乗せているって言っていたから、もしかしてとは思ったけど……!」

 

「まぁ、マイナーな種族だけどな。それで、天牌と共に情報収集して来たところだ。地底で認識があっては侠と話したという奴を連れてきた」

 

 彼女は天使の問いに答えた後、五徳の背中から降りては現れる人物。多生髪の毛には癖毛があったりするが、開いている第三の目。地霊殿の主でもある──古明地さとりだ。

 

「……過去に会った事がある【五徳】があなたとは思いもしませんでしたけどね……」

 

「世の中偶然で出来ているからな。それはどうしようもない事だ」

 

「……五徳? さっき言っていた事と合わせると──さとり、あんた今の侠にあったの!?」

 

 霊夢の迫るような問いかけにさとりは肯定。

 

「……はい。完全に他者に心を閉ざしている侠さんに会いました。紫さんに似た能力を使って現れた彼に。地霊殿に来た目的は──【心を読む程度の能力】が欲しいという事でした。無論、断りましたけど……」

 

 彼が地霊殿に来た目的を聞いた面々だが……それだけではまだ情報をまとめられないのであろう。妖夢の言葉を代表に詳細を求める。

 

「……何故、侠さんはさとりさんの能力を?」

 

「……彼は他者を信じる事を苦手としている。それは、こいしと同じなのですが……私の妹とは、方向性が違います。こいしは【能力により自分への嫌悪】を見たくがない為に、心を閉ざしています。しかし、彼の場合はおそらく──【相手の本心を知りつつ判断】出来る能力を欲したのでしょう。他者を信じる前に、事前にどのような感情を抱いているかを知って、対応を決める。そのような目的だと思います……まぁ、過去に静雅さんの心で呼んだ侠さんの情報を踏まえての推測ですが。おそらく人が変わったようになってしまったのは、その本心が知れなかったために起きた。……五徳さんの心を読んでそう判断したのですが……。しかし、侠さんは強引にする事は無く、去って行きましたが……」

 

「大体、合っているわねー……そこのスキマ妖怪が侠を騙したから、こんな事になっている事だし。こいつの式神であるあんたはどこまで知っているのよ?」

 

 敬遠の仲でもあるが、天子は紫の式神である藍に問い詰める。ここにはもう心を読める覚り妖怪がいる。隠し続けていても無駄だと悟った藍は──重い口を開いた。

 

「……私は実際に紫様から聞いた事は『辰上侠は外界に帰さない』という事は聞いた。それが幻想郷にとっても、彼と触れ合う人物の為と言ってな。それから以降は、私は私用で紫様の傍を離れていたが……しかし、その場には侠はいなかったんだ! その時の侠の気配は遠くにあったからこそ、私はそういう話を聞いたんだ! 何故、侠が私と紫様の会話を知っていたかのようなかがわからないんだ……」

 

「……で? 本心はどうなの?」

 

 藍の言葉を聞いた天子は、さとりに心はどうなのか尋ねたところ……さとりは答える。

 

「……本心ですね。藍さんは実際に紫さんと『辰上侠は外界に帰さない』とは話されているようです」

 

「さとりさんの目の前では嘘は通用しませんからね。まぁ、実際だと私達の心の中を覗かれているワケですが……今はそんなことはどうでも良いですね、あやや」

 

「これで侠は【信頼からの裏切り】が最もな理由だと思うけど……でも、妖怪の山の一件を考えると何か足りないような気がするのよね……」

 

 彼女達が話を進める中、鈴仙は何の話かわからなかったのだが……天牌が彼女に事情の説明を。

 

 天子が推測する中で、彼女と同意見の霊夢は考える。

 

「(……確かにまだ、それだと私は納得出来ない。本当に侠が外界に帰りたいというのなら、侠は紫に似た空間の中で侠自身の外界を見つければ良い。でも、一度わざわざ幻想郷に現れたのは一体──)」

 

 考えている中で──彼女は次々とこの騒動で話していた内容と情報を思い出していく──

 

 

 

 

 

 

 

『俺の目的を達成するためには、こいつに起きて妨害されるわけにはいかない』『彼が最も信頼している友人だからこそだと思いますわ』『奴は──俺を連れてきた本当の目的をずっと隠していた』『こんな利点を持つ人物を外界に帰させるわけにはいかない』『年相応の感情があっても不思議は無いんですよ』『……頼らなかったんじゃない。頼れなかったんだ』

 

 

 

 

 

 

 

 

 ……霊夢はある事を自覚した。それは衣玖の言う通りに年相応の感情を持ってもおかしくはない。

 

 しかし──それとは別に、疑問が思い浮かぶ。

 

 その事を疑問に思った霊夢は、藍にある事を問いかけた。

 

「藍……今更だけどあいつって、静雅や受け入れた家族以外で……幻想郷で大切な奴がいたりする?」

 

「言葉の真意を測りかねるが……いないはずだ。過去の宴会の時に紫様の質問に侠は『作る気がない』と言っていた。彼は外界に帰る前提だったからな。しかし……今の侠の状態は人里の住民に混乱を招くものだろう。何せ幻想郷の創造神の子孫が公にできない事をしている。人里の人間達は侠に信仰している人物もいるからな。だが……それがどうしたというんだ?」

 

「(……もしかして、侠の本当の目的って……!?)」

 

 霊夢はとある仮説について考える。そして、その場にいたさとりは霊夢の心を読み──彼女の仮説に驚愕した。

 

「!? 霊夢さん、その仮説が侠さんの目的だと!?」

 

「……そういやあんたは心を読めたんだったわね……。でも、あくまで仮説だから言わないで頂戴」

 

「霊夢さん……?」

 

 文達は不思議そうにしながら彼女を見たが……霊夢は喋りそうも無い。続けて、霊夢はある事について考える。

 

「後は最低でも侠のスキマ能力の無力化か、居場所を突き止めればいいんだけど……」

 

「居場所、ねぇ……。五徳、式神のあんたはわからないの? 侠の居場所」

 

「境界が引かれている所為か何かで侠本人のを感じ取れない。おまけに部外者や侠の空間にいる人物もな」

 

 天子からの質問に申し訳なさそうな五徳の言葉。その言葉を聞いて天牌の話を聞き終えた鈴仙はある事を呟く。

 

 

 

 

 

「侠に目印なりあれば話は別なんだろうけど……」

 

 

 

 

 

「…………鈴仙。今、あんた何て言った?」

 

 彼女の呟きに霊夢は復唱要求。戸惑いながらも、鈴仙は言う。

 

「え? えっと……『侠に目印なりあれば話は別なんだろうけど』って言ったけど?」

 

「…………あったわ! 侠の居場所を特定できるような目印!」

 

『えっ!?』

 

 霊夢の言葉に誰もが驚愕する。彼の気配が変わっている、もしくは気配を感じられないというのに。自信に満ちあふれた声で彼女は言うのだ。

 

 妖夢の言葉を代表にしながら彼女に問いかけると、霊夢は外に出る準備をしながら答える。

 

「霊夢さん!? 居場所がわかるような目印が彼にあるんですか!?」

 

「多分、ずっと【アレ】を侠は身につけたままよ! それを辿っていけば──侠の居場所がわかるわ! 今すぐに──侠を止めに私は行くわ!」

 

 彼女はすぐに行動を移す。そして動ける人物、もしくは戦える人物として妖夢と天子が着いていく中、五徳は文と鈴仙にも行動を促す。

 

「……お前もついて行ってくれ。ここはアタシ達が看ておく。式神達に任せて、霊夢達を手伝ってやってくれ」

 

「私、侠さんに手を出せないんですが──いいえ! 侠さん以外の人物がいるというなら話は別ですね! 侠さん以外の相手はこの清く正しい射命丸がお引き受けいたします!」

 

「このままろくに挨拶もなしに静雅と離れるのも嫌だし……わかったわ。私もやれるだけ協力するわ! それが今の私に出来ることだもの!」

 

 二人とも、霊夢達の後に続いていった……。

 

 

 

 




 彼の目印。

 ではまた。

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