では本編どうぞ。
図書館に来て、パチュリーに教えてもらいながらスペルカードを作る作業を続ける。今日で三枚目だ。
……良し。
「三枚目完了っと」
「どんなスペルにしたの?」
本を読みながらパチュリーが聞いてきたので、簡潔に伝えると。
「……何であなたのスペルカードはいつも直接攻撃じゃないの?」
「単なる攻撃とかつまらないじゃないか。まぁ、近日ちゃんとした攻撃スペルを作るつもりだけど」
「……魔理沙とは全く逆ねぇ。あっちは攻撃重視のパワースペルだというのに」
異変解決者の普通の魔法使いの魔理沙か。ちょっとくわしく聞いていた方が良いかもしれない。
「そういや異変解決者である霧雨魔理沙だっけか? そいつってどういう奴なんだ?」
「魔理沙ねぇ……ここ、図書館でいう──」
「(バァンっ!)パチュリーっ! 本を借りに来たぜ!」
「──本泥棒よ」
「え? ここってレンタル制じゃないのか?」
「ここの図書館一体は私の物よ。私自身が許可した覚えはないわ。ちなみにあの魔理沙が言っていることは単に盗んでいるだけよ」
タイミング良く入ってきた白黒の色が多い魔法使いっぽい帽子を被っていおり、片手に箒を持っている女──霧雨魔理沙について紹介してくれた。
本泥棒と言われた魔理沙は我が物顔にこう言う。
「私はただ死ぬまで借りるだけだぜ!」
「人はそれを借りパクという。立派な窃盗行為だ」
当然な風に言ってきたので思わずツッコンでしまった。
……まぁ、オレもたいして仲の良くない奴に対しては借りパクだが。
オレの言葉に気づいたのか、視線をオレに向けてくる魔理沙。
「はは〜ん……香霖が言っていたのはお前のことだな? 紅魔館で雇った外来人というのは!」
「香霖……霖之助のことか。オレの名前も含めて聞いたのか?」
そう、まだ霖之助に口止めをしていない。オレの能力が間に合っているかどうか不安だ。
「いや、教えてくれなかったぜ。何せお前香霖堂で何か買ったらしいじゃないか。客として情報は教えられないと言われたぜ」
霖之助は良識のある奴で助かった。よし。オレがさっき仕込んだ能力は間に合ったみたいだ。
さて、改めて──
「オレは紅魔館で下働きになった本宮樹だ」
「ちょ──」
「本宮樹か。そしてその手に持っているのはスペルカードか……よしっ! そうすればすることは一つ──私と弾幕ごっこしようぜっ!」
パチュリーが声をかけようとしたが魔理沙はそのまま言葉を信じ、弾幕ごっこを申し込んできた。パチュリーは目線で多分名前について訴えていたが、人差し指を口に当てて合図を送った。パチュリーはそれを理解したのか、視線を魔理沙に向け直した。
「魔理沙……樹には弾幕ごっこについて教えたし、スペルカードも何枚か作ったわ。だけど、こう言うのも何だけど初見であなたの場合きつい──」
「構わないさパチュリー。オレも練習相手がちょうど欲しかったからな。さすがにこの作ったスペル達を紅魔館住民に当てたくないのがオレの本音だが」
「ほ〜……パチュリー、樹もこう言っているんだ。じゃあ枚数はどうする?」
「お前さんは何枚でも良い」
「「えっ!?」」
枚数のことを言われたがあえて魔理沙の制限を無くした。予想外の発言だったせいか二人とも驚いている。
「一応オレは二枚あれば十分だ。被弾回数はお互い五回で良いだろう」
「……お前、私のことを馬鹿にしているのか!?」
異変解決者でいろんな修羅場を通っている魔理沙にとっては言葉の通りに怒りを感じているらしい。
だが──
「馬鹿にしている? 違うな。オレは──コケにしているんだ!」
「……よし。ぶっ飛ばそう……」
良い感じに冷静じゃなくなってきているな。オレにとっては好都合だ。
怒りを表しながら魔理沙は言う。
「とりあえずアレだ! 私がさっさと勝って、さっき言った言葉について詫びてもらうぜ!」
「ほぉ……ならオレはさっさとこの紅魔館から出て行ってもらおうか」
「私に勝つことができたら──なっ!」
箒に乗り、魔理沙は一気に上昇。少し離れたところで両手から密度の高い弾幕を一つはなってくる……確かにこれはパワータイプだ。
オレは槍を取り出してケースを放り投げ、弾幕が来るタイミングで──
「ほいっと!」
槍で弾幕を魔理沙にいる方向にはじき返した!
「!? ちっ!」
跳ね返るとは予想していなかったのか箒を急転換して弾幕を魔理沙は躱した。
「さすが霖之助お手製の槍だ……使いやすい」
「どこかで見たことあると思ったら……香霖の作った槍か!?」
魔理沙は続けて弾幕を放ってくるが、オレは澄ました顔で槍ではじき返す。
「そういやこの槍の名前が付いていなかったな……我ながら単純な名前だと思うが、【リフレクト・ジャベリン】と名付けよう」
「そんな悠長にしてないでお前も弾幕を放ってきたらどうだ! どうせ弾幕の扱いに慣れていないからその槍に頼っているんだろうけどな!」
マイペースにしていたら魔理沙から安い挑発が飛んでくる。
だが──オレはあえて悠長にのる。
「ではお言葉に甘えて」
オレは手のひらを突き出し、魔理沙の照準に合わせる。ただ、それだけ。
何も起きていないように見えた魔理沙はオレを貶そうとするが──
「何だ! やっぱり弾幕の扱いに慣れていないだけ──かはっ!?」
何も来ていないと思っていた矢先、何かが魔理沙に当たり、よろめいた。
「慣れていないと思ったか? 弾幕はちゃんと打てるんだ」
「何だって……!? でも、弾幕なんて見えていなか──まさか!?」
何かを思いついたように魔理沙は言葉を継げる。
「お前の能力か!?」
……正確には一部だがな。
まぁ、勘違いしてくれた方が好都合。
「その通り! オレの能力は【物質を見えなくする程度の能力】! 弾幕を見えなくしたのさ! そしてお前さんは一回被弾だ!」
「(……何で静雅は偽名を使ったり、能力を偽るのかしら……? 静雅の能力は隠した方が良いかもしれないけれど、名前を隠す意味は……?)」
パチュリーから意味ありげの視線を送ってくるが気にしないことにした。
しかし、この言葉に魔理沙は信じたようだ。
「めちゃくちゃ卑怯な能力じゃねぇか!? 弾幕ごっこは魅せる遊びなんだぜ!?」
「卑怯な能力? 違うな。そういう言葉は──敗者の戯言だ」
「最低な奴だなお前!? そして私は負けてねぇ!」
「最低な奴? オレはその場から動いていないのにもかかわらず、宙に浮かんでは遠距離攻撃をし、人の能力にいちゃもん付けている方が最低だと思うが?」
遠くて表情は見えないが、この弾幕ごっこである程度の性格は把握できた。魔理沙の性格だと次は絶対、オレの挑発にのり──
「いいぜ……そこまで言うなら私は近距離で攻撃してやる!」
──近距離攻撃をしてくる。
そして、魔理沙は一枚のスペルカードを取り出し、宣言。
「魔符【スターダストレヴァリエ】!」
宣言すると魔理沙の周りに星形の弾幕が纏い始め、急加速をしながらこちらに向かってくる。
「……単なる体当たりか。つまらん──」
おおよそ後二秒ほどで到達する前にオレもスペルカードを取り出し、正面にかざして──
「──縛符【這いつくばる愚者達】」
──宣言した。もうオレのスペル効果範囲内に入っている。その結果、魔理沙はどうなったかというと。
「──ふぎゃっ!?」
空中から一気に床にたたき落とされた。いや、急に落ちた。
魔理沙に纏われていた星形の弾幕が消えていく。
「体が……重いん……だぜ……!?」
「そりゃそうだ。それがオレのスペルの効果だしな」
オレは這いつくばっている魔理沙の傍に歩いて近づいていく。
「【這いつくばる愚者】は至って単純だ。一定空間の重力を五倍にする」
「五……倍っ!?」
「そう。ただそれだけだ。力のある妖怪なら動きが鈍る程度かもしれないが──力の無い妖怪や人間相手ならぶっちゃけこの一枚のスペカだけで十分だ。這いつくばって何もできない愚か者……それが名前の由来だ。単なる挑発に乗って冷静な判断を欠いたお前さんみたいな愚か者だ。オレは単なる攻撃より、相手を状態異常にさせるようなことが好きなんでな」
言葉を一区切りにして、改めてあることを魔理沙に問うことにした。
「さて、ここで問題だ。重力のおかけでまともにお前さんは動けない。弾幕の照準も合わせることができない。そして今……オレの手はお前さんの背中に向けている。ここから導かれる答えは何でしょう?」
「……ま、まさかっ!?」
何とか横目でこちらを見てくる魔理沙。その表情は少し青ざめている。
そしてオレは無慈悲に答えを告げながら──
「You…This game is losser(お前さん……この遊びの敗者だ)」
──連続で能力を解除した弾幕を背中に被弾し続けさせた。
「ちょ、ま──!(ピチューン!)」
……オレは、異変解決者である霧雨魔理沙に勝利した。
……チート能力って酷いな。初心者が簡単に勝てるのだもの。
裏主人公はネーミングセンスからみて若干厨二病。楽しいことが好きなのでしょうがない。
ではまた。