幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

22 / 267
 リアル兄が東方にはまり始める。明らかに自分のせいである。
 では本編どうぞ。


三話 『妖しげな会話』

 時刻は進み、夜に近い夕刻。オレは執事服に着替えていて、自室で槍の手入れをしていた。まぁ、基本的に着崩しているが、蝶ネクタイをするところのワイシャツ部分も着崩している。外界で週間付いたことは中々止められない。

 

 もちろん、レミリア嬢や咲夜には色々言われたが、『これが外界の男のファッションなんだ』といったら渋々納得してくれた。まぁ、事務所命令でもあるんだけど。

 

「しかし……とても面白い世界来られたな。ゲームの世界にいるみたいだ。この後何かイベントが起きないかなぁ〜」

 

 淡い希望を抱き、独り言を言っていると──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『あら。だったらあなたがイベントを起こしてみない?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 急に背後から声が聞こえ──瞬間に持っていた槍を構え、後方に体を向けて立つ。そこにあったのは……オレが落ちた空間の裂け目だ!

 

 その裂け目から──何やら怪しい女が出てきて、話しかけてくる。

 

「普段の態度から見るとへらへらしているのに、ちゃんと警戒心があるのね?」

 

「……お前さんは、何者だ?」

 

 ……ただ者じゃない雰囲気。能力を全開にしなくてはらない、強者の感じ。

 

「そういうことを尋ねるのはまず自分のことを言ってからじゃない?」

 

「オレを落とし穴の如くに落とした本人がよく言う……そうだな。争う気が無いなら一先ずその気味悪い空間を閉じてくれ。そうしたらオレは槍を下ろす」

 

 オレはそう言うと、怪しい女は気味悪い空間を閉じたので、オレはベッドに槍を投げた。争うつもりはないらしい。

 

「……オレは本堂静雅。外界ではモデル兼高校生をやっていた。今は紅魔館で下働きをしている」

 

「私は幻想の境界、八雲紫。この幻想郷の管理人よ」

 

「八雲紫……幻想郷の説明を受けているときに良く出ていた名前だな。それで何だ? オレ自身がイベントを起こしてみないかって?」

 

 オレはそう尋ねると八雲紫は扇子で口を隠しながら答える。

 

「ちょっと頼みたいことがあるのよ。幻想郷を代表とする異変解決者にまだ会っていないあなたに」

 

「異変解決者……ここだと代表的な名前は博麗の巫女と白黒魔法使いだと聞いたが……それが何だ?」

 

「単純に言うと──あなたが起こした異変で、異変解決者が解決できない異変を起こして欲しいのよ」

 

「…………なんだと?」

 

 この女……一体何を言いたいんだ?

 

「異変のことは楽園の巫女の霊夢、普通の魔法使いの魔理沙が主に解決していることは知っているわよね? 魔理沙はまだ良いとして──霊夢に挫折を与えて欲しいのよ」

 

 博麗の巫女……そいつは確か幻想郷屈指の実力者。そいつに挫折を与えるのか?

 

「……何のために異変を起こす必要があるんだ?」

 

「あの子ったら実力があるのに修行とかしないのよ。先代の巫女とかなら普通に余った時間でするのだけど、先天的な天才な霊夢はぐうだらすごしていてね? 今後のためにも自分より強者が現れて、修行に励ませようと──」

 

 

 

 

 

 

「──本当の目的は何だ?」

 

 

 

 

 

 

「──何ですって?」

 

 八雲紫が言いかけたところをオレが遮り、牽制。急に言葉が遮られるとは思っていなかったのか、オレに聞いてきた。

 

「それが嘘ではないことは分かる。レミリア嬢達がさんざん言っていたことだからな。だが、そのことのためにオレに言いに来る理由が分からない。それで口元の表情を隠してまで言う意味はあるのか? 口元の表情は心理学的では重要な判断要素だ。中には口の動きで心理状態が分かることもある。だいたいそういうことをするのは悟られたくないうさんくさい奴がやる行動だ」

 

「……正直、あなたのことを見くびっていたわ。そこまでの相手の事を分析しているとは思わなかった」

 

「心理学には個人的に興味がある。オレがやっている仕事でそういった輩がたまにいるんだ。悪意に満ちて騙してやる奴が。主にそういった事を個人で学んでいるんだ」

 

「……そう。なら本来の目的でも言いましょうか」

 

 扇子を閉じ、改めて話し始める八雲紫。

 

「博麗の巫女──博麗霊夢の関心事を増やすためよ」

 

「基本的は博麗の巫女には変わりは無いんだな……何故?」

 

「彼女は周りに興味がなさ過ぎる。異変を解決させるのに対し、相手の動機なんてどうでも良い。個人的な感情を持っていない分それはそれで良いのかもしれない。けど、人間関係──妖怪との関係もそうだけど、一定以上の関係になろうとしないの。私の個人的なことも含まれているかもしれないけど、霊夢にはもっと、いろんな事に興味を持って欲しいのよ。そろそろ年頃なのだから、恋愛感情についてもね。だからあなたに異変解決者には解決できない、異変を起こして欲しいのよ。あなたの能力については私はもう知っている。そうすれば必然にあなたについてのことも興味を持てるだろうし──」

 

「──異変解決者が解決できない異変を、それ以外の奴が解決できればそいつにも興味が持てると」

 

「話しの理解が早くて助かるわ」

 

 しかし、博麗の巫女……あの時に活動していた親友に似ている部分がある。

 

 ……よし。

 

「その話、のった」

 

「そう言ってくれると助かるわ」

 

「で? 具体的な異変は何をすればいい?」

 

「今はまだ良いわ。あなたはまだ紅魔館の住民を色々触れ合いなさい。どんな異変か、どのタイミングで異変をするのかは私がまたここに来るわ。それと……異変を始める前の約束事があるわ」

 

 そう言って順番に八雲紫は指を一つずつあげていく。

 

「紅魔館と香霖堂は良いとして、他の幻想郷の住民に名前を明かさないこと。そして能力を教えない。この二つは守ってちょうだい」

 

「……複数人に出会った場合はそれぞれ違う名前の方が良いか? それで能力は適当に言えば」

 

「そうね。情報は攪乱してちょうだい。その方が都合が良いから」

 

 言いたいことは伝え終えたのか、また気味悪い空間を開く。

 

 何かを思い出したように、こちらに振り返る。

 

「そうそう。異変の発端については私のことは明かさないでちょうだい。ヘタすると私が霊夢に退治されちゃうから」

 

 そう言い残して気味悪い空間に入り、閉じて去って行った。

 

 ……本当にここは──面白い。

 

 オレはその準備も含めてケースに槍をおさめ持っていき、図書館へ向かった。

 




 主人公達の世界では『東方Project』はない設定です。
 ゆかりんよ、お前が黒幕か。という回。異変フラグが立ちました。
 異変についての話はここまでにして……次回、表物語とリンク。表物語を読んでいる方はあいつがやってくる。
 ではまた。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。