幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 妖怪の山麓付近にて。
 三人称視点。
 ではどうぞ。


『神々の集まり』

 妖怪の山の麓にある場所。現在、その場所には三人の人物──神様達が雑談をしていた。

 

「──前に冬の季節が長引いたように、秋の季節が長引いても良いと思うのよ」

 

「それは私も同感だな〜。不公平だよ、本当に」

 

「……無理に、他の季節が長引いたからって好きな季節を長引かせるのは厄いと思うわ」

 

 見晴らしの良い場所で、他愛の無い雑談をしている──秋の姉妹の秋静葉と秋穣子。厄神の鍵山雛。彼女達はたまに同じ神々ということで情報交換も含め、雑談していることがある。

 

 先ほど不満を垂らした静葉は思い出すかのように、不機嫌そうな声で発言。

 

「それに……前に得体の知れない男の連れの人達に酷い目にあったし! 何なのあの男!?」

 

「嫌な感じがしたからその男を追い出そうとしたのに……連れの二人が本当に酷かった……その二人には何もする気無かったのに……」

 

 同調するように妹である穣子も発言したが……思い当たる節があったのであとう雛が二人に問いかけた。

 

「……ねぇ、嫌な感じがしたっていうのは──もしかして静雅じゃない?」

 

「…………え? 誰? その人?」

 

「お雛さんは知ってるの?」

 

「えぇ。過去にその人が私が溜め込んでいた厄を払ってくれたのよ」

 

「「…………えぇっ!?」」

 

 彼女の言葉に姉妹達は問いかけるものの、笑顔を見せながら答える雛。さらっと言った事実に秋の姉妹は驚愕した声をあげた。

 

 彼女達が驚いている中、雛は話を続ける。

 

「後に、彼から詳しく聞いたのだけど……彼も一応、神様みたいなのよ。それも特殊な神様で、神々を滅ぼす神様……言うなれば、私達の天敵なのよね。でも、彼は他の神々を滅ぼすつもりは無いって言っていたわ」

 

「神々を滅ぼす神様!?」

 

「それで、静雅は龍神様の先祖返りである辰上侠と親友だと言っていたわ。前に彼らが来た時は子孫様を連れ戻す事だったみたい。彼は妖怪の山の地理には詳しくないから二人に同行してもらっていたのよ」

 

「……それで、龍神様の子孫と親友!?」

 

 雛の説明を聞いた秋姉妹は顔が青ざめていく。幻想郷の最高神の子孫の親友。その親友におもいっきり喧嘩を売ってしまったことを後悔し始めているのだ。

 

 そのような二人の様子に察したのか、安心させるかのように雛は言う。

 

「大丈夫よ。彼、根本的には優しいから。そんな怒っていないと思うわ」

 

「……そうだと良いんだけど……」

 

「もしも怒っていたらどうしたら良いか──」

 

 

 

 

 

『おーい、そこの三人の神様達よー』

 

 

 

 

 

 急に入る第三者の声。三人は声のした方向に体の向きを変えると──ちょうど話の中心人物であった本堂静雅が遠くから見えた。彼は秋姉妹と雛を見つけると──能力を使い、瞬間に彼女達の傍に来た。

 

 静雅は驚かせるつもりはなかったのだが……自分達の行いで敵に回していると思っている秋姉妹はというと──

 

「「ひぃいいいっ!?」」

 

 静雅から露骨に怯えて、距離を離し始めた。それを見た静雅は頭の後ろを掻きながら困るような反応を。

 

「……やっぱ、オレの性質は難だな」

 

「そんなことは無いわ。それに……また、妖怪の山に来てくれたのね、静雅……」

 

 彼の出現に秋姉妹とはある意味逆の反応をする雛。彼のフォローをしながら、嬉しそうに話し掛けている。

 

 好意的に雛から話し掛けられた静雅は言葉を返した。

 

「お、雛。もしかしてオレの事で話していたのか?」

 

「えぇ。まだ彼女達はあなたの事を誤解していたみたいだから。ちょうど静雅の事情を話していたのよ」

 

「おぉ。そりゃ手間が省けた。ありがとな雛」

 

「……? そういう事は今日来た目的って……彼女達の誤解を無くすこと?」

 

「あぁ。前回妖怪の山に来たときは誤解したままだったからな。いい加減アフターケア兼誤解を解かないと後々のコミュニティに支障をきたすと思ったんだ」

 

 彼女に概要を説明した静雅は怯えている秋姉妹に近寄り、警戒心を解かそうと試みる。

 

「お前さん達、雛から聞いたと思うがオレは別に他の神々を滅ぼすつもりなんてない。むしろオレは交友関係を持ちたいんだ。その際、オレの性質で不快にさせ、一方的なオレの連れの攻撃を受けてしまった事はすまないと思っている。出来れば、あの件は水に流してもらいたいんだが……ダメか?」

 

「「いえむしろ私達がすみませんでしたっ!」」

 

「……まだ軽く怯えてら」

 

「まぁ……静雅は龍神様の子孫である辰上侠と親友という立場だから仕方ないわよ。位でいえば、多分静雅の方が上位だわ。それだけでも神様としても、龍神様と繋がりがある静雅のコミュニティ。本来なら私も話すだけでも恐れ多いわ」

 

 また彼をフォローするようにする雛。それを踏まえて彼は警戒心を解かせるように秋姉妹へと話を続ける。

 

「これからも妖怪の山に来る機会があるかもしれないが、普通の人物として触れ合ってくれ。上下関係、コネについては気にしないで欲しい。言うなればオレはまだ新人神様であるから、お前さん達は先輩にあたる。神様としての行動を学べられるからな。その際には頼む、先輩方」

 

 彼なりの言葉。彼自身の素性はともかく、同じ神様の帰還としては秋姉妹の方が上。違う視点で彼女達の方が上の立場と思わせる。

 

 その事を理解した彼女達は各々の反応を。

 

「……そうなんだ。私達が先輩なんだ!」

 

「じゃあ何も怖くなる必要はないんだね! こうして龍神様の子孫様の親友がこう言ってくれているんだし! 大丈夫だよね!」

 

 二人の姉妹は安堵の表情を。その様子を見て微笑ましいと思っている静雅だが、雛に小声で話し掛けられた。

 

「……人を煽てるの、上手ね。それも荒人神という事のおかげかしら?」

 

「そんなつもりは無いんだけどな……。外界ではこうやって相手を機嫌良くさせないといけないんだ。社会を生きる中で大事なところだ。ここ、テストに出てくるぞ」

 

「あら。じゃあ覚えておいて損はないわね」

 

 くすくすと笑いながら、笑顔を見せながら彼の言葉に答える雛。そしてその光景に我に戻った秋姉妹は不思議そうに、彼女に問いかける。

 

「何だか……お雛さんって、静雅……さんと仲が良いわよね」

 

「そういえば結構、フォローとかしていたと思うし……」

 

「そ、そうかしら?」

 

 どこか照れるようにして、曖昧に反応する雛。彼女は何を答えようか迷っていたが……静雅は会話を遮り、秋姉妹に話を振った。

 

「そういやオレ以外の話題で何を話していたんだ? やっぱ神様に何か必要なものとかか?」

 

「その事? 私達が秋にしか信仰が無い事から始まったのよ」

 

「それで話が進んで、過去の異変で冬が長引いたことを不満に思っていたことを話していたの」

 

「そうか。じゃあ本当に急に話が変わってなんだが……神様について何か教えてくれないか? 山にある神社の神様達に聞いても良いんだが……せっかくだ。目の前に先輩方がいるんだから、意見を聞きたいんと思っているが……駄目か?」

 

「! 別に良いわよ! 何だって私達は先輩なんだから!」

 

「うん! 私達で教えられることだったら!」

 

 機嫌良く秋姉妹は静雅の言葉に了承。そして彼は雛にも声を掛けた。

 

「もちろん、雛にも違った観点から教えて貰いたいんだが……良いか?」

 

「えぇ。構わないわよ。じゃあ、まずは──」

 

 こうして静雅は三人の神様による話を頭に入れていた……。

 

 

 

 




 さすがにアフターフォロー。

 ではまた。

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