幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 この能力があれば裏主人公は野宿でもいけたんじゃないだろうか?
 裏主人公視点です。ちょっと苦労人のあの人がちらっと登場。
 では本編どうぞ。


二話 『香霖堂【裏の場合】』

 咲夜に着いてきて、着いた場所はタイムスリップしたような場所──人里。

 

「おぉ……何か過去に来たみたいだ……洋服もちらほらいるが、和服を着た奴が多いな」

 

「外界ではあなたのような服が多いのかしら?」

 

「違いないな」

 

 咲夜の隣を歩きながら人里を歩く。

 

 ……だが。常に感じるものがある。

 

「何だか視線が感じるな……」

 

「あなたの服装などが原因だと思うけど?」

 

「オレ? いやいや咲夜の隣にいるからきっと妬まれているんだ。『妬ましい……リア充爆発しろ』的な意味で」

 

「あら、ありがとう。でも、女の人の視線も感じるわよ? あなたは容姿は良い方なんだし」

 

「……容姿『は』?」

 

「間違えてたかしら?」

 

「異議あり。改善を要求する」

 

 そんなくだらない雑談をしていきながら買い物をすすめていった。

 

 

 

 

 

 執事、メイド買い物中……

 

 

 

 

 

「こんな物かしら……って、あなた……重くはないの?」

 

「能力で余裕。オレの持つ荷物は五分の一ぐらいの重さにしているからな」

 

「……ずいぶんと応用が利く能力ね」

 

 人里での買い物を終えて、一先ず買った物を確認している咲夜。

 

 ……そうだ。

 

「咲夜、確認し終えたらやってみたいことがあるんだがいいか?」

 

「? 事によるわ」

 

「買った物を紅魔館に転送させる」

 

「…………はい?」

 

 ん? 詳しい説明が必要か?

 

「今日オレがレミリア嬢の部屋に能力を使って移動しただろ? それを応用してこの物資だけを紅魔館のキッチン辺りに転送させる」

 

「……それって失敗する可能性もあるんじゃないの?」

 

「ここ数日でオレの能力はどこまでできるか試したんだが、移動させる事象は実際オレの行った場所には行けるみたいなんだ。補足としてはオレがまだ行っていない場所には移動できない。今日までは人里には能力で行けなかったが、今回ここに来たから移動できるようになった」

 

「…………ここ数日、ただ寝ていただけじゃなかったのね」

 

「ここに来る前までは仕事で寝不足だったんだ。中途半端の時間に起きたときは、試しに物を飛ばしてみたりいろんな実験をしていた」

 

「そうなの……じゃあ、お願いしてもみてもいいかしら(単純にアレかしら? スキマ妖怪と似たようなことができるという事かしらね……)」

 

 荷物をいったん地面に置き、紅魔館のキッチンに移動させる事象を発動する。

 

 …………すると、荷物は一瞬のうちに消えた。

 

「まぁ、何回も試したし失敗は無いと思うぞ」

 

「私の能力よりもよほどチートじゃない?」

 

「時を止めるほうがオレ的にはチート的だと──」

 

 そう言いかけているところで、ある物が目に入る。その方角を見てみると、人里の住人が──ウサ耳の生えた女の人と何やら話している。服装は学生服っぽい……まさか……。

 

「あれは……ウサ耳JK!?」

 

「ウサ耳JK……? もしかしてあのウサギの事かしら?」

 

 オレの視線に合わせて咲夜も同じ方向を見る。

 

 咲夜にあのウサ耳JKについて詳細を求めることに。

 

「あれもウサギの妖怪か何かか?」

 

「まぁその類よ。月から来た妖怪ウサギみたいだけど」

 

「……幻想郷の月にはウサギがいるのか……」

 

「今の様子だと薬売りをしている最中ね。永遠亭の薬剤師である八意永琳の作った薬を人里で売っているわ。パチュリー様の持病である喘息の事を知っているわよね? 薬が切れてきたら喘息を抑える薬をいつも買っているのよ」

 

「そうか。薬が切れてきたらウサ耳JKの所で買えば良いんだな」

 

「……ところで、JKって何かしら?」

 

「女子高生の簡単な略称」

 

 違う意味で『常識的に考えて』もあるが。

 

「じょしこうせい……? まぁいいわ。最後によるところがあるから着いてきなさい」

 

 咲夜の質問に答えながら、オレが咲夜の後に着いていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 次に来た場所。咲夜が言うには古道具屋の主な商売である【香霖堂】で頼んでいた物を引き取りに来たらしい。

 

 実際にその香霖堂に着いたのだが……壊れかけのベンチにドナ○ドとカー○ルが肩を組んでいてシュールだ。ネット上ではいつも争っているのに。

 

「ごめんください」

 

「邪魔するぞ」

 

 咲夜が入っていたのでオレも続いて入る。

 

『いらっしゃい。紅魔館のメイドに──おや? 見かけない顔だね』

 

 店の奥聞こえてきた男の声。その男は眼鏡をかけ、特徴的な和服を着ている。

 

「…………」

 

 少し離れたところで椅子に座りながら本を読んでいる──鳥の妖怪がいるみたいだ。

 

 ……今までのオレならおちょくっていたが止めとこう。トラウマがよみがえる。

 

 咲夜はその眼鏡の男に話しかける。

 

「店主さん。以前頼んでいた物はもうできていますか?」

 

「あぁ。ちゃんと仕上がっているよ。それで、咲夜の後ろにいる子は?」

 

 どうやらオレに興味を持ったみたいなので自己紹介をすることに。

 

「あ、ども。紅魔館で働くことになった外来人の本堂静雅だ。以後よろしく」

 

「へぇ。僕は森近霖之助。ここ、香霖堂の店主をやっている。外来人か──紅魔館での生活は大丈夫なのかい?」

 

「普通に生きているので問題ないな」

 

 何故か霖之助に心配されたが大丈夫だと答えておいた。

 

 続けて霖之助は質問をしてくる。

 

「何となくだけど、君って外来人らしいけど人間じゃないよね?」

 

「──ばれてしまったか……。何を隠そう、オレは神だ!」

 

「神様……? 妖怪の山の神様と同じ理由で幻想郷に来たのかい?」

 

 幻想郷のせいか、あっさり信じてもらえてしまった。それはそれで悲しい。

 

 少し物足りなく感じていると、咲夜がオレのことについて説明してくれる。

 

「いえ、違います。彼は八雲紫に落とされて幻想郷に来たんです。それでたまたま紅魔館に方へ落ちてきたので、雇うことにしたのです」

 

「……そもそも霖之助は何でオレが人間じゃないと分かったんだ?」

 

「僕は半妖だからね。においで何となく分かるのさ。……さて、頼んでいた物を持ってくるよ」

 

 そう言って少しの間霖之助は店の奥に行く。

 

 ……数分後……持ってきた物は──

 

「──執事服?」

 

「そう。これは君の主である吸血鬼の依頼でね。咲夜からの伝えだと『咲夜はメイドのワケだから外来人は執事ね』だと言われたから、僕なりにデザインして執事服を作ってみたんだ」

 

「オレは別に学生服で構わなかったんだが……」

 

「お嬢様の好意は素直に受け取るべきよ?」

 

 そう言われては仕方ないのでオレは執事服を受け取った。

 

「そういや代金は?」

 

「もう前払いで澄ましてあるわよ」

 

「紅魔館の人々はちゃんとしたお客さんだからね……(一部勝手に持って行く奴がいるが)」

 

 霖之助なりにいろんな悩みを抱えているみたいだな。

 

 霖之助は表情を直してオレに話しかけてくる。

 

「そういえば君は外界出身だったね。ちょっと聞いてみたいことがあるんだ」

 

「聞いてみたいこと? 彼女ならいないぞ?」

 

「いや、それを僕に話すのはおかしいよね? そういうことじゃなくて、外界の物の使い方を知りたいんだ」

 

「使い方? まぁいいが……」

 

 

 

 

 

 店主、執事雑談中……

 

 

 

 

 

「──成る程。たいていの物は電気がないと動かない物が多いんだね。そうなるとこの【掃除機】や【ラジオカセット】は河童に売ってあげた方が良いね」

 

「ラジオについては再生するカセットも必要だからな。簡単にまだ動くとすれば、今じゃ忘れられたMDプレイヤーだな。このイヤホンと、この使い終わった単三電池を研究して、電気を送るようにしたら聞けるな。幸いに外界のアーティストのMDはあるし、聞けると思うぞ?」

 

 道具の説明を順に説明していった。

 

 霖之助の能力はあくまで道具の名前と使用用途だけが分かるらしい。肝心の使い方が分からなかったらしいので、外来人であるオレがいて都合が良かったらしい。

 

「複数の外界の道具を組み合わせてできるのか……これは興味深い」

 

「(……外界の物の所為か、話について行けないわね……)」

 

 ふと見ると、咲夜は複雑そうな表情をしている。少し疎外感を感じているのかも知れないな……。

 

 一応、話は一区切りついたので霖之助は礼を言ってくる。

 

「こんな有意義な話ができたのは初めてだよ。ためになる話をありがとう」

 

「楽しんでもらえて何よりだ。話してる側も気分が良い──お? あれは?」

 

 話している途中である物が目に入る。壁に掛けられていた──槍だ。

 

「槍も置いてあるのか……」

 

「あれは僕が作った特注の槍だよ。僕はたまにマジックアイテムも作っていてね。武器は専門外だが、試しに作ってみたんだ。しかもその槍は対弾幕性でね。単純な弾幕ならはじき返すこともできるんだ」

 

「ほぉ……」

 

「……欲しいのかい?」

 

 どうやら顔に表情が出ていたらしい。確かに欲しいな。あの槍。

 

「欲しかったらいいよ。外界の物の使い方を教えてくれたお礼として」

 

「いいのか!? とても対等な対価じゃないような気がするんだが!?」

 

「なに、君からの雑学は商売人としての僕には有益だからね。心配しなくても良いよ」

 

「静雅は槍は扱えるのかしら?」

 

 衝撃なことを言われて問いているところ、咲夜が槍の扱いについて聞いてくる。

 

「実家では槍術習っていてな。それなりに自信がある」

 

「そうなの……お嬢様もスペルカードで槍のカードがあるのよ。神槍【スピア・ザ・グングニル】というのがね」

 

「ほう……それは参考にしよう……。しかし、これではオレの気が済まないな……そうだ。MDプレイヤー、電池、イヤホンを貸してくれないか?」

 

「別に良いけど……どうするんだい?」

 

 一式を机の上に置く。オレは手をかざしてあることを念じる。

 

 すると……古ぼけていた一式が新品に戻った。当然何も知らない霖之助は驚いた。

 

「!? 一瞬で道具が新しく!? 何をしたいんだい!?」

 

「ちょっとオレの能力の一部でな。新品同様の状態の事象と設定した。さて、これをこうして組み合わせて──よし、できた。これで少し音量を上げてと」

 

 カセットを入れ、イヤホンをさして電池を入れる。電源を入れ、適当な曲を再生して全員に聞こえるぐらいの音量で止めると──リズムに乗った演奏と歌が聞こえてきた。ちなみに曲はアゲハ○である。

 

「何だかプリズムリバー三姉妹とは違う、新しい感覚だね……」

 

「歌っているのは男の方ですね……良くここまで高音で歌えますね」

 

「どうだ? いくら何でもただでは悪いからこれで手打ちって事で。お互いちゃんとしたギブアンドテイクだ」

 

「そうか……じゃあこれを代金として受け取るよ。毎度あり。しかし、君の能力だったら壊れかけの物とか全て直せるんじゃないのかな?」

 

「直せるっちゃ直せるが……余りお勧めはしないな。その道の直す職業を邪魔することになる。さっきの幻想郷のエンジニアの河童の仕事を」

 

 オレも聞いたとき河童がエンジニアだなんて驚いた。オレの言葉に咲夜は同調してくれる。

 

「静雅の言う通りですね。能力を使えば数時間かかる作業を一瞬で終わらせてしまう……とてもその道の人はやるせない気持ちになっていますね」

 

「まぁ、霖之助が河童の場所に行くときにめんどくさいときはオレを呼んでくれて構わない。外界の道具の説明はするし、ご希望なら道具も直してやる」

 

「それじゃあその時はお願いしようかな? あぁ、後槍を入れるケースを持って行くと良い。直してくれたおまけだよ」

 

 霖之助は肩にかけるタイプのケースに槍をおさめ、渡してくれた。

 

「サンキュー。ご贔屓にさせてもらうぜ」

 

「うん。また来ると良いよ。その時は外界の話も交えてね」

 

「では静雅。紅魔館に帰りましょう」

 

 香霖堂を後にして、俺達は紅魔館に帰って行った。

 

 

 

 

 

 ……紅魔館に着いたとき、美鈴が寝ていたところに咲夜がナイフを投げたときは本当にびびった。

 

 

 

 

 




 香霖の好感度が急上昇。このままいくと友情エンドか?
 表の話を読んでいる方は分かると思いますが、先に裏主人公が香霖と出会いました。そして表主人公が思ったことを裏主人公も思う。ハンバーガーとチキンの対決って熱い。
 ではまた。

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