幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 ようやく天界です。
 表主人公視点。
 では本編どうぞ。


三話 『雲海の抜けた先で』

「……随分と雲海を抜けないといけないんですね?」

 

「はい……もう少しで着くので──あ、ちょうど着きました。ここが天界です、侠さん」

 

 永江さんの後に着いていくようにして、雲海を抜けた先には……目の前には草原が広がっていた。近くに桃の木も生えているけど……。

 

「……何か予想と違って草原があることに驚きなんですけど……?」

 

「天界は主に天人様が住んでいます。おそらく、侠さんの考えだと周りは雲に囲まれて、頭に輪が付いて背中に白い翼がある人物達と考えていたのでしょう?」

 

「外界のイメージだとそんな感じですけどね。それと【天人】というのは一体何なんですか──」

 

 永江さんから出てきた単語について問いかけていると──少し離れたところで、円上の影が出来てきている。

 

「? 何で中途半端な影が──」

 

 

 

 

 

 そう思って空を見上げたとき──大きな岩みたいなのが落ちてきている!?

 

 

 

 

 

「永江さん!? あれは何ですか!?」

 

「……大丈夫ですよ。警戒することはないです。おそらく総領娘様ですから……」

 

 名前ではなく、固有の呼び方をした永江さん。そのまま岩は自分たちの傍に落ちては、それと同時に地面がふるえるような振動が体中に広がった。

 

 それで……もしかして岩の上に乗っていたのだろうか分からないけど誰かが岩の上から降りてきた。その人は上半身から腰の辺りまで白い服を着ていて胸元には赤いリボン。上着とスカートを分けるようにある虹色に似た装飾もあり、スカートは青色。永江さんとは違う黒い帽子を被って、さらに帽子の縁に乗っかっているような桃もある。腰に緋色のような赤い色の剣を持っているようだ。見た目は自分と同じぐらいか年下の年齢にも見える。

 

 その子は最初永江さんに話し掛けたが──

 

「衣玖〜どこに行ってたの? あの小鬼にいろいろ意見できるのはあんたなのに……って、あんた誰よ?」

 

 うん。当然ながら一緒にいた自分に問いかけられた。その事を代弁するかのように永江さんは説明。

 

「彼は辰上侠さんです。龍神様に龍界にお呼ばれして、私が案内を務めたんですが……侠さん自身も天界に興味があるようなのでお連れしたんです」

 

 本来ならご先祖様が言ったんだけど……自分の事情を察してか、詳しい龍神事情を話さすに簡潔に説明してくれた。

 

 でも……内容が内容なので驚く目の前の人(名前知らない)。

 

「はぁっ!? 天人でも会うのが無理な龍神に呼ばれたって!?」

 

「彼の事情は複雑なもので……それを察した龍神様は詳しく事情を聞くことになったんですよ、総領娘様」

 

「……【たつかみ】? それって漢字と読み方を変えたら……【龍神】じゃない!? 何あんた!? 龍神と何か関係がある人間なの!?」

 

「まぁ、そうと言われればそうだけど……君の名前は? 一方的に言われても君の名前が分からない限り呼べないし……」

 

 質問を質問で返すのはあれだけど、優先する情報を得ようとする自分。それを言われてか「そういえばそうね」とは言っては、納得する表情になった後に話してくれた。

 

「私は比那名居天子よ……ん? そういえば小鬼が外界の人間で【龍神の先祖返りがいる】って言っていたのは……もしかしてあんた?」

 

 小鬼って誰なんだろう……?

 

 そんな事を思いつつ、間違っていないのでちゃんと受け答えをする。

 

「そうだね。いろいろな複雑な事情があるけど、自分は【龍神の先祖返り】の辰上侠だよ」

 

「へぇ……確か小鬼が言っていたのがまだあって……幻想郷全体が暗くなった【幻想日食異変】だっけ? 幻想郷の異変解決者が解決できなかった異変を解決したのもあんたってわけね」

 

「まぁ、そうだね。それから異様に有名になったけど……」

 

「それはつまり……博麗霊夢より強いって事よね?」

 

 何か含みがあるような、面白い物を見つけたような笑みで自分に問いかけてきた。

 

 ……何か嫌な予感がするけど……とりあえずこの事柄について永江さんに聞いてみる。

 

「その事について永江さんはどう思いますか?」

 

「どうも何も……幻想郷の代表的な異変解決者である博麗の巫女が解決できなかったのですから、当然世間的に見れば霊夢さんより侠さんの方が実力があると捉えられるでしょう」

 

「ですよねー……」

 

 静雅の異変以来、霊夢より自分の方が強いという誤解が広まっている。あくまで能力有りで戦った霊夢の方が強いはず。それに対して自分は当時お互いの能力を禁止して戦ったのだから。その結果だけが世間に広まっている。

 

 そして……ある意味、自分の予想通りの言葉を比那名居は言ってきた。

 

 

 

 

 

「相手の実力には申し分無し。それなら──私と弾幕ごっこをしなさい!」

 

 

 

 

 

 比那名居は指をこちらに示しながら、当然な風に弾幕ごっこを申し込んできた……天人って好戦的なのだろうか?

 

 当然、自分は断ろうとした──けど、ご先祖様に断り文句を中断させられた。

 

『「待つのだ主。この比那名居天子とは戦った方が良い」』

 

 ご先祖様は目の前にいる比那名居と戦う事を推奨している。

 

 ……どうしてなのですか?

 

『「この者から【土】の【力】を感じる……! おそらく天界で我が気配を察したのがこやつだ! この【力】さえ手に入れれば、我の能力などの制約がなくなる!」』

 

 ! そうなんですか!?

 

『「その通りだ! もう一つの条件ではないが……弾幕ごっこに正式に勝てば、【土】の力を得られる! 我もサポートしよう! だから主、戦うぞ!」』

 

 比那名居に勝てれば……もう遠出することはなくなる。霊夢にも心配掛けずに済むということ。

 

 自分はご先祖様の意思に従い……言葉を変えた。

 

「──良いよ。戦おう」

 

「侠さん!? 戦うのですか!?」

 

 自分は断ると思っていたのか、永江さんの意外そうな言葉が飛んでくる。少しでも永江さんを安心させるように、簡単に事情が伝わるように説明する。

 

「大丈夫ですよ。ちゃんと勝算のある戦いじゃないと受け入れませんし。それと……ご先祖様関係でもあるためです。比那名居がその対象みたいですから」

 

「……【力】関係の事柄ですか。それなら止めはしませんが……総領娘様も、節度を持ってしてくださいね?」

 

 自分の発言に察した後、永江さんは比那名居に注意するように言う。

 

「それぐらいは自重するわよ。でも、目の前にいる奴は龍神の先祖返りで一種の異変解決者。できれば【あの時】にでもやってみたかったけど……これほど特別な相手は初めてだわ。最近、また退屈でしょうがなかったけど……私の暇つぶしに持ってこいの人物。この天人──比那名居天子が相手をしてあげるわ! あんたの実力を見せてみなさい!」

 

 比那名居は戦闘の意思を見せて体勢を整えた後、空気を読んでか永江さんはその場から離れていった。

 

 そして──自分も体勢を整えて──

 

「自分も──負けるつもりはないからね!」

 

 ──お互いに、弾幕を放ち始めた……。

 

 

 

 




 次回から戦闘。察していたかもしれませんが。

 ではまた。

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