幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 話自体は終わり。
 表主人公視点。
 では本編どうぞ。


二話 『先祖と子孫』

『……腐っているな。外界の子孫は。まともなのがお前──いや、辰上侠の生みの親と育て親のみか』

 

「……申し訳ありません。龍神様の汚点になるような事実を作ってしまい……」

 

『侠は関係ない。悪いのは曽祖父様の亡骸を使い、人工的な先祖返りをする外道の子孫だ。お前もつらかっただろう? 生みの親と離れ離れに、そして身元不明にしなければさらなる実験台にされただろう。その分、非道な扱いを受けたというじゃないか。お前は被害者だ。気にしないでいい』

 

「……ありがとうございます」

 

「改めて聞くと本当にひどいですね……同じ人間にも関わらす、非道なことが出来るだなんて……」

 

 ご先祖様関連の出来事、自分の歩んできた人生を四代目様に話した。四代目様は人格者で、自分を気遣ってくれた。永江さんも同様に同情してくれた。

 

 そして……気になっていただろうことを四代目様は尋ねてくる。

 

『それで亡骸に残っていた曽祖父様の意思を運命共同体のワケだが……意識交換もできると言ったな? できれば曽祖父様と代わって欲しい』

 

『「ふむ。では体を借りるぞ、主」』

 

 ご先祖様に体の所有権を渡し……体の全体が赤くなる。そして──ご先祖様が口を開いた。

 

「……今頃になって曾孫を見れるとはの。この龍界も平和そうで何よりだ」

 

『曽祖父様。文献通りあなたは気楽すぎます。今の幻想郷を統治していないとはいえ、人里の住民に干渉するのは少々──』

 

「老い先の短い我だ。そのぐらい見逃してくれ」

 

『曽祖父様はもう本来亡くなっていますから⁉ 何が老い先短いですかっ⁉』

 

「しょうがないだろう? 我が死ぬと主も死んでしまう。多少の干渉は避けられぬ事なのだ。どうしようもないのだ」

 

『むしろ自ら関わりにいっていますよね⁉ 全然避けられることですよね⁉』

 

「いちいち五月蝿いの。そんなに気にしすぎると人生の半分は損するぞ? もう少し気楽に過ごすといい」

 

『曽祖父様が気楽過ぎるんです! 干渉し過ぎた結果、実質妖怪の山を支配したようなものでしょうがっ!!』

 

『龍神様──いえ、四代目龍神様。少し感情的になりすぎです。もう少し冷静さを取り戻してください』

 

 ご先祖様に言葉熱くなっていた四代目様に冷静な永江さんの注意。その言葉通りに冷静さを取り戻そうとした四代目様だが──

 

『そ、そうだな……衣玖の言う通りだ。すまない。みっともない姿を見せてしまったな──』

 

「部下から注意されるとは情けないの。もう少しそれなりの対応をとらんか」

 

『曽祖父様が原因ですからねっ⁉ あなたは他人事過ぎるんです! むしろ自分の行動を見直してください!』

 

「我のどこに見直す要素があったかの?」

 

『すっとぼけるな爺がぁーっ!!』

 

「四代目様……本当にもう少し落ち着きましょう。侠さんは表にでないとはいえ、姿は認識していると思いますよ? 四代目様はもう少し龍神様としての行動を振る舞ってください」

 

『ぐっ……!? 何故私が幼稚みたいな扱いを受けているんだ……⁉』

 

 ……見た感じ親の言う事に過敏に反応している子供にも見えなくもない。でも実際にはそういう関係か。永江さんは何だか母親みたい。

 

 さすがに弄り過ぎたと思ったのか、笑いかけながら謝罪するご先祖様。

 

「いやはやすまんの。まともな子孫との触れ合いに楽しく感じていた我がいたのだ。お主も幻想郷の維持に貢献している。そこは誇ってもいいと思うの」

 

『はぁ……曽祖父様に惚れられた人間はさぞ苦労したことでしょうね……』

 

「違いないの」

 

 溜息交じりに言う四代目様に自身で頷きながら同調するご先祖様。ご先祖様の態度を見てか、永江さんも注意するように言う。

 

「……初代様も自覚があるのなら改善してみたらどうですか?」

 

「これは厳しい発言が出たの。それについては見逃してくれるとありがたい」

 

「……予想と違ってフランクな性格だったのですね、初代様は……」

 

「真面目よりも気楽に生きた方が人生を謳歌できるからだ。衣玖ももう少しフランクにしても良いのだぞ?」

 

「さすがに初代様にそんな態度はとれませんって……」

 

 当然のように言う永江さんだったが、ご先祖様はある事を言う。

 

「ならば、我が主の場合は気楽に接することが出来るだろう? それと同じような感じで構わん」

 

「一応、侠さんが龍神様の先祖返りであるためそれ相応の態度をとっているつもりなんですが……私なんかの竜宮の使いがそういう態度は良くない気が……」

 

「主はただでさえ人里で神様扱いにされておるからの。主を【幻想郷にいる一人の人物】として思えばよい。実際主は神様のような扱いが苦手である。だから一向に構わないと思うぞ?」

 

 ……確かにそう感じている。龍神の先祖返りと知られる前は普通に過ごしていただけなのに、今では必ず毎日話しかけられる。しかも七割以上が自分より年上。常に敬語なのは堅苦しい。その理由が【幻想郷の最高神】という理由だから。だからご先祖様のこういう言葉には感謝している。

 

 自分の思ったことを読み取ったのか、永江さんに伝えようとするご先祖様だったが──

 

「主も【龍神関係】だからという理由で敬意を示されるのは苦手と言っておる。それに加えお主は──主の外見的好みに入っておるからな」

 

「え……? 侠さんが私を……?」

 

 ちょっと!? ご先祖様バラさないでください⁉ 軽くゆゆさん以来カミングアウトされるのはものすごい恥ずかしいんですよ⁉ 確かに永江さんは落ち着いてスタイルもいいですけど!

 

『「……そこは認めるのだな?」』

 

 陽花を妹として扱っていたせいか、抱擁力のありそうな人に惹かれるような気がするんですよね。自己分析すると。

 

『「……まぁ、主は最近まで本当の両親を知らなかったからの……主は甘え無しで生きて来たものだ。優しそうな大人しい異性に憧れているのだろうて」』

 

 そういうものなのでしょうか……?

 

『「逆に陽花みたいな裏表のない人物に依存しているの。あやつを【ぶらこん】に例えるとしたら、主は自覚のない【しすこん】というものだ。なんだかんだ主は陽花に甘すぎる」』

 

 ……やっぱり、厳しくするべきかな……。

 

 とはいえ……ご先祖様の言った言葉に驚いている様子の永江さんとポカンとしている四代目様。

 

 ご先祖様、とりあえず弁解を──

 

『「では主。頑張ると良い──」』

 

「頑張るって何を――って体戻ってる⁉ 何ていうタイミングで体を返すんですか⁉」

 

 自分の声が直接耳に聞こえてきたのでどうしたんだと思っていると……体の所有権が自分になっていた。髪などの色も戻っている。この段階で体を戻すんですか⁉

 

 そして注がれる永江さんの視線。それに対して弁明しようとしたけど──

 

「え、えっと永江さん。ご先祖様が勝手に言っただけでその何というか、確かに事実ではあるんですけど──」

 

「──フフッ。外見的好みとはいえ、侠さんの好みであった事には嬉しく思いますよ?」

 

「…………ゑ?」

 

 予想外の事を言った永江さんに対して呆気にとられる自分。それでも尚、永江さんは話を続けた

 

「侠さんは私から見ても整っている外見だと思います。その方に褒められるとは嬉しいことなのですよ? 侠さんは言葉づかいも丁寧ですし、ましてや龍神様の先祖返り。侠さんの評価に私は外見に自信を持てますよ」

 

「そ、そうですか……お役にたてたようで何よりです……」

 

「ただ──」

 

 そう言いながら永江さんは自分に近づいて……永江さんの人差し指を彼女の唇に当てて言葉を繋げる。

 

「──人は外見よりも、中身の方が大事です。最もその方面も見てくださると嬉しく思います」

 

「は、はい……自分でもそう思っています……」

 

「とはいえ、会ったばかりなので早く理解するのは難しいでしょうから、ゆっくりお互いの事を知っていきましょう」

 

 笑顔で優しく語りかけるように永江さんは言う。

 

 ……なんだろう……ゆゆさんとは別の意味で純粋に敵わないような気がする。こういう人がお姉さんみたいな人なんだろうか……?

 

 

 

 

 

 

 

 そう考察していたときに永江さんの体から──青紫色の光の球体が出てきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………………ゑっ⁉ なんでこの光が出てきた⁉」

 

「およよ? 何でしょうか……この光は……?」

 

『! まさかその光は……文献であった曽祖父様の能力⁉』

 

「! 初代様の能力ですか⁉ 何故私から……⁉」

 

 四代目様はどうやらご先祖様の能力を知っていたみたいだ……でも、永江さんとは戦っていない。東風谷の時と同じ【条件】での能力発動……⁉

 

『「予想通りだの! 主の人格に感謝だ! そして衣玖の人格にも感謝だの!」』

 

 ……まさかそれを見通して、自分の外見的の好みをバラしたんですか⁉ 自分の知らないもう一つの【条件】で⁉

 

 そのまま青紫の光は自分の体に入ってきた……これはつまり……。

 

「永江さんって……能力か弾幕の力で【雷】か【土】の属性を持っているということですか?」

 

「? はい……私の弾幕は【雷】系統なので……それと先ほどの光と何か関係があるのですか?」

 

『……侠。もしかするとそれは初代様の能力と言われる【力を手に入れる程度の能力】ではないかっ⁉』

 

 永江さんの答えに確信を持ったころ、四代目様が改めてご先祖様の能力について問いかけてきた。

 

「はい……その通りです」

 

『そうなると……今手に入れた【条件】も知っているのか?』

 

「いえ……それについては教えてくれないんですよ……自分に都合が悪いとかそういう理由で……」

 

『……それは知らない方が良い。それを知れば、人とのふれあい方がわからなくなる。まぁ、お前は気にしないかもしれないが……曽祖父様が語れば構わないが……』

 

 四代目様からの真剣な声。それでご先祖様……多分まだ教えてくれませんよね?

 

『「無論。今の状態の主が聞いてもそれを……拒否すると思うからの。教える機会があるとしたら……何時になるかのう?」』

 

 そこは決めてくださいよ……。

 

 それはというと……永江さんの弾幕の力が【雷】という事は……自分の能力も当然の如く発展を?

 

『「弾幕の力を能力に発展したの。言い方をかっこよく言うならば【紫電を操る程度の能力】といったところかの。実際は電気を操るが」』

 

 ……偶然とはいえ、四つ目の【力】を手に入れる事が出来た。後は一つの【土】系統の【力】か……。

 

 その中、当然疑問に思う永江さんは自分に問いかけてくる。

 

「よくわかりませんが……何故初代様は能力が私に発動したのですか?」

 

「その事についてはご先祖様が今必要としている【力】の一つだったからです。今のご先祖様は全盛期と比べると力が随分落ちているようで……最低五つの【力】が必要だったんです。この場合の入手条件は教えてもらっていませんけど……現在は火、水、風の三つの【力】を手に入れることが出来て……永江さんのおかげで必要だった力の一つである【雷】を手に入れることが出来たんです」

 

「私のおかげ、ですか……?」

 

「正直、【力】を手に入れてなかったら後三年後近くで死んでいたみたいです」

 

「大問題じゃないですか⁉ 本当に……幻想郷に来れて良かったです……」

 

 内容が内容なので驚いていた。まだ心配しているようなので安心させるために永江さんに自分は言う。

 

「でも、今じゃ普通の人間ぐらいの寿命はあるので大丈夫です。永江さんに会えて本当に良かったです」

 

「ならば良いのですが……もし、龍神様関係で困った事があれば私も力になりますので、その時はよろしくお願いします。あなたに何かあったら大変なので……」

 

「ありがとうございます……」

 

 ここまで親身になってくれるのは凄い嬉しいけど……なんか逆に悪いような気がする。

 

 それを見かねてか、四代目様も心配するかのように話しかけてきた。

 

『お前も一種の龍神なんだ。無理することはない。手を差し伸べてくれる人物の力を遠慮なく借りると良い……。これで話すことは全部だな。危険性は全くの皆無で問題なし。衣玖、辰上侠を下界まで送り届けろ』

 

「はい、わかりました四代目様」

 

 ……どうやらもう話すことは全部みたいだ──

 

『「待つのだ主。ここの【龍界】からならば【天界】の方が近いはず。下界に降りる前に向かうぞ。そこに最低限もう一つ必要な【土】系統の【力】を持つものがいるはずなのだ。能力云々は置いておくとして、天界に行きたいと言っておくれ」』

 

 ──急なご先祖様の言葉。今度は天界……? ゲームでよくありそうな単語のような……?

 

 ご先祖様の言う通りに自分は四代目様にご先祖様の意思を伝える。

 

「四代目様、ご先祖様は下界に戻るよりも天界に行きたいと言っていますが……よろしいでしょうか?」

 

『天界にか? まぁ、曽祖父様の事だ。何らかの意味があるだろう。それならば衣玖が案内してくれる。衣玖は天人である比那名居天子のお目付け役でもあるからな。彼女に案内してもらった方が良いだろう。衣玖もそれで良いか?』

 

「私は構いませんが……総領娘様がどう反応するか……しかし、侠さんと初代様が興味あるならお連れします」

 

 どうやら話はまとまり、無事に天界に行けそうだけど……天人とかなんだろう? 天界っていうんだから天使の人間の種族?

 

 自分と永江さんは四代目様に挨拶をして宮殿を出て、永江さん先導の元で天界に向かった……。

 

 

 

 




 衣玖さんマジお姉さん。

 ではまた。

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