表主人公視点。
では本編どうぞ。
一話 『龍界』
急に言われたこと。空からやって来た永江衣玖さんが言ったこと──龍神様に【龍界】に来てほしい?
そうなると、その龍神というのを考えていたとき──ご先祖様が推察する。
『「無論、我の純粋な子孫。つまり今の幻想郷を統治する龍神だの。我の力に気付いたのだろうな。それで竜宮の使いである衣玖に使いを出したんだろうて」』
……まぁ、ご先祖様も何時か誰かは行動を起こすと言っていましたもんね。
それで確かめる意味合いで永江さんにある事を確かめる。
「……龍神というのは現在三代目か四代目ですか?」
「⁉ 知っているのですか……⁉」
「そういう事情っていうのは自分がよく知っています。直接聞いたんですから」
「……? 直接、というのは……?」
自分の言ったことに永江さんは疑問そうにしているが……自分の他で龍神事情を知っているただ一人の人物である霊夢が代わりに答えてくれた。
「侠の心の中には幻想郷を創った初代龍神であるティアーがいるのよ。私もいろいろあって聞いたんだけど……」
「初代龍神様っ!? この幻想郷を創ったと言われる創造神である龍神様……!」
「意識交換もできるのよね。侠、実際やってみたら?」
霊夢にそう促される。ご先祖様、それでどうですか?
『「面倒だの。どうせ龍界に行った時にするのだからその時にする」』
「……永江さん、ご先祖様は龍界に着いてから意識交換を行うと言っています」
「……成程。確かに侠さんから龍神様と似たような力を感じますね……何故外界の人間の方が初代龍神様とご関係が? それと【ご先祖様】というのは……?」
次々と湧く永江さんの疑問。簡略に自分のことを説明する。
「簡単に説明すると──ご先祖様、つまり初代龍神様はとある事情で外界に住み込んだんですよ。それで幻想郷には自分が死ぬと還元される分身を置いたようです。それで本当に複雑な事情があって……自分はご先祖様の先祖返りなんですよ。それと……自分の体にご先祖様の残留思念が残った細胞がありまして……」
「…………本当に外界の方なんですか?」
「先祖返りと言えど、外界出身には変わらないんで……」
言葉では冷静に見える永江さんだけど、問いかけることがもっともな疑問なんだろう。
話を仕切りなおすようにして永江さんは言う。
「道中にいろいろ聞きたいことがありますが……一先ず、着いて来てくれますか? こちらの四代目龍神様がお待ちなので……」
『「主、行くぞ。いつかはこうなると分かっていたからの。まぁ、単なる話し合いで終わると思うが……」』
「はい、わかりました」
自分はご先祖様の従い、行こうとしたところで……霊夢に向き直る。
「博麗……ちょっとまた出かける必要があるみたいだ。ごめん」
「今を統治する龍神に言われたら仕方ないわよ……でも、さっさと帰ってきなさい」
「努力はする」
自分は翼を出し、永江さんの後に着いて行った……。
「……侠。あんたってば本当に落ち着きがないわね──」
『おーい霊夢。ちょっくら侠はいるかー?』
「……静雅? 侠に何か用なの?」
『実は地底によ──』
「──侠さんはやはり龍の姿になることができるのですか?」
「今は最低限の【力】が足りないのでできないらしいです。この間、必要な【力】の一つは手に入れることができましたが……今は部分的に龍化した人の形の【竜人】になることはできますけど」
「そうなのですか……でも、話を聞いていると初代様と仲がよろしいんですね?」
「ご先祖様はある意味自分の命の恩人でもありますし。いろいろ協力してくれますからね」
『「主の体は居心地がいいからの。それなりの家賃は払っているつもりだ」』
雲海を抜けて永江さんと会話をしながら進んでいく自分達。道中で永江さんと同じような羽衣を纏っている人たちにも話しかけられながらだけど。やっぱり雲海でも龍の翼は目立つみたいだ。
それで目の前の雲海の景色が変わり……宮殿みたいな建物が見えてきた。周りに飛んでいるのは……龍? 龍っていっても蛇みたいな龍、二足で立っている龍など。様々な龍が周りを飛んでいた。中には自分を見てくる龍もいるけど。
「やっぱり同じ龍は自分についての違和感を感じるんでしょうか?」
「それはそうでしょう。侠さんは現にも龍の翼を広げておりますし、周りの龍の方々も興味を持たれるのは当然です。では、こちらに着いて来てください」
自分の疑問に永江さんは答え、促されて宮殿に入っていく。
……何故か宮殿に入る時、すれ違った龍が上海みたいに【あの人間ただものじゃねぇ……】と聞こえたのは一体……?
上海に似た聞こえ方について考えていると、答えるようにご先祖様は言う。
『「そういえばまだこのことは説明してなかったの。主は我の先祖返りとしての特性の一つ、【意思を持つ者の言語がわかる】のだ。人形遣いが作った人形の上海や本堂の者が作った人形の天牌は意思を持っておる。そういう者達は言語がわかるようになっているのだ。創造神たる者、幻想郷住民の言葉を聞かなくてはならない。同様に言語を喋れなくても、意思を持つ者なら何を言いたいのか理解できるのだ」』
自分経由で喋れない意思を持った人物を通訳できるんですね……。
新しい特性について理解しながら永江さんに着いて行く。そして──大きな扉の目の前まで来た。
扉の目の前に来て永江さんはこちらに振り返り、挨拶をして去ろうとしたが──
「この先に今の幻想郷を統治する龍神様はいらっしゃいますので。では私はこれで──」
『衣玖よ。お前も入ることを許可する』
──扉の向こうから貫録がありそうな声が永江さんを制止させた。その事に永江さんは驚きながらも、すぐに冷静になって扉の向こうにいるであろう龍神に問いかける。
「よろしいんですか龍神様? 私はもう使命を終えましたが……?」
『地上に降りて辰上侠を連れてくれてきた礼だと思うと良い。何、私はお前の事は信頼している。お前が聞いても問題ないだろう。それに……少し気になるだろう? 会話の内容を』
「……正直、気になりますね」
『ならば辰上侠と共に入るといい。遠慮することはない』
「……侠さん。では一緒に行きましょうか」
「あ、はい。了解です」
永江さんに促されて大きな扉を一緒に開け……部屋に入る。
扉の先に入ると……目の前に入ってきたのは緑の鱗で覆われた……手足がはっきりある龍。その体は大きく、多く見積もると十メートル前後はありそうだ。頭には縞模様の二本角がある。
多分……この龍こそが【今】を統治する四代目龍神様なんだろう。
四代目龍神様は鋭い眼光で自分を見定めて……納得したかのように龍神様は言う。
『……成程。体は人間だが、私に似たような力を感じる。だが、それだけではないな? 一つの体に二つの意思を感じる……意思云々は置いておくとして……文献通りならお前は
「はい……曽祖父ということはひいおじいさん……あなたは
『その通りだ。ちなみにその事は衣玖から教えてもらったか?』
「いえ。永江さんではなく……四代目様の推察であるもう一つの意思──初代龍神のティアー・ドラゴニル・アウセレーゼであるご先祖様から教えてくださいました」
『……詳しく話せ。何故曽祖父様の意思がお前の体にいる?』
これから話そうとする内容。それは今まで築いてきた【辰上】の侮辱も含まれてしまう内容。確認という意味合いで、その前提の話を自分は振る。
「……少々、龍神様についての侮辱も含まれますがよろしいですか?」
『構わん。知っていることを話すといい』
どうやら四代目様は一先ずいろんな情報が欲しいみたいだ。良い情報であったり、悪い情報だったとしても。
自分はこれまで体験した事と事実も含めて、四代目龍神様に話した……。
話としては次話まで続きます。
ではまた。