幻想世界に誘われて【完結】   作:鷹崎亜魅夜

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 観察した結果。
 全体としては三人称。
 ではどうぞ。


『表主人公観察日記』

「…………」

 

 博麗神社の一室にいる──博麗霊夢。彼女は居候である辰上侠に【ルーズリーフ】と【シャープペンシル】、【消しゴム】を借りており、何かを書いてまとめていた。現在、彼は不在なのだが──聞き覚えのある声が神社に聞こえ、霊夢の元に近寄る人物達がいた。

 

『おーっす霊夢──? 何書いているんだぜ?』

 

『……侠さんはいらっしゃらないみたいですね……』

 

『(うー……侠君いないんですか……)』

 

 順に霧雨魔理沙、魂魄妖夢、東風谷早苗が入ってきた。霊夢は書くのを中断し、彼女達に振り返る。

 

「あんた達は……まぁ、良いわ。今私が何を書いているかって? ちょっと今まで書いたモノをまとめていたのよ」

 

「? 霊夢さん、何についてまとめているんですか?」

 

 当然の妖夢達の疑問。そして彼女は──答える。

 

 

 

 

 

 

「ここのところの侠の行動をまとめているのよ。普段のあいつは何しているんだろうと思って」

 

 

 

 

 

 

 魔理沙と妖夢は興味があるような反応を示したが……早苗が少し困り気味に反応を。

 

「あの……霊夢さん? それって一種のストーカーじゃないですか?」

 

「? 何よその【すとぉかぁ】って?」

 

 純粋な霊夢の疑問に逆に早苗はうろたえた。どうやら、やましい事では無いことを察した早苗は「いえ、何でも無いです」といって話を流す。

 

 少なくとも、否定的な反応を示していた早苗だったが無論興味があった。それとは違っても妖夢も同様に。そして魔理沙はすぐに行動を起こす。

 

「じゃあ見せて貰っても良いか? 私でも気になるっちゃ気になるしな」

 

「……別に良いけど」

 

 霊夢はページを捲り、とある侠の一日のページを開いた……。

 

 

 

 

 

 

 

  〜某日〜

 

 朝。一先ず当番制の私達は、今日の朝食は私が当番。昼は基本各自で、夜は侠。正直朝の方が負担が少なくて楽だわ。

 

 いつもの巫女服に着替えた後、念のため侠の自室を覗いてみる。侠はいつも通りぐっすりと眠っている。まだ起きるような気配は無い。

 

 台所に行き、朝食を用意する。侠が来てから随分楽になったわねぇ……。今じゃ朝から豪勢な食事が摂れるって。侠のおかげで私も得くが出来て本当に嬉しい──

 

 

 

 

 

 

 

「──ちょっと待った霊夢。何かお前の日記になってないか?」

 

 途中で読むのを止めて、魔理沙は霊夢に質問。しかし彼女はぶっきらぼうに答える。

 

「仕方ないじゃない。侠がまだ起きていないんだから。ちょうどこの後に起きるのよ。静かに読みなさい」

 

「……わかったぜ」

 

 魔理沙達は再び文書に目を通す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 もう少しで朝食ができあがりそうなときに、作務衣を着た侠が起床。台所に着て『手伝うことはない?』って聞いてくれた。

 

 ……やっぱり、侠は他の奴とは違うって確信出来る。宴会の時とか私が片付けをしている時とか、基本誰も自分から手伝おうかなんて確認をとらないんだもの……。こういう気遣いは嬉しい。

 

 二人で朝食を作り、卓袱台に並べて。二人で食べている中……味の評価を求めてみると、やっぱり『美味しいよ』と言ってくれた。

 

 ……フフッ♪ 侠の好きな和菓子でも今度買ってこようかしら──

 

 

 

 

 

 

 

 

「──霊夢さん。少々、趣旨がずれているような気がするんですけど……?(羨ましいですけど……)」

 

 複雑そうに、趣旨から外れている事を指摘する妖夢。しかし、彼女は何処吹く風。

 

「ここからよ。侠一人が行動して、いろんな奴と関わるわ」

 

「……そうなのですか?」

 

 再び妖夢達は文書に目を通す──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 侠が寺子屋に向かった。折角だからどんな風の一日か観察したいと思う。

 

 彼は飛翔しないで、歩いて人里に向かっていたところ──茂みからルーミアが現れた。そのまま侠は何か話すと、一緒に歩き始めた。多分、一緒に行こうとかそういう事だと思う。

 

 でも、問題は次だった。霧の湖からやって来たと思われるチルノと大妖精が出現して──チルノが侠に正面から抱きついていた。

 

 ──何か凄いイラって来た。さっさと離れなさい……!

 

 急に大妖精は身を震わせたけど……彼女はすぐにチルノを剥がしていた。やっぱりあの妖精は他の妖精と違う感じがするわね。賢いらしいし。

 

 侠は苦笑いをしながらも、そのまま四人は寺子屋に入って行った。それで、慧音が授業というモノを始めていた。侠は慧音の隣で待機。生徒が侠を呼んで、瓦版に指を指しては、何か喋っている。多分、わからない問題を教えているんだと思う。

 

 ……へぇ。いつも違う表情で新鮮ね──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──あの、霊夢さん? 少しよろしいですか?」

 

「? 何よ早苗?」

 

 四人で読んでいる途中に疑問を早苗は霊夢に言う。

 

「寺子屋までの道中は遠くからストーキン──観察しているとして……寺子屋の内部はどうやって知ったんですか?」

 

「あぁ、それ? どうしようか悩んでいる時に、紫が現れて一緒にスキマ越しで見てたわ」

 

「紫さんが協力しているんですか!?」

 

 まさかの返答に早苗達は驚きを隠せない。まさか霊夢の行動に協力者がいたとは思わなかったからだ。当然なことかもしれないが。

 

 気を取り直して、早苗達は再び目を通す──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 寺子屋での授業が終わったようで、侠は寺子屋で生徒に話し掛けられ(何かミスティアが多かったような気がする)、生徒達は帰ると慧音と二人きりで何かを作り始めた。紫が言うには明日の授業の準備らしい。

 

 その後、竹林の案内人でもある妹紅がやって来た。二人は手作業をしながら、三人で『人里の治安』について話していた。まぁ、妹紅は慧音の友人みたいだし、侠は龍神の先祖返りだから話してもおかしくない。

 

 ……でも、慧音と妹紅……侠と距離が近くない? もう少し離れなさいよ。

 

 寺子屋での仕事は終わったみたいで、侠は人里で歩いていると──人里の住民が侠の元に集まってきた。多分、ティアー関連の事でしょうね……貢ぎ物を受け取らされているし。

 

 その中──買い出しに来たと思われる十六夜咲夜が侠に話し掛けてた。二人はしばらく何か話していると……二人で人里から出て行った。

 

 ……咲夜といても何か、変な感じがしないわね。予想が付きすぎて、静雅と会う云々の話をしていたみたい。

 

 そして二人が紅魔館に着くと──咲夜は寝ていた門番にナイフを投擲。侠に行動を促し、咲夜は美鈴にお仕置きしてたけど……まぁ、どうでも良いわ。

 

 その後、侠は紅魔館の図書館に着いた。そこには──レミリアとパチュリーは雑談を。フランは静雅と弾幕ごっこをやっていて、小悪魔は侠の存在を確認すると──すぐさま駆け寄って、嬉しそうに話していた。侠は返事をするように話をしているが、それでも話せることが嬉しいのか……気のせいか頬を少し赤く染めていた。

 

 ──何か一番イラついた。

 

 隣にいる紫に意味不明な事を言われるも、観察を続けていると……今度は弾幕ごっこが終わった静雅が侠に話し掛ける。すると──侠はスペルカードで剣を出し、静雅は多分能力で槍を出現させた。どうやら彼らで言う【組手】をやるみたい。でも、今回は……武器と身体能力だけの【組手】みたい。

 

 それで、二人の戦いを見て……正直、すごいと思った。お互いの拳や蹴りを交え、武器で流したり、攻撃したり……弾幕やスペルカード、能力がなくてもここまで戦えるの……?

 

 静雅もそうだけど……侠、何か楽しそう。よくよく考えれば幻想郷での侠の知り合いはほぼ女子なのよね……だからかしら? 組手の最中の会話でも楽しんでるわね……外の世界でもそうなのかな……?

 

 でも……勘──いや、直感かしら? これは侠が勝つわね。

 

 そう思ったとき……静雅の持っていた武器がはじかれ、侠が首元に剣先を突きつける。やっぱりね。私の侠が負けるはずがないわよね。

 

 結果を見て、フランはふてくされていたが……レミリアとパチュリーが二人の機嫌を取ろうとしている。そういえば……何か、レミリアとフランのお互いの対応が何か、すっきりしているわね。

 

 それで侠は紅魔館から出て行って、博麗神社に向かっていた。紫に博麗神社まで送ってもらい、神社で待機。紫はそのまま帰って行った。

 

 侠が帰ってきて、夕飯の支度をする。いつもなら、私はのんびり待つんだけど……手伝うことにした。それで侠は意外そうに私に『じゃあお願い』という事で隣に立って作業をする。

 

 それから以降は一緒にご飯を食べて、各々行動していたんだけど──侠が偶然にも私の裸を見たからしばいておいた──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「「ちょっと待ってください(だぜ)!?」」」

 

 急展開過ぎて三人はついていけなかったのだろう。三人は霊夢に当然な疑問をする。

 

「何がどうしてそうなったんだぜ!? あいつがそういう事をすると思えないんだがっ!?」

 

「きょ、侠さんが偶然にも、の、覗いてしまったんですか!?」

 

「私と逆の立場ってかなり漫画とかでの王道じゃないですかっ!? ずる──羨ましいです!」

 

 ベクトルがずれている早苗の発言はおいて、霊夢は頬を少し染めながら説明。

 

「し、仕方ないじゃないっ! 侠が何か火の能力で風呂の仕込みをしていて、それで入ろうとしてたなんて知らなかったものっ! てっきり私のために用意してくれたと思ったのよ! ちょうどお風呂が良い具合に出来ていたみたいだから、服を脱いでいたとき、全部脱いでなかったけど──侠が扉を開けてっ。それで条件反射に近い行動でしばいたのっ!」

 

「……居候ならではのハプニングだな……」

 

「(良かったです……故意ではなくて……)

 

 魔理沙は事情を理解し、妖夢は安堵した表情をしていたが──早苗は不満があるように霊夢に言う。

 

「それだったら明らかに霊夢さんが悪いじゃないですかっ! お互いに行動を知っていなかったのも原因の一つとしてあるかもしれませんが……侠君は何も悪くありませんっ!」

 

「その点は大丈夫よ。侠は『事前に教えてなかった自分が悪い』って言って、侠の責任になっているから」

 

「心が広すぎますよ侠君っ!?」

 

「(……まぁ、しばいたと言っても一発二発だけなんだけど。この間のお風呂の件もあるし……)」

 

 霊夢はとある事を思い出した所為で、先ほどより少し頬を赤く染めているが──忘れるように、文書のページを捲る──

 

 

 

 

 

 

 

 

 その後、私はお風呂から上がった後……侠から謝罪された。その時に『出来るだけ何でもする』と言っていたので、また人里での荷物持ちを頼んだ。

 

 ……今更だけど、私のも非はあるわよね。だから少なめでいいや。

 

 それで、各々就寝する。今日の一日は終わり。

 

 ──人里で、侠と一緒に何を買おうかしら──

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「──ま、偶々で侠の一日を観察してたらこんな感じになったわ」

 

 まとめた文書を霊夢は裏返しにし、三人に伝える。

 

「ほぉ〜……最後のハプニングはともかく、幻想郷に溶け込んでいるな、侠」

 

「(……侠さんは普段はこんな生活を……最後の不祥事はともかく)」

 

「あの、霊夢さん。最後に質問なんですが……良いですか?」

 

 魔理沙と妖夢の二人はそれぞれの反応を示すなか、早苗が霊夢に問いかけてきたので彼女は聞き返す。

 

「? 何よ?」

 

「人里のでデー──もとい、買い物はもうしたんですが?」

 

「それ? 確か予定は明日よ。寺子屋が終わった頃に行くの」

 

「「(……確実に、明日は人里に侠(君)さんはいると……)」

 

 

 

 

 

 ──そして、人里で【偶然】とある二人は、買い物をしていた霊夢と侠と会うのだが──それは別のお話。

 

 

 

 

 

 




 おぉ、修羅場修羅場。

 ではまた。

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